淫魔は夢にて

田中 乃那加

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入須君の陥落

 触れられるところが、どこもかしこも熱い。
 唇が、舌が、身体中に触れていく。

「や、も……やめ」
「そんなこと言いながら、顔が蕩けてますけど」

 いけ好かない男と、こんな事になるなんて。
 ああ、でも。

「はやく……お前の、ほしい♡」

 脳みそおかしくなったとしか思えない言葉が浮かんできて、そのまま口にしたら。

「くそっ、アンタって人は」

 と思い切り顔をしかめられた。
 なんかダメなことでも言ったんだろうか。途端、オレの心はしぼんでしまう。

「お、オレ……」

「いん、ま?」

 よく分からない。呆気にとられていると、身体を勢いよくベッドに叩きつけられた。

「うっ、ぐ!?」
「最初はそっちから誘ってきたじゃないですか。俺の精液飲ませてって」
「な、なにを言って――」

 怒鳴りつけようとした口を、強引に塞ぐようにキスされた。呼吸ができなくて、必死にもがいたらようやく離してもらえた。

「ああ、覚えてないですよね。ま、俺がそうしたんですけど」

 さっきから、いやずっと前からなにを言ってんだ。
 オレが淫魔? で、コイツの精液が欲しくて、関係をもってた? でも記憶がないのはコイツが……。

「って、ワケわかんねぇよ!!」
「あとでちゃんと説明してあげますから」

 そんな誤魔化しにもならないことを言いながら、アイツはまたオレにキスをする。
 正直、悪くないって思っちまうオレもたいがいだよな。
 でもやっぱり嫌悪感とかないんだ。むしろ、しっくりくるというか。離れていったらもう寂しくて仕方ないんだろうな、とか。
 たとものすごく。

「おなかすいたぁ♡」

 飢餓と喉の乾き。コイツが欲しくてたまらない。なにがって――なんだろう?

「ふふ。洋真は俺の精液が大好きですもんね?」
「せ、せーえき……」

 好き、な気がする。
 濃くて舌にねっとりからみつく、オス臭いそれをたらふく摂取したい。しないと生きていけない、なんて。
 また頭がぼーっとしてきた。
 そして目の前のコイツが、すごく美味しそうに思えてきた。
 
 特に、その制服のスボンの前に隠れてるモノが。

「ほしいでしょ? 先輩」

 とてつもなく魅力的な誘惑だと思った。
 砂漠でノドが乾いて死にそうな人間が水を差し出された、そんな状況みたいな。
 どんな無茶な要求をつきつけられても、逆らうことなんてできないだろ。
 
「先輩」

 意地悪い目をして笑うコイツが、心底憎い。でもそれ以上に。

「ほしい……」
「なにが欲しいんですか、先輩」

 ようやく口に出した願望に、返されたのはバカにしたような言葉。オレの心臓が、ギュッとしめつけられるみたいに痛む。

「そ、それは」
「誰のなにがほしいか、ちゃんと言って下さいよ」

 やっぱりコイツが嫌いだ。
 嫌いだけど、でも。

「はぁ……ぁ……♡」

 がまん、できない。

「貴志のおちんぽ、ほしい♡♡♡」

 そう言うと、オレは目の前のヤツにむしゃぶりついた。



 
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