2 / 24
Ωだからなんだ
しおりを挟む
僕はいつも少し早めに家を出る。
「暁歩、おはよ」
「あ、奈々。おはよう」
講堂に入るとすぐ、手を振ってくれる友達の元に。
「もしかして今日も練習してきたの?」
「うん。うちピアノないから」
保育科はピアノの授業あるから、構内にあるピアノ練習室に寄ってきたんだ。家には簡単なキーボードしかないし、早く来て練習する学生は結構いる。
「えらいね、暁歩」
奈々は僕と仲良くしてくれる貴重な子の一人。というのも。
「おはよー、二人とも」
「もう! 遅いよ香乃」
黒髪で清楚系の奈々とは対照的に、明るい髪色のギャル系の香乃も友達だ。
ちなみに奈々はΩで香乃はβ。
男のΩはほぼいなくて、ぼっちなのは覚悟してたけど彼女らが入学早々声掛けてくれてすごく嬉しかったのを覚えてる。
香乃には『男でΩでしかも保育士志望って、とことんロックだわ』なんて言われてるけど。
「えー? 二人が早すぎるんよ。あー、ねむ……」
「もう寝癖。香乃ってば、なかなか起きないんだから」
朝が弱い香乃のために奈々が毎朝モーニングコールをするっていう習慣らしい。僕もそのあとLINEで起床確認するけど、二度寝三度寝は当たり前だもんな。
奈々がふくれっ面をすると。
「えへへ、でも二人が起こしてくれるじゃん。やっぱりもつべきものは優しい友達だよねー?」
なんて僕らに抱きついてくるのが憎めない。
「もう仕方ないなー」
なんて言いながらも、奈々もどこか嬉しそうなんだよな。
「てかこの講義マジでダルい。朝からだもん」
確かに香乃の言うとり、朝一番ってのがね。
必修科目でもあるから、毎週眠い目をこすりながらでも出なきゃいけない。
それもそうだけど、一番憂鬱なのが。
「毎回だけど、すごい人だよね」
奈々が辺りを見渡して言う。
「大学の人たちもいるとなんか雰囲気変わるし」
そう。ここはすぐ側に同じ名前の四年生大学がある。
よくある私立の文系大学で、普段はあまり関わることは無い。でも共通の必修はあるから、そこで最初はかなりびびったもんだ。
「キラキラしてるよねぇ」
「そうか?」
バイト先での偏見かもだけど、大学生ってやっぱりバカ騒ぎしてる迷惑なイメージが強い。
そりゃ僕らより二年も時間あって、楽しい大学生活謳歌し放題だろうけどさ。
って、これは単なるやっかみかも。
「ねえ見て。あの人たち」
「ん?」
香乃の言葉に僕らは振り向く。
「あー」
そこにはもう眩しいくらいのオーラをまとった陽キャ集団が。男女ともに派手な感じ。これが同じ大学生 (こっちは短大だけど)だと思うとなんとも格差を感じるなあ。
しかも。
「暁歩、分かる?」
「なにが」
奈々の少し固い声。
「あの人たちの中にαがいる……」
「えっ」
もう一度彼らをよく見て、それからようやく思い出した。
――あの時のバカ大学生たちだ!
やたらΩに差別的な奴ら。再び嫌な感覚がよみがえりつつあったけど、かろうじて胸の奥に押し殺す。
「奈々は相変わらずすごいな」
彼女は同じΩでも僕よりずっと嗅覚が鋭い。
「いや、暁歩が鈍いんでしょ」
と香乃にバッサリ言われるくらい、僕が鈍いらしい。
普通、Ωはαが分かるって聞くけど僕にはさっぱりなんだよね。でも別にバースなんて関係ないしって返せば。
「そんなこと言ってたら、どこの馬の骨とも分からないαに襲われるんだからね!」
とまた叱られる始末。
「まったく。アタシはあんたらが心配で夜しか寝れないわ」
「しっかり寝れてるじゃん」
「むしろ健康的だろ」
これがもうお決まりな会話なんだけど。
「ちょっと、あの人。こっち見てない?」
「え」
香乃の言う通り一人がジッとこっちをガン見してる。そして。
「あっ! 手振ってる!?」
――やばい、バレた。
しかも笑顔で手を振ってるのは、あの感じの良い爽やかイケメン。確か、響介という名前だっけ。
とりあえず無視するのもアレだったから、軽く会釈だけしといた。
「ちょ、暁歩。知り合い!?」
「いや。バイト先で」
「まさかいい感じとか?」
「全然。嫌なこと言われたし」
