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悪役令嬢の躾けは勉学だけではダメだった件
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私はその日街へ出かけていた。
右にはシャルロット、左にはイザベルがいる。
私に訪れた穏やかな日常を噛み締めている所だ。
先日シャルロットから手紙が届き、お泊まり会のお誘いがあった。
せっかくだからイザベルも誘おうとなり、8月15日からの3日間シャルロットのお家でお世話になる事が決まった。
今日は私の11歳の誕生日だ。
人気のカフェでケーキを食べてお祝いし、皆でお揃いのアクセサリーを買おうと盛り上がり、今に至る。
「その姿見慣れないわね。どうにかならないの?」
イザベルが私を睨みながら言う。
「しょうがないじゃん、アルに言ってよ。」
私は何回目かのイザベルの文句にため息をついた。
「本当にイサキオス様の弟みたいね。私は可愛らしくて良いと思うけど。」
シャルロットは褒めてくれる。
「僕も気に入ってるんだけどね。黒髪に紫の瞳より全然良いや。」
私はクルッと回ってみせた。
イザベルがバカにしたように鼻で笑ったが、気にしてはいけない。彼女の人をバカにする態度は標準装備だ。
「あっ、あそこじゃない?」
シャルロットが指を指した先に、お目当てのカフェがあった。
ログハウス風なそのお店は、若い女の子で溢れていた。
シャルロットとイザベルがお店に入ると、彼女達の美貌に皆が振り返る。
今日のシャルロットの服装は、全体が淡い黄色に、ピンクの小花が散りばめられた可愛らしいワンピースを着ている。赤い髪が生えてとても素敵だ。
イザベルは白いブラウスに水色のスカートを履いている。ブロンドの髪をポニーテールにし、全体的に良いとこのお嬢様感が滲み出ている。
私はと言うと、リサとアンリに遊ばれ、また坊ちゃんスタイルに仕上げられた。
頼むから短パンを履かすのをやめてほしい。
実際はあの銀髪の可愛い男の子は誰?と言う声もあったのだけど、私の耳には届かない。
私は鈍感が標準装備されている。
席に座りメニューを見る。
最初からお目当てが決まっているのだけど、写真で物を確かめたかった。
「これこれ、パンケーキデラックス果物盛り盛り!!」
私は嬉しそうに言う。
当店一押しと書かれていた。
パンケーキ10枚重ねに、生クリームたっぷり、果物たっぷり、それにたっぷりのシロップがかけられる。
「はぁ、悪魔の食べ物ね。」
イザベルがため息をつく。
私は無視して注文した。
店内はクーラーがかかっていて涼しかった。
フロランティル王国は他国より科学が発達しているので、生活のあちらこちらに電化製品があるのだが、日本ほどではない。
クーラーはあるが暖房は無い。冬はまだ暖炉が活躍しているし、電話も普及し始めた所なので、まだまだ手紙のやり取りが多い。
そんな事を考えていると、それはやって来た。
想像より巨大なパンケーキに一同驚く。真ん中では花火がパチパチと燃えていたので、それをロウソクに見立て、2人がハッピバースデーの歌を歌ってくれた。
「ありがとう。」
私が嬉しそうに微笑むと、周りの女の子からため息が漏れた。
可愛らしいわと口々に呟いているが、自分の事だとは思わない。
さて、食べるぞ!!
3人で巨大パンケーキを食べ始めた。
いかにも少食そうなイザベルだが、誰よりも良く食べる。
それで何でそんなに細いの?不思議だ。
みるみる消えていくパンケーキだが、さすがに気持ち悪くなってくる。
最後は押し付け合いだ。
結局じゃんけんにまで発展して、イザベルが最後は食べた。
悪役令嬢はじゃんけんが弱い。
お腹がいっぱいになった私達は、さっさと店を出て歩く事にした。
アクセサリー店までは歩いて10分だ。
「だめ、吐きそう。」
イザベルがボヤく。
「ちょっと、女の子が道端で吐くとか、目も当てられないよ!出るなら言ってよ、トイレどこかで借りるから!」
私は慌てる。
「うるさいわね!誰が吐くもんですか!!」
何?情緒不安定なの?
