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第一章
ep-9 箸休めに少しの冒険も良いよね
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「…で、要件って?キャラメルをくれって言うなら無いよ」
嘘である。何ならあの時ルドリー渡したキャラメルは、日本で食べたお菓子の中でも結構お気に入りの品なので常にストックしている。食べかけで、収納魔法ではなくコートのポケットに入っていたのはあの時の偶然だが、そうでなければ常に持っているのだ。
しかし、そんな飄々としたヴィートの対応に怒る事なく、領主は首を振る。
「いや、別に甘味は欲しく無いかな」
残念、違ったようだ。だが、ヴィートとしてはそれで終えて欲しかった。ここでもし下手に依頼された物…もしくはそれ以上のものを出して仕舞えば貴族である目の前の男に目をつけられるのは必然…まぁ、その場合は拠点としている街を変えるだけだし、現状日本にある貯金的にもう平気だから構わないのだが。
…何だかそう考えると割とどうとでもなりそうだと思えたのか、ヴィートの眉間から皺が減った。
「君が変わった品をたくさん持っているだろう事を期待してね。娘に送る品で何かお勧めはないかな?」
「娘さんに聞いてください」
「…誕生日の贈り物でね」
「例年通りで良いのでは?」
「やっぱり妻と被るとね」
「おしどり夫婦でいいじゃないですか」
「……」
「…」
静かな応接間にパチパチと閃光が走るような感覚。領主もヴィートも引き下がる気はない。が、先に折れたのは領主の方だった。
「…娘からね、知り合いの受付嬢の話ですごく良い香りのする冒険者がいると聞いたらしくてね……」
「……あッ」
「心当たり、ありそうだね」
「ソンナコトナイデスヨー」
「僕の目を見て言えたら信じられるけどね?」
自分の体臭関係の話もしているお喋りそうな受付嬢など1人しか知らない。まさかの領主の情報ソースは脳筋エルフと担当者からの垂れ込みだった。
「僕としても領民や他の冒険者から、低ランクの冒険者から品物を巻き上げたなんて言われたくないし…何とか買えないかな?」
「一回こっきりであれば…」
「本当かい⁉︎確かに君からとても良い香りがしているからね…香水、では無いかな」
「…」
流石に貴族相手に「あんたらが臭えんだよ」とは言わない。一応目の前の名乗りもしない金髪領主は比較的臭く無いし。無言でひらひら手を振りつつ、コートの中を漁る。
「そのコートも噂で聞いているよ、見たことのない綺麗な生地だとね」
「やんないよ」
「いや、そう言った服飾関係も」
「石鹸と服、選んで」
「…石鹸で」
少しだけ考え込み、渋々と言う感じで答える領主。彼としては目の前の少女の服もそうだが、明らかに荷物の入りそうにないコートから色々荷物を出している光景に気が行く。何度も繰り返しているが、そもそもどちらの世界でもこのゴブリンのやっている魔法も技術もおかしいのだ。
「はい、石鹸1ケース。12個入りだから」
「あ、あぁ…他にも何か」
「石鹸だけ、一回こっきり」
「そう…だな、うん」
「ん、代金はこの通り」
「…いやちょっと待て、高過ぎるだろ⁉︎何だこれ、金貨250枚⁉︎」
パラリと出された金額を見て領主は思わず立ち上がり叫ぶ。この世界において石鹸は質は悪く確かに高い。一般的な品質と言われているもので250ヤエルから500ヤエル。銅貨25~50枚で1個…一つ当たり大凡2500から5000円程度。それが12個入りだといえ25万ヤエル…金貨で25枚。日本円でなら1250万円…詐欺でなければぼったくりという言葉でさえ生ぬるいという金額である。いや古代ローマとかより高いとかマジで舐めている金額ではある。
「嘘だと思うなら別に払わなくてもいい。異国の石鹸なんて欲しがる人は腐るほど居る…あなたじゃなくても別に買う人間はいる」
「…効果は本物なんだな?もし偽物であればタダでは…」
「なら私が使うからちょっと待ってて…証人としてそこの後ろに控えているメイドさん3人も来て」
