不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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三章

狙いはどこに

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大魔導士イルハートは、魔力でテントの入り口を閉めると、俺たちを見回した。

「魔王は近く復活する。そして、あなたたちはそれを止めるために動いている。そんなところねぇ?」

止めるというか、復活させて倒す予定だがな。

余裕の笑みを浮かべる彼女に、ケルヴィン殿下が質問を投げかけた。

「お前は目の前で、ヘカントガーゴイルから離れる、魔王の魂の欠片の存在を知った。当然ネプォン義兄上にも伝えたのだろ?」

大魔導士イルハートは、ふふ、と流し目で彼を見る。

軽く蔑むような、小馬鹿にした目。
俺はこいつの、この表情が嫌いだ。
大帝神龍王の生贄にされた時、こんな目で見られていたから。

「言うわけないわぁ、ケルヴィン殿下」

「何!?」

「あいつに言ったら、どうなると思う? 魔王の存在を口にする者を、全部抹殺してしまうわぁ」

「臭いものにはフタか? そんなことをしても、魔王はいつか復活してしまうぞ?」

「そうねぇ。前はぼうやを犠牲にして得た、レアアイテムの力で勝てただけなのにぃ」

俺はジロ! と彼女を睨んだ。
それでも、少しも動じない。どこまでも面の皮の厚い奴だ。

聖騎士ギルバートが、ここで口を挟んだ。

「キミの狙いは? アーチロビンを利用したように、ボクたちを利用するつもりか?」

そう、読めないのは彼女の胸の内だ。どっちの味方なんだ?

「確実な方につきたいだけよ。それより、次は何をする気? 私たちのことを教えたのだから、そっちも教えてぇ」

「ボクたちは、この国を長く悩ませている、『ゾンビダラボッチ』を倒すつもりだ。そいつも魔王の魂の欠片を宿していると思われる」

「なるほどねぇ。でも、倒しても魔王の魂を解放していくだけよね? どこかで復活しちゃうわよ?」

大魔導士イルハートの質問に、ケルヴィン殿下が答える。

「魔王の復活は止められない。下手に魂の統合が妨げられれば、世界のどこかで大規模な破壊が起きるからだ。俺たちは、一度復活させて倒すべきだと考えている」

「!!」

彼女の表情が険しくなる。初めて見る……こんな顔。

「どうやって倒すの? ケルヴィン殿下、あなたはネプォンのように、天に選ばれた勇者じゃない。『ただの王子』なのよぉ?」

「キツイお言葉、どうも」

「事実だわ。何か切り札があるのぉ?」

そこまで言って、彼女はハッとして俺を見る。

「───あなたね?」

「……」

「ぼうや、あなたなら、復活した魔王を倒す力を持つのね?」

「……」

「大帝神龍王と何か契約を交わして、ここにいるのね?」

「……」

「ヘカントガーゴイルを倒したあの力。見間違いではなかったのね」

大魔導士イルハートが、にじり寄ってくる。
な、なんだ? この妖艶な雰囲気。

四つん這いで近寄る姿に、思わず固まってしまう。

ケルヴィン殿下や、聖騎士ギルバートも、生唾を飲んで見守っていた。

彼女はどんどん近づいてくる。
ち、ちょっと、なんだよ……?

「ぼうや……私のルーク……いいえ、アーチロビン。あなたなら私を……」

「そこまでじゃ!」

魔導士ティトが、杖を大魔導士イルハートの前に突き出して通せんぼする。

「あら、残念ねぇ。唇が奪えるかと思ったのにぃ」

彼女がその場で投げキッスするのを、ぼーっと見ていると、フィオがぎゅっとつねってくる。

「いて!」

「鼻の下伸ばしてる」

「違うって!!」

「さっきも、ここに来るまで腕を組んでたし」

「あ、あれは、人混みのせいで、離れるのが難しくて」

必死に言い訳する俺に、フィオはなんとも言えない細目で見つめてくる。

本当のことなのに、通じていない。
あああ、どうしたらいい?

