不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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二章

魔王の魂の欠片を追って

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「咄嗟の作戦としては、及第点ということにしてやろう」

タインシュタ・フランが起き上がって、首をコキコキといわせながら回した。

「もう、先生ったら! でも、私たちに害が及ばないようにしてくれて、ありがとう」

リリーが、暗黒騎士ヴォルディバに捕まれた腕をさすりながら、お礼を言う。

痛そうだな……リリー。

「結局痛い思いをさせたな、ごめん、リリー」

「ううん、こんなの平気よ。そ、それより、恋人だなんて……」

リリーは、頬を赤く染めて嬉しそうに言う。

彼女が無事でよかった。
顔まで赤くして……緊張させたのかもしれない。

「あ、ああ、その……一緒にいる言い訳がそれしか思いつかなくてさ。合わせてくれてよかった。ありがとう、リリー」

「いいの、だって……嫌じゃなかったもの」

「そうか? 安心したよ」

「アーチロビン、格好いいし、素敵だし……」

「え?」

リリーが、両手を頬にあてて恥ずかしそうに言うので、俺は頭をポリポリと掻いた。

格好いい? 素敵?
あ、つけていたこの仮面のことかな。

……ん?

なんだ? 急に寒気を感じるぞ?

これは……視線?
一体誰の?

思わず振り向くと、フィオがじーっと俺を見ていた。

怒るでもなく、笑うでもなく、完全な無表情。その目がだんだんと細くなるのが怖い。

え、何? なんで、そんな目で見るんだ?

「あ、あのさ、フィオ」

「なに」

言い方まで冷たい。俺、何かしたのか?

「よ、よかったら、リリーの腕を治療してやってくれない……か?」

「……」

沈黙したフィオを見て、リリーは片手を振ると、

「い、いいの! このくらい冷やせばいいし、治療魔法なら私もできるから」

と言った。そうか、秘術研究してるくらいだから、可能なんだ。

でも、怪我させたのは、俺のミスだし……。

「冷やすなら、俺が手当を……」

と、言いかけると、フィオが進み出てきて俺と彼女の間に入ってきた。

「癒しの泉を司る聖なる天使、ユキア。女神ルパティ・テラの名の下に、泉の雫を分け与えたまえ、ピュアキュア」

と、祈りの書を開いて、すぐに唱える。

リリーの腕についたアザが、瞬く間に治っていった。リリーはぎこちなく笑って、フィオにお礼を言う。

「あ、ありがとう、フィオ神官」

「いいえ」

フィオはリリーにお辞儀をすると、俺にはツンとそっぽを向いて、ケルヴィン殿下の近くに戻った。

何、怒ってるんだ?

