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コードジュエル
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退院許可が下りたのは、冬になってからだった。迎えをよこすというので、病院のロビーで待っていると、サザンクロスの制服の男がやってきた。
「お待たせしました。車のほうに、どうぞ」
スワロウは頷いて荷物を持とうと手を伸ばした。すると、迎えが慌てて手を伸ばす。
「荷物は自分が運びます」
「そうか」
スワロウは荷物を男に任せ、正面玄関に寄せられた車に乗り込んだ。
コードジュエルにはサザンクロス所有の館がある。ほとんど城のようなその館にそれぞれ部屋を持ち、暮らしているが、余裕とその気のあるものは別に屋敷を持ち、家族や囲い者を住まわせている。
今のところ、スワロウにはそうした別荘は無い。
久しぶりに本拠地に戻ったスワロウは、妙な居心地の悪さを感じていた。
皆が自分を見ているような気がするのだ。
(自意識過剰だな)
スワロウはそう思い込もうとしたが、不幸にも、それは気のせいではなかった。
「やっと戻ってきたな」
クロスに声をかけられ、スワロウは一瞬、言葉に詰まった。
「……内臓だからな……経過に時間かかって……挨拶はまた、明日にでもさせてもらうぜ」
眼を合わせないようにして、立ち去ろうとしたスワロウに、クロスが声をかけた。
「そっちじゃねえよ」
自分の部屋に戻ろうとしたスワロウに、クロスが声をかけた。
「部屋を変えたのか?」
「こっちだ」
何の疑問も持たず、クロスに案内されるままスワロウ後についていった。
見覚えのある部屋の前に連れて行かれたスワロウは思わず足を止めた。
(ここは……ボスの部屋だろ……)
「何をしている」
クロスに背を押され、スワロウは部屋の中に入ってしまった。
クロスにそのまま引っ張りこまれ、強引にベッドに放り込まれる。
わけが分からず呆けていると、クロスがのしかかってきた──スワロウはそこで我に返った。
「ちょっと待て! 何しようと、してんだよ!」
「わからねえか?」
スワロウは顔を赤らめた。
「い、いや、わかるけどよ、なんで、当然のように、やろうとしてやがる!」
「なにを今さら。何ヶ月お預け食らわせたと思ってんだ」
「お預けってなんなんだよ」
「ああ? やりたくても、やれ無かったって意味だよ」
「そうじゃなくって!」
意味ありげにクロスが笑った。
「おまえは俺のものなんだろ?」
スワロウは息を飲んだ。
確かにそう言った。その意味をクロスは正確に理解していたことになる。
「ちょっ……俺はしばらく薬飲まなきゃ、ならないんだ。別の薬はへたに使わないよう……」
「心配するな。媚薬の入ってない潤滑剤を用意してある」
「〰〰〰〰」
クロスがネクタイをはずした。
「脱げよ。それとも脱がして欲しいのか?」
もう、何を言っても無駄だとスワロウは思った。
クロスが腹部を撫でた。
「取り替えたばっかりの、腸を傷めたくねえだろ?」
逆らおうとすれば、当身を食らわせるということだ。
もう、どうにでもしてくれ、とスワロウは諦めた。
「ボス、妙な噂が流れているんですが……」
入院しているスワロウに代わって隊を仕切っているソニックが聞きづらそうに口を開いたのは、コトウ襲撃とその後の幹部不在をついた他のコネクションからのちょっかいをクロスがなぎ倒して一息ついたころだった。
「なんだ?」
幹部不在を補うため最前線に自ら足を運び『サザンクロス』最強の名が偽りではないことを示し続けたクロスが不機嫌そうに言う。
これを口にすることはソニックにとっても大きく口をあいた人食い虎の口の中に頭を突っ込むようなものだった。
普通死ぬ。
絶対死ぬ。
死ぬだろうな。
そう思いつつも聞かずにはいられなかった。
「スワロウ隊長とはどのような関係でしょう? 先のコトウで……その……見ていたというものが……」
「見ての通りだ」
ソニックの全身が凍りついた。
『サザンクロス』の中にも女性隊員はいる。血は繋がっていないもののなぜか『三姉妹』と呼ばれる隊員の一人レッドが聞いた。
「で、どうだった? ボスはなんて?」
日系でショートカットで猫目のレッド。
美しい銀髪の人形じみたブルー。
きらきらの金髪に大きな瞳が子供じみたイエロー。
全員が期待を込めてソニックを見ている。
ソニックは椅子に座り込みテーブルに突っ伏した。
「見ての通りだ、としか……」
きっやあぁああああ!
