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Ωで何が悪い
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どうしてこうも酒を覚えたばかりの大学生ってタチが悪いんだろ。
なんて。僕が言っても説得力がないか。
「暁歩。これあっちのテーブルにね」
「はーい」
僕こと、東川 暁歩はただいま居酒屋バイトという名の家業手伝い。
ちゃんと時給でもらってるから、ここはバイトでいいのかな。
市内の短大に通いながら、週に何日かこうやってシフト入れてもらってる。
特に保育科で実習もあるから実家に雇ってもらえるのがとても有難いんだよね。あともうひとつ、普通のバイトだと少し難しいのが。
「あ。暁歩、そっちのテーブルはいいわ」
母さんがお酒を手にしようとした僕に声をかけた。
「あのテーブル、近所の大学生集団なのよ」
「え? でも」
「αもいるみたい。それに少しね……」
眉をひそめながらも苦笑いする様子に、なるほどとうなずいた。
典型的なバカ騒ぎする大学生かぁ。たしかに苦手だな。
それにαがいるとか。
「大丈夫だよ。抑制剤も飲んでるし」
「でもねぇ」
「このドリンク持っていくだけだから」
いつまでも気を遣わせるワケにもいかない。他のバイトの子たちと同じ立場なんだから。
なるべく両親を安心させたくて笑顔をつくる。
まあ、その内心はかなり不安なんだけど。
――僕はΩだ。
昔だと16歳以降にしか検査出来なかったバース判定だけど、今は早いと小学生のうちから検査結果が出る。
中学上がるまでは決定的な症状が出ることが少ないから、自分のバースを知るのはそこからになるのだけれど。
中学に上がる前に両親からΩであることを知らされて、ショックじゃなかったと言えば嘘になる。
めちゃくちゃ泣いたし荒れたし。グレようかと思ったけど、それは爺ちゃんが怖くてやめた。
昔からゲンコツが痛い、でも厳しくも優しい爺ちゃんだったから。
……そんなこんなで僕は柄にもなく沢山考えたさ。
自分はどう生きるかって。
その結果がこれ。
保育士を目指して日々勉強中。最近少しずつ共学の短大が増えてきたのも良かった。
そこで二年かけて保育士資格をとろうと思ってる。
なんで保育士なのかというと――。
「お待たせいたしました」
ビールやら中ハイやらの入ったジョッキをテーブルに置く。
男女数名。たしかに陽キャって感じの集まりだな。
雰囲気的に四年生大学のサークル仲間で飲みに来たって感じだろうか。
「お兄さんありがと」
近くに座ってた男性がニッコリと笑う。
あ、感じの良い人もいるんだ。少しホッとした。
こういう陽キャ達ってどうも苦手なんだよな。普段、縁がないから特に。
「ちょ、さっそく狙ってるじゃん~」
一人の女の子が手を叩いて笑う。
「別にそういうんじゃねーから。ごめんね、お兄さん」
「またまたぁ。たしかに可愛い顔してるもんね。ねえ、君。いくつ?」
「えっ……」
感じの良い人の言葉にかぶせるように、後ろからヤジやら冗談やら質問やらが飛ぶ。
僕としてはさっさと戻りたいんだけどな。
「これ、飲んでみなよ! 大丈夫、おいしーから」
「ギャハハ。バイトに美味しいからって、おもろ」
「ほら飲ませてあげよーか?」
「あの……ちょっと、困ります……」
うぅ、酔っ払い嫌だな。まだ常連さんたちはお行儀よく飲んでくれるのに、この大学生たちときたら。
以前にも来たことあるのかな。だから母さんも止めたのかも。
自分からかって出たのを少し後悔してきた。
でもこっちも客商売。精一杯の笑顔 (引きつってると思うけど) で。
「ええっと、仕事中なんですいません」
「仕事中ってバイトじゃん~」
いやバイトも仕事だろ。
女の子の言い草にムッとしたけど、頑張って顔に出さないようにする。
客商売の大変さは昔から両親見て知ってたから。僕の見てる前でトラブル起こさせる訳にはいかないんだ。
