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主菜 ただいま営業中!
第41話 猫がいなけりゃ猫の手も借りられぬ
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このよく晴れた朝。あたしは下着姿でジローに餌をやっていた。
着ている下着はもちろんピリムが作った物だ。黒っぽいグレー(ジロー色だ)に染めた綿でできていて、もともとは冒険者のために吸汗性と動き易さを追求した物だったらしいけど、四月に入って太陽のご機嫌が急上昇中の寝苦しいこの季節にもちょうどいいもんだから、あたしはすっかりこいつが気に入ってる。外もこのまま出歩きたいくらいだ。
「まさかおまえが家持ちになるとはねえ」
ジローも快適な環境を気に入ったらしく、今日も機嫌よく鶏を貪ってる。
快適といってもただ屋根と壁があって藁が敷いてあるってだけの掘立小屋なんだが、フェンリルはもともと縄張り意識の強い種族だから、自分だけのための場所ってのは本能的に安らぐんだろう。
ただひとつ、変な癖がつきつつあるのが気になるところ。
この中庭にまったく陽が入らないせいで縄張りでの昼寝には不満があるらしく、なんとまあ、こともあろうに血塗れ乙女亭の外壁をよじ登って屋根の上で寝るようになっちまったんだ。
そりゃあ、フェンリルは縦の動きにも強く木や崖を登って狩りをすることのできる種族だし、この辺で一番高い建物の上なんだから日当たりは最高だろうさ。
ただ、それを見た町の連中は悲鳴を上げるし店長から文句をいわれるしで、あたしにとっては悩ましいところだ。
まあでも、そもそも街中に小屋を立てて居座らせることを考えた店長が悪いね。馬じゃないんだから町の外で放っておいてもなんの問題もなかったのに。そうしてたら、毎回ジローが路地からぬっと出てきて大通りをわがもの顔で歩いて狩りに出て行くたびに驚くやつはいなかっただろう。
「おまえ、この暮らしに慣れて野性を忘れるんじゃないよ」
なんて、埒もないか。
もしそんなことになったら、それはあたしが魔獣使いとしてモンスターに本能を忘れさせちまうくらい優秀だってことだ。
なんてことを考えてると、背後でドアが開いて誰かが寄ってきた。この足音はオフェリアだ。
彼女はすっかりピリムの一番弟子になってあたしと同じく移り住んでいて、朝は必ず朝食を作ってくれている。きっとできたから呼びにきたんだろう。
と、思ったら。
「ねえ、ピリムちゃん知らない? 家の中にいないみたいなんだけど」
「今日はまだ見てないね」
「そう……もしかして昨日シャルナちゃんのところに泊まったのかしら」
「昨日あたしが帰ったときは工房にいたはずだぞ」
「だったらそのあとなにかあったのかしら」
「なんでそう思う?」
「いえね、ちょっとピリムちゃんらしくない感じで工房が乱れてたから、なにか問題が起こって飛んで行っちゃったのかなって」
「ふうん……」
半端な返事をしてしまったのは、昨日のことを思い出したからだ。
昨日、確かにあたしは夜晩くに帰ってきて、工房に明かりがついてるのを見た。だから邪魔しちゃ悪いと思って中を覗かずそのまま部屋に戻った。
つまり、ピリムの姿は確認していない。
最後に見たのは、昨日の朝食のときだ。
あの慌ただしい子のことだから突発的にどこかへ出かけたのかもしれないけど、さすがに丸一日見かけないんじゃ、護衛を理由に居候させてもらってる身としてだらしないか。
「あんたはシャルナのとこに行ってみてくれ。あたしはもう一度家の中を捜してみるよ」
「わかったわ」
あたしは水を飲み始めたジローをひと撫でして、家に入った。
最初にピリムの私室を見た。
引っ越してきて以来、一度も片付いていないままのぐちゃぐちゃの部屋だ。猫は狭いところが好きだというから念のためクローゼットやタンスの中も見たけど、いない。もちろんベッドの下も。
そうやって住居になってる三階の部屋をすべて調べて、次に二階の工房に入った。
確かに一見すれば、ピリムのあの性格だから、慌てて出かけたように見えなくもないような荒れ具合。あたしにはどう使うのかわからないような道具や衣服の材料がそこら中に溢れてる。
だけど、どんなに急いでたって、大事なハサミを床に転がしたまま、縫いかけの布をぐしゃぐしゃにしたまま飛び出していくほど、雑な子じゃない。
……なんだか、嫌な予感がしてきた。
だから、ランプを取って軽く振ってみた。
空だ。
「勘弁してくれよ……」
いったい、いつからいなかった……?
昨晩、ランプがついていたということは夜ここで作業していたのは確かだろう。だけどそれは、いつまでだ?