「…構わん、許可しよう」
そう言質をもらったヴィートは、テクテクとメイド達に案内されながら浴室まで来た。浴室といえどシャワーなどなく、湯浴み用の大型の桶とサウナ程度しかないが。そんな中、ヴィートは桶の中に並々とお湯を注ぎ始める。そのやはりと言うべきか、こちら側でも常識はずれの行いにメイド達も流石に目を向く。何故ならヴィートは詠唱も無くいつもの指パッチン1鳴らしで発動させているからだ。
さて、ここまでで説明が足りていなかった金額の話。別にヴィートはただぼったくろうとしているつもりはない。目的はいくつかあるが、まずは法外に高価なものしか無いと刷り込む為。次にその金額通りの効果があると教えつつも先の理由からこちらに踏み込みにくくする為。最後に、これだけ高価なのはずっと遠くの大陸や国からの輸入でヴィート自身も何年前に仕入れたかわからないがためにと言い張る為である。
最初の一つ目は単純。単にクッソ高い金額を提示しておいそれと呼び出しては買い物できないようにする為。
二つ目。それはこの後のメイドの1人を洗い尽くしてこの世界レベルでは実現できない清潔さと香りを実現させ、その実現させる貴重なアイテムは自分しか持っていないと信じさせる為。
そして最後の三つ目。先の二つの理由と合わせてそれらアイテムはそうそう納品できない上にまずこの国周辺には存在しないと言い張る為。
これらによって自身を今後呼び出させないための予防線を張る目的で、ぼったくているのだ。
なお当然普通に金貨が欲しいのもあるが。別にこの国では最低限しか使わないが、日本では売れる。しかも地球側はこの世界より金が高値で売れる…相も変わらず素晴らしきかな錬金術、と思わず歌いたくなるほどである。
そんなことなど知らないメイド達のうちの1人はポカンとしている間にひん剥かれる。
「え、あっ、ちょっ⁉︎」
「はいはい、動かないでねぇ」
「いや、私じゃ無くてふぁぁぁっ⁉︎めっちゃいい香りぃ⁉︎めっちゃ泡立つしふわふわ⁉︎何この泡にタオル⁉︎」
「…きったな…全然泡立たないし…皮脂だらけだなこれ」
「「えぇ…」」
「…えっ」
瞬く間に全裸に向かれた挙句、膝カックンでいつの間にか出されたバスチェアに座らされ、ワシワシと現れるメイドA。立ち上がろうにも何か魔法で抑えられているのか(事実、膝カックン時に部分的な電気魔法でスタンにさせている)、立ち上がるどころか指先一つ動かせない。
アワアワとしているうちに物理的に泡泡にされ、ほっこりしたのも束の間。まさかの汚ねぇ宣言。愕然とするメイドAとバッサリイカれて軽く引く残りのメイド達。そしてそれらを無視して魔法でお湯を出して流してはまた洗うヴィート。気分ばバイクの洗車である。
幾度か洗い終え、やっと満足したヴィートと、途中から慣れてきたものの…同性とはいえ他人の目の前で、それはもう犬猫のようにガッツリ全身クマなく洗われ、シクシクと泣くメイドとそれを哀れなものを見る目で見るメイド達。
「…うっうっ…お嫁に行けないですぅ…」
「大丈夫、今日のうちにすぐ見つかる…また臭くなったら速攻居なくなるけど」
「「うーわ…」」
「うわー‼︎」
そして泣いてしまったメイドAを無慈悲にも着せ替えるヴィート。当然、ここまで熱が入ってしまい、当初の呼ばれないようにしよう作戦など忘れており、コートの中から見た目はそっくりなもの(見る人が見るどころか普通に生地は明らかにこっちの服飾業者が持っていないレベルとわかるもの)を取り出し着せていく。勿論、下着も含めてだ。
結果、1人のこの世界で恐らくは最も高価な服に身を包んだめちゃめちゃいい匂いのする美少女メイドが爆誕した。
周りの案内役メイド達以外のメイドや、この屋敷まで案内してきた執事まで全員が思わず目を見張る出来である。
「…」
「よし、行くよ」
「へぁっ⁉︎どどど何処にです⁉︎これ以上何処に連れていくんですかぁ⁉︎」
「何処も何も…領主様にこうなりますって報告」
「……あ…」
完全に自分が現れていた理由を失念していたメイドA。そんなメイドの手を引きながら応接室にノックして入る。
「ああ、終わった…の…か……」
