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コトウ
謀略
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リッパーの手が止まった。
「ボス、ごめん。こいつ死んじゃった♡」
返り血で真っ赤に染まったまま、リッパーは晴れやかに笑った。
生きた人間を解体するという特技を披露していたのだ。
「そんだけ解体すりゃあな……」
眉ひとつ動かさず、クロスが言う。
スワロウはそれを一瞥して、口元を押さえそっぽを向いた。
「ああいう、死に方だけはしたくねえな」
血が掃除しやすいようにと、病院の手術室を使い、捕虜の尋問をしていたのだ。
この場にはクロスとスワロウ、そしてリッパーがいるだけだ。万が一、余計なことを言われては、困る。今はまだ、事情を知っているものだけが尋問にかかわった。
三人の捕虜のうち、一番下っ端らしきものから尋問──解体した。人の中身やパーツが転がり、あたりは血の海だった。いったいどれほどの血が、人体には流れているものだろう。
「まだ情報源はある」
「そんじゃ、次はどいつにします?」
リッパーが楽しそうに、残りの捕虜を振り返り、新しいナイフを取り出した。
残りの二人が顔色を変えて、絶叫した。
「やめろ! やめてくれ! 何でも話す!」
「俺達は傭兵だ! 雇われて、襲撃した!」
クロスは眼を細めた。
「知っていることはすべて話せ。おまえ達は、マドゥコネクションを襲撃したんだ。殺されても文句は言えねえよな?」
それから二人の捕虜は知る限りのことを聞かれてもいないのに、しゃべり始めた。
彼らは元々各コネクションから荒事の下請けをする傭兵で、今回も多額の報酬を貰い引き受けた仕事だという。
今回の仕事は、依頼主の書いたシナリオ通りにコトウを襲撃すること。
南を囮に、ある程度ダメージを与えたら、すぐ撤退する手筈だった。
仲間は幾つかの傭兵グループの混成チーム。
依頼主の正体は知らない。しかし、集められた場所がコトウに近い『サモナ』の支配地だったことを考えると、『サモナ』か、その息のかかったものだろう。
「あの装備は? シールドを無効化した銃のことだ」
「あれは依頼主から支給されたものだ。出所は知らない。本当だ!」
その後、クロスは依頼主のことを聞いた。
依頼主には、数えるほどしかあったことが無いという。人相も聞いたが、少なくともギルバートではないようだ。
『グランティア』の人員か、『サモナ』のものだろう。
聞くべきことは、全て聞いた。
「ボスゥ、こいつら、どうします? 解体します?」
リッパーがナイフを玩びながら聞いた。
コネクションに襲撃をかけた相手だ。殺してもどこからも苦情はこない。
「た、助けてくれ、何でもする! 依頼主を殺してきてもいい。だから──」
「記録と一緒に、本家へ移送しろ。証人だ。本家が生かしておくかどうかは、知らんがな」
「え~、助けてやんの~?」
「それは、大ボスが決めるだろうさ」
記録映像はそこで止まった。
「──残念ながら、敵の黒幕は不明のままだ──どうした」
アランが映像から視線をそらしながら言った。
「いえ、ボス、何も解体の一番最初から再生しなくとも……このまんま、本家に送ったんですかぁ? エグイんですけど」
発言したのはアランだが、それは会議に参加しているものの大半を代弁していた。
「人体を輪切りにするやつの台詞じゃねえな。映像に手を加えてない証拠にするため、そうした」
「え~、そんなにエグイ? 輪切りとあんまり変わりないじゃん」
やった張本人はエグイとは感じていないようだった。もっとも、まともな神経で出来る諸行ではない。
「手足どころか、内臓まで丸出しのバッラバラでしょ? 女子供に見せたら卒倒するよ、これ。エレガントじゃないなぁ」
「そのかわり、効果は絶大だ」
同じ死ぬのでも、誰しも麻酔なしで解体されたくは無いだろう。
「……持ち物を……調べさせましたが……色々なコネクションの装備が混じってます……払い下げになったものばかりで……どこのものとも」
ボソボソとダグラスが聞き取りにくい声で言う。
「ただ……この銃ですが……ボスの推測どおり……弾芯がヒルト鉱石で出来ています……銃も改造が……オートマとサブマシンガンなんですが……精度が低くて……いつ暴発しても不思議ではないと……」