とんでもない声量の超音波を喰らった。
「言ったとおりでしょーっっ! 前々からボスのスワロウ隊長へのちょっかいがエロいと思っていたのよー!」
「そうよね、レッド姉さま! あれは代償行為よ! 飲ませたり、汚したり! だって、もう、目が!! 隊長を見る目がね、あれは獲物を狙うケダモノの目よ! 食べたくて、食べたくてたまらなかったのよ! 視姦よ! 視姦! ロックオンよおぉおお」
「いやああん! すてき! 頭の中ではもう、凄い事になっていたんでしょうねー!! だから食べちゃたのよねー!! さすがの行動力ですわー! どこまでもついて行きますわぁぁ! ボスー!!」
「どこへ行く気だ!! というか、その前に決定か! 決定なのか!!」
一人慌てるソニックに
『見てればわかるでしょ』
とは三姉妹の弁である。
わからんわ。というか、判りたくない。
腐ってる! この三人は腐りきっている!
ソニックは信じたくなかった。スワロウに対して邪な考えを持った男は少なくない。だが、スワロウはその全てを叩き伏せなぎ倒してきた。
そのスワロウ隊長が──
「そんなの、力ずくでねじ伏せたに決まってるでしょ? 相手はボスよ、ボス」
とレッドが断言すれば
「む、無理矢理なんてー、想いはあっても、口にはできずのすれ違いよね! やああん、素敵すぎる!」
とイエローが嬉しそうに身をくねらせる。
「縛ったのかも。いくらボスでも隊長を押さえ込むのは大変ですし」
とブルーが分析する。
ソニックが呆然としているうちに『ボスと隊長は好きあっていたけど、口に出せず喧嘩していた。お初はボスが隊長を無理矢理縛って犯した。今はらぶらぶ(はーと)』などと認定されてしまった。
「んなわけあるかぁあああー!」
真実は神のみぞ知る。
スワロウが退院できたのは冬になってからだった。
「やっと戻ってきたな」
クロスに声をかけられ、スワロウは一瞬、言葉に詰まった。
「……内臓だからな……経過に時間かかって……挨拶はまた、明日にでもさせてもらうぜ」
眼を合わせないようにして、立ち去ろうとしたスワロウに、クロスが声をかけた。
「そっちじゃねえよ」
自分の部屋に戻ろうとしたスワロウに、クロスが声をかけた。
「部屋を変えたのか?」
「こっちだ」
何の疑問も持たず、クロスに案内されるままスワロウ後についていった。
「………あっちって、ボスの部屋の方よね?」
柱の陰に隠れて見守っていたレッドがいう。
「連れ込みましたわ。ええ、絶対」
柱の陰の人その二、ブルーが望遠鏡を握り締める。
気配に敏感な二人に悟られぬよう安全距離をとり、さらに物陰に隠れつつ望遠鏡で見守る──はたから見れば不審、否、危険人物である。危なすぎる。
「お姉さま方、行かなきゃ!」
イエローが走り出す。三姉妹が目指すのは警備室であった。
警備室には二系統あり、三姉妹駆け込んだのはサブシステムの方である。
先客がいた。
「やあ、絶対くると思ってたよ♡」
童顔のナイフ使いがにこにこしていた。
「あ、あううう」
「リッパー隊長……」
「なんで、今ここに!」
リッパーがニコニコと手招きをする。
「早くおいでよ。扉はしっかりしめてね」
三姉妹は地獄を覚悟して扉をしめた。オートロックで鍵がかかる。
「ブルーちゃんなら、ハッキングしてボスの部屋のモニターカメラ入れれるよね? 映像こっちだけにまわせる?」
黒い笑顔のリッパーに満面の笑みで答えるブルー。
「ええ、もちろんですわ」
さっそくシステムを弄りだす。
「音はー? 録画録音ももちろんしますよね~」
ごそごそと機材をいじるイエロー。
