最強魔剣士が今更だけど魔法学校に通います

うずら

文字の大きさ
11 / 23

10 体験入部

しおりを挟む
 休み時間、アルスは教員室に呼び出されていた。

部活動ギルド?」

「そうですよ。この学院の生徒は、基本的に何らかの部活に入らないといけない決まりなんです。だからアルスくんも、早く自分に合った部活を決めてくださいね!」

 メリア先生にそう言われ、すこし悩むアルス。

「自分に合った部活か……」

 そもそもこの学院に、どんな部活があるかも知らないアルスだった。


◇◇◇

「委員長、少しいいか? 話があるんだが」

 教室に戻ったアルスは、級友の女子たちと談笑しているノエルに徐に声をかけた。
 友達ノエルとの談笑を邪魔された級友たちは、アルスに対して冷たい視線を投げかけたが、彼は構わずノエルの元へ近づいてきた。

「な、何? アルスくん。君から話しかけてくるなんて珍しいじゃない」

 ノエルは少し驚いたように言葉を返す。

「ああ、実は部活ギルドに関しての事なのだが、何か良い部活が無いかと思ってな」

「そうか、アルスくんはまだ部活に入ってなかったのね。じゃあ放課後、私が案内してあげる」

「いいのか? 時間を取らせてしまうかもしれないが……」

「別に構わないわ、これも委員長としての仕事よ」

「ありがとう、感謝する」

 そう、部活を案内するだけ。あくまでも委員長としての仕事。
 別に、あわよくば自分の入っている部活に勧誘しようとか、同じ部活ならもっと仲良くなり、彼の事をより知ることができるとか、そう言ったことは全然考えていない。そう自分に言い聞かせるノエルだった。

 そんな二人のやり取りを見た級友たちは、ノエルの内心などまるで知らず、めんどくさい奴に絡まれて委員長も大変よね、と同情のまなざしを向けていた。

◇◇◇

「で、ここが悪魔召喚部で、向こうが略唱ノタリックワイア部。あとあそこが魔導書解読部で、あの突き当りは、正式には部活じゃないけど聖遺物レリック同好会。これで文化系は全部かしら」

