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悲劇の始まり
人殺し
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コウが斬った相手は血を流していた。だが、量が尋常ではない。
回りから罵声や怒声が聞こえる。
「おいっ!あいつ大丈夫なのか?!
血の量がすごいぞ!?」
「本当に大丈夫なの?死んでるんじゃないの?なんか怖いんだけど。」
「おいおい、縁起の悪いことをいうな。黙っておけ。」
「いくら何でもやりすぎだろ!相手のやつ!序列が下なら加減をするのが当たり前だろ!」
こんな会話があちこちから上がる。
そして、当事者であるコウは黙ってうつむいていた。体が震え、顔が真っ青だ。明らかに様子がおかしい。
地球でいう、救急隊のようなものか、彼らが次々にフィールドの上に上がり、コウの相手を担架に乗せ、運び出した。
「ちょっと君!邪魔邪魔!今一刻を争うんだから、君は早く事情聴取を受けてきなさい!」
「はい…」
コウが消え入りそうな声で応じる。
そして、コウは学校の警備担当者に学校内に連れていかれる。
それら一部始終を、俺はただ見ていることしかできなかった。
「ねえねえ!ミナト君!コウ君が大会で何かやらかしたって本当?!アリアちゃんが、警備の人に連れていかれるのを見たって…」
「あ、ああ。そうらしいな。俺は詳しく知らないから、他のやつに聞いてくれ、ミナミ。」
俺の項垂れた様子を見て、察してくれたのか、すぐに他のやつに聞くために俺から離れた。
どういうことだ?コウは相手を殺してしまったのか?いや、そんなことはない、と信じたい。もし仮に、殺してしまっていたのなら、どうなるんだ?刑務所行きか?それとも、いきなり死刑とかになるのか?この世界の制度がいまいちよくわからない俺は、担任のケアンズに聞いてみることにした。
「し、失礼します。」
俺が少しどもってしまったことには、理由がある。
職員室の中が異常なほどいつもより慌ただしかった。教師全員があたふたと動き、またその中には電話対応に追われている教師もたくさんいた。
扉の前で突っ立っていると、いつぞやの厳つい教師に話しかけられた。
「どうした?俺たちは今とても忙しいんだ。用があるなら手短に頼む。」
「じゃあ、ケアンズ先生を呼んでください。」
「一番忙しい先生じゃねーか。まあいい。すぐ呼んでやるからそこで待ってろ。」
しばらくしてケアンズがやってきた。
「何の用だ、ミナト。今忙しいんだが。」
「それは承知しています。単刀直入に聞きます。コウはどうなるんですか?」
「ああ、そのことか。もし、殺してしまったのなら、刑務所行きだな。だが、もし致命傷でおさまったのなら、少しの停学期間があった後、学校に復帰という感じになるだろう。」
「そうですか。でも、いきなり死刑とかってあり得るんですか?」
「うーむ、そうだな。あり得ないことはないな。人を傷つけることはこの世の中で最大の罪だ。いくら過失だからといっても、重罪は免れないだろう。普通なら刑務所行きだ。だが、ここは学校だからな。さっき言ったように、停学期間を済ませるだけでいいかもしれん。」
刑務所という言葉がこの世界にも、あることに、少しばかり驚きながら、
「はぁ…そうですか。ありがとうございます。」
「まあ、怪我人の生死で罪の重さが変わると、思えばいい。それだけだな?では、私は仕事があるのでな。これで失礼する。」
目の前からケアンズが立ち去る。そして、自分に何かできることはないか、俺は模索し始めた。
翌日、大会中止が学校中に知らされた。
「おい、聞いたか?大会中止だってよ。なんでだろうな?」
「そうらしいな。噂によると、誰か対戦相手を殺しちまって、それをやった犯人、刑務所行きだってよ。」
「うおっ、マジか。そりゃー中止にもなるわな。」
こんな会話がいたるところでされている。
俺はコウの相手が死んだことをさっき知った。太い動脈を切られ、死因は出血多量だそうだ。結局俺はコウのために何もしてやれなかった。
俺はそんな自分を数日間ずっと責め続けていた。
回りから罵声や怒声が聞こえる。
「おいっ!あいつ大丈夫なのか?!