「当然でしょ~、ボスとスワローのメモリアルだもん」
くふふふふふふふと黒い共犯者の笑いがこだました。
そしてディスプレイの画面が生き返る。
「ボス、隊長、我々は全力で二人の愛をどこまでも温かく見守りますわ!」
地獄に堕ちたほうがいいかもしれない。
クロスは急がなかった。
首筋に唇を這わせ、体のあちこちを愛撫する。最初のときはいきなり押し入ってきたが、今日はそうするつもりは無いようだった。
正気のときに、そんなことをされた覚えは無い。
「あ……う……」
甘ったるい声を上げてしまい、スワロウは思わず口を押さえた。
クロスがその手を無理矢理引き剥がし、唇を重ねる。
歯列をわって舌が入ってきた。応え方を知らないわけではないが、スワロウは戸惑った。
濃厚な、貪るようなくちづけ。それから開放されたときにはすっかり息が上がっていた。
「……前は……こんな……しなか……」
「犯りてえんじゃねえ、抱きてえんだよ」
手っ取り早く犯すのではなく、抱くつもりなのだと、クロスは言う。
確かに、その手と唇は快感を引き出していたが、クロスの愛撫に反応してしまう肉体が、スワロウは嫌だった。
感情を認めることさえ困難で、その後も、どういう態度をとればいいのか分からなかった。男に感じさせられるということに、まだ戸惑いを覚える。
それなのに、肉体は悦びを覚えて、反応してしまう。
そのギャプが耐えられない。
「……もう……やめ……あっ!……」
「そんな顔……するなよ、我慢できなくなるぜ」
体内にクロスの指が入り込んだ。
「あっ……うっ……」
中に潤滑剤を塗りたくりながら、探るように動く。
「んん……ひっ!」
ある場所を刺激されたとたん、スワロウはのけぞった。
「ここか?」
「や、やめろ! なん……あっ、う」
そこに触れられると、のけぞってしまうほどの刺激が走った。たちまちスワロウのそれが立ち上がった。
「ここ、刺激されると勃っちまうそうだ」
「……そんな……こと……どこで……」
「色々とな」
どこで調べてきたのか、心当たりは、嫌というほどある。
コネクションの管轄には、娼窟もある。男娼を扱う部署でなら、いくらでも調べられただろう。
ただ、調べる気になったということが、スワロウには恐ろしい。
クロスは男は初めてだと、最初のときに言っていた。男を寝室に連れ込んだことは無いから、確かだろう。
女の悦ばし方は知っていても、男のそれは知らなかったはずだ。
それをわざわざ調べたのは、どう考えても、自分を抱くためだとしか思えない。
うつ伏せにされ、その部分堅いものが触れたとき、反射的にスワロウは逃れようとした。
あのときの苦痛を思い出し、体が逃げてしまった。
しかし、クロスが腰を抱え込んで逃がさなかった。
「嫌なのか?」
「……嫌だったら……とうに逃げている」
縛められているわけではない。妙な薬も使われてはいない。スワロウは自分の意思で受け入れるつもりだった。
改めてそこにあてがわれたのが分かった。
スワロウは硬く眼を閉じた。
入院中暇をもてあましたリッパーが散々耳元で、『受け入れるコツ』とやらを話していた。聞きたくは無かったが、暗記してしまうほど、何度も何度も繰り返された。
そのときは鬱陶しいとしか思わなかったが、スワロウはそれに従った。
「あぐっ! 〰〰〰〰うう、ぐうぅぅ」
最初のときよりは幾分ましだが、体を貫かれる痛みに、スワロウは必死に耐えた。
クロスが動き出し、苦痛が増した。
どこが苦しいのかも、分からなくなる苦痛。体全体が、熱くて熱くて、苦しかった。
