最強魔剣士が今更だけど魔法学校に通います

うずら

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13 古の巨神

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 すでに日も落ち始め、学院内の生徒もまばらになった頃、王立魔導ソフィア学院の中庭にある小さな庭園、その中央に聳え立つ巨大な立像の前に、アルベール部長とアルスの姿があった。

 創造神ソフィア・アカモートを模したと言われる立像、それはまるで、この学院を守護するように両手を掲げている。

「アルベール部長が見せたい物とはこの像の事か?」

「いやいや、これは単なる入り口だよ」

 そう言ってアルベール部長は、立像の台座の裏に回ると、台座の表面にある手の形をしたくぼみに自身の手のひらを重ねた。

 すると、台座の表面が溶けるように、地下へと続く階段の入り口が現れる。

「さあ、早く入りなよ、他の生徒に見られると面倒だ」

 そう言って部長は、階段を降りていく。
 アルスもそれに続き中に入ると、背後で入り口が閉じる音が聞こえる。
 入り口は閉じられたというのに、中は昼のように明るい。

「こんな場所に、地下への入り口があるとはな……」

「まあ、この入り口は権限のある人間――教員と生徒会役員、それに一部の文化系ギルドの部長にしか開けない仕掛けが施されているからね。一般の生徒が気づかないのも無理はないさ」

 やがて階段を降りきると、目の前に重々しい雰囲気の金属の扉があった。
 まるで何かを守るように厳重に閉じられた扉だったが、アルベール部長が手を添えただけで、ゆっくりと扉が開き始めた。
 おそらくこれも、先ほどの階段の入り口と同じ仕組みなのだと、アルスは考えた。

 扉が完全に開ききると、その先には自然に出来たような洞窟が続いていた。

「かなり厳重な場所だな、一体ここに何があるんだ?」

 厳重なのは扉だけでは無い。
 アルスは扉をくぐった瞬間に、地下の空気が一変したのを感じた。
 索敵サーチ強制移動ムーブ魔法阻害マジックジャマー継続スリップダメージ――その他諸々の自動迎撃用術式がこの地下全体に施されていることに、彼は即座に気づいた。
 それら術式が発動しないのは、権限者であるアルベール部長が同行しているからだろう。

「ははは、それは見てのお楽しみだね。アルスくん」

 何処か嬉しそうに笑いながら話すアルベール部長。
 洞窟をしばらく歩くと、広い空間に出た。

 およそ学院全体をすっぽり覆うような広大な空間。
 その中央には、巨大な骸骨が眠るように埋まっていた。

「これは……巨人族の骸か?」

 およそ200メートル以上はありそうな巨大な骸骨を見にして、アルスはアルベール部長にそう問いかける。

「いいや、これはれっきとしたゴーレムフレームだよ。僕たちはヤルダバオトと呼んでいる」

 確かによく見ると、一見骸骨のように見えるが、その素材はどことなく人工物を思わせるような質感だったが、どのような物質で出来ているのかは、アルスでさえ見当がつかなかった。

「ヤルダバオト……それは創世神話に出てくる鬼神のことか?」

 アルスはそうアルベール部長に問う。

「うむ、真偽はともかくとして、僕たち王立魔導学院の生徒たちの間ではそう言い伝えられているよ」

 ――かつて世界が始まる前、ソフィア・アカモートという一人の女神がいた。
   女神は自分の姿に似せ、二柱の巨神を創造した。
   光の鬼神ヤルダバオトと、闇の虚神デミウルゴス。
   その二柱の巨神は互いに戦い合い、デミウルゴスはヤルダバオトに倒された。
   デミウルゴスの骸はやがて世界グノーシアを創る礎となり、力を使い果たしたヤルダバオトもまた深い眠りについた――

 以上がアルスの知るグノーシアの創世神話の内容だ。

 これが神話に語られる鬼神そのものかどうかは別として、未知の物質で出来たゴーレムフレームに対し、アルスは少し興味がわいてきた。

 アルベール部長の説明によると、この巨大なゴーレムフレームは、この学校が設立された当初から存在していて、学院の一部の限られた生徒たちの手によって、代々管理と発掘作業が行われ続けていたらしい。
 しかし1000年以上もの間、解析も修復もままならずに、一度も起動させる事すらできなかった。

「なるほど、俺に見せたい物とはこれの事だったのか」

「より正確には、この巨人のコアに刻まれていた魔法陣を見てもらいたくて、君を連れてきたんだけどね」

 巨神の骸の肋骨内部にそのゴーレムコアがあった。

 20メートル位はあるコアの表面には、びっしりと魔法陣が描かれている。

「これは、古代妖精アース・アールヴ族の使う魔法陣にも似ているが、一旦術式に再復元デコードして解析する必要があるな」

「か、解析できるのかい!?」

「努力はしてみよう、ただしこれだけの規模となると一人では難しいかもしれないな……」

「だったら、明日ミトナくんにでも頼んでみよう。魔法陣の翻訳に関してはミトナ君の右に出る者はいないからね!」

 アルベール部長は、まるで子供の様に目を輝かせながらそう言った。

 そしてアルスもまた、未知の遺物レリックの解析という目標を前に、密かに心を躍らせていた。
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