「えぇ……」
響介って人のことはタイプだったのか。一瞬だけ色めき立つ香乃だったけど、僕の言葉に顔をしかめる。
「なにそれ。香乃お姉ちゃんが、ぶん殴ってきてあげようか」
「殴らないで。それに彼はその場にいただけ。でも他の奴らが最低だった」
「ふーん」
むしろ変に関わりたくない。でもそうやって怒ってくれる友達がいる、それがたまらなく嬉しかった。
「ありがとな、香乃お姉ちゃん?」
「おう、愚弟よ」
照れくさそうに笑って、頭小突かれた。
※※※
「――同じ大学だったんだね」
いきなりそう声掛けられて足を止めた。
「あ、どうも」
振り返れば響介さんが、また笑顔でいる。
「オレのこと覚えてる?」
「はい。この前は失礼しました」
一応、非礼は詫びとこう。他の奴らには謝らないけど。
「いや、むしろオレらが悪かったよ。本当にごめん」
しっかり頭を下げて謝ってくれる姿勢から、やっぱりいい人なんだろうな、と。
「オレ、南雲 響介っていうんだ。二年なんだけど」
それから少し間を開けて。
「君のも聞いていい?」
と言われた。
正直気は進まないけど、別に隠すこともないから素直にこたえる。
「暁歩ちゃんって呼んでいいかな」
いきなり名前とちゃん付けか。さすが陽キャだなと思った。でもまあ。
「いいですよ」
「……タメ口でいいのに」
「そんな訳にいかないですよ。年上だし」
そう、僕は一年だし。
「あー、そっか」
何故か少し悲しい顔された。
「まあいいや。よろしくね、暁歩ちゃん」
よろしくって。まるで友達にでもなる感じじゃないか。たまたま会った顔見知りにしかならないのに。
「オレ、また暁歩ちゃんに会えてよかったよ。あの時のこと謝りたかったし」
「もういいですって。僕も怒っちゃったし」
客商売なのにあの態度はなかったよな。後ですごく後悔したし反省もした。
父さんは何も言わなかったけど、母さんには少し叱られた。でもその目は少し潤んでたのが一層のこと申し訳なくて。
「いや怒るのは当然だよ」
「響介さん……」
「もうアイツらに、あんなこと言わせないから」
ジッと見つめながら言うもんだから、なんかビックリした。
この人、やっぱりすごく良い人なんだな。αのイメージがかなり上がったかも。
「だからもしよかったら暁歩ちゃん――」
「なにしてんだ、響介」
その瞬間、ぬっと響介さんの後ろから出てきた男。赤髪からのぞく耳にはピアスが複数箇所。そしてよく見なくても整ってるのがわかる顔立ち。
「あっ!」
思わず大声あげてしまった。
だってこいつ。
「なに、そいつ? 響介、男にナンパされてんの」
じろりとこっちを見てから、男は鼻で笑う。そのムカつく様もよくよく覚えてるさ。
あの時のクソ客だってな。
「凪由斗! ……ご、ごめん。暁歩ちゃん!!」
響介さんが慌てて謝る。
「別にいいですよ。僕は気にしませんから」
別に彼が悪いわけじゃない。だけどムカつくのはムカつく。だから僕は赤髪のクソ野郎を睨みつけた。
「あの時はどうも」
「……は? なんだお前」
覚えてないんかいッ、ますます失礼すぎるだろ!!!
「凪由斗、彼はこの前オレ達が迷惑かけた居酒屋でバイトしてた子だよ」
「?」
「だから――」
本気で覚えてないんだ。あんな最低な事を平気で言い散らかしていたくせに。しかも記憶飛ぶほど酔ってたわけでもないのに。
これって、もう心底こっちを見下したバカにしてるってことだよね!?
「もういいです、響介さん」
「あ、暁歩ちゃん」
僕は大きく息を吸う。
「男のΩが嫌いな貴方の友達を、ナンパとかしてませんから。ご心配なく! でも一つだけお節介言わせてもらうと貴方たちのそういう差別的な発言、少しひかえた方がいいと思いますよ? 差別主義者であるのを公言してもデメリットしかないと思うんで!!」
それだけ早口でまくし立てると、僕は。
「じゃあ」
と、響介さんだけ会釈して小走りでその場をあとにした。
「暁歩ちゃん!」
「おいこら待て!」
二人の何か言う声が聞こえた気がしたけど構うもんか。
――やっぱりあのクソα野郎、大っ嫌いだ!!!!
