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1章
敵の殲滅と仲間との別れ
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ヘカントガーゴイルは、巨大な羽を広げて、俺を見下ろしてきた。
「エサがモウひとり。グヘヘへ」
不気味な笑い声と、強い威圧感。
奴の手に握られた兵士は、苦しそうに足掻いている。
「離せ」
俺は装備していた弓を構えて、引き絞った。
ヘカントガーゴイルは、そっぽを向く。
「フン、馬鹿メ。俺様ガ弓矢ゴトキでヤラれルト思うノカ?」
「思うさ」
「アァ? 生意気ナ小僧め」
「お前なんか敵じゃない」
「言っタナ! 愚カ者めガ!!」
ヘカントガーゴイルの敵意が、充満する。
それでいい、そうだ……来い!!
俺は、矢を地面に向かって放つ。
相手の力の流れに干渉する力場が、俺が矢を打ち込んだところから広がり、相手を包んだ。
俺にしか見えない、力の流れ。
俺以外には、地面がカッと光ったようにしか見えないはずだ。
その光に、ヘカントガーゴイルが一瞬怯む。
「貴様、何ヲしタァ!?」
奴は鋭い爪を構えて、振り下ろそうとした。
「アーチロビン!!」
それを見たフィオたちが叫ぶ。大丈夫、奴は俺に攻撃てきない。
ヘカントガーゴイルは、ピクリとも動かない自分の腕に驚いていた。
今度は口を大きく開けて、炎の塊を吐き出そうとする。
でも、それすら発動できず、虚しく煙が上がるばかり。
二回目の攻撃、終わり。
三回目が、こいつ自身に跳ね返る。
「キ、キ、貴様ァ! 怪しゲナ技を使いおッテ!!」
ヘカントガーゴイルは、羽を広げて飛び上がった。
あ!
穴の上に隠れていたフィオたちが、奴に見えてしまう!!
魔導士ティトが、すぐに魔法の詠唱を始めた。
「古の契約に従い、我が槍となって敵を撃ち払え! メテフレオ!!」
赤く燃えるような光の光線が、幾つもヘカントガーゴイルに突き刺さる。
「ぐふ! こシャクな老婆めが!!」
ヘカントガーゴイルの敵意が、魔導士ティトに向かった。
俺は素早く、ヘカントガーゴイルに向かって矢を放つ。
矢は奴の顔を掠めて、そのまま握っていた兵士を穴の中に取り落とした。
俺は落ちてきた兵士を受け止めると、素早く二発目の矢を奴に放つ。
「チョコまカと、ウザッたイ小僧め!!」
ヘカントガーゴイルが、羽を光らせて両腕を前で交差させると、大技を放つ構えを見せる。
「ダークネスホーリーがくるぞ!! 全体技だ!!」
ギルバートが叫んで、聖騎士の盾を翳してみんなを後ろに庇った。
即死効果もつく脅威の技、ダークネスホーリー。
けれど今は、技が大きければ大きいほど、それが奴のダメージになる。
「コレで最後ダ! 小僧!!」
ヘカントガーゴイルのセリフに、俺は構えた弓矢を降ろして応えた。
「そのセリフはそのまま返す」
「くらウがいい!! ダークネスホーリー!!……何!?」
ヘカントガーゴイルの全身がダークネスホーリーによって、包まれていく。
絶対反転によって、ダメージは全て本人に跳ね返るのだ。
「ウガがガガ……!!」
奴はそのまま落ちていった。
即死効果まで発動してしまったか。
穴の底に落ちてきたヘカントガーゴイルは、灰のように崩れ去っていく。
「おおっ……」
穴の上から、ケルヴィン殿下たちが驚いた表情で見下ろしていた。
俺は縄を降ろしてもらって、助けた兵士と一緒に上がる。
「すごいな! ヘカントガーゴイルは、巨体の割に行動スピードが速くて、厄介な技を使うんだが。お陰で、髪型を崩さずにすんだよ」
聖騎士ギルバートが、真っ先に駆けつけてきて、俺の手を握ってきた。
髪型、って。
気にするところはそこ?