シャルロットが私の肩をポンポンと叩く。
しばらくするとアクセサリー店に着いた。今回は若者に流行っている、お手頃価格の物があるお店にした。
学園が始まると、またバタバタした生活になる。
皆の誕生日の時に集まれるか分からないので、私がシャルロットの物を、シャルロットがイザベル、イザベルが私の物を買う事になっている。
「何にしようかしら。」
イザベルが復活した。
3人はウロウロと店内を歩き回った。
ネックレス、ブレスレット、指輪、、色々候補が上がったが中々決まらない。
「あんたが男だから決まらないのよ!大体いつもと雰囲気が違い過ぎて、戻った時のあんたに物が似合うか分かりづらいし!」
イザベルが切れた。
〔すぐ怒るなコイツ。そういえば勉強の面では改善したけど、性格はノータッチだったな、、。この性格では、ヒローインとぶつかるんじゃ無いの?〕
私が半眼で彼女を見る。
「何よその顔腹立つわね。」
シャルロットがやって来た。
「2人とも相変わらず仲が良いわね。こっち来てよ、可愛のがあったから。」
シャルロット節穴説が浮上する。
節穴はアルだけで十分だ。
シャルロットが持って来たのは、細い金色のチェーンのシンプルなブレスレットだった。真ん中に小さな星が3つ連なっている。
「この星が私達みたいで良くない?」
シャルロットが笑う。
イザベルも私もとても気に入り、それに決めたのだった。
3人はすぐ付けるのでと言って包装を断り、店に出ると左腕に各々つけてみた。
「良いね。」
私の声に2人が頷いた。
私達は冷たい飲み物を飲みにカフェにまた入った。何せ今日は暑い。
飲み物を飲みながら、私達の会話は自然と恋話になった。
シャルロットがイザベルに切り出したのだ。命知らずだ、、。
「イザベルは将来ヘンリー様とご結婚するのでしょう?普段デートとか出来るものなの?」
イザベルは真っ赤になっていた。
「デ、デ、デート!そ、そうね、当たり前じゃない。」
私達は半目になる。
「何?疑っているの?し、失礼ね。ヘンリー様に呼ばれてお茶会に参加したり、音楽鑑賞に出かけたり、美術館へ行ったりしてますのよ!」
お茶会はデートではないが、後半はデートで間違いないだろう。
「そうなのね。私は好きな人もいないもの。羨ましいわ。」
イザベルの顔が曇る。
「、、羨ましくなどないは。私なんて、私なんて、、」
急に泣き出した。
えっ!?急にどうしたの、それ酒でも入ってたの!?
私とシャルロットは慌てる。
「ヘンリー様がカッコ良すぎて、話しを振って下さっても上手に返せませんの。何を言われても、そうですねとしか、、。こんなに好きですのに、好きとも伝えれずに。私は情けないのです。」
シャルロットはイザベルの背中を撫でる。
「でも、ヘンリーに手作りのクッキーや刺繍を入れたハンカチをプレゼンとしたって言ってたよね?今まで何て言って渡してきてたの?」
イザベルは泣きながら、
「可愛い事など何も言ってないわよ!ただ食べて欲しい、使って欲しいと言って押し付けただけなの。私はダメな女なのよ。うわぁぁぁぁん。」
大号泣だ。私達はオロオロしっぱなしだ。今度は私に絡み始めた。
「あんたは良いわよね。イサキオス様とイチャコライチャコラ。悩みなんて何にもないじゃない。」
「、、、えっ!?何か口調がおっさんになってるよ?大丈夫??しかも僕とイサキオスって問題ありまくりじゃん!」
私は正体がイザベルにバレていたのではと焦る。
「何が問題よ、くだらない。イサキオス何て次男じゃないの。別に世継ぎがいるわけでなし、好きなら男でも女でもどーっちでも良いじゃない。それに、あいつ目を離したら身体鍛えるしかしなくなるわよ!あんたが管理しないと、、他の女にでも捕まってみなさいよ、国が滅びたらどうするの!!」
凄い剣幕、凄い早口で私に牙を剥く。
しかし次の瞬間、彼女は前に倒れて机に頭をぶつける。、、動かない。
その後店員さんに飲み物のシロップに少しお酒が入っていた事を聞かされた。
本当に酒が入っていたのか、、。
