夏の終わり、幼なじみだった君を好きになった

あかいとまと

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序章 夏のはじまり、まだ知らない恋

序章 夏のはじまり、まだ知らない恋

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 夏の匂いがし始めた頃、君はいつもより少しだけ眩しく見えた。  
 部活帰りの夕暮れ、汗で濡れた前髪をかき上げる仕草。  
 ふざけて肩をぶつけてくる無邪気さ。  
 全部が、胸の奥を静かに揺らした。

「なあ、今年の夏もさ、いっぱい遊ぼうぜ」  

 当たり前みたいに笑う君。  
 その笑顔が、どうしてこんなに心に残るのか、まだわからなかった。

 海、花火、夏祭り。  
 どれも毎年のことなのに、今年だけは違って見える。  
 君の横顔を追ってしまう自分に気づくたび、胸がざわついた。

「お前ってさ、最近ぼーっとしてね?」  

「してない」  

「嘘つけ。俺のこと見てただろ」

 冗談めかして笑う君に、言い返せなかった。  
 図星すぎて。

 夕焼けの中、ふたりの影が並んで伸びる。  
 その影が触れそうで触れない距離に、  
 言葉にならない何かが生まれ始めていた。

 夏が始まる。  
 まだ知らない恋が、静かに動き出していた。


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