ラブレター代理受け取りいたします

田中 乃那加

文字の大きさ
5 / 9

5.恋愛禁止条例なんてありはしないが

しおりを挟む
 ―――あたしが初めて彼に出会ったのはいつだったかしら。
 2メートルはあるんじゃないかっていう、巨体。
 筋肉で引き締まった、どこのオリンピック選手よって感じ。

 しかも『こいつ絶対純日本人じゃねーわ』っていう顔面。
 案の定、有名人らしい。
 露核 太郎ろかく たろう
 これでも高校生だって言うんだから、ビックリしたわよ。
 
 そんでもってこいつ、突然とんでもない手紙を突きつけてきやがった。
 和紙に毛筆、達筆な字で血判まで押してある『恋文』ラブレター
 
「これ……誰宛よ」

 目の前の巨木に問い質す。
 そしたらヤケにふてぶてしい顔で。

「弟さんに」

 と来たもんだ。

 別に驚かないわよ。弟宛にラブレターが届くことは実は珍しい事じゃあないもの。
 本人は勘違いしてるけどね、あの子もそれなりにモテるのよ。何故か男に。
 
 ……でも姉として、やっぱり弟の相手は選びたいじゃない? だから今後貰う手紙は全てあたしに提出させたわけ。

 中にはあたし宛もあるけど、弟宛もそれなりにあるの。
 ったく、なんなのよ。うちの可愛い弟に手ぇ出そうって100年早いっつーの!
 あたしこのために空手始めたんだからね。

 ……さて、この男どうすべきか。

 観察してみると。
 まぁルックスは悪くないのは前述の通り。
 恐らく弟も気に入るでしょう。
 でも恋文を初っ端姉に渡すなんてのは気に入らないわ。

 ―――というわけで、とりあえず突っ返した。
 そしたらあの高校生、案外根性あったみたい。直接本人に持っていくわ、それからほぼ毎日迎えに来るわ……なかなかやるじゃない。

 後は弟の気持ちね、と思ってたら予想外よ。
 あたしと話してた彼を見て、あの子ったら泣いちゃった……なに、これあたしが悪いの!?

 可哀想な一郎。
 追いかけたら、素直にお手て繋いでくれて嬉しかったわ。
 昔はよく一緒にこうやって家へ帰ったわよねぇ。

 ……んで。すごーく気に食わなかったけど、弟が泣くまで思い詰めてるもんだからついつい助け舟出しちゃったわ。
 恋の魔法ってやつ。お姉ちゃんは常に万能でありたいのよ、本当はね。

 これからは露核 太郎って男が、弟を嬉し涙以外で泣かせたら許さないわよ
 ……空手、習っていてよかったわ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

姉の代わりに舞踏会に行ったら呪われた第三王子の初恋を奪ってしまった

近井とお
BL
幼少期、ユーリは姉によく似ていることから彼女の代わりに社交の場に出席することが多々あった。ある舞踏会の夜、中庭に姿を眩ませたユーリに誰かがぶつかってくる。その正体は呪われていると噂の第三王子であったが、ぶつかられたことに腹を立てたユーリは強気に接し、ダンスを踊った後、彼を捜している気配を感じてからかいながら立ち去る。 それから数年後、第三王子は初恋の令嬢を探し始めたが、それはユーリに違いなく……。 初恋の相手を捜す第三王子×軽口令息

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

処理中です...