Sakura Generation  ~絶望を希望に変える少女たち~

にわかばでぃ

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プロローグ

憧れの背中を追って

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――かおる――

灰色の空の下、ヘイトの襲撃に怯える日々は変わらない。
それでも、ほんの少しだけ空気が違う気がした。 
今日、ついにIDOLのSecond Generation(G2)選考試験が始まる。

ゼルコヴァ小隊の正規メンバーへの第一歩。
広い訓練場には、同年代の少女たちが揃っていた。
すでに能力を発現した子もいれば、まだ能力が発現するかどうかわからない者もいる。 
私も、自分にその能力があるかどうかわからない少女の一人だ。

オーディションはいくつかのインタビューとオーラ発現訓練を経て行われる。
訓練担当はFirst Generation、いわゆるG1のIDOL達だ。
 参加者たちの前に並ぶG1の先輩たち。
その中でも――圧倒的に目を引く存在がひとり。

エリサ。
最初のIDOLであり、福岡防衛のエース。

 私は、その姿を思わず見つめてしまう。
(やっぱり遠い……)

エリサが静かに歩くだけで、周囲の緊張が高まる。
少女とは思えない威圧感。
けれど、その瞳はどこか優しさを湛えていて――。 

ふいに視線が私と交差した。
心臓が跳ねる。
彼女は一瞬だけ微笑んだ。

「昨日はよく頑張ったね。あなた、まだ力を隠してるんでしょ?」 
「え―! わ、わたし、そんな……」
否定の言葉は震えて途切れた。
自分でも分かっている。
この胸の奥に、何かがある。

私はよく夢を見る。
私のお気に入りのぬいぐるみたちと遊ぶ夢だ。

 カッパの「あるふぃー」
 ワニの「もんげー」
 ネズミの「ぴっかーん」

彼らはいつも私を見守り、励まし、応援してくれる。 
自分は自己肯定感が低いと思っていたが、彼らがいてくれると満たされる気がした。
IDOLの特殊能力は、物理法則を無視したオーラによる力の発現であり、個人の特性に依存するらしい。
もし私に特殊能力が発現したら、
彼らは夢の中で私を「すごいね!」って褒めてくれるだろうか?

そのとき、頭の中に突然「承認欲求」という言葉が電撃のように走った。
そして、目の前にサッカーボールほどの光の卵が現れ、パカリと割れた瞬間、
中からカッパのぬいぐるみのような「あるふぃー」が現れたのだ。

「やっほー薫。やっとぼくたちとお話できるようになったね。ある~。」
「えっ、どういうこと? あなたは夢の中でお話してた あるふぃーなの?」
「そうだよ~。」

呆気に取られる私に、エリサが話しかける。
「どうやら、精霊を召喚するのが薫の特殊能力のようね。
いま、頭の中でひらめいた言葉が特殊能力の開放のキーワードよ」

エリサは冷静に分析を続ける。
「まだ慣れないうちは発現が不安定だけど、訓練すれば自在にコントロールできるようになるはず」 

「ねえ、薫」
あるふぃーが私の肩のあたりでふわふわと浮きながら言った。
「まだぼくも慣れてないから、もうすぐ消えちゃうけど、もんげーも、ぴっかーんも薫とお話したがってたから、彼らのことも想いながら呼び出してあげてね。そんじゃ、またね!ある~」

それだけ言い残すと、あるふぃーは消えた。 
私は震える息を呑んだ。
これが――私の力?

その瞬間、訓練場のアラートが鳴り響いた。
地響きとともに「ヘイト」が訓練場へ侵入してきたのだ。 
教官たちの声が飛ぶ。
「G1のIDOLは迎撃準備! G2候補生を守れ!」

恐怖が押し寄せる。
だが、横でエリサが静かに言った。
「大丈夫。あなたは強い。守られるだけじゃ物足りないでしょ? 私をサポートして」
その一言が、私の足を前へと動かした。
「……はい!」

あるふぃーの残像が周囲を舞い踊る。
胸の奥に渦巻いていた不安が、形を変えていく。 
初めて感じる――勇気だった。 
ヘイトが咆哮をあげて迫る。
私は拳を握る。
叫びだしそうな心を必死に押し止めながら。
「わたし……やってみたい! エリサさんみたいになりたい! だから――! 私も戦う!」
その言葉に、エリサは目を細める。

「そう――それでいい」
憧れの背中は遠い。
けれど、その背中を追うために。

少女は今、初めて戦場に立つ。
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