「ねえお兄さん、もしかしてΩだったりする?」
「えっ……」
一人が匂いをかぐような仕草をしながら言った。
「なんだよお前、βだろ。分かるわけないじゃん」
「あはは、バレたか。いやー、お兄さんカワイイからΩかなあって」
「バカ。普通に働けるわけないじゃん」
「ま、そっかー。あいつら発情期あるからな」
「いやホント。Ωって人生イージーモードじゃね? ヒートでαたらしこんだら一生安泰だし。身体で稼ぐのと同じじゃん。あとは生活保護? も貰いやすいんだろ」
「確かに~。あたしもΩになりたい」
「それな」
頭の中が沸騰するようだった。
カッとなるってこういうことか。あまりの言われように拳をきつく握る。そうでもしないと、このまま叫びだしてしまいそうだったから。
「普通にキモいだろ」
不機嫌そうな男の声が響いた。
「Ωの男って」
不躾な視線がこちらに向く。さっきまで黙っていた、奥の方に座ってた奴のだ。
赤く染めた髪にやたらピアスのついた耳。目付きは悪いけど顔は腹が立つほど整ってる。
「同じΩでも女の子の方がいいだろ。男のΩに勃たねぇし」
吐き捨てるようにいうと、手にした煙草をくわえた。
「凪由斗は女好きだもんなぁ」
「そりゃお前みたいなのは選び放題だろーよ」
「別に。男抱くのは無理ってだけ」
「あーあ。お兄さんフラレちまったなー。あはは、残念」
なんかますますムカつく展開になってきた。
一刻も早くこの場を離れたいと思って。
「あ、あの。他にご注文あれば」
と辛うじて愛想笑いらしきものを浮かべてみる。
でも。
「俺はお兄さんのこと、好きだよー? ね、これ飲んでよ。あげるから」
「いや、でも」
白状してしまうと、僕はお酒はあまり得意じゃない。むしろすぐに酔ってしまうから苦手な方。
それに今は仕事中。さっきから他のバイトさんたちが心配そうにこっち見てくれてる。
早く戻らないと。
「なーんか怪しいなぁ。もしかしてホントにΩ?」
「だったら……なんですか」
ああ、ついに言っちゃった。
「え、マジ?」
「マジですよ。大マジです。僕はΩですけどなにか」
逃げも隠れもしたくない。だいたいΩだからってなんだっていうんだ。
世の中にはΩを隠して社会生活送る人が多い。そりゃそうだ。こうやって心無い言葉を投げかけられるばかりだし、そもそもΩを雇う会社も少ない。
ヒートもあるし、βはともかくαをフェロモンで誘惑するっていうのが理由。
そんなもん好きでなってるわけでも、出してるわけでもない。
だから僕は抗うことにした。
「でも貴方達はβなので問題ないでしょう?」
そう。僕がΩであろうがなんであろうが、コイツらにとやかく言われる筋合いはないんだ。
努めて胸を張って彼らを見る。すると。
「凪由斗と響介はαだよな」
という言葉に一瞬だけ固まる。
「あ、大丈夫だよ。僕も彼もちゃんと抑制剤飲んでるから。ね、凪由斗」
さっきの感じの良い人だ。響介さんっていうのか。
爽やかで礼儀正しい大学生って感じで好感が持てる。
なんとなくそうじゃないかなって思ってたけど、抑制剤飲んでいたんだな。
αにだって抑制剤はある。
これはΩのフェロモンに対応するもの。ヒートに耐えられられるかどうかは知らないけど、これで日常的に僕らΩが発してしまうフェロモンを感知しにくくしてくれる。
でもαはΩに比べて抑制剤を服用する人は少ないらしい。
つまりフェロモンは発する側が抑えるか、外に出てくるなってことなんだよな。すごく理不尽だ。
「俺は飲んでない」
「え!?」
凪由斗、と呼ばれた男。赤髪ピアスの無愛想野郎は鼻で笑いながら言った。
「ンなもん。Ωが飲めばいい。俺には必要ない」
「凪由斗!」
くっ、やっぱりか! 見た目以上にクソな奴だ。
僕はもう愛想笑いすら浮かべられなくなってた。
彼の方を睨みつける。
「お客さん、他にご注文ないなら行きますけど」
「ビビらなくても、男のΩなんざに用はねぇよ」
「注文、ないんですね。じゃ、ごゆっくり!!!」
慇懃無礼に一礼して戻ってきてやった。背中に。