「暁歩、おはよ」
「あ、奈々。おはよう」
講堂に入るとすぐ、手を振ってくれる友達の元に。
「もしかして今日も練習してきたの?」
「うん。うちピアノないから」
保育科はピアノの授業あるから、構内にあるピアノ練習室に寄ってきたんだ。家には簡単なキーボードしかないし、早く来て練習する学生は結構いる。
「えらいね、暁歩」
奈々は僕と仲良くしてくれる貴重な子の一人。というのも。
「おはよー、二人とも」
「もう! 遅いよ香乃」
黒髪で清楚系の奈々とは対照的に、明るい髪色のギャル系の香乃も友達だ。
ちなみに奈々はΩで香乃はβ。
男のΩはほぼいなくて、ぼっちなのは覚悟してたけど彼女らが入学早々声掛けてくれてすごく嬉しかったのを覚えてる。
香乃には『男でΩでしかも保育士志望って、とことんロックだわ』なんて言われてるけど。
「えー? 二人が早すぎるんよ。あー、ねむ……」
「もう寝癖。香乃ってば、なかなか起きないんだから」
朝が弱い香乃のために奈々が毎朝モーニングコールをするっていう習慣らしい。僕もそのあとLINEで起床確認するけど、二度寝三度寝は当たり前だもんな。
奈々がふくれっ面をすると。
「えへへ、でも二人が起こしてくれるじゃん。やっぱりもつべきものは優しい友達だよねー?」
なんて僕らに抱きついてくるのが憎めない。
「もう仕方ないなー」
なんて言いながらも、奈々もどこか嬉しそうなんだよな。
「てかこの講義マジでダルい。朝からだもん」
確かに香乃の言うとり、朝一番ってのがね。
必修科目でもあるから、毎週眠い目をこすりながらでも出なきゃいけない。
それもそうだけど、一番憂鬱なのが。
「毎回だけど、すごい人だよね」
奈々が辺りを見渡して言う。
「大学の人たちもいるとなんか雰囲気変わるし」
そう。ここはすぐ側に同じ名前の四年生大学がある。
よくある私立の文系大学で、普段はあまり関わることは無い。でも共通の必修はあるから、そこで最初はかなりびびったもんだ。
「キラキラしてるよねぇ」
「そうか?」
バイト先での偏見かもだけど、大学生ってやっぱりバカ騒ぎしてる迷惑なイメージが強い。
そりゃ僕らより二年も時間あって、楽しい大学生活謳歌し放題だろうけどさ。
って、これは単なるやっかみかも。
「ねえ見て。あの人たち」
「ん?」
香乃の言葉に僕らは振り向く。
「あー」
そこにはもう眩しいくらいのオーラをまとった陽キャ集団が。男女ともに派手な感じ。これが同じ大学生 (こっちは短大だけど)だと思うとなんとも格差を感じるなあ。
しかも。
「暁歩、分かる?」
「なにが」
奈々の少し固い声。
「あの人たちの中にαがいる……」
「えっ」
もう一度彼らをよく見て、それからようやく思い出した。
――あの時のバカ大学生たちだ!
やたらΩに差別的な奴ら。再び嫌な感覚がよみがえりつつあったけど、かろうじて胸の奥に押し殺す。
「奈々は相変わらずすごいな」
彼女は同じΩでも僕よりずっと嗅覚が鋭い。
「いや、暁歩が鈍いんでしょ」
と香乃にバッサリ言われるくらい、僕が鈍いらしい。
普通、Ωはαが分かるって聞くけど僕にはさっぱりなんだよね。でも別にバースなんて関係ないしって返せば。
「そんなこと言ってたら、どこの馬の骨とも分からないαに襲われるんだからね!」
とまた叱られる始末。
「まったく。アタシはあんたらが心配で夜しか寝れないわ」
「しっかり寝れてるじゃん」
「むしろ健康的だろ」
これがもうお決まりな会話なんだけど。
「ちょっと、あの人。こっち見てない?」
「え」
香乃の言う通り一人がジッとこっちをガン見してる。そして。
「あっ! 手振ってる!?」
――やばい、バレた。
しかも笑顔で手を振ってるのは、あの感じの良い爽やかイケメン。確か、響介という名前だっけ。
とりあえず無視するのもアレだったから、軽く会釈だけしといた。
「ちょ、暁歩。知り合い!?」
「いや。バイト先で」
「まさかいい感じとか?」
「全然。嫌なこと言われたし」
「えぇ……」
響介って人のことはタイプだったのか。一瞬だけ色めき立つ香乃だったけど、僕の言葉に顔をしかめる。
「なにそれ。香乃お姉ちゃんが、ぶん殴ってきてあげようか」
「殴らないで。それに彼はその場にいただけ。でも他の奴らが最低だった」
「ふーん」
むしろ変に関わりたくない。でもそうやって怒ってくれる友達がいる、それがたまらなく嬉しかった。
「ありがとな、香乃お姉ちゃん?」
「おう、愚弟よ」
照れくさそうに笑って、頭小突かれた。
※※※
「――同じ大学だったんだね」
いきなりそう声掛けられて足を止めた。
「あ、どうも」
振り返れば響介さんが、また笑顔でいる。
「オレのこと覚えてる?」
「はい。この前は失礼しました」
