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魔法のドレス
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地下へと続く階段の先に、その美しい扉はあった。
暗い地下に似つかわしくないその扉は、私が触れるとガチャリと音がして開いた。
「し、失礼します。」
声をかけるけど、返事はない。
恐る恐る中を覗き込むと、そこは女性の部屋のよう。
ホコリをかぶっているけど、美しい調度品と豪華な家具に囲まれている。
そして、一番目をひいたのは、大きな姿見の鏡だった。
何故かこれだけはホコリをかぶっていない。
誰もいないようだから、私はそのまま室内に足を踏み入れた。
その暗く光る姿見の鏡は、縁がオニキスとブラックトルマリンを集めて作られている。
そして、不思議なことに、鏡の前に立っても私の姿が映らない。
「なぜ?
それに・・・、これなんだろ。」
鏡の縁に何か文字が彫ってある。
「ケシェペ。」
思わず口に出して読むと、目の前の鏡の中に、1人の女性が浮かび上がった。
「きゃ!」
驚いて後ろに下がる途中で、足が絡まってそのまま倒れる。
尻餅をついて思わず見上げると、その女性がとても美しく、少しも動かないことに気づいた。
不思議と怖さは消えて行き、しげしげと眺める。
「この人なにかしら。
全身色がないわ。
まるで白黒の肖像画みたい。」
そう。
その姿の美しさと同時に際立つのは、その色彩が全くないこと。
生きているのか死んでいるのかすら、わからない。
立ち上がって、そっと鏡を叩いても、なんの反応もなかった。
「綺麗な人。
それに、着ているこのドレスもとてもおしゃれ。」
鏡の中の女性が着ているドレスは、洗練されたデザインで、思わず自分も着てみたくなるくらい、素敵だった。
鏡の横には、豪華なクローゼットがある。
・・・、もしかして、同じ物があるかも?
私は好奇心に負けて、クローゼットを開いてしまった。
開いた瞬間、ホコリが舞ったけど、中は綺麗なままみたい。
少しむせながら顔を上げると、鏡の中の女性が着ているものと、全く同じデザインのドレスがあった。
「わぁー、素敵!
なんて綺麗なんだろ。」
私は思わず手に取っていた。
うっとりするような美しいラインと、手触り。
そしてうっすらピンク色の、可愛らしい彩り。
「どこに着て行っても恥ずかしくないくらい、素敵。
うわぁ、欲しいなあ。」
私はそう思いながら、いつもの癖で、そのドレスを体に当てながら姿見の鏡の前に立った。
「あ、そうか・・・。
これは映らないんだっけ。」
そう言った途端、鏡の中の女性の姿が消えて、普通の鏡のように今の私を映し出す。
「えぇ!?
あ、でも・・・。」
怖さや驚きよりも、ドレスを体にあてている自分の姿に思わず見惚れてしまった。
「わぁ、ピッタリ。
長さもサイズも。
まるで、私のためにあるみたい・・・。」
私は夢中でそのドレスに着替えた。
「素敵!
そしてなんだろう、とてもいい香りがする。」
私は姿見の鏡に何度も自分を映しては、クルクルと回った。
「着ていると体が軽い。
わぁ、これを着て舞踏会で踊ったら、どんな難しいダンスも踊れそう。」
しばらくそうしていたが、なにぶん部屋の中に舞うホコリが気になる。
「綺麗にお掃除したらいいのに。」
そう呟いた時だった。
私の足元からみるみる部屋が綺麗になっていく。
「えぇ?」
驚いて、さっきまでホコリをかぶっていた家具を触る。
「新品みたいに綺麗!」
クローゼットもソファーも、他の家具も、今買ってきたみたいに美しい。
「なんで?
私が言ったから?」
私は胸を高鳴らせながら、もう一つ試しに言ってみた。
「この綺麗な花瓶に、お花があればいいのに。
王宮の庭に咲く、あの薔薇があるといいな。」
そう言うと目の前にある花瓶に、言った通りの薔薇が生けられていた。
「すごい!!」
私は目の前で次々と願いが叶うことが、面白くてたまらなかった。
何故急に?
このドレスを着たから?
私は他愛もない願いを口にしていく。
美味しいお菓子、飲んだことのない紅茶、どうしても欲しかった髪飾り。
それは願った分だけ、目の前に現れてくる。
急に全能の力を手に入れたことに、私は嬉しくて酔いしれた。
もう、何も怖くない。
何も我慢しなくていいんだ!
そう思ってふと鏡を見ると、鏡の中にあの女性がまた映っていた。
「あれ、さっきと少し違う?」
何か違和感を感じて、じっと見つめる。
上から下まで眺めて、ハッと気づいた。
「ドレスの裾に、色がついてる・・・。」
先程まで白黒の状態で、全く色彩がなかったのに、今ではドレスの裾に色が戻ってきている。
少し怖いな・・・。
「も、もう髪飾りいらない!」
思わず私は、最後に願ったことを口にしていた。
すると髪飾りが消えて、鏡の中の女性のドレスの裾の色が、少し落ちていた。
「こ、紅茶も、お菓子もいらない!」
続けて口にしたが、それは無くならなかったし、鏡の中の女性の色もそれ以上落ちなかった。
「な、なぜ?
まさか、最後の、願いだけしか解けないの?」
私は慌てて元の服に着替えると、着ていたドレスをクローゼットに仕舞い込んだ。
部屋を出ようとして、立ち止まる。
「さ、さっきの髪飾り、やっぱり欲しいな・・・。」
そう呟くけど、何も起こらない。
服を着替えたから?
私は逃げるようにその部屋を出ると、地下の階段を駆け上がった。
元の祭壇の前に出て、外れた床板を戻す。
そこへシスターマルティナが戻ってきた。
「あら、ポーリーン様、臭いは落ちましたか?」
私は笑顔を浮かべて、
「え、ええ。
もぅ、帰ります。
ありがとうございました。」
と、言うと、控室に置いてあるシュムシュラの葉を詰めた籠を持ち上げて、教会を飛び出した。
教会の敷地を駆け足で出ようとした、その時だ。
「動くな!」
と、鋭い男性の声がした。
「お前、魔女の匂いがする。」
フードを深く被った背の高い男性が、クロスボウをこちらに向けて、迫ってきた。
暗い地下に似つかわしくないその扉は、私が触れるとガチャリと音がして開いた。
「し、失礼します。」
声をかけるけど、返事はない。
恐る恐る中を覗き込むと、そこは女性の部屋のよう。
ホコリをかぶっているけど、美しい調度品と豪華な家具に囲まれている。
そして、一番目をひいたのは、大きな姿見の鏡だった。
何故かこれだけはホコリをかぶっていない。
誰もいないようだから、私はそのまま室内に足を踏み入れた。
その暗く光る姿見の鏡は、縁がオニキスとブラックトルマリンを集めて作られている。
そして、不思議なことに、鏡の前に立っても私の姿が映らない。
「なぜ?
それに・・・、これなんだろ。」
鏡の縁に何か文字が彫ってある。
「ケシェペ。」
思わず口に出して読むと、目の前の鏡の中に、1人の女性が浮かび上がった。
「きゃ!」
驚いて後ろに下がる途中で、足が絡まってそのまま倒れる。
尻餅をついて思わず見上げると、その女性がとても美しく、少しも動かないことに気づいた。
不思議と怖さは消えて行き、しげしげと眺める。
「この人なにかしら。
全身色がないわ。
まるで白黒の肖像画みたい。」
そう。
その姿の美しさと同時に際立つのは、その色彩が全くないこと。
生きているのか死んでいるのかすら、わからない。
立ち上がって、そっと鏡を叩いても、なんの反応もなかった。
「綺麗な人。
それに、着ているこのドレスもとてもおしゃれ。」
鏡の中の女性が着ているドレスは、洗練されたデザインで、思わず自分も着てみたくなるくらい、素敵だった。
鏡の横には、豪華なクローゼットがある。
・・・、もしかして、同じ物があるかも?
私は好奇心に負けて、クローゼットを開いてしまった。
開いた瞬間、ホコリが舞ったけど、中は綺麗なままみたい。
少しむせながら顔を上げると、鏡の中の女性が着ているものと、全く同じデザインのドレスがあった。
「わぁー、素敵!
