6 / 10
図書館
しおりを挟む
図書館は大学の目と鼻の先にある。
二階建てのかなり大きな規模の図書館なのだが、自宅から遠いために今まで一度も行った事が無かった。
建物に入るとその大きさに改めて驚かされる。
どこを見ても本、本、本、人生でこんなに本を見た事があっただろうか?
「どこから探そうか。」
「時間が勿体無いし、受付の人に聞こう。」
私はそう言うと受付窓口と書いている場所へと向かった。
キツそうな顔付きのおばさんと、優しそうな顔のお姉さんがいたので、お姉さんの方に話し掛けた。
「すみません。過去の新聞を調べたいんですが、どこに行けば見れますか?」
「それならそこにあるパソコンで調べると良いですよ。過去数十年分の新聞内容を取り込んでありますので。」
「ありがとうございます。彩乃、行こう。」
「うん。」
私達はすぐそこにあるパソコンに向かい合うと、市の名前、陸橋、自殺と項目を入れ検索した。
鞄からルーズリーフを取り出し、新聞の内容をメモしていく。
内容を確認するに連れ、マウスをクリックする私の指先が震える。
「彩乃……死んでるの、18歳の女の子ばっかりだ……。」
「………。」
彩乃から返事は無かった。
一真君という人が電話を掛けても繋がらなかったのは、性別が男だったからかもしれない。呪いの信憑性が強くなる。
「紗凪、私トイレに行ってくる。」
彩乃は青白い顔で口元を押さえている。一緒に行こうかと聞いたが、気持ち悪くて吐きそうだから1人で行かせてと言ってフラフラと立ち上がった。
私はそのまま事件を遡って調べていると、あり得ない事が書いてあった。
ちょうど5年前の今日が最初の自殺者が出た日だったのだが、死んだのは市内に住む18歳の女性、雪村花音さんと記されていた。
「雪村花音……花音ちゃんと同じ名前……たまたまだよね?」
誰も答えてくれる訳ではないのだが、私はそう口にせずにはいられなかった。
雪村花音という女性は例の陸橋で飛び降り自殺をしたのだが、それを悲しんだその子のお父さんが、その子が一人暮らしをしていたアパートの風呂場で後追い自殺をしたと書いてあった。
残念ながらアパートの名前までは書かれていなかった。
「まさかね。」
私はあり得ないと首を振った。とりあえず気になる部分を書き写した後、メモを見返した。
「ここから何をどうやって調べたら良いんだろう。」
お祓いへ行くべきなのか、それとも警察に相談すべきなのか、警察に相談すれば鼻で笑われるだろうか?
「彩乃?」
私は彩乃がトイレから帰って来ていないのを思い出した。荷物もそのままに慌ててトイレへと走り出す。
「お客様走らないで下さい!」
お姉さんが注意する声が聞こえて来たが、構ってなどいられない。
全速力でトイレまでやって来ると、トイレの中で叫んだ。
「彩乃!!いるの!?」
トイレのドアは1つだけ閉まっている。中で倒れていれば助けなくてはと思い、横のトイレから中を覗こうと歩みを進めた時、閉まっていた扉が開いた。
中から出て来たのは真っ白い髪のおばあさんだった。
私があまりにも驚いた顔をしていたので、そのおばあさんは不気味そうに私の顔を見た後、逃げるようにトイレから出て行った。
「そんな……彩乃は?」
私は頭が真っ白になった。
そしてフラフラとおぼつかない足で先程のパソコンの前までやって来た。
「………!?」
パソコンの前にあったのは、先程私が置いて行った荷物と、この前彩乃に見せられた小さな紙切れだった。
「何でこれが……。」
私は震える手でその紙を持った。指先でその紙を広げると、汚い文字で番号が書かれていた。
私はそれを鞄に突っ込むとまた走り出した。
「彩乃……!!!」
彩乃はそこにいる。私にはそんな確信があった。
図書館から例の陸橋までは走って15分ぐらいだろうか、間に合うならその後ぶっ倒れても良い、私は必死で足を動かした。
「彩乃、彩乃!!!」
泣いている場合ではない。分かっているのに涙がポロポロと溢れ出る。
パン屋の横を走り抜ける時、外で掃き掃除をしていた店長が私の名前を呼んだが振り返る余裕は無かった。
