学年で1番のイケメンに彼女を寝取られた。そしたら、イケメンの美少女友達が縁を切った

白金豪

文字の大きさ
4 / 37

第4話 美少女の名前

しおりを挟む


 嵐のような休み時間を経て、1時間目終了後。

 再び、休み時間に突入した。時間は10分だ。

 教室の後方から退出し、颯は1階の校舎に向かう。聖堂高校の校舎は4階建てた。2年生の教室は2階に設置される。

 自動販売機で飲み物を購入するために、颯は自動販売機場所に移動する。自動販売機は昇降口の真近くに設けてある。

 ガタンッゴトンッ。

 先客がいた。何度か視認した背中。

 女性は身体を屈め、購入したミネラルウォーターを取り出す。

「やあ。さっきの休み時間以来だな」

 後方の死角の颯に気づき、美少女が振り返る。

 その美少女は例の颯の教室に現れた人物だった。

「うん。さっきはどうも」

 ぎこちなく軽く、颯は会釈する。ほぼ初対面の相手に畏まった態度を取った。自然と身体が動いた。

「ああ。それと、自己紹介がまだだったな。私の名前は八雲遥希(やくも はるき)。天音の隣のクラスだ」

 簡単に自己紹介を行った遥希。

 颯のクラスは2年6組だ。隣のクラスなため、遥希は2年5組に所属する。

「どうぞ! 天音も何か飲み物を購入するために、ここまで足を運んだんだろ? 」

 自動販売機の目の前から遠ざかる遥希。自動販売機の前が開く形となる。

 普段通り、自動販売機は、明るく、輝かしい、ブルーライトを放つ。

「…じゃあ、お言葉に従って」

 制服のズボンの前ポケットから、颯は財布を取り出す。緑の折り畳み式の財布だ。

 小銭を取り出す。合計で150円を手に取る。

 150円を100円から順番に、自動販売機へ投入する。チャリンッチャリンッと6枚の硬貨が自動販売機本体に入り込む。

 購入可能な商品(ドリンク)のボタンが、青色に光る。商品のうちの8割のボタンが青く染まる。

「これにしよっと」

 気軽に独り言を呟き、麦茶の真下のボタンをプッシュした。

 ガタンッゴトンッと先ほど同様に、自動販売機が500mlのペットボトルを吐き出す。

 ペットボトルの落ちた音は、颯の鼓膜を確実に刺激する。どこか耳に心地よい感触だ。

 腰を屈め、颯は自動販売機の吐き口からペットボトルを取り出す。

 キンッキンッに冷え切ったペットボトルの温度が颯の手全体に伝わる。冷蔵庫に手を入れた感覚と類似していた。

「ちょっと! そろそろ機嫌を直してくれよ。なぁ遥希! 」

 書き馴染めのない声色が颯の耳を通り抜ける。程よく低く、男らしいイケボだった。このイケボに虜になる女子を容易に想像できる。グッドなボイスだった。

「はぁ~~。私がお前に直で伝えた内容を忘れたのか? なあ、石井」

 気だるそうに、頭を掻き、遥希は振り返る。彼女の大きな瞳が、金髪、長髪、高身長イケメンを映す。

 颯の彼女をNTRした石井の姿だった。

 憎たらしいが、男の颯から見ても、石井はイケメンだった。どこの誰が目にしても、イケメンと認識するだろう。

「もちろん覚えてる。でも、君みたいな美しい女性を友人として失うなんて。俺は耐えられない。だから俺の元に戻ってくれ。お前以外にも他のメンバーまで俺との縁を切るなんて言い出したんだよ。頼むよ! 俺と復縁して、他のメンバーも取り戻そうぜ! 」

 必死の形相で、石井は捲し立てる。多少なりとも早口だった。精神状態は穏やかではないのだろう。普段のような、透かしたような余裕も存在しない。

「は? そんなことするわけないだろ。誰がお前みたいなクソ野郎と復縁なんてするか。精々がんばれ」

 颯の対応とは打って変わり、冷めきったトーンで、遥希は吐き捨てる。目を細め、石井へ軽蔑を示す。

「じゃ、私はここで失礼させてもらう。またな天音」

 声のトーンは劇的に変化し、遥希は好意的な態度で颯に軽く手を振る。

 言葉通り、その場を立ち去ろうと試みる。

 颯と石井は同じく、遥希の背中を黙って見届けていた。

「ちょ、ちょっと待てよ! 」

 遥希の背中が消え掛けたタイミングで、石井は駆け足で後方を追い掛けた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

処理中です...