これが快楽になるはずが無い、そう思うほどに苦しかった。
「前より、楽に入ったぞ。慣れたのか?」
「……ちが……ふうっ、ぐう、あっ」
脈打つような痛みに、スワロウはのけぞった。
敷布を握り締め、体全体を引いては押し寄せる熱に耐えた。
前にもクロスの手が伸びていた。苦痛のあまり一度は萎えていたそれはいつの間にか立ち上がり、露を結んでいた。
「あ……はぁ……ふ……う」
前と後ろからの刺激に、スワロウの声に艶が混じり始めた。
「飛燕……」
耳元で本名を囁かれ、ぞくりとした感覚が体を走った。
「……ボ……ス」
「名前、呼べよ」
促され、スワロウはその名を口にした。
「……クロ……ス……」
嫌になるほど、甘ったるい声がでた。
「イイ声だな」
それに煽られたのか、スロスの動きが激しくなった。
「ひっ!……ああ!」
後はもう、身のうちで暴れる熱に翻弄されるだけだった。
敷布に広がる自分の髪を、スワロウはぼんやりと眺めていた。
先ほどからしていた水音がやんで、クロスがバスルームから出てきた。
「俺の部屋はどうなった?」
「あのままにしてある。掃除くらいはさせているが」
「そうか」
スワロウは起き上がろうとした。
だが、クロスがその肩を掴んだ。
「どこへ行くつもりだ?」
「自分の部屋だ」
「必要ないだろう」
「おい……」
「ここで寝起きすればいい」
「なに言ってやがる! 自分がなに言ってるのか、分かってんのか!」
それは、ほとんど、情人として同棲しろと言っているようなものだ。
「もちろん、分かってる」
「できるかぁ!! あんた、女も囲ったことねえくせに!!」
ただでさえ、皆に知れ渡っているというのに、クロスの部屋で寝起きなど、できるわけが無い。
どんな眼で見られるかと思うと、憤死しそうだ。
「ああ? かまわねえだろうが。どうせ、皆知ってるんだからよ」
「だから、嫌なんだよ!!」
どこまでも噛み合わない会話だった。
この後、頑としてスワロウは別室にこだわった。クロスはしぶしぶそれを認めたものの──度々スワロウの部屋に押しかけたり、自分の部屋に連れ込むので大差なかった。
「お待たせしました。車のほうに、どうぞ」
スワロウは頷いて荷物を持とうと手を伸ばした。すると、迎えが慌てて手を伸ばす。
「荷物は自分が運びます」
「そうか」
スワロウは荷物を男に任せ、正面玄関に寄せられた車に乗り込んだ。
コードジュエルにはサザンクロス所有の館がある。ほとんど城のようなその館にそれぞれ部屋を持ち、暮らしているが、余裕とその気のあるものは別に屋敷を持ち、家族や囲い者を住まわせている。
今のところ、スワロウにはそうした別荘は無い。
久しぶりに本拠地に戻ったスワロウは、妙な居心地の悪さを感じていた。
皆が自分を見ているような気がするのだ。
(自意識過剰だな)
スワロウはそう思い込もうとしたが、不幸にも、それは気のせいではなかった。
「やっと戻ってきたな」
クロスに声をかけられ、スワロウは一瞬、言葉に詰まった。
「……内臓だからな……経過に時間かかって……挨拶はまた、明日にでもさせてもらうぜ」
眼を合わせないようにして、立ち去ろうとしたスワロウに、クロスが声をかけた。
「そっちじゃねえよ」
自分の部屋に戻ろうとしたスワロウに、クロスが声をかけた。
「部屋を変えたのか?」
「こっちだ」
何の疑問も持たず、クロスに案内されるままスワロウ後についていった。
見覚えのある部屋の前に連れて行かれたスワロウは思わず足を止めた。
(ここは……ボスの部屋だろ……)
「何をしている」
クロスに背を押され、スワロウは部屋の中に入ってしまった。
