終わり

千夜 すう

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第一章

休日の過ごし方

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「無事に婚約破棄をしました」


ヤンニョムチキンが美味しくて忘れそうになってた本題を切り出す。

「そうか。お疲れ様」

「岡崎さんから聞いてませんでしたか?」

「守秘義務でちゃんと守られてるよ。いくら、友人でも顧客の情報を話す事はないから安心してくれ。そもそも、俺もそういうのは聞かない」

そうですよねと相槌をうつ。信用第一の職業で、顧客の情報を友人や家族に話してしまったら、一発で信用を無くして廃業して職を失う。

 「大変だったろう。暫くの休日は、ゆっくりと過ごせ。仕事ではビシビシと働いてもらうからな」

「好きで入った会社でもありますので仕事が楽しいです。ビシビシと働きます...!!」
 
余り鍛えられてない力こぶを見せて、やる気満々なのを示す。

「筋肉一つ見てない」

「失敬な...見てください」

さっきよりも精一杯に力を込めるが悲しい事に腕が震えるだけで筋肉が見えるなどの変化はなく、主任は呆れた表情を浮かべている。

(休日に筋トレをするのもありかも)

今までの休日は、元婚約者と会って過ごしてるか1人で家にまったりとゴロゴロとだらしなく過ごしてるだけだった。

婚約を破棄すると決意した時からは、今後の事を考えたり、岡崎さんと打ち合わせしたりと忙しい日々を過ごしていた。

気分転換に外で何かをするのもいいかもしれない。

突然ですみませんと断りを入れて質問をする。

「主任は、休日に何をしてますか?」

「休日は犬の散歩かな」

「えっ、犬を飼ってるんですか?」

(なんか、顔的に似合いそう)

「あぁ、でっかい犬でな。平日も早起きして出社前に散歩するんだが、物足りないんだろうなた思って、休日は近所を散歩やドッグランに連れてってる」

犬が大好きなのが分かる位にデロンデロンに崩れたニヤケ顔を曝け出す。

「いつも出社が早いですよね?何時くらいに起きてるんですか?」

「4時位には起きてるかな」

なんともない感じで言われた時間にびっくりする。その時間は余裕で夢の中の住人で寝てる時間だった。

「凄いですね」

「慣れりゃ、別に普通だよ」

散歩ねぇ...良いかもしれないと考える。引っ越したばかりで、スーパーやコンビニと等の生活に必要な場所しか行った事が無い。

「散歩はいいぞ。何年、住んでても新たな発見があるんだ」

まるで、少年かのように熱弁でオススメされる。

それから、主任が散歩して気づいた事や面白い出来事を聞いた。

「あの通りには上手い肉まんが売られてるんだ。そのまま、食べながら散歩するのも最高で...」

「あの店は見た目が不気味だが、中には可愛らしいカフェが隠れていた。ペット可でペット仲間にも人気なんだ」

「あの通りには気をつけろ。ネコの縄張り争いしてた」

大人になっても、散歩をするだけで冒険が出来るんだなと面白い話を聞けて楽しかった。

話の中で、私も知ってる店があった。 

小さなショップで、可愛いアクセサリー等の小物が売られている。そのお店に偶に行くのだけど、店の人が明らかにそっちの人かと思うくらいに見た目が厳つい。接客は丁寧だから良い人だと思ってたけど、主任によると可愛いものが好きで、売られてる商品は全てその人の手作りだと聞いた。

知らなかったな...。
最近は行けてなかったし近々、行こうと脳内スケジュール帳に記す。

「散歩をしたくなりました」

「健康にも良いしオススメ」

右目をパチリと閉じたウィンクは、顔が整ってる人がやると様になると知った日であった。私がやっても目にゴミでも入ったのかと心配されるだけであった......実体験で元婚約者に言われた時は虚しかったのを思い出す。

「大丈夫か?手に持ってる箸を壊そうとしてる勢いに握ってるんだが...」

「あっ...大丈夫です。すみません」

アハハと乾いた笑い声で誤魔化すように手の力を抜いた。

「もっと、主任のお散歩エピソード聞きたいです」

「そうか?まだまだ、あるぞ」

生き生きと語り出す主任。話し方が上手くて分かりやすく、言葉選びにもセンスが光ってて飽きることなく笑いながら話を聞いていた。

今後、自分の婚約破棄をするよりも大変で面倒臭い出来事が起きると...この時は知らずに、主任のコミュ力凄いやって呑気な事を思いながら、楽しい一時を過ごした。
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