ただ必死に走り続け大通りまで出る。
陸橋はまだ少し遠く、私は一度足を止め呼吸を整えた。額の汗を腕で拭い、目を凝らすように陸橋を見た。
「彩乃?」
陸橋を登ろうとしている人影が見えた。彩乃は今日白いTシャツにデニムを履いていたのだが、その人影もその様な服装をしているように見える。
私は最後の力を振り絞って全力でまた走り出した。
途中警察官が2人立てっているのが見えた。私はその幸運に感謝した。
「助けて下さい!!」
数十メートル先の警察官に私は叫んだ。驚いた警察官が私の方を向いたので、私は必死で陸橋を指差す。
「友達が!!友達が陸橋に登ってるんです!!!」
これでは何の事か分からないだろうが、連日ニュースで陸橋の事件が取り上げられている。警察官はすぐに理解すると陸橋へ走り出した。
私のスピードでは全く追いつかない速さで2人が行ってしまったが、私もその後に続き必死で走った。
「ハァー、ハァー……彩乃…。」
汗なのか涙なのか分からないが、私の顔はぐちゃぐちゃになっているだろう。
陸橋が大きく見えるようになった時、警察官が彩乃に追い付いたのが見えた。
私は胸を撫で下ろし、それでも必死に走った。
ようやく陸橋の階段まで来た私は上を見上げた。
しかし黒い塊が降って来て私の視界は奪われてしまった。
全身が痛い……ぼんやり目を開くと制服を着た男の人が目の前で倒れている。
黒い塊は先程の警察官だったのかと妙に納得した。
「誰か落ちたぞ!」
「女の子が下敷きになった!!」
「陸橋からも誰か落ちたぞ!」
「救急車!!」
私の耳に大勢の人の声が聞こえてくる。
「彩乃……。」
そう呟いた私の意識はそこから無かった。
二階建てのかなり大きな規模の図書館なのだが、自宅から遠いために今まで一度も行った事が無かった。
建物に入るとその大きさに改めて驚かされる。
どこを見ても本、本、本、人生でこんなに本を見た事があっただろうか?
「どこから探そうか。」
「時間が勿体無いし、受付の人に聞こう。」
私はそう言うと受付窓口と書いている場所へと向かった。
キツそうな顔付きのおばさんと、優しそうな顔のお姉さんがいたので、お姉さんの方に話し掛けた。
「すみません。過去の新聞を調べたいんですが、どこに行けば見れますか?」
「それならそこにあるパソコンで調べると良いですよ。過去数十年分の新聞内容を取り込んでありますので。」
「ありがとうございます。彩乃、行こう。」
「うん。」
私達はすぐそこにあるパソコンに向かい合うと、市の名前、陸橋、自殺と項目を入れ検索した。
鞄からルーズリーフを取り出し、新聞の内容をメモしていく。
内容を確認するに連れ、マウスをクリックする私の指先が震える。
「彩乃……死んでるの、18歳の女の子ばっかりだ……。」
「………。」
彩乃から返事は無かった。
一真君という人が電話を掛けても繋がらなかったのは、性別が男だったからかもしれない。呪いの信憑性が強くなる。
「紗凪、私トイレに行ってくる。」
彩乃は青白い顔で口元を押さえている。一緒に行こうかと聞いたが、気持ち悪くて吐きそうだから1人で行かせてと言ってフラフラと立ち上がった。
私はそのまま事件を遡って調べていると、あり得ない事が書いてあった。
ちょうど5年前の今日が最初の自殺者が出た日だったのだが、死んだのは市内に住む18歳の女性、雪村花音さんと記されていた。
「雪村花音……花音ちゃんと同じ名前……たまたまだよね?」
誰も答えてくれる訳ではないのだが、私はそう口にせずにはいられなかった。
雪村花音という女性は例の陸橋で飛び降り自殺をしたのだが、それを悲しんだその子のお父さんが、その子が一人暮らしをしていたアパートの風呂場で後追い自殺をしたと書いてあった。
残念ながらアパートの名前までは書かれていなかった。
「まさかね。」
私はあり得ないと首を振った。とりあえず気になる部分を書き写した後、メモを見返した。
「ここから何をどうやって調べたら良いんだろう。」
お祓いへ行くべきなのか、それとも警察に相談すべきなのか、警察に相談すれば鼻で笑われるだろうか?
