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全人格ハッキング事件〜記憶の追跡者が見たもの 第十三話
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なにこれ!?
見たことも感じたこともない情報量。
新しい記憶は、ダイブ先の体で経験したものばかりのようだ。
ほとんど桂木博士だが、一部他の人にもダイブしていたのがわかる。
何度もおぼれそうになりながら、
追跡者としての経験に助けられつつ、記憶の海を泳いでいく。
ようやくパスワードの記憶が見えてきた。
「f 1 8 m 0 c ・・・。」
最後の一文字を読み終え、AIといっしょに無意識の深層へと降りていく。
パスワードを打つ為に乗り移ろうと、シェラの振り子を見つけた途端、気を失ったはずのシェラが動き出すのが見えた。
振り子のタイミングをはかろうとした私に、AIが声をかける。
「いけない!博士が覚醒する!」
はっとなって桂木博士の方を見ると、振り子が尋常ではない振り方を始めていた。
シェラに乗り移っても、応援を呼ばれたら意味がない。
迷っていると、AIの私が、構成員たちの振り子を見つめながら、唐突に言った。
「ねぇ、難しいとは思うけど、この人たち全員に同時にダイブできないかな。」
「同時って、この人数に、同時に?」
「ええ、だって」
焦る私にAIは振り子を指さす。
「もうすぐここらへんの人たちの振り子が同時に揃う。
こんな奇跡はおそらくそうないわ。」
見ていると、たしかに振り子のタイミングが揃い始めていた。
大勢の構成員たちの振り子、ファシェルとシェラのものもある。
「それに、桂木博士の意識はすでに弟に同化されてるから、
同調は難しいけど、大脳以外の脳細胞を動かすくらいはできるかもしれない。
この脳は体もないのに、パスワードを打ったのでしょう?
それを私がやる。
この脳により深く同化し、
そして・・・・最後に破壊するわ。
だから、あなたは同時ダイブをお願い。
AIの私には無理。
高度な、もはや神の領域とも言える技だから。」
私は息を呑んだ。
ナハカと脳の限界に挑む行為だ。
しかしこの脳は、本来なら生存不可能な条件下で生き延びた、特異な脳だ。
長居しては、どんなことを仕掛けてくるかわからない。
迷ってる暇はない。やるしかない。
目の前に桂木博士以外の振り子を集め、意識を集中させる。
やがて振り子たちが私を囲むように円となり、周りを回り始めた。
それぞれから光の筋が伸び、繋がり始める。
「すごい・・・、これが実体を持つ人間の力。」
AIが感嘆の声をもらしながら見つめる中、振り子のタイミングが揃い始める。
そのとき、シェラが起き上がるのが見えた。
「ファシェル?何してるの?」
シェラが疑うように声をかける。
まずい、でも、もう少し時間がいる。
ファシェルは戸惑い、どう取り繕おうか迷っているようだ。
そんな時、桂木博士が、カッと目を開けた。
「シェラ!ファシェルを殺せ!
こいつはエージェントだ!」
その言葉に、シェラがさっと殺気を帯びる。
銃を抜こうとして、ファシェルと取っ組み合いになった。
その間に桂木博士はふらつきながら体を起こし、自分の脳が入った装置を、いや、こちらを見ていた。
「やってくれたな!貝原葉子。
だが、これでお前は俺のものだ!」
そしてタブレットを引き寄せ、操作しようとする。
ファシェルは銃を叩き落とし、シェラを投げ飛ばしていた。
だがシェラは素早く受け身を取り、仕込んでいたワイヤーで首を締め上げる。
必死に抵抗しながら、ファシェルは桂木博士の方に手を伸ばした。
「か、貝原!は、早く!!」
その時だった。
ついに複数の振り子のタイミングが、完全に揃った。
同調を示す光の筋が、完全に繋がり、太く輝くのが見える。
周囲の熱が上がり、自分が溶けるような感覚を感じた後、一気にダイブする。
同化と意識の結合。
私という意識は繋がる全ての人の中に在る。
それでいて、私は私としても存在している。
まるで自分の指先に、全ての人が、操り人形のごとく糸で繋がっているような感覚だ。
まず、シェラとファシェルを同時に沈黙させる。
急に静かになったので、桂木博士は、何事かと振り返った。
シェラにゆっくりワイヤーを離させ、ファシェルを博士に向かって歩かせる。
