学年で1番のイケメンに彼女を寝取られた。そしたら、イケメンの美少女友達が縁を切った

白金豪

文字の大きさ
13 / 37

第13話 褐色ギャル

しおりを挟む


 昇降口から学校の正門に移動する颯。移動する間、様々な男女の生徒を見掛けた。

 部活のウェアを着る生徒、颯と同じように制服を身に纏う生徒などを目にした。

 もちろん生徒達の名前は知らない。顔すら初めて見た。

 誰とも会話せず、口を開かず、正門に差し掛かる。流れるように、学校を抜ける。

「ちょっと放して! 愛海にしつこく絡まないで! もうあんたとは関わらないと決めたんだから!! 」

 正門近くで、聞き覚えの無い、抵抗するような女性の声が生まれる。

 その声は颯の鼓膜を強く刺激する。

 結構なボリュームだった。距離も近いことから、十分すぎるほど伝わる。

「そんなこと言うなよ! 遥希も瑞貴も俺から離れて行ったんだよ。現時点では俺の元に戻る気配は皆無だ。だから頼むよ愛海。せめてお前だけでも考え直してくれないか? 」

「いやだし! 愛海もあの2人と一緒だよ! 友達の縁は切ったんだから! 2度と、あんたと関わりなんて持ちたくないし!! 」

 正門の近所で、石井が褐色ギャルの手を掴み、行動の自由を奪う。

 明らかに嫌悪感を示し、褐色ギャルは、掴まれた手を振り払おうとしている。

 だが、男女では力に差がある。一見して、褐色ギャルより、石井の方が優れた体格を所持する。そのため、手を振り払おうにも、叶わないのが現実だ。

 そんな光景が颯の視界に映る。2メートルほど離れた場所で、繰り広げられる。

 石井の顔には必死さが滲み出ていた。

 しかし、褐色ギャルは拒絶している様子。

 石井の願いを、バッサリ切り捨てる。

 流石に目の前の出来事を、他人事としてスルーできなかった。ここで無言でその場を立ち去れば、未来で絶対に後悔するだろう。多大な罪悪感も感じるだろう。

 後に苦しい思いもする。これは明白だ。

 人によっては後悔や罪悪感を覚えないかもしれない。しかし、颯はそのような人間ではない。かなり繊細な心を持った人間である。良くも悪くも神経質な部類に属する。

「ちょ、ちょっと石井君! 女の子が嫌がってないかな? 」

 陽キャでイケメンの石井に、内心では怯えながらも、緊張や恐怖を跳ね除け、勇気を振り絞って、歩を進める。

 颯は2人との距離を埋める。自然と颯と残りの2人との距離が縮まる。

「あ? 只今、立て込んでいるんだが。って、またお前か? 陰キャが俺に進んで話し掛けて来るんじゃねぇよ! 立場をわきまえろ!! 」

 褐色ギャルから意識を外し、颯を認識するや、以前と同様に、石井は軽蔑の目を向ける。言葉からも見下した感情が溢れ出す。態度も依然として前と変化なし。

 当然、褐色ギャルも颯の存在に気付いた。ボブヘアの金髪が左右に揺れる。髪の色から、おそらく染髪したものだろう。地毛は異なる髪の色に違いない。

「それと、邪魔するな! 陽キャの俺の時間を奪うな! 以上!! 」

 しっしっと、手で虫を払うような仕草をする石井。明らかに苛立った表情を浮かべる。颯を邪魔者として扱う。

 颯は良い思いをしなかった。不快感が胸中に漂う。

 だが、怒りは爆発しない。聖羅の顔を見てる方が、不快で怒りも覚える。

「いい加減に放すし! 」

 一方、隙を突き、褐色ギャルが、自由な右足を用いて、石井の股間を蹴り上げる。丁度、両股が無防備に開いていた。

 勢いよく振り上げた右足が、石井の大事なあそこにクリーンヒットする。おそらく、玉に大きな衝撃が加わっただろう。

「お……おぅぅぅ~~~」

 だらしない声を口から漏らし、男の大事な部分を押さえながら、石井は地面に両膝を付いた。過呼吸のように小刻みに息も乱れる。まるで壊れた湯沸かし機みたいだ。

