不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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二章

ヘイムニルブの掟

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俺は港までたどり着くと、船に飛び乗った。

ヘイムニルブ行きの船の乗客は、そんなに多くない。わずかに残る人々への生活物資の運搬が、主な目的のようだ。

廃都となってから、廃れたんだろうな。

フィオ、ケルヴィン殿下、ティト、ギルバート、待っていてくれ! 今、行くからな。

はやる気持ちを抑えながら、俺は籠に隠していたオウムのフェイルノを出してやった。

「キュウクツ! キュウクツ! ガー!」

フェイルノはご機嫌斜めだ。

俺はフェイルノを宥めながら、同じ目的地へと向かう乗客に目を向ける。

殆どが、荷運び用に雇われた人足ばかりのようだ。

おっと、ここにも会いたくない奴がいたな……。

俺は咄嗟に仮面をつけて、窓の外を見る。

そんな俺の隣を、暗黒騎士のヴォルディバが通り抜けていった。

「けっ。いくら闇属性に耐性があるからって、面倒なことさせやがって」

こいつも変わらない。
面倒くさがりで、口が悪く、粗野で乱暴。
特に綺麗な女性は、力で手に入れるタイプ。

ネプォンと気が合う奴なんだよな。

「あー、面倒くせぇ! 面倒くせーな! ええ!?」

暗黒騎士ヴォルディバは、フードを深く被った、修道僧のような服装の男に早速絡んでいる。

「おう、お前、ヘイムニルブの住人か?」

話しかけられた方は、うるさそうに彼を見て、

「ええ……」

と答えた。

「陰気な野郎だな。あそこは怪物が徘徊して人間なんか住めたもんじゃねぇ、て聞くけど、あんた、どうやって暮らしてるんだ?」

暗黒騎士ヴォルディバは、ズケズケと聞いている。でも、俺も知りたい話だ。

「……土地の悪霊たちを刺激しなければ、何も起きない。人も滅多に来ないから、静かに研究に没頭したいモノにとって、あそこは楽園だ」

土地の悪霊たち……か。
俺はフィオの言葉を思い出していた。

みんな石になった、と。

土地の悪霊を刺激してしまったのか?

ヘイムニルブに入って、すぐに見つかればいいが。

俺が考え込んでいると、暗黒騎士ヴォルディバはフードの男に詰め寄った。

「よぉ、そんじゃ、よそ者が来たらすぐわかるよな? 最近、身なりのいい冒険者の一団が来なかったか? 半人半馬の聖騎士を連れてるパーティーだ」

「半人半馬……」

「いつも鏡と刷毛を手放さない、格好つけた野郎だ。他のメンバーはともかく、あいつは目立つからな」

「半人半馬の聖騎士は知らない───が」

「が?」

「馬を連れた、冒険者たちは来た。よせと言ったのに、街一番の変人、『タインシュタ・フラン』を訪ねて行ったよ」

「なんだ? そいつ」

「古代の秘術研究の第一人者だが、彼が要求した研究素材を持ってきた者にのみ、力を貸す」

「ほぅ」

「彼らも、おそらく無理難題を突きつけられたのだろう。土地の者でも近づかないオメガゴーレムの棲む館へと行ったまま、戻らないとか」

俺はそれを聞いて、思わず拳を握った。
間違いない、フィオたちだ!!
急がないと!!

