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11 二人のゴーレム作り
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「それじゃあ、まず、基本的なゴーレムの制作からお見せしよう」
そう言ってアルベール部長は、ミスリル板地金を一枚、木箱から取り出す。
魔導研究部式のゴーレム作成の手順は幾つかの段階に分かれていた。
まず一段階目はゴーレム起動用の術式作成、今回は事前に用意されたものを使う。
二段階目は、術式を変換して魔法陣に書き換える工程。
術式は長ければ長いほどゴーレムの行動パターンを複雑なものにできるが、その分変換後の魔法陣の密度が増し巨大になってしまう。
そのため、複雑な動きや機能を持ったゴーレムは自ずと大型になる傾向がある。
術式から魔法陣への変換は、赤い眼鏡に白衣のミトナが担当する。
「歩行能力に前方の障害物探知機能か、これくらいなら数秒で複写できるわねー」
術式のびっしり書かれた紙をざっと見た後、ミトナは右手を術式の書かれた紙にかざし、左手を何も書かれていない紙にかざした。
「――翻訳! ――複写!」
ミトナが呪文を複数詠唱すると、彼女のかけていた眼鏡が突然発光する。
どうやらあの眼鏡が彼女専用の魔導器のようだ。
魔法が発動した瞬間、何も書かれていなかった紙に、見る間にゴーレム起動用の魔法陣が描かれていく。
「できたよー、それじゃ次はジョンくん、フレームの用意をお願いー」
「了解ミトナ! どれがいいかな、よし、これに決めた!」
ジョン先輩は、部室の隅にある棚をガサゴソと漁り、ミニチュアサイズの人型の骨組みを一つ取り出して机の上に置く。
ゴーレムのコアと駆動の為の骨組みが一体となったゴーレムフレーム。
そのコアに先ほど変換した魔法陣を、アルベール部長の錬成で組み込むことによって、ゴーレムは一応の完成を見せる。
「さあ、ここからが本番だ」
アルベール部長は、そう言って手のひらに神経を集中させ、錬成魔法を使用する。
――数十分後、ゴーレムコアには、ミスリルで描かれた精密な魔法陣回路が刻み込まれていた。
「ぜぇ……ぜぇ…… こ、これで、完成だね!」
錬成魔法で魔力を使い果たしたのか、アルベール部長は立つのもやっとな状態でサムズアップ。
それもそのはず、一般的に加工の難しい素材を使用する程、錬成時により多くの魔力を消費する。
ミスリルもそういった加工の難しい金属の一つで、プロの錬成鍛冶師でさえ扱いの難しい金属なのだ。
それを髪の毛一本ほどの太さの魔法陣回路に加工できるのだから、アルベール部長の錬成の腕は相当なものだ。
「おお、正常に動いてるねー! パチパチ」
机の上をギコギコ歩くミニゴーレムを眺めながら、ミトナが歓声を上げる。
だがミニゴーレムは、そのままひたすら前進し続けて机から落下した。
「う、うわああぁー! 僕の渾身のゴーレムフレームがぁ!」
床に落ちてバラバラになったゴーレムを見たジョン先輩は、頭を抱えて絶叫する。
どうやらこのゴーレムフレームはジョン先輩の制作したものだったらしい。
「あちゃー、足元感知機能を付け忘れちゃってたねー。どんまいどんまい」
ゴーレムの残骸を抱いて涙を流すジョン先輩を、ミトナは頭を撫でながら慰めた。
◇◇◇
「それでは気を取り直して、今度はノエルくんの術式作りをアルスくんにサポートしてもらおうかな」
しばしの休憩で魔力が回復したアルベール部長は、アルスにそう提案した。
「え? 私の・・・・・ですか?」
少し戸惑ったような様子のノエル。
「うむ、さすがにいきなりアルスくん一人で作れと言っても無理だろうからね。誰かのサポートしながらゴーレム作りのコツを学んでもらおうと思ってね」
「委員長が迷惑で無かったら、俺は手伝っても構わないが?」
「う、ううん! 全然迷惑なんかじゃないよ!」
ぶんぶんと首を振って即答するノエル。
「では決まりだね」
こうしてアルスとノエルの共同制作が始まった。
◇◇◇
「わ、私のゴーレムの術式、ど、どう? アルスくん?」
「ああ、中々いい具合だ。だが、ここに、この術式を挿入すれば、もっと感知機能の感度が良くなるぞ?」
「だ、駄目よアルスくん、そんな長い処理を挿入したら、無限処理が起きて核が壊れちゃうわ!」
「大丈夫だ、こうやって分岐を増やして、順番にフラグ処理していけば――」
ノエルが組んだ術式に、アルスが改良点を加える形で、二人のゴーレム制作は順調に進んでいた。
数十分後、遂にノエルのゴーレムが完成に近づく。
「後はこのゴーレムフレームを、このぬいぐるみに入れて完成ね」
机の上には、背中のジッパーがぱっくりと空き、中の綿が抜かれたオークのぬいぐるみが鎮座していた。
魔導研究部の一同が見守る中、ノエルはぬいぐるみにフレームを入れて、ジッパーを閉じる。
最後に彼女がぬいぐるみに魔力を注ぎ込み、ゴーレムコアを可動状態にする。