マリオネットがクロスを見た。
この中では唯一クロスがヒルト鉱石の弾丸を使う銃を持っていることを知っていたからだ。
クロスの制服の一部には手を加えられており、ホルスターが内蔵されている。
だが、クロスの持つ銃は最初からヒルト鉱弾を使うことを前提として、設計し造られているオーダーメイドだ。精度は比べ物にならないだろう。
「高価な弾丸ですねぇ。よくそんな物、造る気になったものです。依頼主は、よっぽど裕福なんですねぇ。それにヒルト鉱石を加工するツテがあると。ボスゥ、絞れてくるんじゃないですかぁ?」
ヒルト鉱石を精製加工できるのは、ある程度力のあるコネクションだけだ。鉱山もコネクションに独占されている。
「予測は出来るが、余分な推測は判断ミスの材料になるぞ」
「はあい。ボスは慎重ですねえ。でぇも、今回はそれが大当たりでしたよ~。以前の僕の発言は誤りでした。お詫びします」
白い歯を見せ、さわやかに笑うアランだった。
クロスは少し考え込むようだったが、やがて口を開いた。
「すべての記録装置を止めろ」
「ボスゥ?」
「伏せとくつもりだったが、そろそろおまえ達だけにでも話しておかないと、現場が混乱するからな」
そして、クロスの命令どおり、すべての記録装置が止められた。
「敵は『サモナ』の可能性が高い。そして未確認だが『グランティア』が寝返ったという情報がある」
アランとダグラスが思わず席を立ち、マリオネットとヴィオがクロスを注視した。
「ボス、『グランティア』がですか?」
さすがにアランの顔色が変わる。
「……あそこは……二番目の管轄で……まさか二番目が?」
ダグラスが信じられないと首をひねった。
すべての表情を消し、氷のような声音でマリオネットが呟いた。
「二番目がボスの敵なのですね」
「殲滅しましょう。ボスを狙うものは、何者であろうと、生かしておけません」
「おちつけ」
クロスの言葉で全員が口を閉じた。
「『グランティア』も二番目も、現在行方不明だ。その前に『サモナ』と接触していた節がある。そして、今回の襲撃者の本拠地とも思える土地が『サモナ』の持ち物だというだけだが、無関係ではあるまい」
「今まで黙っていたのですか?」
「確証がなかったからな。しかし、これで終わりではあるまい。次の襲撃に『グランティア』が参加しないという保証は無い。『グランティア』に攻撃されて、お前達が混乱しないよう、通達だけはしておく」
アランが肩をすくめた。
「確かに、事前に知っていれば、対応も違いますからねぇ。でもぉ、それ知っていたの、ボスだけじゃないみたいですねえ」
動揺を見せなかった二人に、今度は視線が集まった。
「カナリアから歌が届いた。それだけだ」
「僕ちゃんもカナリアくらい飼ってるもんね。飼ってないほうが無用心っしょ?」
「各人、気を引き締めろ。今度の敵は『サモナ』と『グランティア』だ」
「……殲滅してよろしいので……」
「歯向かうやつは、ぶち殺せ。それが『サザンクロス』だ」
「ボスの御心のままに」
「お任せください」
マリオネットとヴィオが即答した。
「勿論、ボスに従いますとも」
「了承しました……」
全員が首肯した。
その知らせを受けたウィリスは、軽い驚きを覚えた。
向かわせた手勢が全滅した。
囮に使う寄せ集めだが、多少の効果は期待していたのだが、無意味だったらしい。
監視させていた配下の報告によると、陽動にも引っかからず、銃弾が当たるという、あってはならないことにも冷静に対処している。
クロス・ノーマンという男を見誤っていたらしい。
代々『サザンクロス』のボスは好戦的な人間が多い。だからこその戦闘部隊として名高い組織であった。
それが変わったのは代替わりしてからだ。
戦闘力はそのままに、政治的な力をつけてきた。土地を『サザンクロス』が管理し、財力をつけ、新たなものを開発させる。
今までの『サザンクロス』には無い発想だ。
クロス・ノーマンの集められるだけの情報は集めている。
クロスが注目され始めたのは、五歳のとき。父親である五代目がその存在を明らかにし、自分の子供として認知すると言い出したからだ。
直後に、その母親が組織の手によるものと思われる、不審な死を遂げ──その身柄は不明になる。
七年後、五代目は前言を撤回している。