「なるほど……どれも興味深い部活ばかりだな」

「別にすぐに決めなくてもいいわ。でもあえて言うなら、魔導研究部がお薦めね。実は私も部員なんだけど、結構楽しいわよ?」

 これは勧誘では決してない、あくまでもアルスの自主性に任せて勧めているだけだ。

 ノエルは、鞄からオークの人形を取り出してアルスに見せた。

「その人形は、昨日の美術の時間に作っていたやつか」

「そうよ、今度これを素体にしてゴーレムを作ってみようと思ってるの」

「もしかして、魔導研究部とは、ゴーレムを作る部なのか?」

「別にゴーレムだけを作ってるわけじゃないけどね。他にもいろいろとやってるわ」

「魔導研究部か、それも中々面白そうだな、一度体験入部してみたいが、すでにこんな時間か」

 二人が窓の外を見ると、すでに夕日で空が赤く染まっていた。

「そ、そうね、今日は時間がないわよね。うん」

 ノエルは残念そうにそう言った。

「今日は助かった。ありがとう委員長」

「べ、別にいいのよ。これも委員長の務めだし……あと、あ、あの、昨日はありがとう……助けてくれて」

「クラスメイトを助けるのは当然の事だ。気にするな」

 いつも通り淡々と返事を返すアルス。

「それと、美術の時、アドバイスしてくれたでしょう? それもありがとう……」

「別に大したことじゃない、では、俺は先に帰るぞ。またな」

 そう言ってアルスは、廊下を一人歩いて行った。

 ノエルはその姿を見送りながら、オーク人形をぎゅっと抱き、魔導研究部を選んでくれたらいいなと密かに願っていた。

◇◇◇

 翌日の放課後、魔導研究部の部室に訪れたアルスは、興味深そうに室内のガラスケースに入れられたゴーレムの数々を覗き込んでいた。

 手のひらに乗るサイズの人型や獣型、蜘蛛型など、多種多様なミニゴーレムが非可動meth状態で並び、さながら玩具の展示会の様だった。

「これほど小型のゴーレムを作れるとは、これだけ小さいと魔法陣回路の干渉が起こってもおかしくないはずだ」

「うちの部長が魔法陣の小型化に成功したのよ」

「ほう、その部長にはぜひ会ってみたいものだな、そういえば他の部員の姿が見えないようだが?」

「多分皆いつもの場所に行ってるかもしれないわね。もうすぐこっちに戻ってくる頃だと思うわ」

 アルスとノエルがそんな雑談をしていると、廊下から複数の足音が聞こえ、ほどなくして部室のドアが開かれた。

「おーい、ノエルくん、今帰ったぞー!」

 最初に入ってきたのは大きな木箱を抱えた痩せた男子生徒。
 彼は荷物を床に降ろすと、腰を叩きながら背伸びをする。

「あ、おかえりなさい部長。今日は凄い荷物ですね」

「ああ、何でも戦争が終わって在庫が余りまくってるからって、半額で売ってくれてね。だからついつい買いすぎちゃったよ、ははは」

「ひぃー、ひぃー、や、やっと、ついた……って部長どいてくださいよ、邪魔ですって!」

 そう言って部室に入ってきたのは、イケメン長身のブロンド男子。同じく大きな木箱を抱えていた。

「ちょっとぉ、邪魔! 部長とジョンくん! 邪魔!」

 イケメンの後にさらに続くように入ってきたのは、制服の上に白衣を羽織り、赤い眼鏡をかけた女子生徒。彼女もやはり同じように大きな木箱を抱えていた。

「あ、ジョン先輩にミトナも、おかえりなさい」

「ただいまノエルくん。ってそこの男子は誰なんだ!?」

「ただいまーノエル。ああ、その子がもしかして例の新入部員? よろしくー」

 二人は木箱を床に降ろすと、アルスを見て各々の反応を示した。

「ノエルくんから話は聞いているよ。なんでもうちの部に入部したいって言うじゃないか、歓迎するよ、ようこそ魔導研究ギルドへ! 僕が部長のアルベール・モノストーン、3年だよ」

 痩せ男子ことアルベール部長は、そう言ってアルスに握手を求めてきた。

「いや、まだ入部すると決めたわけじゃないのだが、今日は体験入部だ」

 握手を交わしつつ訂正するアルス。

「な、それは本当かね!? ま、まあいい、体験入部でうちの良さを知ってもらえれば、きっと即魔導研究部に入りたくなるだろう」

「僕はジョン・マクス、3年生だ」

「私はミトナ・ベルノイ、2年生よ」

「ああ、俺はアルス・マグナ、2年生だ。よろしく頼む」

 各々簡単な自己紹介が終わり、アルベール部長が部の説明を始めることとなった。

「魔導研究部というのは、霊子りょうし波動収束回路、つまり魔法陣を用いた魔導器の開発や研究を行う部だね。完成品は学院の購買部に卸したり、他所に売ったりして部費に当てたりもしてるんだ」

「なるほど、それは興味深いな……で? その木箱の中身はなんなんだ?」

「これかい? これはね、ミスリルだよ」

 アルベール部長はそう言って木箱を開けると、中にはぎっしりと灰輝色の板地金インゴットが詰まっていた。

「いくらミスリルが軽量って言っても、これだけあると筋力強化ストレングス・アップを使っても結構持ち運びがきつかったよ。ははは」

「もしかして、ミスリルで魔法陣回路を生成するのか? もっと安価な材料が他にもあるだろう?」

「金や銀じゃ魔力伝導率に限界があるからね。それに回路の最小化に伴う霊子トンネル効果による魔力の誤入力を最小限に抑えるには、現状ではミスリルが最適なのさ」

「なるほど、一理あるな……」

「本当は魔力抵抗値が0の常温超魔導物質オリハルコンが良いんだけどね。さすがに手に入らないよ。ははは」

「そうだな、原料となるオレイカルコス鉱石自体も滅多に産出されない上に、触媒となる賢者の石もとてつもなく希少だからな。しかし最近ではゲマトリア演算による代替触媒の開発も進んでいるというぞ?」

「ほ、本当かねそれは!? は、初耳だぞ!」

 段々と白熱するアルスとアルベール部長の議論。

 それを見ているジョン先輩とミトナは、唖然とした表情だった。

「す、すごい、あの部長とまともに議論しているぞ……」
「あ、あの子、何者なの……」

 ノエルは、そんなアルスがいつもより楽しそうに見え、とても活き活きしているようで、少し安心した。

 そして考える。
 昨日の戦闘で垣間見せた顔と今の顔、どちらが本当の彼なのだろうかと。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

処理中です...