好きになるんじゃなかった

だいたい石田

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ずっと前から

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西生美香さいきみかのことをみていた。
だからこそ気付いてしまった。美香は、三宅が好きなことを。
三宅がどういう奴なのか、勝家はあまり知らない。中学は違っていたし、クラスメートとはいえど、仲のいい友人はほかにいたから。けれど、美香が好きとなると話はちがう。なぜか、三宅と話すようになった。美香が三宅のどこを好きなのかは知らない。だけれど、三宅は普通にいい奴だ。
まず頭がいい。頭がいい奴によくありがちな教えるのは下手だとか、人に教えるのをおっくうがるということもない。都合があえばだけれど、嫌な顔をせずに教えてくれた。お礼にジュースをおごるとすごく喜んでくれた。
姿勢がいい。これは剣道部のせいもあるのだろう。授業中にふと三宅をみるとぴんと伸びた背中に目がいく。みていて気持ちがよくなるほどしゃきっとしている。ここでふと美香のほうをみると完全に三宅にみとれたりしている。……これにはおそらく勝家しか気付いていないだろう。恋する乙女の見本のような表情で三宅をみているのになぜか苛立つのを感じながら授業に集中しようと試みる。でもどうしても視線と意識は美香にいってしまう。
……好きになるんじゃなかった。
ふと心の中で湧きだした想いを打ち消す。美香に好きな奴がいるからと考えてしまうのが嫌になる。
ただ好きでいいじゃないか。だれにも迷惑をかけるわけでもない。
美香とは小中学校が同じだったから雑談ならたまにする仲だ。
だから、好きになってしまったんだ。
というか、はじまったばかりの片思いではない。思えば小学生のときから美香のことは意識していた。
ある日、美香や仲のいい男子をふくめた5人ほどで勝家の家に遊びにきたことがあった。
そのとき、美香は仲のいい女子に連れられてきていた。当時はそこまで話したことはなかったが、ゲームが目当てで多少人数が増えても問題はなかったし、人数が多いとより楽しめるものだったから快く受け入れた。母親には事前にいっておいたから人数分のおやつやジュースまで用意してくれた。そうして皆ではしゃぐ中。お菓子に手伸ばした美香の手と勝家の手があたる。
「ご、ごめん。」すぐに美香は手をひっこめた。
「ご、ごめん。」勝家も謝ったがなぜか手を動かすことができなかった。一瞬だけふれたその柔らかさが指先からじんじんと伝わってきていた。ほんの数秒前まではただのクラスメートだったのに。
「ちょっとトイレ。」勝家は何気ないふりを装って部屋から出た。少し歩いて壁に背をつけてさきほどふれてしまった右手をまじまじとみつめる。
みてもなんてことのない自分の手。美香にふれたということをのぞけば、変哲のない手。
「……美香。」
西生、と呼び捨てにしていたのに、なぜか下の名前で呼んでしまう。だれも聞いていない空間で、勝家の言葉を聞いた者はいなかった。けれどそれだけでなぜか気恥しくなってしまい、しばらく部屋に戻れなかった。
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