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第二章
21 スコルとハティ
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「嘘だろ……何だあの巨大な魔狼は!?」「あ、あんなの勝てっこないだろ!」「くそ、こんなの危険手当貰わなきゃ割に合わねぇ!」
森の奥から突如現れた二匹の巨大な魔狼に、雇われ冒険者たちは騒然となっていた。
その大きさは、二階建ての建物を優に凌ぐほど。
白銀色の毛が木漏れ日を反射し、その巨体さも相まって神々しくもある。
「い、今あの魔狼……喋りましたわよね?」
「もしかして、知能がある魔獣なの?」
「月喰いの狼……しかも名有り個体か、厄介だな」
馬車の出入り口から身を乗り出しながら、アルスは二匹の巨大な狼を見上げていた。
魔狼の上位種である魔蝕狼。
その強さは獣王にすら匹敵すると言われているほどだ。
しかも名有りの個体となれば、その強さは計り知れない。
「どうするの、アルスくん!?」
「一介の冒険者たちには少し荷が重いな、俺が出る! ――影踏!」
ノエルに対しそう答え、馬車から飛び降りるアルス。
影踏を発動したことにより、アルスの姿と気配が消え、次の瞬間、右の巨狼の背後に現れる。
「――火の精霊よ、飛弾となりて敵を燃やせ、火球!」
アルスはそのまま右掌を突き出して火球の呪文を詠唱、スコルの後頭部に巨大な火の玉が直撃――しなかった。
彼が魔法を放った瞬間、巨狼は突如振り向き大きな口を開き、一噛みで火球を呑み込んでしまった。
火球は喉元を過ぎて胃の中で爆発し、牙の間から黙々と黒煙が立ち昇る。
「くはは! 甘いわ人間の小僧! 音と姿を消したところで、我々の嗅覚を騙せると思ったか!?」
牙をむき出しにして高々と笑いながら、スコルはアルスを挑発する。
火球を呑み込んだというのに、全くダメージを受けていない様子だ。
「なるほど、一筋縄ではいかないようだな!」
対するアルスは、珍しく驚いた様子でそう言った。
その口元は、心なしか笑っているように見えた。
「不意打ちとは卑怯な、跡形も残らず消し飛ばしてくれる! ――闇閃!」
もう一体の巨狼は、憎悪に満ちた殺意をアルスに向け、暗黒魔法の闇閃を発動。
その大きく開いた口の中に紫電を伴った暗黒の波動が生じ、一条の暗黒の光線となってアルスを穿つ。
アルスは咄嗟に双剣を構え防御の姿勢を取るが、その身に暗黒の波動が直撃する。
暗黒の波動はそのまま、アルスごと後ろの樹々をなぎ倒して地平の果てまで伸びていった。
「アルスくん!? 嘘……」
「そんな、あのアルスさまが……」
アルスならもしかしたら、二匹の巨狼を難なく倒してしまうのではないかと、そう思っていたノエルとエリーゼだったが、目の前で起きた光景に目を疑った。
「塵芥にしては少しは魔法に秀でていたようだが、所詮は脆き者――」
「さて、次は貴様らだ。一噛みで終わりにしてやろう――」
スコルとハティが馬車隊に向けて、嘲笑と殺意を向けようとした刹那、巨狼たちは突如異変を感じ背後を振り向く。
彼らが振り向いた先には、地平の果てまでなぎ倒された樹々と抉れた地面を背景に、平然と立っているアルスの姿があった。
彼の立っている位置は、魔法の直撃を受けた地点から少し後方。
つまり二匹の巨狼のすぐ背後だった。
「な……馬鹿な!? これは、どういうことだハティ!」
「あ、あり得ぬ……我が暗黒魔法の一撃を受けて……無傷だと!?」
巨狼たちは、巨大な目を更に大きく見開き、驚愕の表情を見せる。
「今のは流石に効いたぞ……結界が10枚程度消し飛んだ」
外套についた埃をポンポンと払いながら、アルスは少し嬉しそうにそう言った。
彼の身体には傷一つついておらず、身に纏っていた外套や学生服も、ほころび一つ生じていなかった。
あり得ない光景に呆気にとられる二体の巨狼。
闇閃は、暗黒魔法の中でも最上位の攻撃魔法。
本来なら頑強な要塞でさえ、一撃で吹き飛ばすほどの威力の攻撃だ。
それを直撃しながら、目の前の少年は傷一つ負わずに平然としている――実際にはアルスの纏う外套に施された666層ある多重結界が、本来受けるダメージを肩代わりしたのだが、そんなことを巨狼たちは知る由も無かった。
一方でノエルとエリーゼたちは、彼の無事な姿を見て、安堵の表情を浮かべる。