「彩乃?」
私は彩乃がトイレから帰って来ていないのを思い出した。荷物もそのままに慌ててトイレへと走り出す。
「お客様走らないで下さい!」
お姉さんが注意する声が聞こえて来たが、構ってなどいられない。
全速力でトイレまでやって来ると、トイレの中で叫んだ。
「彩乃!!いるの!?」
トイレのドアは1つだけ閉まっている。中で倒れていれば助けなくてはと思い、横のトイレから中を覗こうと歩みを進めた時、閉まっていた扉が開いた。
中から出て来たのは真っ白い髪のおばあさんだった。
私があまりにも驚いた顔をしていたので、そのおばあさんは不気味そうに私の顔を見た後、逃げるようにトイレから出て行った。
「そんな……彩乃は?」
私は頭が真っ白になった。
そしてフラフラとおぼつかない足で先程のパソコンの前までやって来た。
「………!?」
パソコンの前にあったのは、先程私が置いて行った荷物と、この前彩乃に見せられた小さな紙切れだった。
「何でこれが……。」
私は震える手でその紙を持った。指先でその紙を広げると、汚い文字で番号が書かれていた。
私はそれを鞄に突っ込むとまた走り出した。
「彩乃……!!!」
彩乃はそこにいる。私にはそんな確信があった。
図書館から例の陸橋までは走って15分ぐらいだろうか、間に合うならその後ぶっ倒れても良い、私は必死で足を動かした。
「彩乃、彩乃!!!」
泣いている場合ではない。分かっているのに涙がポロポロと溢れ出る。
パン屋の横を走り抜ける時、外で掃き掃除をしていた店長が私の名前を呼んだが振り返る余裕は無かった。
ただ必死に走り続け大通りまで出る。
陸橋はまだ少し遠く、私は一度足を止め呼吸を整えた。額の汗を腕で拭い、目を凝らすように陸橋を見た。
「彩乃?」
陸橋を登ろうとしている人影が見えた。彩乃は今日白いTシャツにデニムを履いていたのだが、その人影もその様な服装をしているように見える。
私は最後の力を振り絞って全力でまた走り出した。
途中警察官が2人立てっているのが見えた。私はその幸運に感謝した。
「助けて下さい!!」
数十メートル先の警察官に私は叫んだ。驚いた警察官が私の方を向いたので、私は必死で陸橋を指差す。
「友達が!!友達が陸橋に登ってるんです!!!」
これでは何の事か分からないだろうが、連日ニュースで陸橋の事件が取り上げられている。警察官はすぐに理解すると陸橋へ走り出した。
私のスピードでは全く追いつかない速さで2人が行ってしまったが、私もその後に続き必死で走った。
「ハァー、ハァー……彩乃…。」
汗なのか涙なのか分からないが、私の顔はぐちゃぐちゃになっているだろう。
陸橋が大きく見えるようになった時、警察官が彩乃に追い付いたのが見えた。
私は胸を撫で下ろし、それでも必死に走った。
ようやく陸橋の階段まで来た私は上を見上げた。
しかし黒い塊が降って来て私の視界は奪われてしまった。
全身が痛い……ぼんやり目を開くと制服を着た男の人が目の前で倒れている。
黒い塊は先程の警察官だったのかと妙に納得した。
「誰か落ちたぞ!」
「女の子が下敷きになった!!」
「陸橋からも誰か落ちたぞ!」
「救急車!!」
私の耳に大勢の人の声が聞こえてくる。
「彩乃……。」
そう呟いた私の意識はそこから無かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる