15 / 34
デートde危機一髪②
しおりを挟む
妊婦を走らせたくはない。でも龍也じゃあるまいし担いで走ることなんてできない――と奏汰は頭を抱えたくなった。
しかしどうにか人混みに紛れてまくことができたらしい。
「っ、あ、明良さん、大丈夫!?」
息を乱す彼を覗き込むと。
「……う、うん」
とても大丈夫そうではない様子の返事がかえってきた。どこかで休憩しようかと、ようやくスマホを取り出す。
すると。
「うわ」
着信履歴がすごいことになっていた。もちろん全部が同じ人物ので埋まっている。
その間隔、一分刻み。
これがいわゆる鬼電というやつか、なんて奏汰は思った。
「ちょっと龍也に連絡するから。妙な動きがあったら教えて」
いまだ肩を上下させている彼に声をかけ、スマホを操作する。
「……も、もしもし」
『今、どこ』
コール間もなく発せられた声は固くて低い。ぶちギレてるのが容易に想像できた。
『どこにいんの』
「どこって」
キョロキョロ辺りを見渡しながら、目印になりそうな場所を口にすると。
『すぐ行くからそこ動かないで』
それだけ言って切られた。
「なんだよ。くそっ、人の話くらい聞けっつーの」
「心配かけちゃってごめんね」
申し訳なさそうに言う明良だが、そんなことより彼の身体のことが心配で顔をのぞき込む。
「身体は大丈夫?」
大事な身体だ、怪我などしていたら一大事、しかし彼は意外にも元気そうで顔色も悪いわけでもない。
「龍也、もうすぐ来るって」
「彼にも迷惑かけちゃったなあ」
「いいんだって。そんなことより、さっきのはやっぱり……」
「そうだよ。久遠家のやつらさ」
彼は自嘲気味に笑う。
すでに人工中絶できる時期はすぎている。そこまでこれたのだから、今さら狙われることなどないと思っていたが。
「今度は産まれた子を寄越せときた」
「嘘だろ!?」
「もちろんそんなことはさせないよ。大切な我が子だもの」
お腹を擦りながらも少し悲しげな明良を前に、奏汰は小さく息を吐いた。
平気そうな素振りをしているが、平気なわけがない。よくよく見れば、その手がほんの少し震えていた。
本当は怖くて不安なのだろう、当たり前だ。
愛する我が子を奪われるかもしれないという恐怖。そしてシングルマザーになる実感が着実に芽生えてくる。
心細く思うなという方が無理な話だ。
そんな彼に伝えたいことは一つ。
「あの明良さん。あなたさえよかったら僕と――」
「おっ、奏汰やん!」
突然とんできた声。2人はハッとして反射的に振り向く。
「山尾さん!?」
「偶然やな」
そこにはバイト先の先輩である山尾が立っていた。
彼は一瞬、大きく目を見開いたかと思えば思い切り顔をしかめる。
「こんなとこで会うなんてな。もしかして……デートか」
「へ?」
「お前カノジョいない言うてたよな」
「へ?」
「なのにこんな可愛い子つれて、しかもΩやろ」
「ん?」
「てか知らんかったし」
「え?」
「オレじゃダメやったんか、なあ」
「ええ?」
「なんだよ、ちょっとイイ感じだと思ってたオレがバカみたいやんけ」
「んん?」
「あーくそ、最近匂い変わったのこの女のせいか」
「女?」
「自覚した瞬間に失恋した自分にムカつくわ」
「???」
険しい顔の山尾に対して奏汰の頭の中はクエスチョンマークが飛び交っていた。
一体彼が何をいってるのかも、なんで泣きそうな顔をしてるのかも分からない。
呆然としていると手を握りしめられ、そこでようやくなにかヤバいかもと気づき身じろいだ。
「ちょっ!?」
「奏汰、実は前から――」
改めてわかる悔しいほどの体格差に奏汰がびびっていると。
「あっ、山尾君。久しぶり!」
場違いな明るさで割って入ったのが明良。
え? え? と目を白黒させた山尾に彼が笑顔で手を振る。
「ぼくのこと忘れちゃった? 堂守だよ」
「えぇっ! あ、うそっ、堂守さん!?」
「そうそう。髪がのびてイメージ変わったかな」
この数ヶ月で肩上までのびた髪で、たしかに女性に見えなくもない。
自分の勘違いに気づいたらしい山尾が慌てて手を離す。
「まままっ、マジかぁ~! てっきり女かと思ってたわぁ。か、奏汰もはよ言えや~、なぁ」
「山尾さんが勝手に勘違いしたんでしょ。てかそんなに僕にカノジョができたら嫌なんですか」
「え゙」
奏汰が大きくため息をついた。
その場に気まずい空気が流れる。
「僕のこと――同類のモテない認定すんのやめてもらっていいですか」
「え?」
