Sakura Generation  ~絶望を希望に変える少女たち~

にわかばでぃ

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第三章 流れ弾

行き止まり Ⅰ

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――あきら――

 高知市の攻略に先立ち、威力偵察として送り込まれたのは、薫ちゃんと私の二人だけだった。
 たった二人。

 その事実が、街に足を踏み入れた瞬間から、じわじわと不安を膨らませていた。
 深夜の市街地は、これまで私たちが見てきた「廃墟」とはどこか違っていた。
 建物は崩れているのに、完全に死んでいない。
 風の音に混じって、かすかな足音や、衣擦れの気配が聞こえる。

 ――人が、いる。

 報告どおりだった。
 ビルの外壁を伝い、廃墟の影から影へ。
 やがて市街地の中心部、十字に交わる交差点にたどり着いた。
 薫ちゃんは軽やかに跳び、信号機の上へと身を隠す。
 私はその下、半壊した建物の端から通りを見下ろした。

 その光景を見た瞬間、背中を冷たいものが走った。

 人間が歩いている。
 それだけなら異常ではない。
 だが、その間を、四足ヘイトが混じっている。
 互いに距離を保ち、一定の速度で、まるで同じプログラムに従うように進んでいた。

 誰も、周囲を見ていない。
 誰も、感情を持っていない。

 私はヘイトの巡回が切れた一瞬を見計らい、通りへ降りた。
 すぐ近くを歩く女性に声をかける。

 「……大丈夫ですか?」
 返事はない。
 視線も合わない。
 ただ、私の肩をかすめるように通り過ぎていく。

 次の人。
 その次も。
 全員が、私を「存在しないもの」のように扱った。

 そのときだった。
 頭の奥に、舌打ちとともに薫ちゃんの声が響く。

 ――ちっ……やっぱり。
 苛立ちを隠そうともしない声音。

 薫ちゃんは続けた。
 ――ヘイトは人間を作業用に使ってる。脳をいじって、認識を制限してるみたいだ。

 ぞっとした。
 生きているのに、見ていない。
 歩いているのに、意思がない。

 次の瞬間だった。
 それまで無反応だった人間たちが、まるで糸を引かれたように、一斉に動きを止めた。

 そして――

 信号機の上の薫ちゃんを、指さした。
 「……っ!」

 気づいたときには遅かった。
 四足ヘイトが、四方から集まり始める。包囲網が、音もなく閉じていく。

 「薫ちゃん!」
 ――逃げるよ。

 薫ちゃんの合図と同時に、私は特殊能力《衣沙辺留イザベル》を発動。イザベルを召喚した。
 冷たい集中が全身を満たす。

 敵の間を、横跳びのステップで抜ける。
 足音、金属音、背後で空気が裂ける感触。

 上を見ると、薫さんが背面飛びのように宙を舞い、ヘイトの頭上を越えていった。

 交差点を抜け、闇へ。

 心臓の音が、やけに大きく響いていた。
 人がいる街。
 けれど、そこに「人間」はいなかった。
 この街は、行き止まりだ。
 悲惨な現実に二人とも言葉をなくしながら、私たちは合流地点へと走り続けた。


■□■□■□特殊能力解説■□■□■□

明(あきら)

特殊能力:衣沙辺留(イザベル)

衣沙辺留は、明の心の奥深くから現れる存在、イザベルを召喚する能力だ。
イザベルは相棒であり、明自身の無意識が具現化した存在でもある。
召喚されると、戦場の空気は一変する。
理屈も戦術も超えた、反復横跳びのような予測不能な動き。トライデントと連動するその攻撃は、荒々しく、しかしどこか楽しげだ。
特に水上戦闘においては、イザベルとの連携で水上と水中を自在に移動できるため、チームでも最強の戦力となる。
明は深く考えない。思いついたら飛び込む。
その性質が、衣沙辺留と極めて相性がいい。
能力は理性で制御されるほど弱まり、感情を信じるほど強くなる。
イザベルは、明がポジティブである限り裏切らない。
だが迷いが生じれば、力も不安定になる。
唯一無二のワイルドカード――この能力は、戦場に“予定外”を持ち込むために存在している。

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