一応、非礼は詫びとこう。他の奴らには謝らないけど。
「いや、むしろオレらが悪かったよ。本当にごめん」
しっかり頭を下げて謝ってくれる姿勢から、やっぱりいい人なんだろうな、と。
「オレ、南雲 響介っていうんだ。二年なんだけど」
それから少し間を開けて。
「君のも聞いていい?」
と言われた。
正直気は進まないけど、別に隠すこともないから素直にこたえる。
「暁歩ちゃんって呼んでいいかな」
いきなり名前とちゃん付けか。さすが陽キャだなと思った。でもまあ。
「いいですよ」
「……タメ口でいいのに」
「そんな訳にいかないですよ。年上だし」
そう、僕は一年だし。
「あー、そっか」
何故か少し悲しい顔された。
「まあいいや。よろしくね、暁歩ちゃん」
よろしくって。まるで友達にでもなる感じじゃないか。たまたま会った顔見知りにしかならないのに。
「オレ、また暁歩ちゃんに会えてよかったよ。あの時のこと謝りたかったし」
「もういいですって。僕も怒っちゃったし」
客商売なのにあの態度はなかったよな。後ですごく後悔したし反省もした。
父さんは何も言わなかったけど、母さんには少し叱られた。でもその目は少し潤んでたのが一層のこと申し訳なくて。
「いや怒るのは当然だよ」
「響介さん……」
「もうアイツらに、あんなこと言わせないから」
ジッと見つめながら言うもんだから、なんかビックリした。
この人、やっぱりすごく良い人なんだな。αのイメージがかなり上がったかも。
「だからもしよかったら暁歩ちゃん――」
「なにしてんだ、響介」
その瞬間、ぬっと響介さんの後ろから出てきた男。赤髪からのぞく耳にはピアスが複数箇所。そしてよく見なくても整ってるのがわかる顔立ち。
「あっ!」
思わず大声あげてしまった。
だってこいつ。
「なに、そいつ? 響介、男にナンパされてんの」
じろりとこっちを見てから、男は鼻で笑う。そのムカつく様もよくよく覚えてるさ。
あの時のクソ客だってな。
「凪由斗! ……ご、ごめん。暁歩ちゃん!!」
響介さんが慌てて謝る。
「別にいいですよ。僕は気にしませんから」
別に彼が悪いわけじゃない。だけどムカつくのはムカつく。だから僕は赤髪のクソ野郎を睨みつけた。
「あの時はどうも」
「……は? なんだお前」
覚えてないんかいッ、ますます失礼すぎるだろ!!!
「凪由斗、彼はこの前オレ達が迷惑かけた居酒屋でバイトしてた子だよ」
「?」
「だから――」
本気で覚えてないんだ。あんな最低な事を平気で言い散らかしていたくせに。しかも記憶飛ぶほど酔ってたわけでもないのに。
これって、もう心底こっちを見下したバカにしてるってことだよね!?
「もういいです、響介さん」
「あ、暁歩ちゃん」
僕は大きく息を吸う。
「男のΩが嫌いな貴方の友達を、ナンパとかしてませんから。ご心配なく! でも一つだけお節介言わせてもらうと貴方たちのそういう差別的な発言、少しひかえた方がいいと思いますよ? 差別主義者であるのを公言してもデメリットしかないと思うんで!!」
それだけ早口でまくし立てると、僕は。
「じゃあ」
と、響介さんだけ会釈して小走りでその場をあとにした。
「暁歩ちゃん!」
「おいこら待て!」
二人の何か言う声が聞こえた気がしたけど構うもんか。
――やっぱりあのクソα野郎、大っ嫌いだ!!!!
62
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
僕と教授の秘密の遊び (終)
325号室の住人
BL
10年前、魔法学園の卒業式でやらかした元第二王子は、父親の魔法で二度と女遊びができない身体にされてしまった。
学生達が校内にいる時間帯には加齢魔法で老人姿の教授に、終業時間から翌朝の始業時間までは本来の容姿で居られるけれど陰茎は短く子種は出せない。
そんな教授の元に通うのは、教授がそんな魔法を掛けられる原因となった《過去のやらかし》である…
婚約破棄→王位継承権剥奪→新しい婚約発表と破局→王立学園(共学)に勤めて生徒の保護者である未亡人と致したのがバレて子種の出せない体にされる→美人局に引っかかって破産→加齢魔法で生徒を相手にしている時間帯のみ老人になり、貴族向けの魔法学院(全寮制男子校)に教授として勤める←今ここ を、全て見てきたと豪語する男爵子息。
卒業後も彼は自分が仕える伯爵家子息に付き添っては教授の元を訪れていた。
そんな彼と教授とのとある午後の話。
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
文章がおかしな所があったので修正しました。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる