性春時代

あかいとまと

文字の大きさ
22 / 50
22.

学び舎でのひととき

しおりを挟む
### 学び舎でのひととき

 ある日、カズがトイレに行くと、クラスメートのマサノリがトイレで用を足そうとしていた。

 カズはマサノリに静かに近寄ると、斜め後ろからマサノリのモノを覗き込んだ。

 マサノリはギョッとしたような顔をしたが、それがカズだと分かると、安心したように用を足し始めた。

「マサノリのもデケーな。ハヤトといい勝負だぞ」

 そう言うカズに、マサノリは、

「ハヤトって、同じクラスの?」

 と訊いてきた。

「うん。同じクラスで、オレの幼なじみのハヤト」

「二人は仲いいの?」

「めちゃくちゃ仲いいぞ?」

 そう言うカズに、マサノリは、

「ハヤトって、あまり他の人とは話をしないよね?」

「そうか?」

「うん、そうだよ。俺も殆ど話をした事が無いんだ」

「なら、話をしてみろよ。すっげ~いい奴だぞ」

 用を足し終えたマサノリは、モノをしまいながら、

「でも、何となく話しづらいよね」

 と言った。

 隣で用を足し始めたカズは、

「お前の見たから、オレのも見るか?」

 そう言って、便器から少し離れる。

「へぇ、カズのもけっこうデカイね」

 そう言うマサノリに、カズは、

「ま、ハヤトやお前のに比べたらまだまだだけどな」

 と笑った。

 カズとマサノリは、トイレの中で何とも言えない雰囲気を漂わせながらも、自然と笑みをこぼしていた。
 男子校の日常には、こうした何気ないプライベートな時間が、妙に親密さを生み出している。
 二人は手を洗いながら、しばし沈黙した。

「で、カズ。お前とハヤトって、本当に仲良しさんなんだな。なんか、うらやましいわ」 
 
 マサノリがそう言うと、カズは少し驚いた顔をして、 
 
「え? そうか? まあ、確かにオレらは小さい頃からずっと一緒だったからな。でも、別に特別なことしてるわけじゃねーよ。してるとしたらオナニーくらいかな?」  

「えっ、オナニー!?」

「うん。たまに一緒にしてんだよな」

 羨ましそうな顔で、カズの顔をマジマジと見るマサノリ。
 そして。

「でもさ、ああいう奴って、他人には無関心な感じがするけど、カズには妙に心を開いてるよな。オレ、あいつに話しかけたことあるけど、ほとんど返事もしてくれなかったし」  

「ああ、ハヤトはな、人見知りが激しいんだよ。でも、一度心を開いたら、めちゃくちゃ面倒見がいい奴だぞ。オレも、小学生の時によく守ってもらったし」  

 カズの口調には、どこか誇らしげな響きがあった。
 マサノリは少し考えるように眉をひそめ、  

「そうか⋯⋯でも、ちょっと気になる奴だよな。ああいうのって、どうやって仲良くなるんだ?」  

「んー⋯⋯まあ、まずは話しかけることだろ。ハヤトは、意外と気さくなんだけど、相手がどう思ってるか、ってのを敏感に感じ取る奴だからな。本気で仲良くしたいって気持ちが伝われば、きっと応えてくれるさ」
  
「ふーん⋯⋯でも、話しかけるにも、何を話せばいいかわかんねぇんだよな」
  
「じゃあさ、オレが一緒にいる時に、声かけてみれば?」 
 
「え、マジで? お前がいるなら、ちょっと気が楽かもな」  

 カズは軽く肩をすくめ、 
 
「まあ、いいじゃねーか。オレとハヤトの間には、お前が入っても問題ねーし。三人で遊ぶのも悪くねーだろ」
  
「お、いいじゃねーか。なんか、俄然やる気になってきたわ」  

 二人は笑いながら教室に戻った。
 そこには、すでに授業の準備を整えたハヤトがいた。
 彼は、カズが戻ってくると、ほんのわずかな微笑みを浮かべた。
 それを見たカズは、心の中で「やっぱり、ハヤトはオレのことを特別に思ってくれてるんだな」と感じていた。

 放課後、カズはハヤトに声をかけた。 
 
「よし、今から図書室行くか? マサノリも誘ってさ。三人で勉強でもしてみねーか?」
  
 ハヤトは少し驚いた表情をしたが、すぐにうなずいた。
  
「⋯⋯うん、いいよ。マサノリって、確か、新聞部の奴だよね?」  

「そうそう。意外と頭いいし、三人でやれば、勉強も捗るだろ」  

 図書室に着くと、マサノリもすでに来ていた。
 彼は、ハヤトを見ると少し緊張した様子だったが、カズが、

「さっき話しただろ? オレの幼なじみのハヤトだ」

 と紹介すると、少しずつ表情が柔らかくなっていった。

「あの、ハヤトって、数学得意なんだよね?」 
 
 マサノリがそう聞くと、ハヤトは少し照れながら、
  
「まあ、得意ってほどでもないけど⋯⋯解けると楽しいから、好きかな」
  
「へぇ、俺も数学は好きなんだけど、ちょっと苦手なんだよな。教えてくれる?」 
 
「うん、いいよ。一緒にやろう」  

 その日、三人は図書室で勉強をしながら、少しずつ打ち解けていった。
 カズは、そんな二人の様子を見て、心の中でほくそ笑んでいた。
 彼にとって、ハヤトはかけがえのない存在だったが、そのハヤトを、他の誰かと分かち合えるということが、何よりも嬉しかった。

 そして、その日以来、三人は頻繁に一緒に勉強したり、昼休みに話したりするようになった。
 ハヤトも、以前より笑顔をこぼすことが増え、クラスの中でも少しずつ存在感を示し始めていた。

 カズは、そんな変化をただ温かく見守っていた。
 そして、ある日、彼の胸の奥に、少しの不安が芽生えるのを感じた。
 それは、ハヤトが、マサノリに対して、自分と同じような特別な感情を抱いてしまうのではないか、という不安だった。

 だが、カズはそれを口にはしなかった。
 彼は、ハヤトを信じていた。  
 そして、自分自身の気持ちに正直に、三人で過ごす時間を大切にしていこうと心に誓った。

 学び舎でのひととき――それは、友情、そして恋の芽生えが交錯する、青春の一ページだった。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

『定時後の偶然が多すぎる』

こさ
BL
定時後に残業をするたび、 なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。 仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。 必要以上に踏み込まず、距離を保つ人―― それが、彼の上司だった。 ただの偶然。 そう思っていたはずなのに、 声をかけられる回数が増え、 視線が重なる時間が長くなっていく。 「無理はするな」 それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、 彼自身はまだ知らない。 これは、 気づかないふりをする上司と、 勘違いだと思い込もうとする部下が、 少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。 静かで、逃げ場のない溺愛が、 定時後から始まる。

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

白花の檻(はっかのおり)

AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。 その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。 この出会いは祝福か、或いは呪いか。 受け――リュシアン。 祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。 柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。 攻め――アーヴィス。 リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。 黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。 王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

処理中です...