血の量がすごいぞ!?」
「本当に大丈夫なの?死んでるんじゃないの?なんか怖いんだけど。」
「おいおい、縁起の悪いことをいうな。黙っておけ。」
「いくら何でもやりすぎだろ!相手のやつ!序列が下なら加減をするのが当たり前だろ!」
こんな会話があちこちから上がる。
そして、当事者であるコウは黙ってうつむいていた。体が震え、顔が真っ青だ。明らかに様子がおかしい。
地球でいう、救急隊のようなものか、彼らが次々にフィールドの上に上がり、コウの相手を担架に乗せ、運び出した。
「ちょっと君!邪魔邪魔!今一刻を争うんだから、君は早く事情聴取を受けてきなさい!」
「はい…」
コウが消え入りそうな声で応じる。
そして、コウは学校の警備担当者に学校内に連れていかれる。
それら一部始終を、俺はただ見ていることしかできなかった。
「ねえねえ!ミナト君!コウ君が大会で何かやらかしたって本当?!アリアちゃんが、警備の人に連れていかれるのを見たって…」
「あ、ああ。そうらしいな。俺は詳しく知らないから、他のやつに聞いてくれ、ミナミ。」
俺の項垂れた様子を見て、察してくれたのか、すぐに他のやつに聞くために俺から離れた。
どういうことだ?コウは相手を殺してしまったのか?いや、そんなことはない、と信じたい。もし仮に、殺してしまっていたのなら、どうなるんだ?刑務所行きか?それとも、いきなり死刑とかになるのか?この世界の制度がいまいちよくわからない俺は、担任のケアンズに聞いてみることにした。
「し、失礼します。」
俺が少しどもってしまったことには、理由がある。
職員室の中が異常なほどいつもより慌ただしかった。教師全員があたふたと動き、またその中には電話対応に追われている教師もたくさんいた。
扉の前で突っ立っていると、いつぞやの厳つい教師に話しかけられた。
「どうした?俺たちは今とても忙しいんだ。用があるなら手短に頼む。」
「じゃあ、ケアンズ先生を呼んでください。」
「一番忙しい先生じゃねーか。まあいい。すぐ呼んでやるからそこで待ってろ。」
しばらくしてケアンズがやってきた。
「何の用だ、ミナト。今忙しいんだが。」
「それは承知しています。単刀直入に聞きます。コウはどうなるんですか?」
「ああ、そのことか。もし、殺してしまったのなら、刑務所行きだな。だが、もし致命傷でおさまったのなら、少しの停学期間があった後、学校に復帰という感じになるだろう。」
「そうですか。でも、いきなり死刑とかってあり得るんですか?」
「うーむ、そうだな。あり得ないことはないな。人を傷つけることはこの世の中で最大の罪だ。いくら過失だからといっても、重罪は免れないだろう。普通なら刑務所行きだ。だが、ここは学校だからな。さっき言ったように、停学期間を済ませるだけでいいかもしれん。」
刑務所という言葉がこの世界にも、あることに、少しばかり驚きながら、
「はぁ…そうですか。ありがとうございます。」
「まあ、怪我人の生死で罪の重さが変わると、思えばいい。それだけだな?では、私は仕事があるのでな。これで失礼する。」
目の前からケアンズが立ち去る。そして、自分に何かできることはないか、俺は模索し始めた。
翌日、大会中止が学校中に知らされた。
「おい、聞いたか?大会中止だってよ。なんでだろうな?」
「そうらしいな。噂によると、誰か対戦相手を殺しちまって、それをやった犯人、刑務所行きだってよ。」
「うおっ、マジか。そりゃー中止にもなるわな。」
こんな会話がいたるところでされている。
俺はコウの相手が死んだことをさっき知った。太い動脈を切られ、死因は出血多量だそうだ。結局俺はコウのために何もしてやれなかった。
俺はそんな自分を数日間ずっと責め続けていた。
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