「見事じゃ、小僧。いや、アーチロビン」
魔導士ティトも、満足そうに笑う。
その後ろから、フィオが姿を見せた。
「怪我がなくてよかった……」
「ありがとう、フィオ」
「アーチロビン、本当にすごい技ね。魔力とか消費してない? ヘカントガーゴイルが倒れて、宝箱が現れたの。中に回復アイテムが入ってたから、使って」
彼女が差し出そうとするので、俺は首を横に振ってそれを彼女に戻す。
「いい、俺は消費するものないから。回復薬はフィオが使えよ。霊力を戻さないと」
「え」
「ほら、さっきリザレクションを使って、消耗したままだろ?」
「あ、そ、そうだけど」
「いいから。な?」
フィオは申し訳なさそうに、アイテムを背嚢に戻した。
「アーチロビン、ありがとう。見事な勝利だ」
そこへ、ケルヴィン殿下もやってくる。
俺は深くお辞儀をして、応えた。
この人は律儀な人だ。下っ端にも、ちゃんと礼を取れる人は慕いたくなる。
「ありがとうございます、ケルヴィン殿下」
俺が言うと、ケルヴィン殿下は、名残惜しそうに俺の手に金貨の袋を握らせる。
「報酬だ。ここまでの約束だったからな」
約束はきちんと守ってくれる。この人は、本当に誠実な人なんだな。ネプォンなら、誤魔化してタダ働きさせていたところだ。
俺は笑顔で受け取った。
「はい」
「正直、お前の力はこの先でも必要だ。出来れば考え直してほしいがな」
「……すみません」
「いや、いい。すまん、忘れてくれ。我が国の兵士をも助けてくれたこと、嬉しく思う」
彼はそういうと、兵士の方に目を向けた。
兵士は気絶したままだ。
ちょうどいいかもしれない。
「俺が連れて帰りますよ。帰り道だから」
俺はそう言って、兵士に近寄ろうとした、その時だ。
「アーチロビン! 下がって!!」
フィオが叫んで、俺たちを後ろに引っ張る。
な、なんだ!?
振り向こうとして、灰と化したヘカントガーゴイルの骸から、異様な光が飛び出してくるのが見えた。
!?
倒したはずなのに!!
光の中に目玉が一つ見える。
こちらを一瞥すると、ものすごい勢いで、外に飛び出していった。
「今の魂から、魔王ダーデュラの気配を感じました。とても小さくて、弱いけれど、間違いありません!」
フィオが光が飛び去った方を見つめて、俺たちに訴える。
「魂の欠片ということかえ?」
ティトが、フィオのそばに来て、同じ方向を睨んだ。
彼女は、顎に指を置いて、多分……と、自信なさそうに呟く。
「ヴォルディバ先輩から聞いた話ですけど、魔王の肉体は確かに消滅したらしいですよ。それなのに魂は欠片になって、他の魔物に宿っていたということ?」
聖騎士ギルバートは、訳がわからないという表情になる。
もし、魔王の魂が宿った魔物を見つけ出して倒したとしても、こんなふうに逃げられていたらキリがない。
俺はケルヴィン殿下の方を見た。
彼はうーんと考え込む。
「はっきりしたことは、不完全な状態とはいえ、魔王がまだこの世にいるということだ。各地の魔族が勢いを落とさない理由はこれだったんだな。しかし、これではキリがない」
やっぱり。俺と同じ結論だ。
魔導士ティトも、腕を組んで考え込んでいる。
「これは、魔王が何かの秘術を使ったと見るべきじゃの。魔王討伐の時にいた、イルハートが気づかなかったということは、古代の秘術やもしれぬ」
古代の……彼女でも知らない秘術なんてあるのか。
「と、なると、次の目的地は『忘れられた魔都ヘイムニルブ』だ」
ケルヴィン殿下が、腰に手を当ててみんなを見回す。
「ヘイムニルブ?」
俺が聞き返すと、彼は頷いた。
「数千年前、古代の秘術が生まれた場所とも言われている場所だ。廃都となっているが、秘術を研究する者も僅かに残っていると聞く」
「そこへ向かわれるんですね」
「あぁ、時間が惜しい。みんな、行こう。アーチロビン、元気でな」
ケルヴィン殿下たちは、各々俺に別れを告げて、炭鉱の奥へと消えて行った。
ここから先は、出口まで一本道。もう大丈夫だろう。
「アーチロビン……」
フィオが悲しそうに俺を見上げた。
ダメなんだ、フィオ。
俺はいけない。
彼女は深くため息をついて、ケルヴィン殿下たちを追って走り出した。
途中でフィオが振り向いて、お辞儀をする。
そして、もう一度走り出そうとして、足が絡まってゴロン! とこけていた。
「落ち着いてやるんだ! フィオ!!」
俺の声に、闇の向こうから返事だけが聞こえてきた。
これで……いいんだよな?