 石井の手から解放され、褐色ギャルは自由の身になった。縛るものは消えてしまった。

 一方、悶絶するように唸りながら、石井は苦悶の表情を作る。額や頬には多量の汗が垂れる。それらの汗は地面に落下し、円状のシミを作る。跪いた状態から微動だにしない。

 強烈な痛みを和らげるように、地面を注視し、股間を撫で続ける。非常にみっともない体勢だ。

「ようやく解放された。逃げないと! 」

 褐色ギャルは、行動不能の石井から距離を作る。そして、方向転換し、駆け足でその場から離れる。

「ちょっと! 何じっとしてるのよ! あんたもここに滞在したままだと、面倒なことに巻き込まれるよ。だから逃げないと! 愛海に付いてきて! 」

 グングン遠くなる褐色ギャルは、呆然としていた颯に呼び掛けた後、手招きする。どうやらお呼びのようだ。

 褐色ギャルの言い分も一理あった。

 このまま、この場に残れば、状態が回復した石井に絡まれるのは明白。石井も回復すれば、再び絡んでくるだろう。

 そうなると、面倒なことに巻き込まれるのは確実だ。多くの時間を石井によって奪われるだろう。

 避けるべき事柄である。

 だが、颯は咄嗟の判断が不得意だ。その場その場での臨機応変な対応ができない。どうしても焦ってしまう。昔からそうだ。そのため、チームワークを要するスポーツが苦手だったりする。

「う、うん」

 だから、焦った状態で頭が稼働せず、無意識に返事をした。

 そのまま そのまま、褐色ギャルの手招きに導かれ、石井を置いて、正門を後にした。

「お…おい。待て愛海。…いててっ。っつ~痛すぎて動けねぇ……」

 顔を歪めながらも、石井は、褐色ギャルを制止させようと試みる。だが、あそこの痛みに屈し、地面に頭を落とす。石井の額とコンクリートの地面が軽く衝突する。

「いってぇ~。股間だけじゃなく頭もかよ」

 右手で股間を愛撫するように撫で、左手で額を押さえる。

 その間に、颯は褐色ギャルに追いついた。褐色ギャルが意図的に全力で走ってなかった。容易に颯は追いつけた。褐色ギャルの配慮かもしれない。

 2者は石井を心配する素振りを一切見せない。ただ石井から距離を作っていく。

 虚しくも石井は1人で正門近くで蹲る。他者が目にすれば、変質者にしか映らない。

 不幸にも、正門を抜けた男女の生徒が、石井の醜態を目にした。

 それらの男女は、思わずといった形で、薄く鼻で笑う。その後、お互いに笑い合い、面白さを共有した。

 そこから、特に石井の顔を見ず、帰路に就いた。石井の顔を見れば、異なった対応を取ったかもしれない。

 皮肉にも、石井は顔を上げ、目線をその生徒達に移動できなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

学校で成績優秀生の完璧超人の義妹が俺に隠れて、VTuberとしてネトゲ配信してたんだが

沢田美
恋愛
京極涼香。俺の義妹であり、あらゆる物事をそつなく完璧にこなす、スポーツ万能・成績優秀、全てが完璧な美少女。 一方の俺は普通の成績と並以下の才能しか持っておらず、なぜか妹に嫌悪されている男だ。 しかし、そんな俺にも一つだけ特筆して好きなものがある――それは、とあるVTuberを推しているということだ。 配信者界隈に新星の如く現れた『さすまた』というVTuberは、圧倒的なカリスマで、俺を含めたネット民を熱狂させていた。 しかし、そんな『さすまた』の正体が義妹である京極涼香だということを、俺は知ることになる。 ……そう、これは俺と兄嫌いの義妹による、破滅の物語――という名のラブコメである。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

処理中です...