Sakura Generation  ~絶望を希望に変える少女たち~

にわかばでぃ

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第三章 流れ弾

行き止まり Ⅱ

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――かおる――

 合流地点に辿り着いた瞬間、ようやく肺に酸素が戻った気がした。
 明と二人、街を駆け抜けてきた緊張が、遅れて身体に重くのしかかる。

 だが、休息は許されなかった。
 分析結果は、静かで、そして残酷だった。
 支配された人間たちは、すでに脳内まで改造されている。
 ヘイトによる制御は不可逆。
 意識を取り戻す可能性は、限りなくゼロに近い。

 誰も声を荒げなかった。
 その事実の重さが、全員の喉を塞いでいた。

 だからこそ、方針は一つだった。
 改造された人間とは、極力戦わない。
 エリアボスを破壊し、この異常の根を断つ。

 別働で動いていた志野と凛が、地図データを投影する。
 赤い光点が示した先は、。龍頭岬の先端。
 逃げ場はない。
 帰路も考えない。

 作戦名は「Dead End」
 行き止まりまで突っ込んで、叩き潰す。

 決行は、翌日。
 私は先頭に立った。

 廃墟の街を、影から影へと駆ける。
 足音を殺し、呼吸を抑え、ただ前へ。
 
 ヘイトの巡回。
 改造人間の群れ。

 視界の端に映る「人間だったもの」から、意識的に目を逸らす。
 迷えば、終わりだ。
 止まらない。
 振り返らない。

 背後で、仲間たちの気配が正確に追随しているのがわかる。
 それだけが、私を前に押し出していた。
 やがて、潮の匂いが濃くなった。

 桂浜だ。
 全員、欠けることなく到達した瞬間、沙羅が小さく息を吸う。
 「……展開するね」

 次の瞬間、世界が歪んだ。
 揺れるオレンジの灯り。鉄骨と配管が絡み合う、ありえない工場構造体が出現する。
 ――《工場夜景コンビナート》。

 追撃してきたヘイトたちは、迷路に閉じ込められ、進路を失う。

 私たちは、その隙に本拠地へと突入した。
 中は、ホールだった。
 無数のパイプ椅子が並び、かつて人が集った痕跡だけが残る空間。

 その中央に、それはいた。
 円筒型のヘイト。
 無数の触手を蠢かせ、床に根を張るように鎮座している。

 周囲は曇りガラス。
 その向こうで、改造人間たちが、音もなくガラスを叩いていた。

 逃げたいのか。
 ただの反射か。
 わからない。
 わからないが――許せなかった。

 怒りで、逆に感情が凪いだ。
 表情が消えるのを、自覚する。

 無言でパイプ椅子を蹴り飛ばし、特殊能力を発動

 ――《承認欲求エレメンタル・アプルーバル》――
 ぴっかーんを召喚する。
 光が、私の背後に弾ける。

 同時に、明もイザベルを呼び出した。
 二体の精霊が、私たちの動きをなぞる。

 触手が襲いかかる。
  跳ぶ。
  斬る。
  撃つ。

 ぴっかーんの閃光が触手を焼き、イザベルの軌道が切断面を正確になぞる。
 二人と二体。呼吸が噛み合う。

 「今だ!」
 中心へ。
 力を一点に集中させる。
 円筒の装甲が、悲鳴のような音を立てて裂けた。
 大穴が穿たれ、内部の光が噴き出す。

 ――終わった。

 そう思った、その瞬間だった。

 鈍い金属音。
 円筒の最上段が、切り離される。

 「……っ!」

 分離したそれは、変形し、ドローンとして浮上した。
 プロペラ音を残し、上空へと逃げていく。

 誰も、すぐには動けなかった。
 見上げるしかない。
 明け方の空に溶けていく、敵の本体。

 行き止まりだと思っていた。
 だが、それは――まだ続いている。

 私は拳を握りしめ、空を睨んだ。
 逃げた先に、必ず終点はある。
 そこまで、追うだけだ。

 Dead Endは、まだ先だ。
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