次の瞬間、オークのぬいぐるみはまばゆい光を放ち、ゆっくりと立ち上がり――
「オハヨウ……ココ、ドコ?」
――しゃべった。
そう言ってアルベール部長は、ミスリル板地金を一枚、木箱から取り出す。
魔導研究部式のゴーレム作成の手順は幾つかの段階に分かれていた。
まず一段階目はゴーレム起動用の術式作成、今回は事前に用意されたものを使う。
二段階目は、術式を変換して魔法陣に書き換える工程。
術式は長ければ長いほどゴーレムの行動パターンを複雑なものにできるが、その分変換後の魔法陣の密度が増し巨大になってしまう。
そのため、複雑な動きや機能を持ったゴーレムは自ずと大型になる傾向がある。
術式から魔法陣への変換は、赤い眼鏡に白衣のミトナが担当する。
「歩行能力に前方の障害物探知機能か、これくらいなら数秒で複写できるわねー」
術式のびっしり書かれた紙をざっと見た後、ミトナは右手を術式の書かれた紙にかざし、左手を何も書かれていない紙にかざした。
「――翻訳! ――複写!」
ミトナが呪文を複数詠唱すると、彼女のかけていた眼鏡が突然発光する。
どうやらあの眼鏡が彼女専用の魔導器のようだ。
魔法が発動した瞬間、何も書かれていなかった紙に、見る間にゴーレム起動用の魔法陣が描かれていく。
「できたよー、それじゃ次はジョンくん、フレームの用意をお願いー」
「了解ミトナ! どれがいいかな、よし、これに決めた!」
ジョン先輩は、部室の隅にある棚をガサゴソと漁り、ミニチュアサイズの人型の骨組みを一つ取り出して机の上に置く。
ゴーレムのコアと駆動の為の骨組みが一体となったゴーレムフレーム。
そのコアに先ほど変換した魔法陣を、アルベール部長の錬成で組み込むことによって、ゴーレムは一応の完成を見せる。
「さあ、ここからが本番だ」
アルベール部長は、そう言って手のひらに神経を集中させ、錬成魔法を使用する。
――数十分後、ゴーレムコアには、ミスリルで描かれた精密な魔法陣回路が刻み込まれていた。
「ぜぇ……ぜぇ…… こ、これで、完成だね!」
錬成魔法で魔力を使い果たしたのか、アルベール部長は立つのもやっとな状態でサムズアップ。
それもそのはず、一般的に加工の難しい素材を使用する程、錬成時により多くの魔力を消費する。
ミスリルもそういった加工の難しい金属の一つで、プロの錬成鍛冶師でさえ扱いの難しい金属なのだ。
それを髪の毛一本ほどの太さの魔法陣回路に加工できるのだから、アルベール部長の錬成の腕は相当なものだ。
「おお、正常に動いてるねー! パチパチ」
机の上をギコギコ歩くミニゴーレムを眺めながら、ミトナが歓声を上げる。
だがミニゴーレムは、そのままひたすら前進し続けて机から落下した。
「う、うわああぁー! 僕の渾身のゴーレムフレームがぁ!」
床に落ちてバラバラになったゴーレムを見たジョン先輩は、頭を抱えて絶叫する。
どうやらこのゴーレムフレームはジョン先輩の制作したものだったらしい。
「あちゃー、足元感知機能を付け忘れちゃってたねー。どんまいどんまい」
ゴーレムの残骸を抱いて涙を流すジョン先輩を、ミトナは頭を撫でながら慰めた。
◇◇◇
「それでは気を取り直して、今度はノエルくんの術式作りをアルスくんにサポートしてもらおうかな」
しばしの休憩で魔力が回復したアルベール部長は、アルスにそう提案した。
「え? 私の・・・・・ですか?」
少し戸惑ったような様子のノエル。
「うむ、さすがにいきなりアルスくん一人で作れと言っても無理だろうからね。誰かのサポートしながらゴーレム作りのコツを学んでもらおうと思ってね」
「委員長が迷惑で無かったら、俺は手伝っても構わないが?」
「う、ううん! 全然迷惑なんかじゃないよ!」
ぶんぶんと首を振って即答するノエル。
「では決まりだね」
こうしてアルスとノエルの共同制作が始まった。
◇◇◇
「わ、私のゴーレムの術式、ど、どう? アルスくん?」
「ああ、中々いい具合だ。だが、ここに、この術式を挿入すれば、もっと感知機能の感度が良くなるぞ?」
「だ、駄目よアルスくん、そんな長い処理を挿入したら、無限処理が起きて核が壊れちゃうわ!」
「大丈夫だ、こうやって分岐を増やして、順番にフラグ処理していけば――」
ノエルが組んだ術式に、アルスが改良点を加える形で、二人のゴーレム制作は順調に進んでいた。
数十分後、遂にノエルのゴーレムが完成に近づく。
「後はこのゴーレムフレームを、このぬいぐるみに入れて完成ね」
机の上には、背中のジッパーがぱっくりと空き、中の綿が抜かれたオークのぬいぐるみが鎮座していた。
魔導研究部の一同が見守る中、ノエルはぬいぐるみにフレームを入れて、ジッパーを閉じる。
最後に彼女がぬいぐるみに魔力を注ぎ込み、ゴーレムコアを可動状態にする。
次の瞬間、オークのぬいぐるみはまばゆい光を放ち、ゆっくりと立ち上がり――
「オハヨウ……ココ、ドコ?」
――しゃべった。
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