「じゃーん」
真顔で手をヒラヒラさせながらメイドAを紹介する様に前に出す。領主も振り向きざまにその代わり様に固まる。
明らかに艶の違う肌と髪。肌はくすみなど無く、艶々プルプルに。髪も茶髪かと思っていたが汚れがしっかり落とされ元のブラウンの艶のある色が全面に露わとなっている。しれっとされた化粧(流石に個人のを持って来させたが)もヴィートの技術によって色っぽくそして健康的な調色且つ、ナチュラルに仕上げられており、つい数十分…時間をサバ読んでいた…1、2時間前と比べ完全な別人となっていた。
「お、おぉ…」
「ね?文句無しでしょ」
「だ、旦那様ぁ…」
「お前は発情すんな」
「あたっ」
スススッと歩み寄ろうとするメイドAの後頭部に石鹸を入れていた紙箱を投げつける。たとえ異世界といっても、権力者…それも割と優しめの権力者のお手つきになればワンチャンある世界なのは変わらないのだ。世知辛い。
「…あ、ああ、すまない…支払いだな。あぁ、文句無しだ」
「ん、ちゃんと払ってくれれば「お父様ぁーッ‼︎⁉︎あの噂の冒険者が来ているって本当ですのぉーッ⁉︎」…あ?」
バァァーンと扉をぶち抜かんばかりに開き…いや蹴破ってんなこれ。入ってきたのは金髪ロールの赤いドレス…ドレスじゃねぇ男物の服着てんなお前ぇっ‼︎…何故か赤いボトムスにブーツ。上は白の臍出しフランネルシャツを着た(胸の辺りはパッツパツどころか今の衝撃で真ん中二つのボタンが飛んでいる。どうやらバァァーンはボタンの飛んでいった音のバァァーンも含んでいた様である)お嬢様風の女が入ってきた。流石のヴィートもこれにはフリーズ。
なおボタンは父親たる両種の両目に綺麗にヒットし、当人は崩れ落ちて目を押さえて転がっている。
「おーっほっほっほっ…ゲェッホゲホッ‼︎喉に来るわね、このアホみたいな笑い方ぁ‼︎あ、貴女がヴィートさんね‼︎私そこの転がっている変態ダメ親父ことブルムンド・スガルノフスの娘のミーニャ・スガルノフスですわぁ‼︎ァァん可愛い⁉︎何この子かわいい!妹になりませんこと⁉︎」
「え?あ?え?…え?」
その倒れている領主…ブルムンドの娘は、正しく嵐の様な娘であった。
嘘である。何ならあの時ルドリー渡したキャラメルは、日本で食べたお菓子の中でも結構お気に入りの品なので常にストックしている。食べかけで、収納魔法ではなくコートのポケットに入っていたのはあの時の偶然だが、そうでなければ常に持っているのだ。
しかし、そんな飄々としたヴィートの対応に怒る事なく、領主は首を振る。
「いや、別に甘味は欲しく無いかな」
残念、違ったようだ。だが、ヴィートとしてはそれで終えて欲しかった。ここでもし下手に依頼された物…もしくはそれ以上のものを出して仕舞えば貴族である目の前の男に目をつけられるのは必然…まぁ、その場合は拠点としている街を変えるだけだし、現状日本にある貯金的にもう平気だから構わないのだが。
…何だかそう考えると割とどうとでもなりそうだと思えたのか、ヴィートの眉間から皺が減った。
「君が変わった品をたくさん持っているだろう事を期待してね。娘に送る品で何かお勧めはないかな?」
「娘さんに聞いてください」
「…誕生日の贈り物でね」
「例年通りで良いのでは?」
「やっぱり妻と被るとね」
「おしどり夫婦でいいじゃないですか」
「……」
「…」
静かな応接間にパチパチと閃光が走るような感覚。領主もヴィートも引き下がる気はない。が、先に折れたのは領主の方だった。
「…娘からね、知り合いの受付嬢の話ですごく良い香りのする冒険者がいると聞いたらしくてね……」
「……あッ」
「心当たり、ありそうだね」
「ソンナコトナイデスヨー」
「僕の目を見て言えたら信じられるけどね?」
自分の体臭関係の話もしているお喋りそうな受付嬢など1人しか知らない。まさかの領主の情報ソースは脳筋エルフと担当者からの垂れ込みだった。
「僕としても領民や他の冒険者から、低ランクの冒険者から品物を巻き上げたなんて言われたくないし…何とか買えないかな?」
「一回こっきりであれば…」