政治的な意図があることは明らかだった。
本人が再び表舞台に上がるのは、三年後のことだ。コネクションに入り、何度か名前を耳にしたが、そのたび上司が変わっていた。
五年前、『サザンクロス』にたどり着き、そこに落ちついた。
映像も目にするが、その容姿はマドゥの五代目の若い頃によく似ていたが、形だけだ。そこに宿る魂が、違う。
見るものを圧倒する気迫。
何よりも、あの眼だ。どれだけのものを見れば、あの若さで、あれだけの眼が出来るというのだろう。
「ただの戦闘屋ではないということか」
ウィリスは自分の直感が外れていないと確信した。放っておけば、やがて『サモナ』コネクションの脅威になる。
ウィリスは客人に結果を報告することにした。
「行かせた部隊が全滅したようですよ」
「当てにならないな、傭兵なんていうのは。金だけ貰って、全滅か?」
「やつらの役目は、煙幕ですよ。謎の組織が動いているというね。あなたの存在を隠すための、捨て駒。ミスリードできればいい」
鼻を鳴らしてそっぽを向くのは、ギルバート・マドゥ。クロスの腹違いの兄に当たる男だ。
この男に脅威を感じたことは一度も無い。
顔立ちに共通の部分が無いことも無いが、栗色の髪に茶色の瞳といった色彩の薄さのせいだけではないだろうが、ギルバートに感じるのは脆弱さだ。
神経質で見栄っ張りな、若造。
何度顔を合わせても、それしか感じない。
だが、こんな若造でもコネクションの幹部だ。
「後はシナリオどおり、あなたが手を下せばいい」
「当然だ。あんな穢れた奴が、存在するなんて許せるか! 父さんも、父さんだ、あんな奴に眼をかけてやるなんて」
クロスの母親は確かに五代目に身請けされるまでは娼婦だったらしい。しかし、生まれと能力は別物だ。
ギルバートにはそれが分からない──否──分かっていて、貶めるためだけに、卑しいと口にする。
ウィリスは密かに笑った。
せいぜい異母兄弟で殺し合えばいい。
クロスが死ねば、将来の脅威が取り除かれる。ギルバートが死ねば、マドゥの幹部が一人減る。
どちらにしても、持ち主のいなくなる財産が出てくる。
『マドゥ』コネクションにも打撃だろう。内部での抗争は、組織に動揺を与える。
『サモナ』の付け込む隙が出来るというものだ。
ウィリスはほんの少し、手を貸すだけでいい。
「ボス、ごめん。こいつ死んじゃった♡」
返り血で真っ赤に染まったまま、リッパーは晴れやかに笑った。
生きた人間を解体するという特技を披露していたのだ。
「そんだけ解体すりゃあな……」
眉ひとつ動かさず、クロスが言う。
スワロウはそれを一瞥して、口元を押さえそっぽを向いた。
「ああいう、死に方だけはしたくねえな」
血が掃除しやすいようにと、病院の手術室を使い、捕虜の尋問をしていたのだ。
この場にはクロスとスワロウ、そしてリッパーがいるだけだ。万が一、余計なことを言われては、困る。今はまだ、事情を知っているものだけが尋問にかかわった。
三人の捕虜のうち、一番下っ端らしきものから尋問──解体した。人の中身やパーツが転がり、あたりは血の海だった。いったいどれほどの血が、人体には流れているものだろう。
「まだ情報源はある」
「そんじゃ、次はどいつにします?」
リッパーが楽しそうに、残りの捕虜を振り返り、新しいナイフを取り出した。
残りの二人が顔色を変えて、絶叫した。
「やめろ! やめてくれ! 何でも話す!」
「俺達は傭兵だ! 雇われて、襲撃した!」
クロスは眼を細めた。
「知っていることはすべて話せ。おまえ達は、マドゥコネクションを襲撃したんだ。殺されても文句は言えねえよな?」
それから二人の捕虜は知る限りのことを聞かれてもいないのに、しゃべり始めた。
彼らは元々各コネクションから荒事の下請けをする傭兵で、今回も多額の報酬を貰い引き受けた仕事だという。
今回の仕事は、依頼主の書いたシナリオ通りにコトウを襲撃すること。
南を囮に、ある程度ダメージを与えたら、すぐ撤退する手筈だった。
仲間は幾つかの傭兵グループの混成チーム。
依頼主の正体は知らない。しかし、集められた場所がコトウに近い『サモナ』の支配地だったことを考えると、『サモナ』か、その息のかかったものだろう。
「あの装備は? シールドを無効化した銃のことだ」
「あれは依頼主から支給されたものだ。出所は知らない。本当だ!」