「そりゃカノジョはいないですけど、山尾さんと違って僕は手当り次第に女の子に声かける節操なしのアホじゃないですから」
「え、待てや。これオレ、バカにされてる?」
「バカにはしてない。アホだとは思ってますけど」
「いや一緒やん」
奏汰はムスッとしているが、山尾と明良が何とも微妙な表情で顔を見合わせていた。
「あ、山尾君こそデートじゃないの。こんな可愛い子連れて」
「え?」
その言葉でようやく山尾の後ろにいる人物に気づく。
「……」
10歳くらいだろうか。白とピンクを基調とした可愛らしいワンピース姿の少女がジッとこちらを睨みつけていた。
「あ、コイツ? 従兄弟の子でな。買い物連れて行けってうるさいもんで」
「……」
「おい、お前なに黙っとんねん。愛想良くしろや」
「……ども」
それはもう敵意むき出しと言ってもいいかもしれない。
山尾の服をしっかりつかみながら、その美少女は小さな声でそれだけ言ってまたこちらを睨みつけるが彼は特に気にかける様子もなく。
「なんや腹でも減ってんのか。ま、いいか。それより二人仲良かったんか」
「え? あ、はい。色々あって」
ここで事情を説明するのも面倒で適当にはぐらかす。
「ふうん、なんか意外な組み合わせやな。ま、久しぶりに元気そうな顔見れて良かったわ」
「山尾君こそ。辞めた時はちゃんと挨拶できなくてごめんね」
二人とも同じ時期にバイト始めたと聞いた事があった。年齢こそ山尾の方が年下だが、タメ口で話すくらいの間柄だったらしい。
「気にすんなや。あ、今度三人で遊ぶか!」
「僕と山尾さんが示し合わせて休みとるのはなんか嫌だなぁ」
「奏汰、失礼やぞ。先輩後輩の立場の差を思い知らせてやる」
「あー、ウザい先輩だ」
「なんやと!」
いつもの軽口叩きながら、頭をくしゃくしゃ撫でる彼から距離をとる。
そんなの二人を明良は少し驚いたように見てから、少し困ったように笑っていた。
「後で覚えてろよ」
「山尾さんの方が忘れちゃうんじゃないですか、忘れっぽいし」
「人をボケ老人みたく言うな。お前が覚えとけばええねん」
「いや、なんで僕が覚えてなきゃいけないんですか。ボケ☆山尾」
「売れへん芸人みたいになってんぞ」
そんなくだらない会話をギャイギャイしていると。
「だいたい山尾さんは――え?」
スッと上に影が差した。そして気配も足音もなく、いきなり首根っこを掴まれる。
「なにしてんの、あんた」
「龍也!」
あからさまに不機嫌を隠さない様子の彼に見下ろされた。
その剣呑さにポカンとする山尾と相変わらず睨みつけてくる美少女。
「あー……」
そっと隣で吐かれた明良のため息を聞きながら、奏汰はこの刺々しい空気をどうするか考えあぐねていた。
しかしどうにか人混みに紛れてまくことができたらしい。
「っ、あ、明良さん、大丈夫!?」
息を乱す彼を覗き込むと。
「……う、うん」
とても大丈夫そうではない様子の返事がかえってきた。どこかで休憩しようかと、ようやくスマホを取り出す。
すると。
「うわ」
着信履歴がすごいことになっていた。もちろん全部が同じ人物ので埋まっている。
その間隔、一分刻み。
これがいわゆる鬼電というやつか、なんて奏汰は思った。
「ちょっと龍也に連絡するから。妙な動きがあったら教えて」
いまだ肩を上下させている彼に声をかけ、スマホを操作する。
「……も、もしもし」
『今、どこ』
コール間もなく発せられた声は固くて低い。ぶちギレてるのが容易に想像できた。
『どこにいんの』
「どこって」
キョロキョロ辺りを見渡しながら、目印になりそうな場所を口にすると。
『すぐ行くからそこ動かないで』
それだけ言って切られた。
「なんだよ。くそっ、人の話くらい聞けっつーの」
「心配かけちゃってごめんね」
申し訳なさそうに言う明良だが、そんなことより彼の身体のことが心配で顔をのぞき込む。
「身体は大丈夫?」
大事な身体だ、怪我などしていたら一大事、しかし彼は意外にも元気そうで顔色も悪いわけでもない。
「龍也、もうすぐ来るって」
「彼にも迷惑かけちゃったなあ」
「いいんだって。そんなことより、さっきのはやっぱり……」
「そうだよ。久遠家のやつらさ」
彼は自嘲気味に笑う。
すでに人工中絶できる時期はすぎている。そこまでこれたのだから、今さら狙われることなどないと思っていたが。
「今度は産まれた子を寄越せときた」
「嘘だろ!?」
「もちろんそんなことはさせないよ。大切な我が子だもの」
お腹を擦りながらも少し悲しげな明良を前に、奏汰は小さく息を吐いた。