「本当かい⁉︎確かに君からとても良い香りがしているからね…香水、では無いかな」
「…」
流石に貴族相手に「あんたらが臭えんだよ」とは言わない。一応目の前の名乗りもしない金髪領主は比較的臭く無いし。無言でひらひら手を振りつつ、コートの中を漁る。
「そのコートも噂で聞いているよ、見たことのない綺麗な生地だとね」
「やんないよ」
「いや、そう言った服飾関係も」
「石鹸と服、選んで」
「…石鹸で」
少しだけ考え込み、渋々と言う感じで答える領主。彼としては目の前の少女の服もそうだが、明らかに荷物の入りそうにないコートから色々荷物を出している光景に気が行く。何度も繰り返しているが、そもそもどちらの世界でもこのゴブリンのやっている魔法も技術もおかしいのだ。
「はい、石鹸1ケース。12個入りだから」
「あ、あぁ…他にも何か」
「石鹸だけ、一回こっきり」
「そう…だな、うん」
「ん、代金はこの通り」
「…いやちょっと待て、高過ぎるだろ⁉︎何だこれ、金貨250枚⁉︎」
パラリと出された金額を見て領主は思わず立ち上がり叫ぶ。この世界において石鹸は質は悪く確かに高い。一般的な品質と言われているもので250ヤエルから500ヤエル。銅貨25~50枚で1個…一つ当たり大凡2500から5000円程度。それが12個入りだといえ25万ヤエル…金貨で25枚。日本円でなら1250万円…詐欺でなければぼったくりという言葉でさえ生ぬるいという金額である。いや古代ローマとかより高いとかマジで舐めている金額ではある。
「嘘だと思うなら別に払わなくてもいい。異国の石鹸なんて欲しがる人は腐るほど居る…あなたじゃなくても別に買う人間はいる」
「…効果は本物なんだな?もし偽物であればタダでは…」
「なら私が使うからちょっと待ってて…証人としてそこの後ろに控えているメイドさん3人も来て」
「…構わん、許可しよう」
そう言質をもらったヴィートは、テクテクとメイド達に案内されながら浴室まで来た。浴室といえどシャワーなどなく、湯浴み用の大型の桶とサウナ程度しかないが。そんな中、ヴィートは桶の中に並々とお湯を注ぎ始める。そのやはりと言うべきか、こちら側でも常識はずれの行いにメイド達も流石に目を向く。何故ならヴィートは詠唱も無くいつもの指パッチン1鳴らしで発動させているからだ。
さて、ここまでで説明が足りていなかった金額の話。別にヴィートはただぼったくろうとしているつもりはない。目的はいくつかあるが、まずは法外に高価なものしか無いと刷り込む為。次にその金額通りの効果があると教えつつも先の理由からこちらに踏み込みにくくする為。最後に、これだけ高価なのはずっと遠くの大陸や国からの輸入でヴィート自身も何年前に仕入れたかわからないがためにと言い張る為である。
最初の一つ目は単純。単にクッソ高い金額を提示しておいそれと呼び出しては買い物できないようにする為。
二つ目。それはこの後のメイドの1人を洗い尽くしてこの世界レベルでは実現できない清潔さと香りを実現させ、その実現させる貴重なアイテムは自分しか持っていないと信じさせる為。
そして最後の三つ目。先の二つの理由と合わせてそれらアイテムはそうそう納品できない上にまずこの国周辺には存在しないと言い張る為。
これらによって自身を今後呼び出させないための予防線を張る目的で、ぼったくているのだ。
なお当然普通に金貨が欲しいのもあるが。別にこの国では最低限しか使わないが、日本では売れる。しかも地球側はこの世界より金が高値で売れる…相も変わらず素晴らしきかな錬金術、と思わず歌いたくなるほどである。
そんなことなど知らないメイド達のうちの1人はポカンとしている間にひん剥かれる。
「え、あっ、ちょっ⁉︎」
「はいはい、動かないでねぇ」
「いや、私じゃ無くてふぁぁぁっ⁉︎めっちゃいい香りぃ⁉︎めっちゃ泡立つしふわふわ⁉︎何この泡にタオル⁉︎」
「…きったな…全然泡立たないし…皮脂だらけだなこれ」
「「えぇ…」」
「…えっ」
瞬く間に全裸に向かれた挙句、膝カックンでいつの間にか出されたバスチェアに座らされ、ワシワシと現れるメイドA。立ち上がろうにも何か魔法で抑えられているのか(事実、膝カックン時に部分的な電気魔法でスタンにさせている)、立ち上がるどころか指先一つ動かせない。