俺の焦りなどお構いなしに、暗黒騎士ヴォルディバは能天気な声を出した。

「おー、そうかい。つまり、奴らは死んだんだな。奴らの死体さえ確認できりゃ、仕事は終わりだ」

「あそこへ行くのはよせ」

「野郎ニ人と、ババアと小娘の遺体を見るだけだ。さっさと帰るさ。んで、場所は?」

「……街の外れにある、崖の淵に建つ大きな館が、オメガゴーレムの住処だ。警告はしたぞ」

フードの男は、それっきり口をつぐんだ。

街の外れにある、崖の淵に建つ館か。
みんな、待っててくれ。すぐ行くからな。

やがて船の前方に、大きな島がみえてきた。
あれがかつての『魔都ヘイムニルブ』か。

俺がそう思っていると、隣に暗黒騎士ヴォルディバがやって来た。

ちっ、話したくないな。

俺が顔を背けていると、彼は俺の肩にとまるフェイルノをじっと見ていた。

「おっかしいな。どっかで見たことあるオウムなんだが」

「……」

「ま、いいか。おい、兄さんもヘイムニルブで研究とやらをしてるのか?」

「……」

「なんでぇ、仮面なんかつけやがって。お前まで陰キャなのかよ。これじゃ、綺麗なおねぇちゃんとの出会いも、期待できそうにないなぁ」

「……」

「ちっ、シカトかよ! 俺が誰だか知らねーのか? 魔王を倒した英雄の1人、暗黒騎士ヴォルディバ様だ!!」

知ってるさ。お前のことは、忘れたくても忘れられない一人だ。

けれど、構ってる暇もない。
とりあえず、返事はしておくか。

「……どうも」

「なんだ? その生意気な態度……!!」

ボワーンと、その時汽笛が鳴る。
ヘイムニブルについたんだ。

あばよ、と心の中で暗黒騎士ヴォルディバに呟く。

俺は彼の横をサッと抜けて、港に着くや否や飛び降りた。

急がないと!!
気が焦って仕方がない。

俺はとにかく足早に、オメガゴーレムの館へと向かおうとした。

その時だ。

「動くな!!」

大きな声で俺を指差し、杖をつきながらやって来る壮年の男。
地元の人か?

な、なんだよ、急に。

俺がその人を見ていると、彼は目を細めて俺を見つめ返してくる。

急いでいるのに!!

まごまごしていると、後ろから暗黒騎士ヴォルディバもやってきた。

「かー! 陰気な街だぜ。さーてと?」

「お前も動くんじゃない!」

暗黒騎士ヴォルディバもまた、同じ男性に止められた。

「なんでぇ、お前いきな……!」

暗黒騎士ヴォルディバが言いかけた時、足元から黒い影が立ち昇ってくる。

「この土地の悪霊たちだ。怒らせるな」

男性は静かに語りかけてきた。
悪霊……これが。
思わずごくりと喉が鳴る。

大人しくしていると、黒い影はやがて見えなくなった。

「この土地でやってはいけないこと。それは走ることだ。決して走ってはならぬ。守れぬなら引き返せ」

「もし、走ったら?」

俺は男性に聞き返した。
急いでいるのに、走ってはいけないなんて困る。

「走れば、悪霊に体力と魔力をごっそり削られて、最後は命を持っていかれる。常に歩け」

男性はそう答えた。

暗黒騎士ヴォルディバは、面倒くさそうに頭を掻く。

「け! 体力、魔力吸収して、己に取り込むのは暗黒騎士のスキルじゃねーか。取られたら、奴らのをいただくまでだ」

「やめておけ」

「は! ジジイの老婆心なんぞ、余計だってーの!」

暗黒騎士ヴォルディバは、サッと走り出した。

すぐに足元からさっきの黒い影が、再び立ち上がる。

「俺の鎧は、闇属性を無効化するんだよ! エナジードレインなんて、効きはしねぇぜ!?」

彼の言う通り、悪霊は体力を吸えないでいる。ここは、暗黒騎士の纏うレア装備の勝ち……か?

と、思っていると、悪霊が強い光を纏った鞭を、打ちつけてきた。

ガッシャァァァン!!

派手な音がして、暗黒騎士ヴォルディバの鎧が砕け散る。

「装備破壊のスキル!?」

俺は思わず叫んだ。
スキルとはいえ、レア装備を破壊できるかは確定じゃない。なのに、悪霊の鞭を使って、たった一撃で!?

「ここの悪霊のクリティカル率は、80%だ。レア装備だろうと、耐性を上回るダメージをくらえば、こうなる」

男性はそう言って、暗黒騎士ヴォルディバを見た。

「ちっ! 魔王を倒した暗黒騎士を舐めるなよ!?」

暗黒騎士ヴォルディバは、自身の剣を抜いて悪霊のエナジードレインに備えている。

それを見た悪霊は、再び鞭をふるって、今度は剣を砕いた。

「ひっ……!」

悪霊はそのまま、暗黒騎士ヴォルディバから、エナジーを吸い取る。

うわ……! ごっそり吸いやがったな。

「ぐわ……! あ……あぁ……」

「ほう、一度のエナジードレインで、まだ体力を残しているのか。流石は魔王を倒したと吹聴するだけあるな」

泡を吹いて倒れる暗黒騎士ヴォルディバを見て、男性は俺を見た。

「こうなりたくないだろ? お前は決して走るなよ?」
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