平気そうな素振りをしているが、平気なわけがない。よくよく見れば、その手がほんの少し震えていた。
本当は怖くて不安なのだろう、当たり前だ。
愛する我が子を奪われるかもしれないという恐怖。そしてシングルマザーになる実感が着実に芽生えてくる。
心細く思うなという方が無理な話だ。
そんな彼に伝えたいことは一つ。
「あの明良さん。あなたさえよかったら僕と――」
「おっ、奏汰やん!」
突然とんできた声。2人はハッとして反射的に振り向く。
「山尾さん!?」
「偶然やな」
そこにはバイト先の先輩である山尾が立っていた。
彼は一瞬、大きく目を見開いたかと思えば思い切り顔をしかめる。
「こんなとこで会うなんてな。もしかして……デートか」
「へ?」
「お前カノジョいない言うてたよな」
「へ?」
「なのにこんな可愛い子つれて、しかもΩやろ」
「ん?」
「てか知らんかったし」
「え?」
「オレじゃダメやったんか、なあ」
「ええ?」
「なんだよ、ちょっとイイ感じだと思ってたオレがバカみたいやんけ」
「んん?」
「あーくそ、最近匂い変わったのこの女のせいか」
「女?」
「自覚した瞬間に失恋した自分にムカつくわ」
「???」
険しい顔の山尾に対して奏汰の頭の中はクエスチョンマークが飛び交っていた。
一体彼が何をいってるのかも、なんで泣きそうな顔をしてるのかも分からない。
呆然としていると手を握りしめられ、そこでようやくなにかヤバいかもと気づき身じろいだ。
「ちょっ!?」
「奏汰、実は前から――」
改めてわかる悔しいほどの体格差に奏汰がびびっていると。
「あっ、山尾君。久しぶり!」
場違いな明るさで割って入ったのが明良。
え? え? と目を白黒させた山尾に彼が笑顔で手を振る。
「ぼくのこと忘れちゃった? 堂守だよ」
「えぇっ! あ、うそっ、堂守さん!?」
「そうそう。髪がのびてイメージ変わったかな」
この数ヶ月で肩上までのびた髪で、たしかに女性に見えなくもない。
自分の勘違いに気づいたらしい山尾が慌てて手を離す。
「まままっ、マジかぁ~! てっきり女かと思ってたわぁ。か、奏汰もはよ言えや~、なぁ」
「山尾さんが勝手に勘違いしたんでしょ。てかそんなに僕にカノジョができたら嫌なんですか」
「え゙」
奏汰が大きくため息をついた。
その場に気まずい空気が流れる。
「僕のこと――同類のモテない認定すんのやめてもらっていいですか」
「え?」
「そりゃカノジョはいないですけど、山尾さんと違って僕は手当り次第に女の子に声かける節操なしのアホじゃないですから」
「え、待てや。これオレ、バカにされてる?」
「バカにはしてない。アホだとは思ってますけど」
「いや一緒やん」
奏汰はムスッとしているが、山尾と明良が何とも微妙な表情で顔を見合わせていた。
「あ、山尾君こそデートじゃないの。こんな可愛い子連れて」
「え?」
その言葉でようやく山尾の後ろにいる人物に気づく。
「……」
10歳くらいだろうか。白とピンクを基調とした可愛らしいワンピース姿の少女がジッとこちらを睨みつけていた。
「あ、コイツ? 従兄弟の子でな。買い物連れて行けってうるさいもんで」
「……」
「おい、お前なに黙っとんねん。愛想良くしろや」
「……ども」
それはもう敵意むき出しと言ってもいいかもしれない。
山尾の服をしっかりつかみながら、その美少女は小さな声でそれだけ言ってまたこちらを睨みつけるが彼は特に気にかける様子もなく。
「なんや腹でも減ってんのか。ま、いいか。それより二人仲良かったんか」
「え? あ、はい。色々あって」
ここで事情を説明するのも面倒で適当にはぐらかす。
「ふうん、なんか意外な組み合わせやな。ま、久しぶりに元気そうな顔見れて良かったわ」
「山尾君こそ。辞めた時はちゃんと挨拶できなくてごめんね」
二人とも同じ時期にバイト始めたと聞いた事があった。年齢こそ山尾の方が年下だが、タメ口で話すくらいの間柄だったらしい。
「気にすんなや。あ、今度三人で遊ぶか!」
「僕と山尾さんが示し合わせて休みとるのはなんか嫌だなぁ」
「奏汰、失礼やぞ。先輩後輩の立場の差を思い知らせてやる」
「あー、ウザい先輩だ」
「なんやと!」
いつもの軽口叩きながら、頭をくしゃくしゃ撫でる彼から距離をとる。
そんなの二人を明良は少し驚いたように見てから、少し困ったように笑っていた。
「後で覚えてろよ」
「山尾さんの方が忘れちゃうんじゃないですか、忘れっぽいし」
「人をボケ老人みたく言うな。お前が覚えとけばええねん」