クロスにそのまま引っ張りこまれ、強引にベッドに放り込まれる。
わけが分からず呆けていると、クロスがのしかかってきた──スワロウはそこで我に返った。
「ちょっと待て! 何しようと、してんだよ!」
「わからねえか?」
スワロウは顔を赤らめた。
「い、いや、わかるけどよ、なんで、当然のように、やろうとしてやがる!」
「なにを今さら。何ヶ月お預け食らわせたと思ってんだ」
「お預けってなんなんだよ」
「ああ? やりたくても、やれ無かったって意味だよ」
「そうじゃなくって!」
意味ありげにクロスが笑った。
「おまえは俺のものなんだろ?」
スワロウは息を飲んだ。
確かにそう言った。その意味をクロスは正確に理解していたことになる。
「ちょっ……俺はしばらく薬飲まなきゃ、ならないんだ。別の薬はへたに使わないよう……」
「心配するな。媚薬の入ってない潤滑剤を用意してある」
「〰〰〰〰」
クロスがネクタイをはずした。
「脱げよ。それとも脱がして欲しいのか?」
もう、何を言っても無駄だとスワロウは思った。
クロスが腹部を撫でた。
「取り替えたばっかりの、腸を傷めたくねえだろ?」
逆らおうとすれば、当身を食らわせるということだ。
もう、どうにでもしてくれ、とスワロウは諦めた。
「ボス、妙な噂が流れているんですが……」
入院しているスワロウに代わって隊を仕切っているソニックが聞きづらそうに口を開いたのは、コトウ襲撃とその後の幹部不在をついた他のコネクションからのちょっかいをクロスがなぎ倒して一息ついたころだった。
「なんだ?」
幹部不在を補うため最前線に自ら足を運び『サザンクロス』最強の名が偽りではないことを示し続けたクロスが不機嫌そうに言う。
これを口にすることはソニックにとっても大きく口をあいた人食い虎の口の中に頭を突っ込むようなものだった。
普通死ぬ。
絶対死ぬ。
死ぬだろうな。
そう思いつつも聞かずにはいられなかった。
「スワロウ隊長とはどのような関係でしょう? 先のコトウで……その……見ていたというものが……」
「見ての通りだ」
ソニックの全身が凍りついた。
『サザンクロス』の中にも女性隊員はいる。血は繋がっていないもののなぜか『三姉妹』と呼ばれる隊員の一人レッドが聞いた。
「で、どうだった? ボスはなんて?」
日系でショートカットで猫目のレッド。
美しい銀髪の人形じみたブルー。
きらきらの金髪に大きな瞳が子供じみたイエロー。
全員が期待を込めてソニックを見ている。
ソニックは椅子に座り込みテーブルに突っ伏した。
「見ての通りだ、としか……」
きっやあぁああああ!
とんでもない声量の超音波を喰らった。
「言ったとおりでしょーっっ! 前々からボスのスワロウ隊長へのちょっかいがエロいと思っていたのよー!」
「そうよね、レッド姉さま! あれは代償行為よ! 飲ませたり、汚したり! だって、もう、目が!! 隊長を見る目がね、あれは獲物を狙うケダモノの目よ! 食べたくて、食べたくてたまらなかったのよ! 視姦よ! 視姦! ロックオンよおぉおお」
「いやああん! すてき! 頭の中ではもう、凄い事になっていたんでしょうねー!! だから食べちゃたのよねー!! さすがの行動力ですわー! どこまでもついて行きますわぁぁ! ボスー!!」
「どこへ行く気だ!! というか、その前に決定か! 決定なのか!!」
一人慌てるソニックに
『見てればわかるでしょ』
とは三姉妹の弁である。
わからんわ。というか、判りたくない。
腐ってる! この三人は腐りきっている!
