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二章
魔王の秘術
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俺たちが、揃って地下室を出ようとした時だ。
床がカッと光って、大きな転送の魔法陣が足元に広がる。
「わ!」
「きゃ!」
「どわ!」
みんなが思い思いの声をあげる間に、俺たちは見知らぬ場所へと転送されていた。
ここは……?
「大丈夫。皆様、ようこそおいでくださいました」
目の前に、ローブを羽織った綺麗な女性が立っていて、俺たちを見ていた。
「私はタインシュタ・フランの助手、『リリー』です。この度は、暴走したオメガゴーレムを止めてくださって、本当にありがとうございます」
と、彼女は言う。
助手? あの人、助手なんていたのか。
「オメガゴーレムは、破壊してしまいました。無傷で回収はできなかったのです」
と、ケルヴィン殿下が、彼女に説明した。
あれを無傷で?
無茶苦茶だ。
タインシュタ・フランは、そんな回収を依頼していたのか。
「いえ、無理もありません。先生の要望自体が、非現実的なのです。秘術を詰め込んだ結果、異常な魔法耐性と肉体の強度を持ってしまった。おまけに自分で制御できなかったのですから」
リリーは、悲しそうな顔をして俺たちの後ろを見る。
彼女の視線の先には、壊れたオメガゴーレムが横たわっていた。
一緒に転送される仕組みだったのか。
「石化した冒険者は、他にもいました。既に砕かれていて、元に戻すことはできません。助かったのはボクらだけです」
聖騎士ギルバートが、リリーに報告している。
そうなんだよな、犠牲者が沢山出てしまった。
「ええ、申し訳ないことをしました」
リリーが俯いていると、部屋の向こうから、タインシュタ・フランが現れた。
「秘術の知識は、ただでは教えられんのだ。彼等には、ちゃんと警告はした。それでも行くと言った以上、自己責任だ」
そう言って、彼はみんなを見回す。
冷たい言い方だ。
それが事実でも、俺はこの言い方が好きじゃない。
この人が、安全な場所から偉そうに言うせいだろう。
自分が痛いわけじゃないから、平気で口に出せるんだろうな。
タインシュタ・フランは片眉を上げて俺を見据える。
「やはりお前の力か」
「……」
「これで、力を宿すのは弓ではなく、お前だということがはっきりした」
「……」
タインシュタ・フランの質問は止まらない。
目がギラギラして、探究心が剥き出しになっているようだ。
「お前の力は、どこからきているのだ?」
「そんなことより、ケルヴィン殿下の質問に答えてください。オメガゴーレムはこうして、持ってきたのですから」
「無傷で、という条件が果たせていない」
俺はタインシュタ・フランの言い方にムッとして、言い返そうとすると、リリーが割って入ってきた。
「先生! 無傷の回収は無理だと、わかっていたことではありませんか!」
「黙ってろ! 助手が口を出すことか!」
「いいえ! これまで、誰も……先生ご自身ですら太刀打ちできなかったオメガゴーレムを止められただけでも、すごいことです! 彼等の質問にお答えください!」
「リリー!!」
「これ以上ヘソを曲げるなら、母さんだけじゃなく、私も出て行ってやるんだから!!」
「な……!」
な、なんだこりゃ、親子喧嘩?
二人は親子なのか?
俺たちは目を白黒させて、成り行きを見守るしかできない。
「えぇいくそ! オメガゴーレムは、私の研究の集大成だったのだ! それをこんなにして……! 暴走さえしなかったら……」
タインシュタ・フランの言葉を聞いて、ケルヴィン殿下は片手を上げる。
「それなんだが、俺たちが聞きたいことと、暴走の原因は無関係じゃないかもしれないんです」
「え?」
タインシュタ・フランとリリーは、驚いたようにケルヴィン殿下を見た。
フィオも進み出て、魔王ダーデュラの魂のことを告げる。
「魂の欠片が宿っていた……と?」
タインシュタ・フランは険しい顔になった。
「ま、魔王は勇者ネプォンのパーティーが、倒したはずです。だからこそ、彼は隣国ガルズンアース国の、国王になったのでは?」
リリーは、戸惑ったような表情で俺たちを見る。
「ネプォンて、誰だ?」
タインシュタ・フランはリリーに確認している。勇者ネプォンを知らない人なんて、初めて見た。
「すみません、先生……いえ、父は研究以外のことに疎いんです」
リリーは、簡単に勇者ネプォンのことを説明してあげたけど、タインシュタ・フランは興味なさそうだった。
そんな中、魔導士ティトが痺れを切らしてタインシュタ・フランの前に進み出る。
「ワシらは急いでおる。魔王ダーデュラは倒されても、魂の欠片を魔族の誰かに宿し、そいつが倒されるたびに逃げ去ってしまう。秘術に詳しいあんたなら、この状況を理解できると思ってな!」
「倒された後にか」
「そうじゃ。あの大魔導士イルハートの目の前で、肉体から離れた魂を分割させる秘術をやってのけておる! どういうことか、わかるか!?」
「うむ……面白い」
タインシュタ・フランが、やっと興味を持ったようだ。
沢山ある書棚の中から、一際分厚い本を取り出してくる。
「最古の秘術に、似たような技がある。勇者たる資質を持つ者が、効率よく転生を重ねることで、いち早く最強の天運を持って生まれ変わることができる、というものだ」
「?」
「勇者として産まれるには、膨大な時をかけて転生を繰り返し、自然発生的に出現するのを待たねばならぬ。そうだな?」
「ああ、そうじゃ。勇者となる魂は天が選ぶ。天の選定を受ける魂となるには、幾度もの生を生き抜いて、魂を鍛えなければならん」
「だが、この秘術を用いれば、擬似的な転生を同時進行で行えるのだ」
「擬似的な転生? 同時進行?」
「そう。魂を細かく分け、他の肉体と魂を乗っ取る。宿主が倒されるたび、それは転生と同じ効果を得られるというわけだ」
「!!」
「つまり、幾星霜の年月を重ねてようやく誕生する勇者と、ごく短期間で同じ強さを持てることになる」
「そ、それが狙い? だから魔王は、魂の欠片を魔族に宿しておるのか?」
「おそらくな。倒されるたびに、魂はどこかに集まっていき、やがて勇者…‥即ち歴代の英雄並みの力を得た魔王として誕生するだろう」
「英雄の力を持つ魔王───」
「そのために、勇者ネプォンとやらに倒されてやったのだ、魔王は。勇者を利用して、生まれ変わるために」
床がカッと光って、大きな転送の魔法陣が足元に広がる。
「わ!」
「きゃ!」
「どわ!」
みんなが思い思いの声をあげる間に、俺たちは見知らぬ場所へと転送されていた。
ここは……?
「大丈夫。皆様、ようこそおいでくださいました」
目の前に、ローブを羽織った綺麗な女性が立っていて、俺たちを見ていた。
「私はタインシュタ・フランの助手、『リリー』です。この度は、暴走したオメガゴーレムを止めてくださって、本当にありがとうございます」
と、彼女は言う。
助手? あの人、助手なんていたのか。
「オメガゴーレムは、破壊してしまいました。無傷で回収はできなかったのです」
と、ケルヴィン殿下が、彼女に説明した。
あれを無傷で?
無茶苦茶だ。
タインシュタ・フランは、そんな回収を依頼していたのか。
「いえ、無理もありません。先生の要望自体が、非現実的なのです。秘術を詰め込んだ結果、異常な魔法耐性と肉体の強度を持ってしまった。おまけに自分で制御できなかったのですから」
リリーは、悲しそうな顔をして俺たちの後ろを見る。
彼女の視線の先には、壊れたオメガゴーレムが横たわっていた。
一緒に転送される仕組みだったのか。
「石化した冒険者は、他にもいました。既に砕かれていて、元に戻すことはできません。助かったのはボクらだけです」
聖騎士ギルバートが、リリーに報告している。
そうなんだよな、犠牲者が沢山出てしまった。
「ええ、申し訳ないことをしました」
リリーが俯いていると、部屋の向こうから、タインシュタ・フランが現れた。
「秘術の知識は、ただでは教えられんのだ。彼等には、ちゃんと警告はした。それでも行くと言った以上、自己責任だ」
そう言って、彼はみんなを見回す。
冷たい言い方だ。
それが事実でも、俺はこの言い方が好きじゃない。
この人が、安全な場所から偉そうに言うせいだろう。
自分が痛いわけじゃないから、平気で口に出せるんだろうな。
タインシュタ・フランは片眉を上げて俺を見据える。
「やはりお前の力か」
「……」
「これで、力を宿すのは弓ではなく、お前だということがはっきりした」
「……」
タインシュタ・フランの質問は止まらない。
目がギラギラして、探究心が剥き出しになっているようだ。
「お前の力は、どこからきているのだ?」
「そんなことより、ケルヴィン殿下の質問に答えてください。オメガゴーレムはこうして、持ってきたのですから」
「無傷で、という条件が果たせていない」
俺はタインシュタ・フランの言い方にムッとして、言い返そうとすると、リリーが割って入ってきた。
「先生! 無傷の回収は無理だと、わかっていたことではありませんか!」
「黙ってろ! 助手が口を出すことか!」
「いいえ! これまで、誰も……先生ご自身ですら太刀打ちできなかったオメガゴーレムを止められただけでも、すごいことです! 彼等の質問にお答えください!」
「リリー!!」
「これ以上ヘソを曲げるなら、母さんだけじゃなく、私も出て行ってやるんだから!!」
「な……!」
な、なんだこりゃ、親子喧嘩?
