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本当の始まり
始まり
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パオロ君からジェファーソン様の話しを聞いてから3日後、ジェファーソン様の息子ニコラス様が学園へ編入して来た。
彼はレヴェンシュタインの姓を名乗っておらず、平民のままだった。
彼はヘンリーには全く似ていなかった。
オレンジ色の短い髪に、鋭い切れ長の目、美しい緑色の瞳、身長は180㎝ぐらいで良く焼けている。
ヘンリーの甘いフェイスとは正反対で、猛々しい感じだ。
身体も鍛えており、醸し出すオーラはイサキオス同様戦いを知る者のものだ。
ただ、彼はイサキオスと違い正統派のイケメンではない。
厳つく不良っぽさがある外見が苦手な人も多いかもしれない。
ヘンリーとは表面上仲良くやっているように見えた。
彼にとってこの学園で頼れるのは、ヘンリーぐらいだ。
もしかしたら、彼は殿下などになりたくないのかもしれないな?私はそう感じた。
彼の事を警戒していたわけではないのだが、会話らしい会話もせずに5月を迎えた。
校外学習に向け生徒会の仕事も忙しく、彼やマリアの問題が後回しになっていたある日、問題が起きた。
昼休みに、イザベルとマリアが再び口論になったのだ。
最近マリアは取り巻きを2人連れて行動している。
その2人も口論に加わったので、激論へと発展してしまったのだ。
私とシャルロットは飲み物を買いに教室を出てしまっていた。
戻った時には掴み合いの喧嘩になっていたのだ。
私はその現場を見て呆然とした。
「、、あれだけ言ったのに。」
私はドッチボール大会の時、マリアをビンタしようとしたイザベルを、行動に気をつけろと散々注意した。
今度は一体何が原因なのやら、、
私は走って彼女の元へ行き、髪を掴み合っている彼女達を引き離す。
「ティーナ!!止めないで!!」
興奮して振り回した彼女の拳が私の頬や肩に当たる。
うっ、、良い拳持ってるな、、。
「もう!何があったの!!」
私は叫んだ。
離された2人は鼻息荒く睨み合っている。
「こ、こいつが、、ヘンリー様は自分が貰うから、、お前はニコラス様とくっ付けって、、。」
「あ、あら、、お似合いだと、、そう申し上げただけですわ。」
私はため息を吐いた。
「イザベル、挑発に乗るなって散々言ったよね?」
私はイザベルを睨む。
彼女は居心地悪そうに目をそらした。
「でも、、でもティーナ、この女は、、いえ、この人は、王城で私の悪口を言いふらしていたのよ、、。」
イザベルはマリアを睨み付けた。
どうやら口論の原因はもっと深い所にあるようだ。
「あら、悪口だなんて人聞きが悪いわ。私は本当の事を言っただけです。あなたがヘンリー様に媚を売っていたので学業が疎かになっていたと。」
マリアが鼻で笑う。
イザベルが真っ赤になってまた怒り始めた。
「それだけじゃないわ!!有る事無い事言いふらして回っていたと聞いたのよ!!」
その時、背後から冷たい冷気を感じた。
私はイザベルを羽交い締めにしているので、顔だけそちらに向ける。
「ヒィッ。」
私は声を漏らした。
そこには冷たい顔で静かにキレるヘンリーが立っていた。
怒りで魔力が漏れ出しているらしい。
マズイと思い、イザベルに今すぐやめろと言おうとしたが時すでに遅かった。
ヘンリーが先にキレた。
「いい加減にしろ!!!」
イザベルとマリアの肩がビクッとなり、2人とも固まった。
しかし、ヘンリーがキレたのはイザベルにだけだった。
「イザベル嬢、あなたは私の婚約者なのだろう?この様な事であなたはこれからも取り乱すつもりなのか!?あなたには将来王族になる覚悟が足りない!!恥を知れ!!」
イザベルの顔色が悪くなり、肩が震えていた。
「あっ、あっ、、ヘンリー様、、。」
震える声で彼を呼んだが、彼は彼女の顔も見ずに部屋を出て行ってしまった。
イザベルは泣きながらその場に崩れ落ちる。
マリアの笑い声が聞こえた。
「ウフフフッ、嫌われてしまったようね。良い気味だわ。」
取り巻き達も同じように笑いながら去って行った。
私は心配し、イザベルの顔を覗き込んだが、彼女の瞳は何も写していないようだった。
