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コトウ
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『キャーッハハハハハ』
強制起動させたリッパーの携帯端末から、嬌声が流れてきた。
「イッてんな」
呆れたようにスワロウが言った。
クロスも苦々しく言う。
「キレてやがる。あの野朗。捕虜をとろうなんて、欠片も頭にねえ」
「ああ、こいつは全滅させるな。あんたの手をはなれりゃ、たんなる殺人鬼だろ? あいつ」
「……仕方ねえ。情報源は、他を当てにするぜ」
警戒音とともに、別の通信が起動した。
『こちら、W2─バード(哨戒員)。予定に無いトレーラーが二台、こちらに向かってきます。警告を無視しています。タイミングからして、無関係とは思えません。どうぞ』
「おそらく、そっちが本命だ。W2地点の要員はモグラ(地雷の一種。リモコンで爆破できる)を仕掛けてトレーラーを足止めしとけ。Wに配置されたものは全員W2へ向かえ。マリオ、ヴィオ、隊員を連れていけ」
『畏まりました』
『お任せください、ボス』
「お前達の役目は分かるな?」
『弾除けです。わたしの装甲なら、いくらヒルト鉱石でも貫けません』
『メットを被れば、どうということはありません。ボスの敵はぶち殺します』
間髪いれず忠実な声が返ってきた。
マリオネットの装甲擬体ならば、通常の弾丸をはじき返す。ヴィオのサイボーグ化した肉体なら、着弾のショックでさえ、たいしたことはでは無い。
「二人か三人は、生かしとけ。後でリッパーに尋問させる」
『拷問の間違いでは?』
クロスは喉で笑った。
「たいがい、一人解体せば、残りが素直にしゃべるさ」
『了解しました。解体する一人と、情報源ですね』
「察しがいいな。行け」
『ボスの御心のままに』
『お任せください』
応援を行かせたクロスはすぐ別の支持を出した。
「ダグラス、機械屋(管理政府に関係ない技術者、または武器の売買を行うものの俗称。この場合は、専属の武器類の整備を行う技術者)を連れてS1の現場へ行け。遺留品を鑑定させろ」
『……救援……では、ないのですか……』
「もう終わるだろう」
クロスの言葉が終わるか、終わらないかのうちに、強制起動させていたリッパーの端末から連絡が入った。
『ボスゥ、なんだった? こっちはもう、終わったけど』
「ダグラスを向かわせる。敵の持ち物を確保しておけ」
『あい』
「聞こえたな、ダグラス。機械屋にどこの装備か調べさせろ」
『……もう、終わったんですか……わかりました』
ダグラスの声は少し残念そうだった。
「この程度の相手にむきになるな。どうせすぐ次が来る。お前達の出番はそれからだ。どこのコネクションのものか、知っておく必要があるからな」
『……はい……ボス』
暴走するトレーラーは、その上空で旋回する小さな鳥を模した機械に気がつかなかった。それは、サザンクロス特有の、無人哨戒機だ。
母星から出てくるとき持ち出した様々なテクノロジーは管理政府が管理しているが、それもコネクションとの取引で売買されている。各コネクションも研究を重ね、独自の技術を持つに至った。
個人が独自に研究を重ね、新たに作り出したものもある。
クロスは懇意にしている機械屋に資金的援助をし、そのかわりに独自に開発させたものもある。
バードはそのうちのひとつだ。
遠く離れたコントロール室から動かされ、リアルタイムで撮影した映像を送っている。
そのトレーラーの情報はすでにコトウに知れ渡っていた。
W2と仮名の与えられた道では、すでにトレーラーの足止めをするための罠が仕掛けられていた。
