刃愛

のどか

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コトウ

裏切り者(ユダ)はいるか

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 複数のルートから不穏な動きが報告されていた。クロスも独自の情報網を持っており、スワロウ(リッパーも情報も掴んでいたが、それはクロスの知るところではない)に先駆けて、それ以上の情報を得ていた。
 ギルバート・マドゥが兵隊と物資を動かしていることに間違いはなく、かといって、外との戦闘状態になりそうなところはない。
 それどころか、極秘に『サモナ』コネクションの幹部と接触を持っている。
「ここまでやるかよ」
 クロスは苦々しい口調で吐き捨てた。
 煙草に火をつけ、ゆっくりと煙を吸い込み、吐き出した。
 『マドゥ』の大ボスには実質四人の息子がいる。
 正妻との間に、長男エドワード。次男ギルバート。三男アレクサンダー。
 そして愛人(娼婦)との子供であるクロスだ。クロスは実質上末弟に当たる。
 正妻の三人の息子はやがてコネクションを継ぐものとして教育され、最初からある程度の地位を約束されている。
 長男であるエドワードは三〇になる。
 時期当主にふさわしい重要な地位を任され、傘下のグループをまとめているが、コネクションのボスというよりは、堅実な実業家のようだという。
 妻と二人の息子がいる。
 次男のギルバートは二七才。それに継ぐ地位にいるのだが、何かと好戦的な性格で、コネクションの威を借り、波風を立てたがる傾向がある。
 妻と産まれたばかりの娘がいる。
 三男のアレクサンダーは二五だ。
 何かと派手なことが好きで、娯楽部門に力を入れているという。本人も重鎮達からしてみれば、やや軽薄だと噂が絶えない。
 野蛮なことは嫌いだと公言しているくらいなのだ。
 まだまだ遊び足りないのか、浮名は流しても身を固める気配はない。
 クロスは末弟に当たるが、相続の関係から子供と認められていない。
 それゆえに、コネクション内部での扱いは微妙なものになる。特別な待遇は与えられていないが、並よりはチャンスが与えられる。その程度なら、コネクションの中にはいくらでも同じような立場のものはいるが、誰もクロスほど出世はしていない。
 クロスは機会を逃さず、自力でのし上がってきたのだ。
 二三の若さにして、戦闘集団『サザンクロス』のボスとなった実力を持っているのだ。
 それが同じく武闘派であるギルバートには気にさわるのだろう。
 ギルバートは自分で戦場に立つほうではない。後ろから指示して人を戦わせる方だ。
 それで自ら戦場に立ち、評価されているクロスを妬んだ。あるいは目障りだとでも思ったのか。
 穿った考え方をすれば、正妻の子であるにもかかわらず、ギルバートは後継者になれない。
 兄であるエドワードがいるからだ。
 ボスの息子というだけで実力以上の地位にいるが、それだけでは足りないのだろう。
 大きなことをして、感心をひくか、自分より注目されているものを引き摺り下ろすか。
 その標的にクロスを選んだとも考えられる。
「『マドゥ』を切り売りする気か?」
 自分の部下だけでは心もとない。あるいは、何らかの援助を受ける約束でも取り付けたか。
 なんにしろ、ただではないだろう。
 コトウか──あるいはクロスの管理する土地や会社、その辺りを取引材料にしたのかもしれない。
 だが、クロスが管理しているのは、一つや二つの土地ではない。クロスが消えれば、替わりに管理するものがいる。コネクション内部だけでなく、外部のコネクションもこの餌に食いついてくるだろう。
「分かっているのか?……それは、組織に対する裏切りだ」
 大ボスの身内からの裏切り者。
 それはあってはならないことだった。
 組織への裏切りの制裁は、その家族にまで及ぶ。妻と、大ボスの孫に当たる娘もだ。
 そうしなければ、示しがつかない。
 そうなれば、大ボスの嘆きも大きい。
 ギルバートは自分が組織を裏切っているなどと、気づきもしまい。
 目障りな相手を片付ける代償程度としか認識していない。
 しかしそれはコネクションの不利益になることなのだ。
 なによりも、落ち度のない相手を、勝手な感情で始末しようとすれば、コネクション全体の秩序が乱れる。
 皆が次は自分ではないかと疑心暗鬼に陥り、挙句の果てはありもしない疑惑から、殺しあうことにもなりかねない。
 そんなことはあってはならない。
 ならば、答えはひとつしかない。
「……消すしかねぇな」
 クロスは煙草を灰皿に押し付けた。

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