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悪役令嬢の最高の1日
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信じられない言葉が聞こえて王子を見る。
「モーガス嬢、貴女が好きです」
「ーーっ!」
私を見る目が熱くて少し赤くなった頬がとても嘘をついてる様には見えなくて、急に恥ずかしくなった。
「なっ、何を、フォ、フォレスター様が悲しまれますわ、」
「モーガス嬢、俺が好きなのは貴女だよ」
「~~~っ!!!」
なっ、何なのこの人!私を殺す気なの!!
「ですが!先程言った事がフォレスター様を大切な方だと証明していますわ!」
変な期待をさせないでほしい。
するとリカルド王子は少し言いづらそうに話しだした。
「……モーガス嬢、その、凄く俺を、いや私を好きだと言ってくれただろう?」
「っ!……は、はい」
何が悲しくてこんな事本人に言われなくちゃいけないの……。
「今までモーガス嬢の前では、完璧な王子として振る舞うようにしていたから、その、情けない話なんだけど……」
急にモゴモゴしたから、続けるように急かすと
「嫌われるかも……って、思ったんだ」
…………はあ?
「いや、その、王子でいる時の俺を好きって言ってくれていたから、俺とか言ったり王子らしくない言動をすると、幻滅されてしまうかもしれないと思ってしまって……」
「……何ですかそれ」
私の事舐めてんの!?
「私がどれだけ殿下を好きだったと思っているんですか!?そんな、そんな事位で嫌になるなら最初から学園まで押し掛けたりしませんわ!!俺っていう殿下も格好いいなとか、私もあんな感じで親しく話し掛けて欲しいだなんて思ったのに、それを知りもせずに1人で自己完結しないで下さい!!」
ふいーっ、言いたい事言うって気持ちがいい!
ふと王子を見ると顔を赤くしていて、自分が中々凄い事を言ってしまった事に気付いた。
「あっ、あの!で、ですから、そんな事で私が殿下を嫌う筈がないという事ですわ!!」
おそらく真っ赤だろう顔でそう言いきると、殿下は急に乱暴に頭をガシガシと掻きながら唸り初めて、私は何事かと目を瞬かせた。
「あーもうっ!本当にごめん!!やっぱり俺ヘタレ野郎だ!」
「!?そ、そこまでは言っていませんわ!」
「あっ、いや違うんだ。実はね、昨日モーガス嬢が帰った後フォレスター嬢に会ってね」
「っ!!」
リリアさん……。
「ああっ、待ってそんな顔しないで?ごめん、先にちゃんと誤解を解かなきゃね」
そんなに慌てる程顔に出てたのかな……。
「フォレスター嬢には一切恋愛感情を抱いたことないよ」
「……本当ですか?」
「本当だよ、俺はモーガス嬢が好きだと言っただろう」
「っ~~!」
また好きだと言って貰えて顔が赤くなってしまう。
「そもそも、フォレスター嬢も俺の事は何とも思ってないよ。最低のヘタレ野郎って言われたしね」
王子は苦笑しながら衝撃の言葉を放った。
(!?あ、あの優しいリリアさんがヘタレ野郎って言ったの!?)
「さっきの続きになるんだけど、あの後君を探した後フォレスター嬢に会ってね、落ち込んでいたら散々言われたよ」
「えっ…フォレスター様がですか?」
「うん。まあ、それはそれは凄い剣幕で怒られてね……殿下がそこまでヘタレ野郎だとは思いませんでした!って」
す、凄い。リリアさんって結構言うんだな……。
でもなんで殿下がヘタレ野郎になるの?優しくて、前世を思い出す前の私がどんな事をしても笑顔で接してくれたし、あれだけのストーカー被害にあっても贈り物とかくれたのにな。そもそも政略結婚なのに凄い良くしてくれてたよ。
私だったら絶対耐えられないし本当にめちゃくちゃできた人だと思うんだけど、皆もっとリカルド王子に優しくしてあげて欲しい……。特にリルとか。
「それにね、彼女はモーガス嬢の事が大好きなんだよ?」
「えっ?」
「昨日もね、君がどの部分を聞いたのかは分からないけど、俺ばかり独り占めしてないで私にも譲ってくれって言われてね」
そういえば確かに、私は口調とか雰囲気ばかり気にしてたけど、ずるいとかそんな事言っていたような気がする。
(えっ、どうしよう凄い嬉しい……)
思わずニヤニヤしていると
「……そんなにあからさまに喜ばれると少し妬けるな」
「へ?何か言いましたか?」
「いや、何でもないよ」
?何か聞こえたと思ったんだけど気の所為かな?
「でも、これで分かってもらえたかな?」
「はい、申し訳ありませんでした…」
リリアさんにも悪いな……。勝手に勘違いして勝手に嫉妬して。
そもそも素で話してただけで勝手に決めつけて先走って、私こそ自己完結してた。本当に人の事言えないし申し訳なさすぎる。
「でも、その……殿下は本当に私でよろしいのですか?」
それでもどうしても自信が持てない。
「君じゃなきゃ駄目だよ。モーガス嬢がいいんだ」
「っーー!!で、でもっ、私は年下で子供っぽいですしっ」
「年齢は関係ないだろう?」
「そ、その、髪も地味で真っ黒ですし」
「綺麗で素敵だと思うよ?」
「っ!あっ、あの、その、あの…」
「ん?」
うう、1番のコンプレックスは言いたくないんだけど、でも後から嫌だって言われるのはもっと嫌だし……。
「お、お、お胸の方が、そのっ、小さいと言いますか、」
「っなっ!?ゴホっ!ゴホゴホっ!!」
急に殿下が咳き込みだした。
「!?で、殿下!大丈夫ですか!?」
何?何で急に咳き込んだの?
