Sakura Generation  ~絶望を希望に変える少女たち~

にわかばでぃ

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第四章 五月雨よ

断絶

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――志野――

 いよいよ姫路の攻略が始まる。
 前線に立った瞬間、私は息をのんだ。

 かつて写真や映像で見た白鷺城――姫路城は、そこにはなかった。
 白壁は黒く煤け、瓦の隙間には金属質の補強材が這い回り、櫓や石垣には不自然な鉄骨がはみ出している。美しさを誇っていたはずの城は、ヘイトの手によって無骨な要塞へと変貌していた。

 今回は二隊に分かれての攻略だ。
 城内に突入する攻撃隊は七名。
 G1から友里亜、七海。G2から薫、紫鈴、凛、華、そして――わたし、志野。

 私が、センターを務める。
 責任の重さが、胸にのしかかる。
 それでも、やるしかない。ここで立ち止まれば、誰かが死ぬ。

 朝の作戦会議は、静かに始まり、そして荒れた。
「今回は慎重に行くべきです」
 紫鈴の声は、疲労を隠した硬さを帯びていた。
「城内構造は複雑です。無理な速攻は——」
「時間をかけるほうが危ないでしょ」
 凛が即座に遮る。「ヘイトは進化してる。準備させる余裕なんてない」

 二人の視線がぶつかる。
 火花が散る音が、聞こえた気がした。
「凛は、いつも前に出すぎる!」
「紫鈴こそ、慎重すぎるのよ!」

 止めるべきだとわかっていた。
 でも、誰もが限界だった。連戦、消耗、仲間の喪失。積み重なった疲労が、感情の制御を奪っていた。

「……どうして」
 紫鈴が、ぽつりと呟いた。
「どうして、私ばっかり、こんなリスクを……」
 そのまま椅子を引き、会議室を出ていく。
 誰も、引き止められなかった。

 仮設宿舎の廊下は、やけに長く感じた。
 私は紫鈴の部屋の前に立ち、ノックをする。

「紫鈴……志野だよ」
 返事はない。
 気配は、確かに中にあるのに。

 私はドアの前にしゃがみ込んだ。
 聞いているかどうかもわからないまま、言葉が口をついて出た。
「……私ね、大阪でBANに遭ったの」

 静かな廊下に、自分の声だけが落ちる。
「家族と九州に避難しようとした。でも、途中ではぐれて……それっきり。今も、会えてない」
 喉が詰まる。でも、止めなかった。
「ゼルコヴァ小隊に保護されて……そこで、思ったの。もう、誰も失いたくないって。だから、みんなを守りたいっ
て……覚悟した」

 一瞬、エリサさんの笑顔が浮かぶ。
 優しくて、強くて、頼れる人だった。

「エリサさんが……戻らなかったとき……」
 声が震えた。「泣いて、泣いて……涙が枯れるまで、泣いた」

 沈黙。

 それでも、私は話し続けた。
「だからね、紫鈴。怖がるのも、慎重になるのも……間違ってない」

 そのとき、カチャリと音がした。

 ドアが、少しだけ開く。
 紫鈴が出てきて、何も言わず、私の隣に座った。

 そして、膝に顔を埋め、声を殺して泣き始めた。
「……喧嘩したかったわけじゃない」
 嗚咽混じりの声。
「ただ……何か、吐き出したかっただけ……」

 私は答えず、紫鈴を抱きしめた。
 細い背中が、小刻みに震えている。

「大丈夫」
 頭をなでながら、静かに言う。
「あとで一緒に仲直りしようね。」

 断絶は避けられた。
 完全に癒えたわけじゃない。でも、つながりは戻った。
 姫路城攻略は、きっと厳しい戦いになる。
 それでも、私は信じている。

 私たちは勝てる。

 ぶつかって、泣いて、それでも手を離さない。
 だって――
 私たちは、最高のチームだから。
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