しょうがないので、私が背負い外に出ると、側で待機していた護衛の人がやって来て彼女を回収してくれた。
馬車に乗りシャルロットの家へ帰ったのだった。
ヒローインが来るまでに、彼女とヘンリーをどうにかしなければ。
課題は勉学だけでは無かった事に気付くのだった。
右にはシャルロット、左にはイザベルがいる。
私に訪れた穏やかな日常を噛み締めている所だ。
先日シャルロットから手紙が届き、お泊まり会のお誘いがあった。
せっかくだからイザベルも誘おうとなり、8月15日からの3日間シャルロットのお家でお世話になる事が決まった。
今日は私の11歳の誕生日だ。
人気のカフェでケーキを食べてお祝いし、皆でお揃いのアクセサリーを買おうと盛り上がり、今に至る。
「その姿見慣れないわね。どうにかならないの?」
イザベルが私を睨みながら言う。
「しょうがないじゃん、アルに言ってよ。」
私は何回目かのイザベルの文句にため息をついた。
「本当にイサキオス様の弟みたいね。私は可愛らしくて良いと思うけど。」
シャルロットは褒めてくれる。
「僕も気に入ってるんだけどね。黒髪に紫の瞳より全然良いや。」
私はクルッと回ってみせた。
イザベルがバカにしたように鼻で笑ったが、気にしてはいけない。彼女の人をバカにする態度は標準装備だ。
「あっ、あそこじゃない?」
シャルロットが指を指した先に、お目当てのカフェがあった。
ログハウス風なそのお店は、若い女の子で溢れていた。
シャルロットとイザベルがお店に入ると、彼女達の美貌に皆が振り返る。
今日のシャルロットの服装は、全体が淡い黄色に、ピンクの小花が散りばめられた可愛らしいワンピースを着ている。赤い髪が生えてとても素敵だ。
イザベルは白いブラウスに水色のスカートを履いている。ブロンドの髪をポニーテールにし、全体的に良いとこのお嬢様感が滲み出ている。
私はと言うと、リサとアンリに遊ばれ、また坊ちゃんスタイルに仕上げられた。
頼むから短パンを履かすのをやめてほしい。
実際はあの銀髪の可愛い男の子は誰?と言う声もあったのだけど、私の耳には届かない。
私は鈍感が標準装備されている。
席に座りメニューを見る。
最初からお目当てが決まっているのだけど、写真で物を確かめたかった。
「これこれ、パンケーキデラックス果物盛り盛り!!」
私は嬉しそうに言う。
当店一押しと書かれていた。
パンケーキ10枚重ねに、生クリームたっぷり、果物たっぷり、それにたっぷりのシロップがかけられる。
「はぁ、悪魔の食べ物ね。」
イザベルがため息をつく。
私は無視して注文した。
店内はクーラーがかかっていて涼しかった。
フロランティル王国は他国より科学が発達しているので、生活のあちらこちらに電化製品があるのだが、日本ほどではない。
クーラーはあるが暖房は無い。冬はまだ暖炉が活躍しているし、電話も普及し始めた所なので、まだまだ手紙のやり取りが多い。
そんな事を考えていると、それはやって来た。
想像より巨大なパンケーキに一同驚く。真ん中では花火がパチパチと燃えていたので、それをロウソクに見立て、2人がハッピバースデーの歌を歌ってくれた。
「ありがとう。」
私が嬉しそうに微笑むと、周りの女の子からため息が漏れた。
可愛らしいわと口々に呟いているが、自分の事だとは思わない。
さて、食べるぞ!!
3人で巨大パンケーキを食べ始めた。
いかにも少食そうなイザベルだが、誰よりも良く食べる。
それで何でそんなに細いの?不思議だ。
みるみる消えていくパンケーキだが、さすがに気持ち悪くなってくる。
最後は押し付け合いだ。
結局じゃんけんにまで発展して、イザベルが最後は食べた。
悪役令嬢はじゃんけんが弱い。
お腹がいっぱいになった私達は、さっさと店を出て歩く事にした。
アクセサリー店までは歩いて10分だ。
「だめ、吐きそう。」
イザベルがボヤく。
「ちょっと、女の子が道端で吐くとか、目も当てられないよ!出るなら言ってよ、トイレどこかで借りるから!」
私は慌てる。
「うるさいわね!誰が吐くもんですか!!」
何?情緒不安定なの?