呼吸も浅く、今にも倒れそうだ。
「、、イザベル。」
私は彼女を止めきれなかった事を悔やんだ。
そして彼女を抱き上げた。
彼女は相変わらず小さくて軽い。
「授業には出られないでしょ?保健室へ行こう?」
私が優しく囁くと、彼女は頷いた。
泣きながら私の肩に顔を擦り付けてくる。
シャルロットが付いて来ようとしたが、目でそれを制した。
プライドの高い彼女の事だ、今は1人になりたいだろう。保健室へ連れて行ったら、私も離れて見守るつもりだった。
彼女は保健室へ行く間、ずっと泣いていた。
小さな彼女の小さな泣き声が、私の耳にこびりつく。
悲しい思いをさせたくないと思っていたのに、、。
しばらくすると、揺られていたせいか、緊張の糸が切れたせいか、彼女は寝息を立て始めた。
今だけは良い夢を、、そう願わずにはいられない、、。
保健室へ着くと、先生はいなかった。
勝手に部屋に入り彼女をベッドに寝かせた。
しばらく側でいたが、結界を張って廊下へ出る。
起きた時に少し1人で冷静になる時間があった方が良いだろう。
行儀が悪いと思いながら廊下に座り込んでいると、誰かの足音がして来る。
先生が帰って来たのかと思いそちらを見ると、足音の正体はニコラス様だった。
私は慌てて立ち上がり身構えた。
「あぁ、すまない。部外者の俺が来るのはどうかと思ったのだが、、。」
彼は頭をかきながら歯切れ悪く話す。
私は警戒を解かず彼を睨みつける。
ここへ来た彼の真意を必死で考える。
「、、イザベル嬢とヘンリーは上手くいってないのか?」
私の眉間のシワが増える。
彼には関係無い話しだ。
「答える義務がありますか?」
素っ気なく返した。
「あぁ、、そうだな。分かっている。俺には関係無い話しだ。周りが俺を殿下にと動き回っているのは知っているが、俺自身は権力には興味が無いんだ。」
私は返事をせず、彼を見つめる。
一体何が言いたいのだ、、。
「あぁ、、何が言いたいか分からなくなってきたな。すまない忘れてくれ。彼女の事が気になった、、それだけだ。」
ニコラス様は気まづそうに笑い、来た道を引き返して行った。
私は彼の真意を掴めずにいた。
彼女の事が気になった、、その意味は一体。
ただ嫌な予感がする。
それだけは確かだった。
彼はレヴェンシュタインの姓を名乗っておらず、平民のままだった。
彼はヘンリーには全く似ていなかった。
オレンジ色の短い髪に、鋭い切れ長の目、美しい緑色の瞳、身長は180㎝ぐらいで良く焼けている。
ヘンリーの甘いフェイスとは正反対で、猛々しい感じだ。
身体も鍛えており、醸し出すオーラはイサキオス同様戦いを知る者のものだ。
ただ、彼はイサキオスと違い正統派のイケメンではない。
厳つく不良っぽさがある外見が苦手な人も多いかもしれない。
ヘンリーとは表面上仲良くやっているように見えた。
彼にとってこの学園で頼れるのは、ヘンリーぐらいだ。
もしかしたら、彼は殿下などになりたくないのかもしれないな?私はそう感じた。
彼の事を警戒していたわけではないのだが、会話らしい会話もせずに5月を迎えた。
校外学習に向け生徒会の仕事も忙しく、彼やマリアの問題が後回しになっていたある日、問題が起きた。
昼休みに、イザベルとマリアが再び口論になったのだ。
最近マリアは取り巻きを2人連れて行動している。
その2人も口論に加わったので、激論へと発展してしまったのだ。
私とシャルロットは飲み物を買いに教室を出てしまっていた。
戻った時には掴み合いの喧嘩になっていたのだ。
私はその現場を見て呆然とした。
「、、あれだけ言ったのに。」
私はドッチボール大会の時、マリアをビンタしようとしたイザベルを、行動に気をつけろと散々注意した。
今度は一体何が原因なのやら、、
私は走って彼女の元へ行き、髪を掴み合っている彼女達を引き離す。
「ティーナ!!止めないで!!」
興奮して振り回した彼女の拳が私の頬や肩に当たる。
うっ、、良い拳持ってるな、、。
「もう!何があったの!!」
私は叫んだ。
離された2人は鼻息荒く睨み合っている。
「こ、こいつが、、ヘンリー様は自分が貰うから、、お前はニコラス様とくっ付けって、、。」
「あ、あら、、お似合いだと、、そう申し上げただけですわ。」
私はため息を吐いた。
