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綺麗なものが嫌いな魔女の話
しおりを挟む魔女は、美しいものが嫌いだった。
宝石、キラキラと輝く海、色鮮やかな動物。
…そして、容姿の良い人間。
魔女は人目に着く場所に行くのが苦手だった。
魔女の家は森の中にある大木の上部をくり抜いて作られていた。たまに顔を出す薬草の店に行く際は、森の中を通り抜けて移動していた…。
ある日の魔女は薬草の店から珍しい草を手に入れ、ご機嫌で帰路についた。いつもは森の中を枝葉をかき分けながら移動するが、この日は少し見通しの良い道を歩いていた。
ふと、道の先の草むらに目を向けると、何かがモゾモゾと動いている。
…人間の足だ。
いつもの草だらけの道を歩いていたら見つけられなかった。靴の大きさからして子供だろう。人助けなんて魔女のすることでは無いが、魔女はその足を持ち上げ引きずり出した。
…やはり。
魔女は引きずり出した子供を見て目を輝かせた。ズボンと靴は黒ずんでボロボロになり、シャツは所々に穴が空いている。髪の毛は暫く洗っていないのか、いくつかのダマができている。
…醜い子は好きよ。
魔女はその子供を持ち上げ、パチンと指を鳴らした。するとどこからか、愛用のホウキが飛んできた。子供を担いだ魔女はホウキに乗り、家に連れ帰った。
ーーーーーー
…醜いものは好き。綺麗なものは嫌い。
家の中はその者の心を表すとはよく言ったものだ。魔女の家にはあちこちに蜘蛛の巣があり、机やキッチンは埃まみれ。いつも使っている魔女のベッドだけは綺麗に整えられている。
…カビやキノコは生えているが。
魔女は、連れ帰った子供を風呂に入れた。
醜いものは好きだけど、風呂には定期的に入らなければならない。薬草の店で働く娘に口酸っぱく言われたから仕方なく入ってやっている。
風呂に入れた子供は抵抗すことなく無言でされるがままだった。体を洗い、髪を櫛で梳かし洗ってやる。髪の手入れは風呂に入ることの次に大事な事だ。これも薬草の店の娘に言われた。
…なんてことだ。
風呂から上がった子供の前髪を、目にかからないところまで切ってやった。それが間違いだった。
子供の顔は酷く整っており、目を閉じていれば彫刻のように、目を開ければ人形のように見える。どちらも私の嫌いなものだ。
酷く整った顔をこちらに向けた子供は、初めてその口を開いた。
「あの、まじょさま。助けて頂きありがとうございます。この恩は、一生をかけてお返しします」
…おそろしい。
その子供は、声まで美しい。目にも耳にも悪い子供を連れ帰ってきた私は酷く後悔した。
…それから、10年の月日が経った。
「まじょさま。まだ僕の顔を見れないですか?僕はまじょさまと目を合わせて話したいです」
子供はみるみるうちに成長し、魔女の身長より頭ひとつ高い。恐ろしいことに、子供は魔女の家を10年かけて、隅々まで綺麗に掃除した。魔女が長い年月をかけて醜い素敵な空間を作ったのに、その努力が水の泡になってしまった。
それから子供は、魔女が家をこっそり汚す度に掃除をしてくる。イタチごっこだ。それから私の感性はおかしくなってしまった。
…綺麗なものが、あまり嫌いで無くなってしまった。
子供によって感性が変わった魔女は魔女は、宝石、キラキラと輝く海、色鮮やかな動物も悪くないと思えるようになってしまった。
…そして、酷く容姿の良い子供も。
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