最強魔剣士が今更だけど魔法学校に通います

うずら

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12 ママとパパ

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「オハヨウ……ココ、ドコ?」

 机の上でキョロキョロと辺りを見渡すオーク人形のゴーレムを見て、魔導研究ギルドの一同は皆一様に驚いていた。
 基本術式を組んだノエルでさえも、「え? ナニコレ」といった表情で固まっている。

「す、凄いよノエルくん! ゴーレムに喋る機能を付けてしまうとは、さ、さすが優等生だ!」

「会話パターンを設定するだけでも結構行数を使うのに、よくあの規模の術式で収められたよねー」

「え……わ、私、会話機能の術式なんて組み込んでないんだけど?」

 アルベール部長とミトナが感心する一方、当のノエルはすごく戸惑った表情でそう言った。

「え? と言うことは……」

 みんなの視線が自然とアルスに集まる。

「とりあえず、空き容量で何か好きな術式を追加していいと言われたので、自己メンテナンスと学習機能、それにある程度の自己判断を行う術式を追加してみたのだが……余計だったか?」

「た、確かにそう言ったけど、残り行数は数行しかなかったはずよ?」

略式編纂ノタリコン数秘ゲマトリア変数を駆使して術式を限界まで圧縮したからな、むしろ容量が少し余ったくらいだ」

 そう説明するアルスを、驚嘆を通り越して呆れたような表情で見ている一同であった。

◇◇◇

 オークの人形は、机の上にペタリと座りながら、ミスリル板をはむはむとかじっていた。

「駄目よオーキー、それは食べ物じゃないのよ。かじっちゃダメ」

「ママ、オーキー、ワカッタ」

 ノエルが嗜めるようにそう言うと、オーク人形は彼女の言葉を理解したのか、ミスリル板を置いて見つめ返してきた。
 どうやらノエルの事を生みの親だと理解しているらしく、オーキーは彼女の事を主人マスターではなく母親ママと呼ぶようになった。

 そして、ノエルはオーク人形のゴーレムに、オーキーと名付けた。
 オークだからオーキーという安直なネーミングだったが、オーキーも気に入ってくれたようなので問題ないだろう。

「自己学習するゴーレム……これは画期的な発明だよ、ノエルくんにアルスくん!」

 目を輝かせながら、アルベール部長は興奮している。
 ゴーレムは通常、自動歩行や自動迎撃など、あらかじめ術式に組み込まれた行動以外は決してしない。
 それを目の前のオーキーは、机の上に置いてある機材や素材などに興味を示し、会話の受け答えをしているのだ。

 そんなオーキーが次に興味を示したのはアルスだった。
 オーキーは彼の元へたどたどしい足つきで歩み寄ると、その円らな瞳でじっと見つめて、こう言った。

「パパ!」

 オーキーはアルスの事も、自分の生みの親の一人と即座に理解したのだろう。
 学生服にしがみついてよじ登ろうとしてくる。

「いや、俺はお前の父親ではないぞ」

「パパ! パパ!」

 アルスはそう否定するが、オーキーは構わずに彼の肩までよじ登り腰を掛けた。

「アルスくんがパパってことは――」

 つまり私とアルスくんは、夫婦! ――ノエルの脳裏にそんな言葉が一瞬浮かぶ。
 確かにオーキーは、ノエルとアルスが共同で創ったゴーレムだ。
 つまりオーキーにとっては両親と同じ。
 まだお互いの気持ちも確かめたことが無いのに、いきなり子持ち夫婦だなんて――

 どんどん飛躍する妄想が浮かび、身もだえするノエルだった。



◇◇◇

 数日後。

「入部届を出してきたのね、アルスくん」

 休み時間もそろそろ終わる頃、廊下の向こうから歩いてくるアルスを見かけ、ノエルは声をかけた。

「ああ、何か所か見てみたが、やはりあそこが一番俺に合う気がしたからな」

 アルスは魔導研究部での体験入部を終えた後も、他にも気になる部活ギルドを、数日間かけて見学したりしていた。
 そしてついさっき、彼は教員室にいるメリア先生に入部届を提出して、教室に戻るところだった。

「オカエリ、パパ、ママ!」

 アルスたちが教室に戻ると、ノエルの机の上に座っていたオーキーが、嬉しそうに二人をそう呼んだ。
 それを聞いた級友クラスメイトたちからは、次々と疑問の声が上がる。

「確か、あのゴーレムって委員長の持ち物だろ?」「多分、ママは委員長の事よね?」「じゃあ、パパって誰の事言ってるんだ?」「まさか俺!?」「いやいや、僕の事だろ!」「というか、なんでゴーレムが喋ってるの?」

 まさかオーキーがアルスのことをパパと呼んでいるとは、誰も思っていなかった。

「もうすぐ授業だから、おとなしく鞄の中に入っててね、オーキー」

「ワカッタ、ママ」

 ノエルが促すと、オーキーは自ら鞄を開けて、中に入っていった。

◇◇◇

 放課後、魔導研究部の部室では新入部員の歓迎会が行われていた。

「それでは、アルスくんの入部を祝して、カンパーイ!」

「「「カンパーイ!」」」

 アルベール部長の乾杯の挨拶と共に、部員たちは葡萄ジュースの入ったコップを掲げる。

 因みに席は、アルベール部長が上中央、左側の席にジョン先輩とミトナ、右側の席にアルスとノエルの順で座っている。

 結局アルスは、魔導研究部に入部することを選んだ。
 剣術部や魔法詠唱部などのいくつか他の部活ギルドも回ってみたが、やはり自分の実力を知識という形で発揮できるこの部が、自分にとって最適だと、彼は考えたからだ。

「アルスくんが魔導研究部ここを選んでくれて、ほっとしたわ」

「どういうことだ、委員長?」

「え? だ、だって、アルスくんって、何か常識とずれたところがあるから、私の見てないところでとんでもないことをしでかさないか、い、委員長としてちょっと心配だっただけよ!」

「すまない、何分、今まで俺は日常とは程遠い場所で生きてきたからな……」

 どこか遠くを見ているように語るアルスの姿を見て、ノエルはさすがに常識外れは言い過ぎたかと反省した。

「あと、私の事、委員長、委員長ってずっと呼んでるけど、これからは同じ部の部員なんだから、ちゃんと名前で呼びなさいよ」

 何とかして話題を変えようと、今までずっと思っていたことをノエルは口に出す。

「なぜか委員長の印象が強くて、ついそう呼んでしまっていた。すまなかったな、いいんちょ……ノエル」

「わ、わかればいいのよ」

 そう言ってノエルは、頬を赤く染めた。




「うんうん、青春してるねー!」

「そうだね、若いって良いね」

 ミトナとジョン先輩は、密かに錬成魔法で強制発酵させた葡萄ジュース(酒)を飲みながら、酒の肴に向かいの席の二人の様子を眺めていた。

◇◇◇

 部室に夕日が差し込んできたころ、歓迎会もお開きとなった。

「アルスくん、ちょっといいかな?」

 部室の後片付けも終え、アルスも帰宅の準備をしていると、アルベール部長に声をかけられた。

「どうしたアルベール部長?」

「実はね、君の術式構築力と魔導の知識を見込んで、少し見てもらいたいものがあるんだ」

 夕日に照らされたアルベール部長の顔は、どこか真剣なようにも見えた。
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