状況が呑み込めず、桂木博士が大声をあげた。
「だ、誰かこい!今すぐ!」
見たことも感じたこともない情報量。
新しい記憶は、ダイブ先の体で経験したものばかりのようだ。
ほとんど桂木博士だが、一部他の人にもダイブしていたのがわかる。
何度もおぼれそうになりながら、
追跡者としての経験に助けられつつ、記憶の海を泳いでいく。
ようやくパスワードの記憶が見えてきた。
「f 1 8 m 0 c ・・・。」
最後の一文字を読み終え、AIといっしょに無意識の深層へと降りていく。
パスワードを打つ為に乗り移ろうと、シェラの振り子を見つけた途端、気を失ったはずのシェラが動き出すのが見えた。
振り子のタイミングをはかろうとした私に、AIが声をかける。
「いけない!博士が覚醒する!」
はっとなって桂木博士の方を見ると、振り子が尋常ではない振り方を始めていた。
シェラに乗り移っても、応援を呼ばれたら意味がない。
迷っていると、AIの私が、構成員たちの振り子を見つめながら、唐突に言った。
「ねぇ、難しいとは思うけど、この人たち全員に同時にダイブできないかな。」
「同時って、この人数に、同時に?」
「ええ、だって」
焦る私にAIは振り子を指さす。
「もうすぐここらへんの人たちの振り子が同時に揃う。
こんな奇跡はおそらくそうないわ。」
見ていると、たしかに振り子のタイミングが揃い始めていた。
大勢の構成員たちの振り子、ファシェルとシェラのものもある。
「それに、桂木博士の意識はすでに弟に同化されてるから、
同調は難しいけど、大脳以外の脳細胞を動かすくらいはできるかもしれない。
この脳は体もないのに、パスワードを打ったのでしょう?
それを私がやる。
この脳により深く同化し、
そして・・・・最後に破壊するわ。
だから、あなたは同時ダイブをお願い。
AIの私には無理。
高度な、もはや神の領域とも言える技だから。」
私は息を呑んだ。
ナハカと脳の限界に挑む行為だ。
しかしこの脳は、本来なら生存不可能な条件下で生き延びた、特異な脳だ。
長居しては、どんなことを仕掛けてくるかわからない。
迷ってる暇はない。やるしかない。
目の前に桂木博士以外の振り子を集め、意識を集中させる。
やがて振り子たちが私を囲むように円となり、周りを回り始めた。
それぞれから光の筋が伸び、繋がり始める。
「すごい・・・、これが実体を持つ人間の力。」
AIが感嘆の声をもらしながら見つめる中、振り子のタイミングが揃い始める。
そのとき、シェラが起き上がるのが見えた。
「ファシェル?何してるの?」
シェラが疑うように声をかける。
まずい、でも、もう少し時間がいる。
ファシェルは戸惑い、どう取り繕おうか迷っているようだ。
そんな時、桂木博士が、カッと目を開けた。
「シェラ!ファシェルを殺せ!
こいつはエージェントだ!」
その言葉に、シェラがさっと殺気を帯びる。
銃を抜こうとして、ファシェルと取っ組み合いになった。
その間に桂木博士はふらつきながら体を起こし、自分の脳が入った装置を、いや、こちらを見ていた。
「やってくれたな!貝原葉子。
だが、これでお前は俺のものだ!」
そしてタブレットを引き寄せ、操作しようとする。
ファシェルは銃を叩き落とし、シェラを投げ飛ばしていた。
だがシェラは素早く受け身を取り、仕込んでいたワイヤーで首を締め上げる。
必死に抵抗しながら、ファシェルは桂木博士の方に手を伸ばした。
「か、貝原!は、早く!!」
その時だった。
ついに複数の振り子のタイミングが、完全に揃った。
同調を示す光の筋が、完全に繋がり、太く輝くのが見える。
周囲の熱が上がり、自分が溶けるような感覚を感じた後、一気にダイブする。
同化と意識の結合。
私という意識は繋がる全ての人の中に在る。
それでいて、私は私としても存在している。
まるで自分の指先に、全ての人が、操り人形のごとく糸で繋がっているような感覚だ。
まず、シェラとファシェルを同時に沈黙させる。
急に静かになったので、桂木博士は、何事かと振り返った。
シェラにゆっくりワイヤーを離させ、ファシェルを博士に向かって歩かせる。
状況が呑み込めず、桂木博士が大声をあげた。
「だ、誰かこい!今すぐ!」
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