二人は親子なのか?
俺たちは目を白黒させて、成り行きを見守るしかできない。
「えぇいくそ! オメガゴーレムは、私の研究の集大成だったのだ! それをこんなにして……! 暴走さえしなかったら……」
タインシュタ・フランの言葉を聞いて、ケルヴィン殿下は片手を上げる。
「それなんだが、俺たちが聞きたいことと、暴走の原因は無関係じゃないかもしれないんです」
「え?」
タインシュタ・フランとリリーは、驚いたようにケルヴィン殿下を見た。
フィオも進み出て、魔王ダーデュラの魂のことを告げる。
「魂の欠片が宿っていた……と?」
タインシュタ・フランは険しい顔になった。
「ま、魔王は勇者ネプォンのパーティーが、倒したはずです。だからこそ、彼は隣国ガルズンアース国の、国王になったのでは?」
リリーは、戸惑ったような表情で俺たちを見る。
「ネプォンて、誰だ?」
タインシュタ・フランはリリーに確認している。勇者ネプォンを知らない人なんて、初めて見た。
「すみません、先生……いえ、父は研究以外のことに疎いんです」
リリーは、簡単に勇者ネプォンのことを説明してあげたけど、タインシュタ・フランは興味なさそうだった。
そんな中、魔導士ティトが痺れを切らしてタインシュタ・フランの前に進み出る。
「ワシらは急いでおる。魔王ダーデュラは倒されても、魂の欠片を魔族の誰かに宿し、そいつが倒されるたびに逃げ去ってしまう。秘術に詳しいあんたなら、この状況を理解できると思ってな!」
「倒された後にか」
「そうじゃ。あの大魔導士イルハートの目の前で、肉体から離れた魂を分割させる秘術をやってのけておる! どういうことか、わかるか!?」
「うむ……面白い」
タインシュタ・フランが、やっと興味を持ったようだ。
沢山ある書棚の中から、一際分厚い本を取り出してくる。
「最古の秘術に、似たような技がある。勇者たる資質を持つ者が、効率よく転生を重ねることで、いち早く最強の天運を持って生まれ変わることができる、というものだ」
「?」
「勇者として産まれるには、膨大な時をかけて転生を繰り返し、自然発生的に出現するのを待たねばならぬ。そうだな?」
「ああ、そうじゃ。勇者となる魂は天が選ぶ。天の選定を受ける魂となるには、幾度もの生を生き抜いて、魂を鍛えなければならん」
「だが、この秘術を用いれば、擬似的な転生を同時進行で行えるのだ」
「擬似的な転生? 同時進行?」
「そう。魂を細かく分け、他の肉体と魂を乗っ取る。宿主が倒されるたび、それは転生と同じ効果を得られるというわけだ」
「!!」
「つまり、幾星霜の年月を重ねてようやく誕生する勇者と、ごく短期間で同じ強さを持てることになる」
「そ、それが狙い? だから魔王は、魂の欠片を魔族に宿しておるのか?」
「おそらくな。倒されるたびに、魂はどこかに集まっていき、やがて勇者…‥即ち歴代の英雄並みの力を得た魔王として誕生するだろう」
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