なんて綺麗なんだろ。」
私は思わず手に取っていた。
うっとりするような美しいラインと、手触り。
そしてうっすらピンク色の、可愛らしい彩り。
「どこに着て行っても恥ずかしくないくらい、素敵。
うわぁ、欲しいなあ。」
私はそう思いながら、いつもの癖で、そのドレスを体に当てながら姿見の鏡の前に立った。
「あ、そうか・・・。
これは映らないんだっけ。」
そう言った途端、鏡の中の女性の姿が消えて、普通の鏡のように今の私を映し出す。
「えぇ!?
あ、でも・・・。」
怖さや驚きよりも、ドレスを体にあてている自分の姿に思わず見惚れてしまった。
「わぁ、ピッタリ。
長さもサイズも。
まるで、私のためにあるみたい・・・。」
私は夢中でそのドレスに着替えた。
「素敵!
そしてなんだろう、とてもいい香りがする。」
私は姿見の鏡に何度も自分を映しては、クルクルと回った。
「着ていると体が軽い。
わぁ、これを着て舞踏会で踊ったら、どんな難しいダンスも踊れそう。」
しばらくそうしていたが、なにぶん部屋の中に舞うホコリが気になる。
「綺麗にお掃除したらいいのに。」
そう呟いた時だった。
私の足元からみるみる部屋が綺麗になっていく。
「えぇ?」
驚いて、さっきまでホコリをかぶっていた家具を触る。
「新品みたいに綺麗!」
クローゼットもソファーも、他の家具も、今買ってきたみたいに美しい。
「なんで?
私が言ったから?」
私は胸を高鳴らせながら、もう一つ試しに言ってみた。
「この綺麗な花瓶に、お花があればいいのに。
王宮の庭に咲く、あの薔薇があるといいな。」
そう言うと目の前にある花瓶に、言った通りの薔薇が生けられていた。
「すごい!!」
私は目の前で次々と願いが叶うことが、面白くてたまらなかった。
何故急に?
このドレスを着たから?
私は他愛もない願いを口にしていく。
美味しいお菓子、飲んだことのない紅茶、どうしても欲しかった髪飾り。
それは願った分だけ、目の前に現れてくる。
急に全能の力を手に入れたことに、私は嬉しくて酔いしれた。
もう、何も怖くない。
何も我慢しなくていいんだ!
そう思ってふと鏡を見ると、鏡の中にあの女性がまた映っていた。
「あれ、さっきと少し違う?」
何か違和感を感じて、じっと見つめる。
上から下まで眺めて、ハッと気づいた。
「ドレスの裾に、色がついてる・・・。」
先程まで白黒の状態で、全く色彩がなかったのに、今ではドレスの裾に色が戻ってきている。
少し怖いな・・・。
「も、もう髪飾りいらない!」
思わず私は、最後に願ったことを口にしていた。
すると髪飾りが消えて、鏡の中の女性のドレスの裾の色が、少し落ちていた。
「こ、紅茶も、お菓子もいらない!」
続けて口にしたが、それは無くならなかったし、鏡の中の女性の色もそれ以上落ちなかった。
「な、なぜ?
まさか、最後の、願いだけしか解けないの?」
私は慌てて元の服に着替えると、着ていたドレスをクローゼットに仕舞い込んだ。
部屋を出ようとして、立ち止まる。
「さ、さっきの髪飾り、やっぱり欲しいな・・・。」
そう呟くけど、何も起こらない。
服を着替えたから?
私は逃げるようにその部屋を出ると、地下の階段を駆け上がった。
元の祭壇の前に出て、外れた床板を戻す。
そこへシスターマルティナが戻ってきた。
「あら、ポーリーン様、臭いは落ちましたか?」
私は笑顔を浮かべて、
「え、ええ。
もぅ、帰ります。
ありがとうございました。」
と、言うと、控室に置いてあるシュムシュラの葉を詰めた籠を持ち上げて、教会を飛び出した。
教会の敷地を駆け足で出ようとした、その時だ。
「動くな!」
と、鋭い男性の声がした。
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