シャルロットが私の肩をポンポンと叩く。
しばらくするとアクセサリー店に着いた。今回は若者に流行っている、お手頃価格の物があるお店にした。
学園が始まると、またバタバタした生活になる。
皆の誕生日の時に集まれるか分からないので、私がシャルロットの物を、シャルロットがイザベル、イザベルが私の物を買う事になっている。
「何にしようかしら。」
イザベルが復活した。
3人はウロウロと店内を歩き回った。
ネックレス、ブレスレット、指輪、、色々候補が上がったが中々決まらない。
「あんたが男だから決まらないのよ!大体いつもと雰囲気が違い過ぎて、戻った時のあんたに物が似合うか分かりづらいし!」
イザベルが切れた。
〔すぐ怒るなコイツ。そういえば勉強の面では改善したけど、性格はノータッチだったな、、。この性格では、ヒローインとぶつかるんじゃ無いの?〕
私が半眼で彼女を見る。
「何よその顔腹立つわね。」
シャルロットがやって来た。
「2人とも相変わらず仲が良いわね。こっち来てよ、可愛のがあったから。」
シャルロット節穴説が浮上する。
節穴はアルだけで十分だ。
シャルロットが持って来たのは、細い金色のチェーンのシンプルなブレスレットだった。真ん中に小さな星が3つ連なっている。
「この星が私達みたいで良くない?」
シャルロットが笑う。
イザベルも私もとても気に入り、それに決めたのだった。
3人はすぐ付けるのでと言って包装を断り、店に出ると左腕に各々つけてみた。
「良いね。」
私の声に2人が頷いた。
私達は冷たい飲み物を飲みにカフェにまた入った。何せ今日は暑い。
飲み物を飲みながら、私達の会話は自然と恋話になった。
シャルロットがイザベルに切り出したのだ。命知らずだ、、。
「イザベルは将来ヘンリー様とご結婚するのでしょう?普段デートとか出来るものなの?」
イザベルは真っ赤になっていた。
「デ、デ、デート!そ、そうね、当たり前じゃない。」
私達は半目になる。
「何?疑っているの?し、失礼ね。ヘンリー様に呼ばれてお茶会に参加したり、音楽鑑賞に出かけたり、美術館へ行ったりしてますのよ!」
お茶会はデートではないが、後半はデートで間違いないだろう。
「そうなのね。私は好きな人もいないもの。羨ましいわ。」
イザベルの顔が曇る。
「、、羨ましくなどないは。私なんて、私なんて、、」
急に泣き出した。
えっ!?急にどうしたの、それ酒でも入ってたの!?
私とシャルロットは慌てる。
「ヘンリー様がカッコ良すぎて、話しを振って下さっても上手に返せませんの。何を言われても、そうですねとしか、、。こんなに好きですのに、好きとも伝えれずに。私は情けないのです。」
シャルロットはイザベルの背中を撫でる。
「でも、ヘンリーに手作りのクッキーや刺繍を入れたハンカチをプレゼンとしたって言ってたよね?今まで何て言って渡してきてたの?」
イザベルは泣きながら、
「可愛い事など何も言ってないわよ!ただ食べて欲しい、使って欲しいと言って押し付けただけなの。私はダメな女なのよ。うわぁぁぁぁん。」
大号泣だ。私達はオロオロしっぱなしだ。今度は私に絡み始めた。
「あんたは良いわよね。イサキオス様とイチャコライチャコラ。悩みなんて何にもないじゃない。」
「、、、えっ!?何か口調がおっさんになってるよ?大丈夫??しかも僕とイサキオスって問題ありまくりじゃん!」
私は正体がイザベルにバレていたのではと焦る。
「何が問題よ、くだらない。イサキオス何て次男じゃないの。別に世継ぎがいるわけでなし、好きなら男でも女でもどーっちでも良いじゃない。それに、あいつ目を離したら身体鍛えるしかしなくなるわよ!あんたが管理しないと、、他の女にでも捕まってみなさいよ、国が滅びたらどうするの!!」
凄い剣幕、凄い早口で私に牙を剥く。
しかし次の瞬間、彼女は前に倒れて机に頭をぶつける。、、動かない。
その後店員さんに飲み物のシロップに少しお酒が入っていた事を聞かされた。
本当に酒が入っていたのか、、。
しょうがないので、私が背負い外に出ると、側で待機していた護衛の人がやって来て彼女を回収してくれた。
馬車に乗りシャルロットの家へ帰ったのだった。
ヒローインが来るまでに、彼女とヘンリーをどうにかしなければ。
課題は勉学だけでは無かった事に気付くのだった。
応援ありがとうございます!
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