ソニックは信じたくなかった。スワロウに対して邪な考えを持った男は少なくない。だが、スワロウはその全てを叩き伏せなぎ倒してきた。
そのスワロウ隊長が──
「そんなの、力ずくでねじ伏せたに決まってるでしょ? 相手はボスよ、ボス」
とレッドが断言すれば
「む、無理矢理なんてー、想いはあっても、口にはできずのすれ違いよね! やああん、素敵すぎる!」
とイエローが嬉しそうに身をくねらせる。
「縛ったのかも。いくらボスでも隊長を押さえ込むのは大変ですし」
とブルーが分析する。
ソニックが呆然としているうちに『ボスと隊長は好きあっていたけど、口に出せず喧嘩していた。お初はボスが隊長を無理矢理縛って犯した。今はらぶらぶ(はーと)』などと認定されてしまった。
「んなわけあるかぁあああー!」
真実は神のみぞ知る。
スワロウが退院できたのは冬になってからだった。
「やっと戻ってきたな」
クロスに声をかけられ、スワロウは一瞬、言葉に詰まった。
「……内臓だからな……経過に時間かかって……挨拶はまた、明日にでもさせてもらうぜ」
眼を合わせないようにして、立ち去ろうとしたスワロウに、クロスが声をかけた。
「そっちじゃねえよ」
自分の部屋に戻ろうとしたスワロウに、クロスが声をかけた。
「部屋を変えたのか?」
「こっちだ」
何の疑問も持たず、クロスに案内されるままスワロウ後についていった。
「………あっちって、ボスの部屋の方よね?」
柱の陰に隠れて見守っていたレッドがいう。
「連れ込みましたわ。ええ、絶対」
柱の陰の人その二、ブルーが望遠鏡を握り締める。
気配に敏感な二人に悟られぬよう安全距離をとり、さらに物陰に隠れつつ望遠鏡で見守る──はたから見れば不審、否、危険人物である。危なすぎる。
「お姉さま方、行かなきゃ!」
イエローが走り出す。三姉妹が目指すのは警備室であった。
警備室には二系統あり、三姉妹駆け込んだのはサブシステムの方である。
先客がいた。
「やあ、絶対くると思ってたよ♡」
童顔のナイフ使いがにこにこしていた。
「あ、あううう」
「リッパー隊長……」
「なんで、今ここに!」
リッパーがニコニコと手招きをする。
「早くおいでよ。扉はしっかりしめてね」
三姉妹は地獄を覚悟して扉をしめた。オートロックで鍵がかかる。
「ブルーちゃんなら、ハッキングしてボスの部屋のモニターカメラ入れれるよね? 映像こっちだけにまわせる?」
黒い笑顔のリッパーに満面の笑みで答えるブルー。
「ええ、もちろんですわ」
さっそくシステムを弄りだす。
「音はー? 録画録音ももちろんしますよね~」
ごそごそと機材をいじるイエロー。
「当然でしょ~、ボスとスワローのメモリアルだもん」
くふふふふふふふと黒い共犯者の笑いがこだました。
そしてディスプレイの画面が生き返る。
「ボス、隊長、我々は全力で二人の愛をどこまでも温かく見守りますわ!」
地獄に堕ちたほうがいいかもしれない。
クロスは急がなかった。
首筋に唇を這わせ、体のあちこちを愛撫する。最初のときはいきなり押し入ってきたが、今日はそうするつもりは無いようだった。
正気のときに、そんなことをされた覚えは無い。
「あ……う……」
甘ったるい声を上げてしまい、スワロウは思わず口を押さえた。
クロスがその手を無理矢理引き剥がし、唇を重ねる。
歯列をわって舌が入ってきた。応え方を知らないわけではないが、スワロウは戸惑った。
濃厚な、貪るようなくちづけ。それから開放されたときにはすっかり息が上がっていた。
「……前は……こんな……しなか……」
「犯りてえんじゃねえ、抱きてえんだよ」
手っ取り早く犯すのではなく、抱くつもりなのだと、クロスは言う。
確かに、その手と唇は快感を引き出していたが、クロスの愛撫に反応してしまう肉体が、スワロウは嫌だった。
感情を認めることさえ困難で、その後も、どういう態度をとればいいのか分からなかった。男に感じさせられるということに、まだ戸惑いを覚える。
それなのに、肉体は悦びを覚えて、反応してしまう。
そのギャプが耐えられない。
「……もう……やめ……あっ!……」
「そんな顔……するなよ、我慢できなくなるぜ」
体内にクロスの指が入り込んだ。
「あっ……うっ……」
中に潤滑剤を塗りたくりながら、探るように動く。
「んん……ひっ!」
ある場所を刺激されたとたん、スワロウはのけぞった。
「ここか?」