「さて、お前たちになら俺も本気の魔法を撃てそうだな。一発くらいは耐えてくれよ?」
アルスはスコルとハティに向けて、双剣をゆっくりと構えて宣告した。
森の奥から突如現れた二匹の巨大な魔狼に、雇われ冒険者たちは騒然となっていた。
その大きさは、二階建ての建物を優に凌ぐほど。
白銀色の毛が木漏れ日を反射し、その巨体さも相まって神々しくもある。
「い、今あの魔狼……喋りましたわよね?」
「もしかして、知能がある魔獣なの?」
「月喰いの狼……しかも名有り個体か、厄介だな」
馬車の出入り口から身を乗り出しながら、アルスは二匹の巨大な狼を見上げていた。
魔狼の上位種である魔蝕狼。
その強さは獣王にすら匹敵すると言われているほどだ。
しかも名有りの個体となれば、その強さは計り知れない。
「どうするの、アルスくん!?」
「一介の冒険者たちには少し荷が重いな、俺が出る! ――影踏!」
ノエルに対しそう答え、馬車から飛び降りるアルス。
影踏を発動したことにより、アルスの姿と気配が消え、次の瞬間、右の巨狼の背後に現れる。
「――火の精霊よ、飛弾となりて敵を燃やせ、火球!」
アルスはそのまま右掌を突き出して火球の呪文を詠唱、スコルの後頭部に巨大な火の玉が直撃――しなかった。
彼が魔法を放った瞬間、巨狼は突如振り向き大きな口を開き、一噛みで火球を呑み込んでしまった。
火球は喉元を過ぎて胃の中で爆発し、牙の間から黙々と黒煙が立ち昇る。
「くはは! 甘いわ人間の小僧! 音と姿を消したところで、我々の嗅覚を騙せると思ったか!?」
牙をむき出しにして高々と笑いながら、スコルはアルスを挑発する。
火球を呑み込んだというのに、全くダメージを受けていない様子だ。
「なるほど、一筋縄ではいかないようだな!」
対するアルスは、珍しく驚いた様子でそう言った。
その口元は、心なしか笑っているように見えた。
「不意打ちとは卑怯な、跡形も残らず消し飛ばしてくれる! ――闇閃!」
もう一体の巨狼は、憎悪に満ちた殺意をアルスに向け、暗黒魔法の闇閃を発動。
その大きく開いた口の中に紫電を伴った暗黒の波動が生じ、一条の暗黒の光線となってアルスを穿つ。
アルスは咄嗟に双剣を構え防御の姿勢を取るが、その身に暗黒の波動が直撃する。
暗黒の波動はそのまま、アルスごと後ろの樹々をなぎ倒して地平の果てまで伸びていった。
「アルスくん!? 嘘……」
「そんな、あのアルスさまが……」
アルスならもしかしたら、二匹の巨狼を難なく倒してしまうのではないかと、そう思っていたノエルとエリーゼだったが、目の前で起きた光景に目を疑った。
「塵芥にしては少しは魔法に秀でていたようだが、所詮は脆き者――」
「さて、次は貴様らだ。一噛みで終わりにしてやろう――」
スコルとハティが馬車隊に向けて、嘲笑と殺意を向けようとした刹那、巨狼たちは突如異変を感じ背後を振り向く。
彼らが振り向いた先には、地平の果てまでなぎ倒された樹々と抉れた地面を背景に、平然と立っているアルスの姿があった。
彼の立っている位置は、魔法の直撃を受けた地点から少し後方。
つまり二匹の巨狼のすぐ背後だった。
「な……馬鹿な!? これは、どういうことだハティ!」
「あ、あり得ぬ……我が暗黒魔法の一撃を受けて……無傷だと!?」
巨狼たちは、巨大な目を更に大きく見開き、驚愕の表情を見せる。
「今のは流石に効いたぞ……結界が10枚程度消し飛んだ」
外套についた埃をポンポンと払いながら、アルスは少し嬉しそうにそう言った。
彼の身体には傷一つついておらず、身に纏っていた外套や学生服も、ほころび一つ生じていなかった。
あり得ない光景に呆気にとられる二体の巨狼。
闇閃は、暗黒魔法の中でも最上位の攻撃魔法。
本来なら頑強な要塞でさえ、一撃で吹き飛ばすほどの威力の攻撃だ。
それを直撃しながら、目の前の少年は傷一つ負わずに平然としている――実際にはアルスの纏う外套に施された666層ある多重結界が、本来受けるダメージを肩代わりしたのだが、そんなことを巨狼たちは知る由も無かった。
一方でノエルとエリーゼたちは、彼の無事な姿を見て、安堵の表情を浮かべる。
「さて、お前たちになら俺も本気の魔法を撃てそうだな。一発くらいは耐えてくれよ?」
アルスはスコルとハティに向けて、双剣をゆっくりと構えて宣告した。
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