アワアワとしているうちに物理的に泡泡にされ、ほっこりしたのも束の間。まさかの汚ねぇ宣言。愕然とするメイドAとバッサリイカれて軽く引く残りのメイド達。そしてそれらを無視して魔法でお湯を出して流してはまた洗うヴィート。気分ばバイクの洗車である。
幾度か洗い終え、やっと満足したヴィートと、途中から慣れてきたものの…同性とはいえ他人の目の前で、それはもう犬猫のようにガッツリ全身クマなく洗われ、シクシクと泣くメイドとそれを哀れなものを見る目で見るメイド達。
「…うっうっ…お嫁に行けないですぅ…」
「大丈夫、今日のうちにすぐ見つかる…また臭くなったら速攻居なくなるけど」
「「うーわ…」」
「うわー‼︎」
そして泣いてしまったメイドAを無慈悲にも着せ替えるヴィート。当然、ここまで熱が入ってしまい、当初の呼ばれないようにしよう作戦など忘れており、コートの中から見た目はそっくりなもの(見る人が見るどころか普通に生地は明らかにこっちの服飾業者が持っていないレベルとわかるもの)を取り出し着せていく。勿論、下着も含めてだ。
結果、1人のこの世界で恐らくは最も高価な服に身を包んだめちゃめちゃいい匂いのする美少女メイドが爆誕した。
周りの案内役メイド達以外のメイドや、この屋敷まで案内してきた執事まで全員が思わず目を見張る出来である。
「…」
「よし、行くよ」
「へぁっ⁉︎どどど何処にです⁉︎これ以上何処に連れていくんですかぁ⁉︎」
「何処も何も…領主様にこうなりますって報告」
「……あ…」
完全に自分が現れていた理由を失念していたメイドA。そんなメイドの手を引きながら応接室にノックして入る。
「ああ、終わった…の…か……」
「じゃーん」
真顔で手をヒラヒラさせながらメイドAを紹介する様に前に出す。領主も振り向きざまにその代わり様に固まる。
明らかに艶の違う肌と髪。肌はくすみなど無く、艶々プルプルに。髪も茶髪かと思っていたが汚れがしっかり落とされ元のブラウンの艶のある色が全面に露わとなっている。しれっとされた化粧(流石に個人のを持って来させたが)もヴィートの技術によって色っぽくそして健康的な調色且つ、ナチュラルに仕上げられており、つい数十分…時間をサバ読んでいた…1、2時間前と比べ完全な別人となっていた。
「お、おぉ…」
「ね?文句無しでしょ」
「だ、旦那様ぁ…」
「お前は発情すんな」
「あたっ」
スススッと歩み寄ろうとするメイドAの後頭部に石鹸を入れていた紙箱を投げつける。たとえ異世界といっても、権力者…それも割と優しめの権力者のお手つきになればワンチャンある世界なのは変わらないのだ。世知辛い。
「…あ、ああ、すまない…支払いだな。あぁ、文句無しだ」
「ん、ちゃんと払ってくれれば「お父様ぁーッ‼︎⁉︎あの噂の冒険者が来ているって本当ですのぉーッ⁉︎」…あ?」
バァァーンと扉をぶち抜かんばかりに開き…いや蹴破ってんなこれ。入ってきたのは金髪ロールの赤いドレス…ドレスじゃねぇ男物の服着てんなお前ぇっ‼︎…何故か赤いボトムスにブーツ。上は白の臍出しフランネルシャツを着た(胸の辺りはパッツパツどころか今の衝撃で真ん中二つのボタンが飛んでいる。どうやらバァァーンはボタンの飛んでいった音のバァァーンも含んでいた様である)お嬢様風の女が入ってきた。流石のヴィートもこれにはフリーズ。
なおボタンは父親たる両種の両目に綺麗にヒットし、当人は崩れ落ちて目を押さえて転がっている。
「おーっほっほっほっ…ゲェッホゲホッ‼︎喉に来るわね、このアホみたいな笑い方ぁ‼︎あ、貴女がヴィートさんね‼︎私そこの転がっている変態ダメ親父ことブルムンド・スガルノフスの娘のミーニャ・スガルノフスですわぁ‼︎ァァん可愛い⁉︎何この子かわいい!妹になりませんこと⁉︎」
「え?あ?え?…え?」
その倒れている領主…ブルムンドの娘は、正しく嵐の様な娘であった。
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