「あ、ごめんね! ほんとに……」
と爽やかイケメンな響介さんの声が。少し申し訳なかった、かな。
なんて。僕が言っても説得力がないか。
「暁歩。これあっちのテーブルにね」
「はーい」
僕こと、東川 暁歩はただいま居酒屋バイトという名の家業手伝い。
ちゃんと時給でもらってるから、ここはバイトでいいのかな。
市内の短大に通いながら、週に何日かこうやってシフト入れてもらってる。
特に保育科で実習もあるから実家に雇ってもらえるのがとても有難いんだよね。あともうひとつ、普通のバイトだと少し難しいのが。
「あ。暁歩、そっちのテーブルはいいわ」
母さんがお酒を手にしようとした僕に声をかけた。
「あのテーブル、近所の大学生集団なのよ」
「え? でも」
「αもいるみたい。それに少しね……」
眉をひそめながらも苦笑いする様子に、なるほどとうなずいた。
典型的なバカ騒ぎする大学生かぁ。たしかに苦手だな。
それにαがいるとか。
「大丈夫だよ。抑制剤も飲んでるし」
「でもねぇ」
「このドリンク持っていくだけだから」
いつまでも気を遣わせるワケにもいかない。他のバイトの子たちと同じ立場なんだから。
なるべく両親を安心させたくて笑顔をつくる。
まあ、その内心はかなり不安なんだけど。
――僕はΩだ。
昔だと16歳以降にしか検査出来なかったバース判定だけど、今は早いと小学生のうちから検査結果が出る。
中学上がるまでは決定的な症状が出ることが少ないから、自分のバースを知るのはそこからになるのだけれど。
中学に上がる前に両親からΩであることを知らされて、ショックじゃなかったと言えば嘘になる。
めちゃくちゃ泣いたし荒れたし。グレようかと思ったけど、それは爺ちゃんが怖くてやめた。
昔からゲンコツが痛い、でも厳しくも優しい爺ちゃんだったから。
……そんなこんなで僕は柄にもなく沢山考えたさ。
自分はどう生きるかって。
その結果がこれ。
保育士を目指して日々勉強中。最近少しずつ共学の短大が増えてきたのも良かった。
そこで二年かけて保育士資格をとろうと思ってる。
なんで保育士なのかというと――。
「お待たせいたしました」
ビールやら中ハイやらの入ったジョッキをテーブルに置く。
男女数名。たしかに陽キャって感じの集まりだな。
雰囲気的に四年生大学のサークル仲間で飲みに来たって感じだろうか。
「お兄さんありがと」
近くに座ってた男性がニッコリと笑う。
あ、感じの良い人もいるんだ。少しホッとした。
こういう陽キャ達ってどうも苦手なんだよな。普段、縁がないから特に。
「ちょ、さっそく狙ってるじゃん~」
一人の女の子が手を叩いて笑う。
「別にそういうんじゃねーから。ごめんね、お兄さん」
「またまたぁ。たしかに可愛い顔してるもんね。ねえ、君。いくつ?」
「えっ……」
感じの良い人の言葉にかぶせるように、後ろからヤジやら冗談やら質問やらが飛ぶ。
僕としてはさっさと戻りたいんだけどな。
「これ、飲んでみなよ! 大丈夫、おいしーから」
「ギャハハ。バイトに美味しいからって、おもろ」
「ほら飲ませてあげよーか?」
「あの……ちょっと、困ります……」
うぅ、酔っ払い嫌だな。まだ常連さんたちはお行儀よく飲んでくれるのに、この大学生たちときたら。
以前にも来たことあるのかな。だから母さんも止めたのかも。
自分からかって出たのを少し後悔してきた。
でもこっちも客商売。精一杯の笑顔 (引きつってると思うけど) で。
「ええっと、仕事中なんですいません」
「仕事中ってバイトじゃん~」
いやバイトも仕事だろ。
女の子の言い草にムッとしたけど、頑張って顔に出さないようにする。
客商売の大変さは昔から両親見て知ってたから。僕の見てる前でトラブル起こさせる訳にはいかないんだ。
「ねえお兄さん、もしかしてΩだったりする?」
「えっ……」
一人が匂いをかぐような仕草をしながら言った。
「なんだよお前、βだろ。分かるわけないじゃん」
「あはは、バレたか。いやー、お兄さんカワイイからΩかなあって」