あたしが血塗れ乙女亭で飲んで帰ってきたのは十時過ぎだったはず。
そのときにはもういなかった?
そのあとにいなくなった?
どっちにしても、そのことに気づかなかったってのは、相当なマヌケじゃないか、あたしは……!
自分に怒りを覚えながらしばし立ち尽くしていると、オフェリアがシャルナを連れて戻ってきた。
そしてシャルナもこの状況を見て、同じことを思ったらしい。
「すぐに人を集めて捜そう。店長さんにも話して人手を借りましょう」
そういうわけであたしは、開店前の血塗れ乙女亭でアホ面を晒すことになった。
状況を聞いて、店長もやっぱりあたしたちと同じ可能性が高いと踏んだようだった。
「まったくあいつは、次から次へと騒ぎを起こしてくれるな」
「面目ない、あたしがいながら……」
「おまえがいるからこそ、いないときを狙われたんだろう」
「そうだよユギラさん、四六時中べったりついてられるわけじゃないんだから、そんなに落ち込まないで」
シャルナはそういってくれるけど、護衛を理由に居候させてもらっておきながらその同居人がさらわれるって、どう考えてもあたしの責任だよ。ジョーの呆れ顔をぶん殴れない程度にはね……
っつーか、なんでこんなときに翁がいないんだよ、あの爺さんだったら気を辿って追跡できるのに……!
「オフェリアはイクティノーラに、リエルはドミに協力を頼みに行ってくれ。まだ誘拐と決まったわけじゃないが、そのつもりで情報収集を」
「わかりました」
二人はすぐに出て行き、ゼルーグが問うた。
「おれはどうする?」
「衛兵は動かせない、捜索に回せるほど人数に余裕がないからな。冒険者のほうは報酬を出せば動くだろうが、誰が出すか……」
「私が出します!」
名乗り出たのは案の定というべきか、シャルナだ。
あたしの責任なんだからあたしも手を上げたいところなんだけど、悲しいかな、金なんてほとんどもってない……!
「とりあえずゴールドレッド団の人たちに依頼して、そのツテで有力な情報には賞金ってことにすればある程度の混乱は避けられると思います」
「そうだな、それがいいだろう。普通に考えればもうこの町にはいない、冒険者にはできるだけ外に目を向けてもらえ」
「はい!」
「ちょっと不安だが、ウィラも使うか。グルナイ族の鼻なら追跡できるかもしれない」
あ、そうだよ。なにも翁がいなくたってあたしには追跡のプロが相棒についてるじゃないか!
「それならジローも得意だ、あたしも行くよ!」
あたしは大慌てで店を飛び出した。
着ている下着はもちろんピリムが作った物だ。黒っぽいグレー(ジロー色だ)に染めた綿でできていて、もともとは冒険者のために吸汗性と動き易さを追求した物だったらしいけど、四月に入って太陽のご機嫌が急上昇中の寝苦しいこの季節にもちょうどいいもんだから、あたしはすっかりこいつが気に入ってる。外もこのまま出歩きたいくらいだ。
「まさかおまえが家持ちになるとはねえ」
ジローも快適な環境を気に入ったらしく、今日も機嫌よく鶏を貪ってる。
快適といってもただ屋根と壁があって藁が敷いてあるってだけの掘立小屋なんだが、フェンリルはもともと縄張り意識の強い種族だから、自分だけのための場所ってのは本能的に安らぐんだろう。
ただひとつ、変な癖がつきつつあるのが気になるところ。
この中庭にまったく陽が入らないせいで縄張りでの昼寝には不満があるらしく、なんとまあ、こともあろうに血塗れ乙女亭の外壁をよじ登って屋根の上で寝るようになっちまったんだ。
そりゃあ、フェンリルは縦の動きにも強く木や崖を登って狩りをすることのできる種族だし、この辺で一番高い建物の上なんだから日当たりは最高だろうさ。
ただ、それを見た町の連中は悲鳴を上げるし店長から文句をいわれるしで、あたしにとっては悩ましいところだ。
まあでも、そもそも街中に小屋を立てて居座らせることを考えた店長が悪いね。馬じゃないんだから町の外で放っておいてもなんの問題もなかったのに。そうしてたら、毎回ジローが路地からぬっと出てきて大通りをわがもの顔で歩いて狩りに出て行くたびに驚くやつはいなかっただろう。
「おまえ、この暮らしに慣れて野性を忘れるんじゃないよ」
なんて、埒もないか。
もしそんなことになったら、それはあたしが魔獣使いとしてモンスターに本能を忘れさせちまうくらい優秀だってことだ。
なんてことを考えてると、背後でドアが開いて誰かが寄ってきた。この足音はオフェリアだ。
彼女はすっかりピリムの一番弟子になってあたしと同じく移り住んでいて、朝は必ず朝食を作ってくれている。きっとできたから呼びにきたんだろう。
と、思ったら。