その後、クロスは依頼主のことを聞いた。
依頼主には、数えるほどしかあったことが無いという。人相も聞いたが、少なくともギルバートではないようだ。
『グランティア』の人員か、『サモナ』のものだろう。
聞くべきことは、全て聞いた。
「ボスゥ、こいつら、どうします? 解体します?」
リッパーがナイフを玩びながら聞いた。
コネクションに襲撃をかけた相手だ。殺してもどこからも苦情はこない。
「た、助けてくれ、何でもする! 依頼主を殺してきてもいい。だから──」
「記録と一緒に、本家へ移送しろ。証人だ。本家が生かしておくかどうかは、知らんがな」
「え~、助けてやんの~?」
「それは、大ボスが決めるだろうさ」
記録映像はそこで止まった。
「──残念ながら、敵の黒幕は不明のままだ──どうした」
アランが映像から視線をそらしながら言った。
「いえ、ボス、何も解体の一番最初から再生しなくとも……このまんま、本家に送ったんですかぁ? エグイんですけど」
発言したのはアランだが、それは会議に参加しているものの大半を代弁していた。
「人体を輪切りにするやつの台詞じゃねえな。映像に手を加えてない証拠にするため、そうした」
「え~、そんなにエグイ? 輪切りとあんまり変わりないじゃん」
やった張本人はエグイとは感じていないようだった。もっとも、まともな神経で出来る諸行ではない。
「手足どころか、内臓まで丸出しのバッラバラでしょ? 女子供に見せたら卒倒するよ、これ。エレガントじゃないなぁ」
「そのかわり、効果は絶大だ」
同じ死ぬのでも、誰しも麻酔なしで解体されたくは無いだろう。
「……持ち物を……調べさせましたが……色々なコネクションの装備が混じってます……払い下げになったものばかりで……どこのものとも」
ボソボソとダグラスが聞き取りにくい声で言う。
「ただ……この銃ですが……ボスの推測どおり……弾芯がヒルト鉱石で出来ています……銃も改造が……オートマとサブマシンガンなんですが……精度が低くて……いつ暴発しても不思議ではないと……」
マリオネットがクロスを見た。
この中では唯一クロスがヒルト鉱石の弾丸を使う銃を持っていることを知っていたからだ。
クロスの制服の一部には手を加えられており、ホルスターが内蔵されている。
だが、クロスの持つ銃は最初からヒルト鉱弾を使うことを前提として、設計し造られているオーダーメイドだ。精度は比べ物にならないだろう。
「高価な弾丸ですねぇ。よくそんな物、造る気になったものです。依頼主は、よっぽど裕福なんですねぇ。それにヒルト鉱石を加工するツテがあると。ボスゥ、絞れてくるんじゃないですかぁ?」
ヒルト鉱石を精製加工できるのは、ある程度力のあるコネクションだけだ。鉱山もコネクションに独占されている。
「予測は出来るが、余分な推測は判断ミスの材料になるぞ」
「はあい。ボスは慎重ですねえ。でぇも、今回はそれが大当たりでしたよ~。以前の僕の発言は誤りでした。お詫びします」
白い歯を見せ、さわやかに笑うアランだった。
クロスは少し考え込むようだったが、やがて口を開いた。
「すべての記録装置を止めろ」
「ボスゥ?」
「伏せとくつもりだったが、そろそろおまえ達だけにでも話しておかないと、現場が混乱するからな」
そして、クロスの命令どおり、すべての記録装置が止められた。
「敵は『サモナ』の可能性が高い。そして未確認だが『グランティア』が寝返ったという情報がある」
アランとダグラスが思わず席を立ち、マリオネットとヴィオがクロスを注視した。
「ボス、『グランティア』がですか?」
さすがにアランの顔色が変わる。
「……あそこは……二番目の管轄で……まさか二番目が?」
ダグラスが信じられないと首をひねった。
すべての表情を消し、氷のような声音でマリオネットが呟いた。
「二番目がボスの敵なのですね」
「殲滅しましょう。ボスを狙うものは、何者であろうと、生かしておけません」
「おちつけ」
クロスの言葉で全員が口を閉じた。
「『グランティア』も二番目も、現在行方不明だ。その前に『サモナ』と接触していた節がある。そして、今回の襲撃者の本拠地とも思える土地が『サモナ』の持ち物だというだけだが、無関係ではあるまい」
「今まで黙っていたのですか?」