本当に。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
「エサがモウひとり。グヘヘへ」
不気味な笑い声と、強い威圧感。
奴の手に握られた兵士は、苦しそうに足掻いている。
「離せ」
俺は装備していた弓を構えて、引き絞った。
ヘカントガーゴイルは、そっぽを向く。
「フン、馬鹿メ。俺様ガ弓矢ゴトキでヤラれルト思うノカ?」
「思うさ」
「アァ? 生意気ナ小僧め」
「お前なんか敵じゃない」
「言っタナ! 愚カ者めガ!!」
ヘカントガーゴイルの敵意が、充満する。
それでいい、そうだ……来い!!
俺は、矢を地面に向かって放つ。
相手の力の流れに干渉する力場が、俺が矢を打ち込んだところから広がり、相手を包んだ。
俺にしか見えない、力の流れ。
俺以外には、地面がカッと光ったようにしか見えないはずだ。
その光に、ヘカントガーゴイルが一瞬怯む。
「貴様、何ヲしタァ!?」
奴は鋭い爪を構えて、振り下ろそうとした。
「アーチロビン!!」
それを見たフィオたちが叫ぶ。大丈夫、奴は俺に攻撃てきない。
ヘカントガーゴイルは、ピクリとも動かない自分の腕に驚いていた。
今度は口を大きく開けて、炎の塊を吐き出そうとする。
でも、それすら発動できず、虚しく煙が上がるばかり。
二回目の攻撃、終わり。
三回目が、こいつ自身に跳ね返る。
「キ、キ、貴様ァ! 怪しゲナ技を使いおッテ!!」
ヘカントガーゴイルは、羽を広げて飛び上がった。
あ!
穴の上に隠れていたフィオたちが、奴に見えてしまう!!
魔導士ティトが、すぐに魔法の詠唱を始めた。
「古の契約に従い、我が槍となって敵を撃ち払え! メテフレオ!!」
赤く燃えるような光の光線が、幾つもヘカントガーゴイルに突き刺さる。
「ぐふ! こシャクな老婆めが!!」
ヘカントガーゴイルの敵意が、魔導士ティトに向かった。
俺は素早く、ヘカントガーゴイルに向かって矢を放つ。
矢は奴の顔を掠めて、そのまま握っていた兵士を穴の中に取り落とした。
俺は落ちてきた兵士を受け止めると、素早く二発目の矢を奴に放つ。
「チョコまカと、ウザッたイ小僧め!!」
ヘカントガーゴイルが、羽を光らせて両腕を前で交差させると、大技を放つ構えを見せる。
「ダークネスホーリーがくるぞ!! 全体技だ!!」
ギルバートが叫んで、聖騎士の盾を翳してみんなを後ろに庇った。
即死効果もつく脅威の技、ダークネスホーリー。
けれど今は、技が大きければ大きいほど、それが奴のダメージになる。
「コレで最後ダ! 小僧!!」
ヘカントガーゴイルのセリフに、俺は構えた弓矢を降ろして応えた。
「そのセリフはそのまま返す」
「くらウがいい!! ダークネスホーリー!!……何!?」
ヘカントガーゴイルの全身がダークネスホーリーによって、包まれていく。
絶対反転によって、ダメージは全て本人に跳ね返るのだ。
「ウガがガガ……!!」
奴はそのまま落ちていった。
即死効果まで発動してしまったか。
穴の底に落ちてきたヘカントガーゴイルは、灰のように崩れ去っていく。
「おおっ……」
穴の上から、ケルヴィン殿下たちが驚いた表情で見下ろしていた。
俺は縄を降ろしてもらって、助けた兵士と一緒に上がる。
「すごいな! ヘカントガーゴイルは、巨体の割に行動スピードが速くて、厄介な技を使うんだが。お陰で、髪型を崩さずにすんだよ」
聖騎士ギルバートが、真っ先に駆けつけてきて、俺の手を握ってきた。
髪型、って。
気にするところはそこ?