「ねえ、ピリムちゃん知らない? 家の中にいないみたいなんだけど」
「今日はまだ見てないね」
「そう……もしかして昨日シャルナちゃんのところに泊まったのかしら」
「昨日あたしが帰ったときは工房にいたはずだぞ」
「だったらそのあとなにかあったのかしら」
「なんでそう思う?」
「いえね、ちょっとピリムちゃんらしくない感じで工房が乱れてたから、なにか問題が起こって飛んで行っちゃったのかなって」
「ふうん……」
半端な返事をしてしまったのは、昨日のことを思い出したからだ。
昨日、確かにあたしは夜晩くに帰ってきて、工房に明かりがついてるのを見た。だから邪魔しちゃ悪いと思って中を覗かずそのまま部屋に戻った。
つまり、ピリムの姿は確認していない。
最後に見たのは、昨日の朝食のときだ。
あの慌ただしい子のことだから突発的にどこかへ出かけたのかもしれないけど、さすがに丸一日見かけないんじゃ、護衛を理由に居候させてもらってる身としてだらしないか。
「あんたはシャルナのとこに行ってみてくれ。あたしはもう一度家の中を捜してみるよ」
「わかったわ」
あたしは水を飲み始めたジローをひと撫でして、家に入った。
最初にピリムの私室を見た。
引っ越してきて以来、一度も片付いていないままのぐちゃぐちゃの部屋だ。猫は狭いところが好きだというから念のためクローゼットやタンスの中も見たけど、いない。もちろんベッドの下も。
そうやって住居になってる三階の部屋をすべて調べて、次に二階の工房に入った。
確かに一見すれば、ピリムのあの性格だから、慌てて出かけたように見えなくもないような荒れ具合。あたしにはどう使うのかわからないような道具や衣服の材料がそこら中に溢れてる。
だけど、どんなに急いでたって、大事なハサミを床に転がしたまま、縫いかけの布をぐしゃぐしゃにしたまま飛び出していくほど、雑な子じゃない。
……なんだか、嫌な予感がしてきた。
だから、ランプを取って軽く振ってみた。
空だ。
「勘弁してくれよ……」
いったい、いつからいなかった……?
昨晩、ランプがついていたということは夜ここで作業していたのは確かだろう。だけどそれは、いつまでだ?
あたしが血塗れ乙女亭で飲んで帰ってきたのは十時過ぎだったはず。
そのときにはもういなかった?
そのあとにいなくなった?
どっちにしても、そのことに気づかなかったってのは、相当なマヌケじゃないか、あたしは……!
自分に怒りを覚えながらしばし立ち尽くしていると、オフェリアがシャルナを連れて戻ってきた。
そしてシャルナもこの状況を見て、同じことを思ったらしい。
「すぐに人を集めて捜そう。店長さんにも話して人手を借りましょう」
そういうわけであたしは、開店前の血塗れ乙女亭でアホ面を晒すことになった。
状況を聞いて、店長もやっぱりあたしたちと同じ可能性が高いと踏んだようだった。
「まったくあいつは、次から次へと騒ぎを起こしてくれるな」
「面目ない、あたしがいながら……」
「おまえがいるからこそ、いないときを狙われたんだろう」
「そうだよユギラさん、四六時中べったりついてられるわけじゃないんだから、そんなに落ち込まないで」
シャルナはそういってくれるけど、護衛を理由に居候させてもらっておきながらその同居人がさらわれるって、どう考えてもあたしの責任だよ。ジョーの呆れ顔をぶん殴れない程度にはね……
っつーか、なんでこんなときに翁がいないんだよ、あの爺さんだったら気を辿って追跡できるのに……!
「オフェリアはイクティノーラに、リエルはドミに協力を頼みに行ってくれ。まだ誘拐と決まったわけじゃないが、そのつもりで情報収集を」
「わかりました」
二人はすぐに出て行き、ゼルーグが問うた。
「おれはどうする?」
「衛兵は動かせない、捜索に回せるほど人数に余裕がないからな。冒険者のほうは報酬を出せば動くだろうが、誰が出すか……」
「私が出します!」
名乗り出たのは案の定というべきか、シャルナだ。
あたしの責任なんだからあたしも手を上げたいところなんだけど、悲しいかな、金なんてほとんどもってない……!
「とりあえずゴールドレッド団の人たちに依頼して、そのツテで有力な情報には賞金ってことにすればある程度の混乱は避けられると思います」
「そうだな、それがいいだろう。普通に考えればもうこの町にはいない、冒険者にはできるだけ外に目を向けてもらえ」
「はい!」
「ちょっと不安だが、ウィラも使うか。グルナイ族の鼻なら追跡できるかもしれない」
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