「確証がなかったからな。しかし、これで終わりではあるまい。次の襲撃に『グランティア』が参加しないという保証は無い。『グランティア』に攻撃されて、お前達が混乱しないよう、通達だけはしておく」
アランが肩をすくめた。
「確かに、事前に知っていれば、対応も違いますからねぇ。でもぉ、それ知っていたの、ボスだけじゃないみたいですねえ」
動揺を見せなかった二人に、今度は視線が集まった。
「カナリアから歌が届いた。それだけだ」
「僕ちゃんもカナリアくらい飼ってるもんね。飼ってないほうが無用心っしょ?」
「各人、気を引き締めろ。今度の敵は『サモナ』と『グランティア』だ」
「……殲滅してよろしいので……」
「歯向かうやつは、ぶち殺せ。それが『サザンクロス』だ」
「ボスの御心のままに」
「お任せください」
マリオネットとヴィオが即答した。
「勿論、ボスに従いますとも」
「了承しました……」
全員が首肯した。
その知らせを受けたウィリスは、軽い驚きを覚えた。
向かわせた手勢が全滅した。
囮に使う寄せ集めだが、多少の効果は期待していたのだが、無意味だったらしい。
監視させていた配下の報告によると、陽動にも引っかからず、銃弾が当たるという、あってはならないことにも冷静に対処している。
クロス・ノーマンという男を見誤っていたらしい。
代々『サザンクロス』のボスは好戦的な人間が多い。だからこその戦闘部隊として名高い組織であった。
それが変わったのは代替わりしてからだ。
戦闘力はそのままに、政治的な力をつけてきた。土地を『サザンクロス』が管理し、財力をつけ、新たなものを開発させる。
今までの『サザンクロス』には無い発想だ。
クロス・ノーマンの集められるだけの情報は集めている。
クロスが注目され始めたのは、五歳のとき。父親である五代目がその存在を明らかにし、自分の子供として認知すると言い出したからだ。
直後に、その母親が組織の手によるものと思われる、不審な死を遂げ──その身柄は不明になる。
七年後、五代目は前言を撤回している。
政治的な意図があることは明らかだった。
本人が再び表舞台に上がるのは、三年後のことだ。コネクションに入り、何度か名前を耳にしたが、そのたび上司が変わっていた。
五年前、『サザンクロス』にたどり着き、そこに落ちついた。
映像も目にするが、その容姿はマドゥの五代目の若い頃によく似ていたが、形だけだ。そこに宿る魂が、違う。
見るものを圧倒する気迫。
何よりも、あの眼だ。どれだけのものを見れば、あの若さで、あれだけの眼が出来るというのだろう。
「ただの戦闘屋ではないということか」
ウィリスは自分の直感が外れていないと確信した。放っておけば、やがて『サモナ』コネクションの脅威になる。
ウィリスは客人に結果を報告することにした。
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「やつらの役目は、煙幕ですよ。謎の組織が動いているというね。あなたの存在を隠すための、捨て駒。ミスリードできればいい」
鼻を鳴らしてそっぽを向くのは、ギルバート・マドゥ。クロスの腹違いの兄に当たる男だ。
この男に脅威を感じたことは一度も無い。
顔立ちに共通の部分が無いことも無いが、栗色の髪に茶色の瞳といった色彩の薄さのせいだけではないだろうが、ギルバートに感じるのは脆弱さだ。
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何度顔を合わせても、それしか感じない。
だが、こんな若造でもコネクションの幹部だ。
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「当然だ。あんな穢れた奴が、存在するなんて許せるか! 父さんも、父さんだ、あんな奴に眼をかけてやるなんて」
クロスの母親は確かに五代目に身請けされるまでは娼婦だったらしい。しかし、生まれと能力は別物だ。
ギルバートにはそれが分からない──否──分かっていて、貶めるためだけに、卑しいと口にする。
ウィリスは密かに笑った。
せいぜい異母兄弟で殺し合えばいい。
クロスが死ねば、将来の脅威が取り除かれる。ギルバートが死ねば、マドゥの幹部が一人減る。
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