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そこに触れられると、のけぞってしまうほどの刺激が走った。たちまちスワロウのそれが立ち上がった。
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女の悦ばし方は知っていても、男のそれは知らなかったはずだ。
それをわざわざ調べたのは、どう考えても、自分を抱くためだとしか思えない。
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あのときの苦痛を思い出し、体が逃げてしまった。
しかし、クロスが腰を抱え込んで逃がさなかった。
「嫌なのか?」
「……嫌だったら……とうに逃げている」
縛められているわけではない。妙な薬も使われてはいない。スワロウは自分の意思で受け入れるつもりだった。
改めてそこにあてがわれたのが分かった。
スワロウは硬く眼を閉じた。
入院中暇をもてあましたリッパーが散々耳元で、『受け入れるコツ』とやらを話していた。聞きたくは無かったが、暗記してしまうほど、何度も何度も繰り返された。
そのときは鬱陶しいとしか思わなかったが、スワロウはそれに従った。
「あぐっ! 〰〰〰〰うう、ぐうぅぅ」
最初のときよりは幾分ましだが、体を貫かれる痛みに、スワロウは必死に耐えた。
クロスが動き出し、苦痛が増した。
どこが苦しいのかも、分からなくなる苦痛。体全体が、熱くて熱くて、苦しかった。
これが快楽になるはずが無い、そう思うほどに苦しかった。
「前より、楽に入ったぞ。慣れたのか?」
「……ちが……ふうっ、ぐう、あっ」
脈打つような痛みに、スワロウはのけぞった。
敷布を握り締め、体全体を引いては押し寄せる熱に耐えた。
前にもクロスの手が伸びていた。苦痛のあまり一度は萎えていたそれはいつの間にか立ち上がり、露を結んでいた。
「あ……はぁ……ふ……う」
前と後ろからの刺激に、スワロウの声に艶が混じり始めた。
「飛燕……」
耳元で本名を囁かれ、ぞくりとした感覚が体を走った。
「……ボ……ス」
「名前、呼べよ」
促され、スワロウはその名を口にした。
「……クロ……ス……」
嫌になるほど、甘ったるい声がでた。
「イイ声だな」
それに煽られたのか、スロスの動きが激しくなった。
「ひっ!……ああ!」
後はもう、身のうちで暴れる熱に翻弄されるだけだった。
敷布に広がる自分の髪を、スワロウはぼんやりと眺めていた。
先ほどからしていた水音がやんで、クロスがバスルームから出てきた。
「俺の部屋はどうなった?」
「あのままにしてある。掃除くらいはさせているが」
「そうか」
スワロウは起き上がろうとした。
だが、クロスがその肩を掴んだ。
「どこへ行くつもりだ?」
「自分の部屋だ」
「必要ないだろう」
「おい……」
「ここで寝起きすればいい」
「なに言ってやがる! 自分がなに言ってるのか、分かってんのか!」
それは、ほとんど、情人として同棲しろと言っているようなものだ。
「もちろん、分かってる」
「できるかぁ!! あんた、女も囲ったことねえくせに!!」
ただでさえ、皆に知れ渡っているというのに、クロスの部屋で寝起きなど、できるわけが無い。
どんな眼で見られるかと思うと、憤死しそうだ。
「ああ? かまわねえだろうが。どうせ、皆知ってるんだからよ」
「だから、嫌なんだよ!!」
どこまでも噛み合わない会話だった。
この後、頑としてスワロウは別室にこだわった。クロスはしぶしぶそれを認めたものの──度々スワロウの部屋に押しかけたり、自分の部屋に連れ込むので大差なかった。
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食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
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心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
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完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
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