「見事じゃ、小僧。いや、アーチロビン」
魔導士ティトも、満足そうに笑う。
その後ろから、フィオが姿を見せた。
「怪我がなくてよかった……」
「ありがとう、フィオ」
「アーチロビン、本当にすごい技ね。魔力とか消費してない? ヘカントガーゴイルが倒れて、宝箱が現れたの。中に回復アイテムが入ってたから、使って」
彼女が差し出そうとするので、俺は首を横に振ってそれを彼女に戻す。
「いい、俺は消費するものないから。回復薬はフィオが使えよ。霊力を戻さないと」
「え」
「ほら、さっきリザレクションを使って、消耗したままだろ?」
「あ、そ、そうだけど」
「いいから。な?」
フィオは申し訳なさそうに、アイテムを背嚢に戻した。
「アーチロビン、ありがとう。見事な勝利だ」
そこへ、ケルヴィン殿下もやってくる。
俺は深くお辞儀をして、応えた。
この人は律儀な人だ。下っ端にも、ちゃんと礼を取れる人は慕いたくなる。
「ありがとうございます、ケルヴィン殿下」
俺が言うと、ケルヴィン殿下は、名残惜しそうに俺の手に金貨の袋を握らせる。
「報酬だ。ここまでの約束だったからな」
約束はきちんと守ってくれる。この人は、本当に誠実な人なんだな。ネプォンなら、誤魔化してタダ働きさせていたところだ。
俺は笑顔で受け取った。
「はい」
「正直、お前の力はこの先でも必要だ。出来れば考え直してほしいがな」
「……すみません」
「いや、いい。すまん、忘れてくれ。我が国の兵士をも助けてくれたこと、嬉しく思う」
彼はそういうと、兵士の方に目を向けた。
兵士は気絶したままだ。
ちょうどいいかもしれない。
「俺が連れて帰りますよ。帰り道だから」
俺はそう言って、兵士に近寄ろうとした、その時だ。
「アーチロビン! 下がって!!」
フィオが叫んで、俺たちを後ろに引っ張る。
な、なんだ!?
振り向こうとして、灰と化したヘカントガーゴイルの骸から、異様な光が飛び出してくるのが見えた。
!?
倒したはずなのに!!
光の中に目玉が一つ見える。
こちらを一瞥すると、ものすごい勢いで、外に飛び出していった。
「今の魂から、魔王ダーデュラの気配を感じました。とても小さくて、弱いけれど、間違いありません!」
フィオが光が飛び去った方を見つめて、俺たちに訴える。
「魂の欠片ということかえ?」
ティトが、フィオのそばに来て、同じ方向を睨んだ。
彼女は、顎に指を置いて、多分……と、自信なさそうに呟く。
「ヴォルディバ先輩から聞いた話ですけど、魔王の肉体は確かに消滅したらしいですよ。それなのに魂は欠片になって、他の魔物に宿っていたということ?」
聖騎士ギルバートは、訳がわからないという表情になる。
もし、魔王の魂が宿った魔物を見つけ出して倒したとしても、こんなふうに逃げられていたらキリがない。
俺はケルヴィン殿下の方を見た。
彼はうーんと考え込む。
「はっきりしたことは、不完全な状態とはいえ、魔王がまだこの世にいるということだ。各地の魔族が勢いを落とさない理由はこれだったんだな。しかし、これではキリがない」
やっぱり。俺と同じ結論だ。
魔導士ティトも、腕を組んで考え込んでいる。
「これは、魔王が何かの秘術を使ったと見るべきじゃの。魔王討伐の時にいた、イルハートが気づかなかったということは、古代の秘術やもしれぬ」
古代の……彼女でも知らない秘術なんてあるのか。
「と、なると、次の目的地は『忘れられた魔都ヘイムニルブ』だ」
ケルヴィン殿下が、腰に手を当ててみんなを見回す。
「ヘイムニルブ?」
俺が聞き返すと、彼は頷いた。
「数千年前、古代の秘術が生まれた場所とも言われている場所だ。廃都となっているが、秘術を研究する者も僅かに残っていると聞く」
「そこへ向かわれるんですね」
「あぁ、時間が惜しい。みんな、行こう。アーチロビン、元気でな」
ケルヴィン殿下たちは、各々俺に別れを告げて、炭鉱の奥へと消えて行った。
ここから先は、出口まで一本道。もう大丈夫だろう。
「アーチロビン……」
フィオが悲しそうに俺を見上げた。
ダメなんだ、フィオ。
俺はいけない。
彼女は深くため息をついて、ケルヴィン殿下たちを追って走り出した。
途中でフィオが振り向いて、お辞儀をする。
そして、もう一度走り出そうとして、足が絡まってゴロン! とこけていた。
「落ち着いてやるんだ! フィオ!!」
俺の声に、闇の向こうから返事だけが聞こえてきた。
これで……いいんだよな?
本当に。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
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