「っ、ごめん、ちょっと、びっくりしてっ」
「いえ、紅茶飲まれますか?」
そう言って渡すと、リカルド王子は1口飲んでようやく落ち着いたみたいで一息ついた。
「あーっ、その、あのね?俺はモーガス嬢が好きだと言っただろう?」
「っ!はっ、はい!」
「だからね?その、なんて言うか、小さいとか大きいとかは気にしなくてね?モーガス嬢のならどっちでもいいというか、大事なのはモーガス嬢のだって言う事で…」
どうしよう、嬉しいけど恥ずかしさが勝るんだけど。今私顔が真っ赤だよ、茹でダコってやつだよ!!
王子何気に凄いこと言ってない!?
「うわっ、ごめん俺何言ってるんだろう!?ごめん、気持ち悪いよね?」
「いっ、いえ!気持ち悪いだなんて!全然!むしろ嬉しいですわ!!」
って、私も何言ってるの!?
何となく2人の間に気まずい空気が流れる。
「と、とにかく、そんな事は気にしなくていいからね?」
「はっ、はい!!」
まあでも良かった、王子が巨乳大好き!!とかだったらどうしようかと思ったけど……。
そんな事を考えていたら王子に呼ばれた。
「改めて言わせて欲しいんだけど……」
「はい?」
急に改まって何だろう?
「セリア・モーガス嬢、貴女が好きです」
「っ!!」
「こんな俺だけど、一緒に居てくれますか……?」
……そんなの、答えは決まってる。
「勿論ですわ」
まさか、こんなに堂々と言える日が来るなんてーー
「私も、殿下が大好きですもの!」
その瞬間、リカルド王子に思い切り抱きしめられた。まるで離さないと言われているくらいきつく抱きしめられて、私も恐る恐る王子の背中に手を伸ばした。
するとさらにきつく抱きしめられて、何だか恥ずかしかったけれど凄く幸せだった。
どれくらいそうしてただろう、ようやく離れると王子は不意に私の目元を見て
「腫れてしまってるね……」
「えっ?」
「ごめん、俺のせいだよね」
一瞬何の事を言っているのか分からなかったけど、そういえばリルが王子に泣いた事を言ってしまった事を思い出して焦った。
「いっいえ!!これは私が勝手に勘違いしただけですから!!」
というか恥ずかしいからあまり見ないで欲しい。
「少し、触ってもいい……?」
「えっ!?」
「嫌かな?」
「!いっいえ!そんな!めっ、滅相もありません!どーぞ!!」
そんな捨てられた子犬みたいな目で見られたら逆らえる訳ないじゃない!ずるい!
流石に目を開けたままは恥ずかしいから瞑ると本当に少しだけ優しく触れられて、私はその間どうすればいいのか分からなくてソワソワしたし、絶対に顔が赤かったと思う。
「……本当に、ごめん」
指が離れたと思ったらまるで罪でも犯したみたいな感じで謝られた。
「で、殿下?ですから殿下は何も気にする必要はないんですよ?」
「いや、これはちゃんと胸に刻んで二度とこんな事にはならないようにする」
な、なにもそこまで思い詰めなくても……。
「これからは必ず幸せにするからね」
なっ!そんな、プロポーズの言葉みたいなのやめて!すぐ赤くなっちゃうから!!嬉しいけど!!
「ふふっ、モーガス嬢顔が真っ赤だよ」
「っ!!」
な、なんで言うの!言われなくても分かってるよ!!さっきまでの落ち込み具合はどこいったのよ!
「だっ誰のせいですか、誰の!!」
「うん、俺だね」
「~~っ!」
「分かっているなら言わないで下さい!!」
「ごめん、可愛くてつい」
「~~~~っ!!」
な、何!何なのこの甘い雰囲気は!!耐えられないよ!!リカルド王子はにこにこしてるし、楽しそうでいいですね!!
(……でもまあ、幸せだからいっか)
こんな風に話せるなんてついさっきまで考えていなかったんだから。もう2人で会うこともないと思ってた。そう考えると今の甘ったるくてどうしようもなく恥ずかしい雰囲気も悪くはないのかもしれない。
そんな事を考えていると、何だか凄く嬉しくて幸せで……。
「モーガス嬢、急にそんな可愛らしい表情をしてどうしたの?」
「え?」
「ふふ、とっても素敵な笑顔だったから」
「あっ!」
顔に気持ちが出ちゃってたんだ、恥ずかし過ぎる……。
「……その、何だか嬉しくて」
「え?」
「殿下と一緒に居られて、幸せだなと思ったんです」
なんとなく、想いを口にしてみようと思った。
「……俺もだよ。とても幸せだ」
と、驚いた後にそれはそれは極上の笑顔で言われて、私はもうどうにかなってしまうかと思った。
最悪の1日だと思っていたけど、忘れられない最高の1日になったーーー
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