最強魔剣士が今更だけど魔法学校に通います

うずら

文字の大きさ
12 / 23

11 二人のゴーレム作り

しおりを挟む
「それじゃあ、まず、基本的なゴーレムの制作からお見せしよう」

 そう言ってアルベール部長は、ミスリル板地金インゴットを一枚、木箱から取り出す。

 魔導研究ギルド式のゴーレム作成の手順は幾つかの段階に分かれていた。

 まず一段階目はゴーレム起動用の術式作成、今回は事前に用意されたものを使う。

 二段階目は、術式を変換して魔法陣に書き換える工程。

 術式は長ければ長いほどゴーレムの行動パターンを複雑なものにできるが、その分変換後の魔法陣の密度が増し巨大になってしまう。
 そのため、複雑な動きや機能を持ったゴーレムは自ずと大型になる傾向がある。

 術式から魔法陣への変換は、赤い眼鏡に白衣のミトナが担当する。

「歩行能力に前方の障害物探知機能か、これくらいなら数秒で複写できるわねー」

 術式のびっしり書かれた紙をざっと見た後、ミトナは右手を術式の書かれた紙にかざし、左手を何も書かれていない紙にかざした。

「――翻訳トランスレーター! ――複写コピー!」

 ミトナが呪文を複数詠唱すると、彼女のかけていた眼鏡が突然発光する。
 どうやらあの眼鏡が彼女専用の魔導器のようだ。

 魔法が発動した瞬間、何も書かれていなかった紙に、見る間にゴーレム起動用の魔法陣が描かれていく。

「できたよー、それじゃ次はジョンくん、フレームの用意をお願いー」

「了解ミトナ! どれがいいかな、よし、これに決めた!」

 ジョン先輩は、部室の隅にある棚をガサゴソと漁り、ミニチュアサイズの人型の骨組みを一つ取り出して机の上に置く。

 ゴーレムのコアと駆動の為の骨組みが一体となったゴーレムフレーム。
 そのコアに先ほど変換した魔法陣を、アルベール部長の錬成で組み込むことによって、ゴーレムは一応の完成を見せる。

「さあ、ここからが本番だ」

 アルベール部長は、そう言って手のひらに神経を集中させ、錬成魔法を使用する。



 ――数十分後、ゴーレムコアには、ミスリルで描かれた精密な魔法陣回路が刻み込まれていた。

「ぜぇ……ぜぇ…… こ、これで、完成だね!」

 錬成魔法で魔力を使い果たしたのか、アルベール部長は立つのもやっとな状態でサムズアップ。

 それもそのはず、一般的に加工の難しい素材を使用する程、錬成時により多くの魔力を消費する。
 ミスリルもそういった加工の難しい金属の一つで、プロの錬成鍛冶師でさえ扱いの難しい金属なのだ。
 それを髪の毛一本ほどの太さの魔法陣回路に加工できるのだから、アルベール部長の錬成の腕は相当なものだ。

「おお、正常に動いてるねー! パチパチ」

 机の上をギコギコ歩くミニゴーレムを眺めながら、ミトナが歓声を上げる。

 だがミニゴーレムは、そのままひたすら前進し続けて机から落下した。

「う、うわああぁー! 僕の渾身のゴーレムフレームがぁ!」

 床に落ちてバラバラになったゴーレムを見たジョン先輩は、頭を抱えて絶叫する。
 どうやらこのゴーレムフレームはジョン先輩の制作したものだったらしい。

「あちゃー、足元感知機能を付け忘れちゃってたねー。どんまいどんまい」

 ゴーレムの残骸を抱いて涙を流すジョン先輩を、ミトナは頭を撫でながら慰めた。

◇◇◇

「それでは気を取り直して、今度はノエルくんの術式作りをアルスくんにサポートしてもらおうかな」

 しばしの休憩で魔力が回復したアルベール部長は、アルスにそう提案した。

「え? 私の・・・・・ですか?」

 少し戸惑ったような様子のノエル。

「うむ、さすがにいきなりアルスくん一人で作れと言っても無理だろうからね。誰かのサポートしながらゴーレム作りのコツを学んでもらおうと思ってね」

「委員長が迷惑で無かったら、俺は手伝っても構わないが?」

「う、ううん! 全然迷惑なんかじゃないよ!」

 ぶんぶんと首を振って即答するノエル。

「では決まりだね」

 こうしてアルスとノエルの共同制作が始まった。

◇◇◇

「わ、私のゴーレムの術式、ど、どう? アルスくん?」

「ああ、中々いい具合だ。だが、ここに、この術式これを挿入すれば、もっと感知機能センサーの感度が良くなるぞ?」

「だ、駄目よアルスくん、そんな長い処理モノを挿入したら、無限処理ループが起きてコアが壊れちゃうわ!」

「大丈夫だ、こうやって分岐ifを増やして、順番にフラグ処理していけば――」


 ノエルが組んだ術式に、アルスが改良点を加える形で、二人のゴーレム制作は順調に進んでいた。

 数十分後、遂にノエルのゴーレムが完成に近づく。

「後はこのゴーレムフレームを、このぬいぐるみに入れて完成ね」

 机の上には、背中のジッパーがぱっくりと空き、中の綿が抜かれたオークのぬいぐるみが鎮座していた。

 魔導研究部の一同が見守る中、ノエルはぬいぐるみにフレームを入れて、ジッパーを閉じる。
 最後に彼女がぬいぐるみに魔力を注ぎ込み、ゴーレムコアを可動emeth状態にする。

 次の瞬間、オークのぬいぐるみはまばゆい光を放ち、ゆっくりと立ち上がり――

「オハヨウ……ココ、ドコ?」

 ――しゃべった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...