徳川家康の歴史 『葵の影:徳川家康の生涯』

あかいとまと

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第二章 「駿府の日々」

第二章 「駿府の日々」

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 天文十八年(1549年)、父・広忠が暗殺された。  
 その知らせを聞いたとき、竹千代は十歳だった。  
 彼は、一瞬だけ、涙をこらえた。  
 だが、すぐに顔を上げ、今川家の家臣に向かってこう言った。

「俺は、松平家の跡継ぎだ。  
今川公の御恩に報いるために、一生、忠誠を尽くす」

 今川義元は、その言葉に感心したという。  
 そして、竹千代を駿府に迎え、自らの教育係に任じた。  
 彼は、今川家の一門として、戦の仕組み、政治の駆け引き、漢学や礼儀作法を学んだ。

 駿府の庭園で、義元は竹千代にこう語ったことがある。

「竹千代よ、世の理は、力ではなく、『時』にある。強者も、時を間違えば滅びる。弱者も、時を捉えれば、天下を取れる。お前は、その『時』を読む者になれ」

 その言葉は、竹千代の心に深く刻まれた。  
 彼は、今川家に仕えながらも、常に「三河の地」を見つめていた。  
 岡崎城は、今も松平家の城だが、実質的には今川の支配下にある。  
 彼は、いつか必ず、その城を奪い返すと、心に誓っていた。


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