お約束通り下ろされたバー、その向こうで静止を呼びかける警備員。当然トレーラーはそれを無視して、バーを車体でぶち破って突進する。
しかし、そのまさに内部に突入したとたん、地面が爆発して、タイヤを吹き飛ばされた。
一台目が盛大にスピンし、二台目がそれを避けるため止まった。一台目が横転し、運転席やコンテナの中から人が這い出してきた。
物陰から何人ものサザンクロスの構成員が飛び足してきた。二人の巨漢──マリオネットとヴィオが先頭をきる。
正体不明の敵は、銃撃を浴びせるが、装甲に守られたマリオネットはかまわず進む。ヴィオは着弾のショックで体を震わせるものの、かまわず進む。
二人とも韋駄天を使っているわけではない。マリオネットは装甲擬体に、ヴィオはそのサイボーク体自体に、韋駄天に匹敵する推進機能を組み込まれている。通常のリミッターをかけた韋駄天程度の速度は出るし、安定性は韋駄天の比ではない。
仲間の弾除けになるよう、派手に暴れるのが二人の役割だ。
ヴィオが横転したトレーラーに、マリオネットがもうひとつのトレーラーに迫った。
敵の銃撃は当たるものの、ダメージは無いに等しい。
ヴィオの拳にはヒルト鉱石で造ったグローブがはめられている。ヴィオの拳自体が武器で、人の頭くらいは破砕する。
巨体に似合わぬ俊敏さで、ヴィオは敵に殴りこんだ。
マリオネットが迫ったトレーラーは無傷だったため、ヴィオの向かった方より抵抗が激しかったが、マリオネットは、銃弾ごときは跳ね返す装甲に覆われている。
必死に銃弾を浴びせる敵の中で、轟音が起きた。
銃が暴発したのだ。
敵の弾幕が崩れ、マリオネットは内部に入り込み、ヒルト鉱石で造られた端子を相手に押し付け、電撃を喰らわせた。
マリオネットの武器は、装甲擬体に内蔵された電撃兵器なのだ。電圧を調整することで、殺すことも捕らえることも容易だ。
二人に銃撃が集中している隙に、他の構成員も韋駄天をとばし、敵に殺到した。
勝敗は、誰の眼にも明らかだった。
強制起動させたリッパーの携帯端末から、嬌声が流れてきた。
「イッてんな」
呆れたようにスワロウが言った。
クロスも苦々しく言う。
「キレてやがる。あの野朗。捕虜をとろうなんて、欠片も頭にねえ」
「ああ、こいつは全滅させるな。あんたの手をはなれりゃ、たんなる殺人鬼だろ? あいつ」
「……仕方ねえ。情報源は、他を当てにするぜ」
警戒音とともに、別の通信が起動した。
『こちら、W2─バード(哨戒員)。予定に無いトレーラーが二台、こちらに向かってきます。警告を無視しています。タイミングからして、無関係とは思えません。どうぞ』
「おそらく、そっちが本命だ。W2地点の要員はモグラ(地雷の一種。リモコンで爆破できる)を仕掛けてトレーラーを足止めしとけ。Wに配置されたものは全員W2へ向かえ。マリオ、ヴィオ、隊員を連れていけ」
『畏まりました』
『お任せください、ボス』
「お前達の役目は分かるな?」
『弾除けです。わたしの装甲なら、いくらヒルト鉱石でも貫けません』
『メットを被れば、どうということはありません。ボスの敵はぶち殺します』
間髪いれず忠実な声が返ってきた。
マリオネットの装甲擬体ならば、通常の弾丸をはじき返す。ヴィオのサイボーグ化した肉体なら、着弾のショックでさえ、たいしたことはでは無い。
「二人か三人は、生かしとけ。後でリッパーに尋問させる」
『拷問の間違いでは?』
クロスは喉で笑った。
「たいがい、一人解体せば、残りが素直にしゃべるさ」
『了解しました。解体する一人と、情報源ですね』
「察しがいいな。行け」
『ボスの御心のままに』
『お任せください』
応援を行かせたクロスはすぐ別の支持を出した。