「バカ。普通に働けるわけないじゃん」
「ま、そっかー。あいつら発情期あるからな」
「いやホント。Ωって人生イージーモードじゃね? ヒートでαたらしこんだら一生安泰だし。身体で稼ぐのと同じじゃん。あとは生活保護? も貰いやすいんだろ」
「確かに~。あたしもΩになりたい」
「それな」
頭の中が沸騰するようだった。
カッとなるってこういうことか。あまりの言われように拳をきつく握る。そうでもしないと、このまま叫びだしてしまいそうだったから。
「普通にキモいだろ」
不機嫌そうな男の声が響いた。
「Ωの男って」
不躾な視線がこちらに向く。さっきまで黙っていた、奥の方に座ってた奴のだ。
赤く染めた髪にやたらピアスのついた耳。目付きは悪いけど顔は腹が立つほど整ってる。
「同じΩでも女の子の方がいいだろ。男のΩに勃たねぇし」
吐き捨てるようにいうと、手にした煙草をくわえた。
「凪由斗は女好きだもんなぁ」
「そりゃお前みたいなのは選び放題だろーよ」
「別に。男抱くのは無理ってだけ」
「あーあ。お兄さんフラレちまったなー。あはは、残念」
なんかますますムカつく展開になってきた。
一刻も早くこの場を離れたいと思って。
「あ、あの。他にご注文あれば」
と辛うじて愛想笑いらしきものを浮かべてみる。
でも。
「俺はお兄さんのこと、好きだよー? ね、これ飲んでよ。あげるから」
「いや、でも」
白状してしまうと、僕はお酒はあまり得意じゃない。むしろすぐに酔ってしまうから苦手な方。
それに今は仕事中。さっきから他のバイトさんたちが心配そうにこっち見てくれてる。
早く戻らないと。
「なーんか怪しいなぁ。もしかしてホントにΩ?」
「だったら……なんですか」
ああ、ついに言っちゃった。
「え、マジ?」
「マジですよ。大マジです。僕はΩですけどなにか」
逃げも隠れもしたくない。だいたいΩだからってなんだっていうんだ。
世の中にはΩを隠して社会生活送る人が多い。そりゃそうだ。こうやって心無い言葉を投げかけられるばかりだし、そもそもΩを雇う会社も少ない。
ヒートもあるし、βはともかくαをフェロモンで誘惑するっていうのが理由。
そんなもん好きでなってるわけでも、出してるわけでもない。
だから僕は抗うことにした。
「でも貴方達はβなので問題ないでしょう?」
そう。僕がΩであろうがなんであろうが、コイツらにとやかく言われる筋合いはないんだ。
努めて胸を張って彼らを見る。すると。
「凪由斗と響介はαだよな」
という言葉に一瞬だけ固まる。
「あ、大丈夫だよ。僕も彼もちゃんと抑制剤飲んでるから。ね、凪由斗」
さっきの感じの良い人だ。響介さんっていうのか。
爽やかで礼儀正しい大学生って感じで好感が持てる。
なんとなくそうじゃないかなって思ってたけど、抑制剤飲んでいたんだな。
αにだって抑制剤はある。
これはΩのフェロモンに対応するもの。ヒートに耐えられられるかどうかは知らないけど、これで日常的に僕らΩが発してしまうフェロモンを感知しにくくしてくれる。
でもαはΩに比べて抑制剤を服用する人は少ないらしい。
つまりフェロモンは発する側が抑えるか、外に出てくるなってことなんだよな。すごく理不尽だ。
「俺は飲んでない」
「え!?」
凪由斗、と呼ばれた男。赤髪ピアスの無愛想野郎は鼻で笑いながら言った。
「ンなもん。Ωが飲めばいい。俺には必要ない」
「凪由斗!」
くっ、やっぱりか! 見た目以上にクソな奴だ。
僕はもう愛想笑いすら浮かべられなくなってた。
彼の方を睨みつける。
「お客さん、他にご注文ないなら行きますけど」
「ビビらなくても、男のΩなんざに用はねぇよ」
「注文、ないんですね。じゃ、ごゆっくり!!!」
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「あ、ごめんね! ほんとに……」
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