性春時代

あかいとまと

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最終章 カズの再出発と新たな人生

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### 最終章 カズの再出発と新たな人生  

 カズが行方をくらまして、再び戻って本を出版するまでに9年もの年月が過ぎていた。  

 カズも25歳になり、人生を落ち着かせたいと考えるようになっていた。  

 マンガ家や小説家を引退した訳ではないが、活動は控えていた。  

 カズはもう、他人に寄り付かれ、騙されたり利用されたりするのが、つくづく嫌な思い出になっていたのだ。  

「なあ、ハヤト。オレ、そろそろ落ち着きたいな」  

 久し振りに訪ねたハヤトの部屋で、カズがそう言うと、ハヤトが言った。  

「そういえば、お前がいなくなった事でマサシがものすごく心配してたぞ」  

 久し振りに聞いたその名前に、カズの心は大きく揺らいだ。  

「連絡はしたのか?」  

 そう尋ねるハヤトに、カズは、

「いや⋯⋯全然」

 と、力なく応えた。  

「お前が中退したのでも大騒ぎだったのに、行方をくらますんだもんな。そりゃあ、マサシも心配はするよ」  

 カズの顔を正面から見つめながら話すハヤトに、カズは、

「ゴメン。でもオレ、一人になる時間が必要だったんだ」  

 そう言うと、

「俺にじゃなく、マサシに謝ってやれよ」  

 カズは、ハヤトの言葉に胸を刺されるような思いを感じた。  

 マサシのことを思い出すと、心の奥底に封じ込めていた感情が一気に溢れ出してきた。  

 かつての友情、そして裏切りに近い出来事。  

 カズはその記憶を振り払うように、目を伏せた。  

「マサシには⋯⋯もう会いたくないんだ、オレ」  

 ハヤトは少し驚いた表情を見せたが、すぐに納得したようにうなずいた。  

「そうか。でも、お前が戻ってきたって知ったら、絶対会いに来るぜ。昔から、お前が何をしてても、マサシは気にしすぎなくらい応援してたみたいだからな」  

 カズは、少しの間沈黙した。  

 そして、静かに口を開いた。  

「オレがいなくなったのは、ただ逃げたかったからじゃない。本当は⋯⋯マサシに会いたくなかったんだ」  

 ハヤトは黙ってカズの話を聞いていた。  

「あの時、オレが行方をくらました理由、マサシは知ってるのか?」  

「いや、誰にも言ってなかったからな。お前が急にいなくなって、マサシも必死に探したけど、連絡もつかないし、住所も分からなくて、結局諦めたんだ」  

 カズは、少し苦しそうに眉をひそめた。  

「オレ、あの時、マサシに裏切られたって思ってたんだ。でも、今なら分かる。マサシはオレのことを思ってくれてたんだってことが」  

「どういうことだ?」  

「オレが漫画を描いてた頃、マサシはよく『無理してるんじゃない?』って言って心配してた。でもオレ、売れたい一心で、彼の言葉を邪険にしてた。そして、ある時、彼が他の奴と仲良くしているのを見て嫉妬したんだ⋯⋯。オレはマサシを責めようとした。その時、マサシが『オレが悪かった』って泣いてたのを思い出した。オレはその時、マサシを責めたかったんだ。でも、本当はオレが全部、自分で招いたことだったんだ」  

 ハヤトは静かにうなずいた。  

「だから、オレ、一人でいる必要があった。自分の人生を、自分の手で立て直すまで、誰にも会いたくなかった。でも、今なら⋯⋯もう大丈夫だと思う」  

 カズは、少し笑みを浮かべた。  

「オレ、もう漫画は描かないかもしれない。でも、小説は書き続けたいって思ってる。自分の言葉で、自分の物語を伝えたいんだ」  

 ハヤトは、少し驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔になった。  

「お前が小説家を選ぶか⋯⋯。なんか、似合いそうだな」  

 カズは、はにかんだように目を細めた。  

「でも、まだ誰にも言わないでくれよ。まだ、続けていく自信ないし⋯⋯」  

「分かった。でも、マサシには会ってやれよ。お前が戻ってきたって知ったら、きっと喜ぶ」  

 カズは少し考えた後、静かにうなずいた。  

「⋯⋯分かった。今度、誘ってみてくれないか?」  

 ハヤトは嬉しそうに笑った。  

「ああ、いいぜ。お前らがまた会えるの、楽しみだ」  

 それから数日後、カズはマサシと再会した。  

 場所は、かつて彼らがよく集まった喫茶店。  

 時が経ち、店内の雰囲気も少し変わっていたが、カズにはどこか懐かしい場所だった。  

 マサシは、カズを見た瞬間、涙を流した。  

 それほどまでに、カズのことを心配していたのだ。  

「カズ⋯⋯本当に、どこに行ってたんだよ」  

 カズは、マサシの顔を見て、自分の人生を支えてくれた友人の存在に、心から感謝した。  

「ゴメンな、マサシ。オレ、もう大丈夫だ。これからは、ちゃんと前に進むよ」  

 マサシは、涙を拭いながら笑った。  

「お前が戻ってきてくれただけで、それだけで十分だよ」  

 カズは、少しの間沈黙した。  

 そして、静かに口を開いた。  

「実はな、マサシ。言いにくい事なんだが⋯⋯オレ、お前と初めて出逢った時から、お前のことが好きだったんだ」  

「⋯⋯えっ!?」  

 動揺したようにマサシが言う。  

「お前と出逢った時、ものすごく懐かしいような運命を感じたんだ。それからずっと、お前のことが好きだった」

「実は俺も⋯⋯初めて声をかけられた時からカズの事が気になっていたんだ」  

 カズはその答えを聞いて目を見開いた。  

「なら、オレたち⋯⋯一緒に暮らさないか?」  

 カズのその言葉に、マサシは一瞬考えた後、

「うん、いいよ」

 と笑って答えた。  

「おいおい、お二人さん。俺がいることも忘れるなよ?」  

 そう言って、ハヤトが二人の話を遮る。  

「でも、ハッピーエンドになりそうで安心した。ま、カズはオレと一緒になるのかとも思ったりもしてたけど(笑)」  

 ウインクしながら言うハヤトに、  

「それもあり得たかも(笑)」  

 と、カズが答える。  

 カズは、ようやく心の傷を癒し、新たな人生を歩み始めた。  

 小説家として、そして恋人として、マサシと共に歩む未来を信じて。  

 そして、ハヤトという良き親友の存在も、カズの人生を支えてくれた。  

 カズは、ようやく自分自身を受け入れ、本当の幸せを見つけた。  

――そして、その物語は、これからも続いていく。





☆☆☆END☆☆☆



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