そんなにツンツンされる、覚えはないんだけど。

「あー、ゴホン、これからのことだけど、次の目的地をどうするか」

このなんともいえない空気を変えるように、ケルヴィン殿下が、俺たちを見回しながら言った。

そう、そうだ。魔王の魂を宿す魔族を見つけないと。そして、対抗する術も見つけたい。

「魔王の魂を持つものを倒すだけでなく、魔王を倒す準備もしないと」

俺が言うと、みんな頷く。

フィオも、魔王の話になると表情を変えて頷いてくれた。

それを見て、タインシュタ・フランがクスクス笑う。

「ほぉ、無敵の魔王を倒す気か」

「どんな英雄も、倒せないことはありません。方法は……」

「例えば、己の攻撃力で自滅させるとか?」

タインシュタ・フランが俺の持っていた『木の弓』を取り出して見せてきた。

「それ……俺の」

「そうだ。この弓に残る、お前の力の残滓を分析して判明した。大帝神龍王と同じ力だ。」

「!!」

「相手の力の流れに干渉する不可思議な力。そうだな? アーチロビン」

有無を言わさぬ口調で、タインシュタ・フランが念を押してきた。
みんなの俺を見る目が変わる。
そうだよな。

「大帝神龍王……て、勇者たちも、龍神の力を借りても、眠らせることしかできなかったと聞いている」

ケルヴィン殿下が、感心した目で俺を見た。

「太古から生きる不滅の存在。そんな大帝神龍王と同じ力だなんて」

聖騎士ギルバートも、鏡を見ることを忘れて俺を見つめる。

「どうりで、隠しチートキャラといわれるわけじゃな。そもそも、お前に攻撃をあてることもできずに、敵は自滅か退散しかないからな」

魔導士ティトが、杖に顎を乗せて、けけっと笑った。

「だから、たくさんの敵に囲まれても倒せる。悪霊も逃げ出してしまうわけなのね」

フィオも、納得したように頷いていた。

「じゃ、アーチロビンさえいれば、魔王は自分の攻撃力で自滅して倒せるのね」

と、リリーが言うと、タインシュタ・フランは首を捻る。

「そいつはどうかな。この力は第一にアーチロビンに対して、敵意がないと効かないはずだ」

「!!」

「魔王が他の仲間を攻撃対象にしてしまえば、アーチロビン以外を全滅させられる。それに、この力でも魔王の魂まで砕けるかは、わからんしな」

「そんな……!」

リリーが俺を、悲しそうな目で見る。
……そう。

大帝神龍王の力で、相手の力の流れを操る力場に捕まえるには、相手が俺に敵意があることが前提だ。

だから、俺は常に敵と味方の間に入って、敵意を向けさせてきた。

魔族はプライドが高いものが多い。人間に攻撃されることが我慢ならないものがほとんどだったから、問題なかった。

「そうです。だから、ここからの戦いは……魔王とは俺一人で戦いたい」

俺は、この場でみんなに宣言した。

相手が俺だけなら、魔王も俺と戦わざるを得ない。あとはこの力で……!!

ただ、神器なしに、魂まで砕ける保証はない。
その時は……俺の胸に埋め込まれているこの三叉の水晶を使えないだろうか。

元々、魔王封印のためのものだったから。
取り出せば、俺は死ぬかもしれない。

それでも、世界を失うよりマシだ。

そんなことを、考えていた時だった。

「そんなのダメだ! お前一人に何もかも丸投げするなんて!」

「そうだよ、アーチロビン! ボクたちだって、やれることはある!」

「そうじゃぞ。全てを決めるのはまだ、早い」

「アーチロビン! 何もかも一人なんて、危ないわ!!」

みんなが慌てて、俺を取り囲む。
こう言うと思った……この人たちは、気の優しい、いい人たちだから。

だから、俺は自分の力の源を隠してきたのに。

パンパン!

タインシュタ・フランは、両手を叩いてから俺たちの前に地図を広げてある場所を指し示す。

「待て待て。まずは次の目的地で、様子をみてはどうかな」

次の目的地?

俺たちは、みんなで広げられた地図を覗き込む。

「魔王の魂の欠片を持つものは、あと二体ほどだと言ったがな、オメガゴーレムに宿ったと聞いて、気付いたことがある」

タインシュタ・フランは、オメガゴーレムを見てもう一度地図を見た。

「何を気付いたのじゃ?」

魔導士ティトが、彼を見上げて尋ねる。

「オメガゴーレムは、闇属性で秘術を施した最高傑作だと自負しているが、あくまで命令を遂行する自立稼働の人形だ。生命体ではない。つまり、魔王の転生の目的である、『魂を鍛える』行為としては、おかしいと思ってな」

タインシュタ・フランに言われて、それはそうだと気付く。

「間違えて宿った……と?」

と、俺が聞くと、彼はいや、と首を振った。

「間違えたのではなく、『固有スキル』をラーニングしているのではないか、と。例えばオメガゴーレムの固有スキルは、『魔法絶対防御』だ」

「!!」

「お前たちが戦った、ヘカントガーゴイルの固有スキルは?」

「確か……『永久スピードアップ』。スローダウンなどの、時魔法の影響を受けない」

「ふむ。魔族たちも、その種族ならではの固有スキルを持つ。魔王といえど、全てのスキルを持っているわけではないからな」

「転生によって、魂そのものの力を上げ、ラーニングによって全ての魔族の固有スキルを獲得する、ってこと?」

「あぁ。復活の際に発現させるため、魂に記憶させているのかもしれん。だとしたら、奴の魂の欠片が宿った可能性のあるものは、闇属性で固有スキルを持つもの」

タインシュタ・フランは地図のある場所を指で押さえた。

「ここから南にある、『トゥンカル・ミズ』国に百年ほど棲みついている『ゾンビダラボッチ』。こいつにも宿った可能性がある」

「固有スキルは?」

「『瀕死波動』。戦闘開始直後に、自動的に発動され、相手の体力の9割を削いでしまうとか」

「ええ!?」

「こいつを倒した冒険者は、まだいないと聞く。お前たちが挑んでみるか? 行くなら特別に、トゥンカル・ミズ国の国境まで、転送してやるぞ?」


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