記憶の欠片

藍白

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その後5

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 触れられるうなじから記憶が流れ込んでくるようで胸が熱い。
「んっ、あっ」
「好きだよ、愛してる」
「ああっ、そ、こっ」
「啓介、噛むよ」
「う、ぁっ」
 ネックガードの外された啓介のうなじを舐める。
 はだけられた服がベッドに落ちると、現れた裸体を撫でられ発情し合う。鼻腔に香ってくる互いの匂いは懐かしくも新しいものだ。よく知っている匂いに安堵の息を漏らす。
 後孔の窄まりを撫でられ、指が入ると、啓介の背がしなる。支えられているうちに、宗弥の逞しい胸に縋っている。指が引き抜かれると、剥き出しになった性器を宛がわれる。啓介は、ごくりと生唾を飲み込んだ。
「愛している。ずっと好きだよ」
 言葉に込められた意味を思うと、自然と目に熱いものが込み上げる。ぐぐっと挿入される熱に圧迫感を感じ、宗弥の腕に縋る手に力が入る。
「ぁ、あ……っ」
 内壁を穿つ宗弥の大きさに、腹が圧迫感を感じるが、それさえも心地がいい。
 奥に突き入れられたかと思うと、宗弥の放った熱い飛沫を感じる。同時に感じるうなじの熱い痛みに震える。
 番だ。
 記憶の欠片がはまっていく。思い出す過去の記憶は、遠い昔の後悔だ。互いの心に強く残されていた後悔を変えていく喜びを互いに感じる。
「……宗弥」
 はっはっ、と小刻みに息を吐き出しながら見つめれば宗弥がいる。脱力する自分の体を抱きしめながら、愛おしげに見つめている。
「啓介」
 名を呼び呼ばれ、そしてまた――嬉しいと感じることが出来るのは、過去の後悔を受け入れ、今を進もうと思ったからだ。
 窓の空を見つめる。
 こんなにも空は晴れていたと思うと泣けてくる。
「愛してる」
 けれども今は、あの時伝えられなかった想いを伝えたい。
「愛してる」
 聞いていたが、届いていなかった宗弥の想いを聞く。後悔の記憶は秋風に乗って消えていく。愛し愛される未来へと変わるのだから。
 
 啓介の熱が下がった翌日、宗弥のマンションに場所を移し、ふたりはともに暮らすことになる。
 気怠げにソファーに寄りかかりながら、うなじに刻まれた噛み跡を撫でる。ちりっとした痛みを感じ、笑みが浮かぶ。
「どうした?」
 啓介の横には愛しい番が座っていて、愛おしげに肩を抱き寄せる。
「ああ、番になったと」
「そうだな。番だ」
 噛み跡に触れている啓介の手に口づける。感じる宗弥の熱が嬉しくて、素直に思いを伝える。
 記憶の中の自分は、殻に閉じこもり想いを閉じ込めていた。だからこそ今は伝えたい。
「……仕事」
「ん?」
「俺、仕事、……はじまったばかりだから」
「そうだな」
「……子どもだけど」
「ああ」
「出来たら……どうするつもりだ?」
「もちろん産んで欲しいし、育てていきたいさ」
「……どっちが?」
「ふたりで」
「時期社長が育休か?」
「そう出来たいいと思っている」
 笑みを浮かべて宗弥が言うから、きっとそうするだろうと啓介は思う。
「それはありがたいな」
「だろう?」
 互いに見つめ合い笑える今が愛おしい。宗弥との間に、建前や嘘は必要ない。
 何度も熱い精を注ぎ込まれた腹を撫でる。熱さが未だ腹に残っているように感じ、知らずのうちに啓介の脳裏に赤子の存在が浮かんでいた。
 孕んだか。
 不思議と心穏は穏やかだ。
 仕事は、始まったばかりだから続けたい。
 それでも子が授かっていれば、この子を選びたいから、ふたりで育てていく。
 後悔のない未来を、ふたりで選び進んでいく。
 遠い記憶の欠片は今はない。これから希望が込められた記憶の欠片が生まれるのだから。
 
 
END
 
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