「いや、なんで僕が覚えてなきゃいけないんですか。ボケ☆山尾」
「売れへん芸人みたいになってんぞ」
そんなくだらない会話をギャイギャイしていると。
「だいたい山尾さんは――え?」
スッと上に影が差した。そして気配も足音もなく、いきなり首根っこを掴まれる。
「なにしてんの、あんた」
「龍也!」
あからさまに不機嫌を隠さない様子の彼に見下ろされた。
その剣呑さにポカンとする山尾と相変わらず睨みつけてくる美少女。
「あー……」
そっと隣で吐かれた明良のため息を聞きながら、奏汰はこの刺々しい空気をどうするか考えあぐねていた。
66
あなたにおすすめの小説
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
サクラメント300
朝顔
BL
アルファの佐倉は、過去に恋人を傷つけたことで、贖罪のための人生を送ってきた。
ある日不運な偶然が重なって、勤務先のビルのエレベーターに閉じ込められてしまった。
そこで一緒に閉じ込められたアルファの男と仲良くなる。
お互い複雑なバース性であったため、事故のように体を重ねてしまう。
ただの偶然の出会いのように見えたが、それぞれが赦しを求めて生きてきた。
贖罪の人生を選んだ佐倉が、その先に見つける幸せとは……
春らしく桜が思い浮かぶようなお話を目指して、赦しをテーマに書いてみました。
全28話 完結済み
⭐︎規格外フェロモンα×元攻めα
⭐︎主人公受けですが、攻め視点もあり。
※オメガバースの設定をお借りして、オリジナル要素を入れています。
すべてはてのひらで踊る、きみと
おしゃべりマドレーヌ
BL
この国一番の美人の母のもとに産まれたリネーは、父親に言われた通り、婚約者アルベルトを誘惑して自分の思い通りに動かそうと画策する。すべては父の命令で、従わなければ生きていけないと思っていたのに、アルベルトと過ごすうちにリネーは自分の本当に望むことに気が付いてしまう。
「……実は、恥ずかしながら、一目惚れで。リネー……は覚えてないと思いますが、一度俺に声を掛けてくれたことがあるんです」
「え」
「随分と昔の事なので……王家の主催ダンスパーティーで一緒に踊らないかと声を掛けてくれて、それですっかり」
純朴で気高く、清々しい青年を前にして、リネーは自身の策略にアルベルトを巻き込んでしまうことに日に日に罪悪感を覚えるようになる。
けれど実はアルベルトにはある思惑がありーーーーー。
箱入りオメガの受難
おもちDX
BL
社会人の瑠璃は突然の発情期を知らないアルファの男と過ごしてしまう。記憶にないが瑠璃は大学生の地味系男子、琥珀と致してしまったらしい。
元の生活に戻ろうとするも、琥珀はストーカーのように付きまといだし、なぜか瑠璃はだんだん絆されていってしまう。
ある日瑠璃は、発情期を見知らぬイケメンと過ごす夢を見て混乱に陥る。これはあの日の記憶?知らない相手は誰?
不器用なアルファとオメガのドタバタ勘違いラブストーリー。
現代オメガバース ※R要素は限りなく薄いです。
この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。ありがたいことに、グローバルコミック賞をいただきました。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24
待っててくれと言われて10年待った恋人に嫁と子供がいた話
ナナメ
BL
アルファ、ベータ、オメガ、という第2性が出現してから数百年。
かつては虐げられてきたオメガも抑制剤のおかげで社会進出が当たり前になってきた。
高校3年だったオメガである瓜生郁(うりゅう いく)は、幼馴染みで恋人でもあるアルファの平井裕也(ひらい ゆうや)と婚約していた。両家共にアルファ家系の中の唯一のオメガである郁と裕也の婚約は互いに会社を経営している両家にとって新たな事業の為に歓迎されるものだった。
郁にとって例え政略的な面があってもそれは幸せな物で、別の会社で修行を積んで戻った裕也との明るい未来を思い描いていた。
それから10年。約束は守られず、裕也はオメガである別の相手と生まれたばかりの子供と共に郁の前に現れた。
信じていた。裏切られた。嫉妬。悲しさ。ぐちゃぐちゃな感情のまま郁は川の真ん中に立ち尽くすーー。
※表紙はAIです
※遅筆です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる