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第三話 クーデター決行
しおりを挟む十一月二五日午前零時。遂に練りに練られたクーデターは決行された。
制圧部隊を載せたトラックと装甲車両が列を成して月下の首都東京を襲ったのである。
「第一小隊前へー!!」
「第二小隊前へー!!」
号令が響き渡り、都内の各要所に陸軍歩兵隊が流れ込む。
よく訓練された兵士達は速やかに抵抗を排除し、統率された動きで制圧を進めていった。
「全員、俺に続け!」
山根幸樹小隊長は自分の部隊の先頭に立ち、自ら先陣を切って突入した。
ドアを体当たりで押し開け、素早く階段を駆け登る。
彼らは特に、敵地に突入し施設の制圧をするための訓練を受けている部隊であり、今回も切り込み役として先頭に立つことを命じられたのである。
と、騒ぎを聞きつけた警備員が小銃を持って慌てて飛び出してきた。
しかし、小銃の構え方すら成っていない素人。
「な、なんだお前達は!?何処の部隊の者──」
ゴスッ
山根は容赦無く警備員の飛び掛かり、拳を腹に叩き込んだ。
「…すまない、暫く眠っていてくれ」
山根はそう呟き、気を失った警備員をゆっくりと床に寝かせた。
実際抵抗も軍の所属でない警備員や衛兵だけであり、実践経験が少なくあまり訓練もされていない彼らが戦闘のプロである軍人に敵う筈もなかった。
また、海軍の要所は海軍陸戦隊が制圧に向かった。
とは言ってもこちらは軍所属の兵が警備を行っており、根回しを済ませてしまえば抵抗は一切無く、ものの数分で制圧を完了した。
「長官、各目標の制圧が完了したとのことです」
「そうか、早かったな」
「まぁ抵抗力はあって無いようなものですからね。本来ならクーデターの邪魔になる筈の軍がクーデターを起こした訳ですから」
陸海空軍の八割近くが協力したこの超大規模な軍事クーデターは、作戦開始から二時間も経たないうちに終了したのである。
この時実際に発砲されたのは演習用のゴム製模擬弾と催眠弾だけ。
数十名の負傷者は出たものの酷くても骨折程度であり、なんとこのクーデターでの死者は皆無であった。
首都東京には戒厳令が敷かれ、制圧した要所は陸軍各部隊が防備を固めた。
そしてクーデター決行から四時間後。
クーデター首謀者達は声明文を出し、更に記者会見を開いた。
記者会見で発表されたのは以下のことである。
・天皇主権へと国の体制を変更し、天皇は国の最高指導権と軍の統帥権を取得する。
・軍首脳部を一新し、陸海空各軍令部を一箇所に纏めた“大本営”を新たに設置する。
・また、陸海空各軍令部総長には東条秀雄、高野五十鈴、武田扇が就任する。
・新たな内閣総理大臣には伊藤博也いとうひろなりが指名される。(尚これは今回のみの特例であり、本国会以降は再び選挙制に戻る)
その他にも国内政治における様々な法律の改正や立法が発表されたものの、マスコミ達を沸かせたのは次のことであった。
・本日より、我が国の国名を秋津洲共和国から“神聖大日本帝国”に改名する。
長い間忘れ去られていた、この国のかつての名前。
それが今、現世に復活したのである。
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