「イザベル、挑発に乗るなって散々言ったよね?」
私はイザベルを睨む。
彼女は居心地悪そうに目をそらした。
「でも、、でもティーナ、この女は、、いえ、この人は、王城で私の悪口を言いふらしていたのよ、、。」
イザベルはマリアを睨み付けた。
どうやら口論の原因はもっと深い所にあるようだ。
「あら、悪口だなんて人聞きが悪いわ。私は本当の事を言っただけです。あなたがヘンリー様に媚を売っていたので学業が疎かになっていたと。」
マリアが鼻で笑う。
イザベルが真っ赤になってまた怒り始めた。
「それだけじゃないわ!!有る事無い事言いふらして回っていたと聞いたのよ!!」
その時、背後から冷たい冷気を感じた。
私はイザベルを羽交い締めにしているので、顔だけそちらに向ける。
「ヒィッ。」
私は声を漏らした。
そこには冷たい顔で静かにキレるヘンリーが立っていた。
怒りで魔力が漏れ出しているらしい。
マズイと思い、イザベルに今すぐやめろと言おうとしたが時すでに遅かった。
ヘンリーが先にキレた。
「いい加減にしろ!!!」
イザベルとマリアの肩がビクッとなり、2人とも固まった。
しかし、ヘンリーがキレたのはイザベルにだけだった。
「イザベル嬢、あなたは私の婚約者なのだろう?この様な事であなたはこれからも取り乱すつもりなのか!?あなたには将来王族になる覚悟が足りない!!恥を知れ!!」
イザベルの顔色が悪くなり、肩が震えていた。
「あっ、あっ、、ヘンリー様、、。」
震える声で彼を呼んだが、彼は彼女の顔も見ずに部屋を出て行ってしまった。
イザベルは泣きながらその場に崩れ落ちる。
マリアの笑い声が聞こえた。
「ウフフフッ、嫌われてしまったようね。良い気味だわ。」
取り巻き達も同じように笑いながら去って行った。
私は心配し、イザベルの顔を覗き込んだが、彼女の瞳は何も写していないようだった。
呼吸も浅く、今にも倒れそうだ。
「、、イザベル。」
私は彼女を止めきれなかった事を悔やんだ。
そして彼女を抱き上げた。
彼女は相変わらず小さくて軽い。
「授業には出られないでしょ?保健室へ行こう?」
私が優しく囁くと、彼女は頷いた。
泣きながら私の肩に顔を擦り付けてくる。
シャルロットが付いて来ようとしたが、目でそれを制した。
プライドの高い彼女の事だ、今は1人になりたいだろう。保健室へ連れて行ったら、私も離れて見守るつもりだった。
彼女は保健室へ行く間、ずっと泣いていた。
小さな彼女の小さな泣き声が、私の耳にこびりつく。
悲しい思いをさせたくないと思っていたのに、、。
しばらくすると、揺られていたせいか、緊張の糸が切れたせいか、彼女は寝息を立て始めた。
今だけは良い夢を、、そう願わずにはいられない、、。
保健室へ着くと、先生はいなかった。
勝手に部屋に入り彼女をベッドに寝かせた。
しばらく側でいたが、結界を張って廊下へ出る。
起きた時に少し1人で冷静になる時間があった方が良いだろう。
行儀が悪いと思いながら廊下に座り込んでいると、誰かの足音がして来る。
先生が帰って来たのかと思いそちらを見ると、足音の正体はニコラス様だった。
私は慌てて立ち上がり身構えた。
「あぁ、すまない。部外者の俺が来るのはどうかと思ったのだが、、。」
彼は頭をかきながら歯切れ悪く話す。
私は警戒を解かず彼を睨みつける。
ここへ来た彼の真意を必死で考える。
「、、イザベル嬢とヘンリーは上手くいってないのか?」
私の眉間のシワが増える。
彼には関係無い話しだ。
「答える義務がありますか?」
素っ気なく返した。
「あぁ、、そうだな。分かっている。俺には関係無い話しだ。周りが俺を殿下にと動き回っているのは知っているが、俺自身は権力には興味が無いんだ。」
私は返事をせず、彼を見つめる。
一体何が言いたいのだ、、。
「あぁ、、何が言いたいか分からなくなってきたな。すまない忘れてくれ。彼女の事が気になった、、それだけだ。」
ニコラス様は気まづそうに笑い、来た道を引き返して行った。
私は彼の真意を掴めずにいた。
彼女の事が気になった、、その意味は一体。
ただ嫌な予感がする。
それだけは確かだった。
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