「ダグラス、機械屋(管理政府に関係ない技術者、または武器の売買を行うものの俗称。この場合は、専属の武器類の整備を行う技術者)を連れてS1の現場へ行け。遺留品を鑑定させろ」
『……救援……では、ないのですか……』
「もう終わるだろう」
クロスの言葉が終わるか、終わらないかのうちに、強制起動させていたリッパーの端末から連絡が入った。
『ボスゥ、なんだった? こっちはもう、終わったけど』
「ダグラスを向かわせる。敵の持ち物を確保しておけ」
『あい』
「聞こえたな、ダグラス。機械屋にどこの装備か調べさせろ」
『……もう、終わったんですか……わかりました』
ダグラスの声は少し残念そうだった。
「この程度の相手にむきになるな。どうせすぐ次が来る。お前達の出番はそれからだ。どこのコネクションのものか、知っておく必要があるからな」
『……はい……ボス』
暴走するトレーラーは、その上空で旋回する小さな鳥を模した機械に気がつかなかった。それは、サザンクロス特有の、無人哨戒機だ。
母星から出てくるとき持ち出した様々なテクノロジーは管理政府が管理しているが、それもコネクションとの取引で売買されている。各コネクションも研究を重ね、独自の技術を持つに至った。
個人が独自に研究を重ね、新たに作り出したものもある。
クロスは懇意にしている機械屋に資金的援助をし、そのかわりに独自に開発させたものもある。
バードはそのうちのひとつだ。
遠く離れたコントロール室から動かされ、リアルタイムで撮影した映像を送っている。
そのトレーラーの情報はすでにコトウに知れ渡っていた。
W2と仮名の与えられた道では、すでにトレーラーの足止めをするための罠が仕掛けられていた。
お約束通り下ろされたバー、その向こうで静止を呼びかける警備員。当然トレーラーはそれを無視して、バーを車体でぶち破って突進する。
しかし、そのまさに内部に突入したとたん、地面が爆発して、タイヤを吹き飛ばされた。
一台目が盛大にスピンし、二台目がそれを避けるため止まった。一台目が横転し、運転席やコンテナの中から人が這い出してきた。
物陰から何人ものサザンクロスの構成員が飛び足してきた。二人の巨漢──マリオネットとヴィオが先頭をきる。
正体不明の敵は、銃撃を浴びせるが、装甲に守られたマリオネットはかまわず進む。ヴィオは着弾のショックで体を震わせるものの、かまわず進む。
二人とも韋駄天を使っているわけではない。マリオネットは装甲擬体に、ヴィオはそのサイボーク体自体に、韋駄天に匹敵する推進機能を組み込まれている。通常のリミッターをかけた韋駄天程度の速度は出るし、安定性は韋駄天の比ではない。
仲間の弾除けになるよう、派手に暴れるのが二人の役割だ。
ヴィオが横転したトレーラーに、マリオネットがもうひとつのトレーラーに迫った。
敵の銃撃は当たるものの、ダメージは無いに等しい。
ヴィオの拳にはヒルト鉱石で造ったグローブがはめられている。ヴィオの拳自体が武器で、人の頭くらいは破砕する。
巨体に似合わぬ俊敏さで、ヴィオは敵に殴りこんだ。
マリオネットが迫ったトレーラーは無傷だったため、ヴィオの向かった方より抵抗が激しかったが、マリオネットは、銃弾ごときは跳ね返す装甲に覆われている。
必死に銃弾を浴びせる敵の中で、轟音が起きた。
銃が暴発したのだ。
敵の弾幕が崩れ、マリオネットは内部に入り込み、ヒルト鉱石で造られた端子を相手に押し付け、電撃を喰らわせた。
マリオネットの武器は、装甲擬体に内蔵された電撃兵器なのだ。電圧を調整することで、殺すことも捕らえることも容易だ。
二人に銃撃が集中している隙に、他の構成員も韋駄天をとばし、敵に殺到した。
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