このままだと俺は、フィオに嫌われてしまう。

「くくく、最高ね。まるで、ままごとやってるみたい。こんな女から、彼を奪うのは簡単ね。」

大魔導士イルハートは、元の場所に座り直してにっこり笑った。

「どういう意味ですか!?」

フィオは尻尾と耳をピンと立てて、大魔導士イルハートを睨みつける。

「そんなふうに、彼を責めてばかりいたら、本当に嫌われるわよぉ?」

「な……!」

「まぁ、いい経験しなさいよ、お嬢ちゃん。あなたは、失恋で終わるだけだから。何度か同じ経験していれば、加減、てのを覚えるわぁ」

「し、失恋!? 決めつけないでください!!」

フィオがカッとして立ち上がろうとするのを、魔導士ティトがサッと止める。

「待て、フィオ。イルハートもいい加減にせぇ。お前こそ、何を怯えておるんじゃ」

!?

怯える? 彼女が?
みんな驚いて注目した。

大魔導士イルハートが、横目で魔導士ティトを睨む。

「めざといババアねぇ」

「おう、このババアは鋭いぞ。大体魔王を我らに倒させたいだけなら、静観しとればいいものを、こうも絡むのにはワケがあるじゃろ」

「ネプォンが失脚すれば、私もガルズンアース国の相談役から降りることになるわ。新たな再就職先を確保しておきたいのぉ」

「なら、誘惑する相手が違うぞ? アーチロビンではなく、ケルヴィン殿下に迫るべきじゃ。じゃが、お前はそうしない。なぜじゃ」

「ぼうやがタイプなのぉ」

「は! たわけが。お前は、ネプォンもアーチロビンも愛してはおらぬ。お前は、己の野望のみ愛している女じゃ」

「ふん、本当に嫌なババア」

───そこは認めるんだな。
一瞬でも、ドキドキした自分が情けない。
だから、この女にいいようにされてしまうのに。

魔導士ティトは、隣から手を伸ばして俺の肩を慰めるようにポンポンと軽く叩く。

彼女を見ると、『気にするな、小僧』と言いたげな表情をして、すぐに視線をイルハートに戻した。

「大魔導士まで上り詰めたお前が、そこまで怯えて、アーチロビンに縋る理由はなんじゃ」

「……あんたが」

「ん?」

「あんたが恋に惑って、大魔導士の座につかなかったから、わからないんでしょうけど、このままだと、私は……」

彼女が言いかけたその時だ。
布がバサッ、バサッとめくれる音が近づいてくる。

「なんだよ! お前!」

「きゃ! 失礼ね!!」

人々の困惑する声。なんだ?

大魔導士イルハートは、盛大に肩をすくめて、胸元から紙を一枚取り出して俺に渡してくる。

「はぁ、時間切れね、ぼうや。今から、ここに行きなさい。準備をしっかりしていくのよぉ」

大魔導士イルハートは、不敵に微笑んで、自分からテントを出ていった。

「イルハート!!」

ネプォンの声がする。

「あら、ネプォン」

「浮気か?」

「あなたに言われたくないわぁ」

「俺から離れるなと、言ったはずだ」

「女の子たちはどうしたのぉ?」

「飽きた。もう十分遊んだからな」

「呆れたぁ」

「次に行く前に、シャーリーのところへ行こう。何やら妙な夢を見るらしい」

「夢ぇ?」

「魔王が、襲ってくる夢を見るらしい。下手なことを騒ぎ出す前に、あいつも黙らせないとな」

「こんなところで、ヤバいこといわなぁい」

「大丈夫、俺の勘がそう言ってる」

「あ、そぉ」

「俺の言う通りにしていれば、間違いはない。そうだろ?」

「ええ」

「魔王は復活なんてしない。魔王は消滅したんだ」

「……」

「それより、聞いたか? このスパで、孤族の可愛い女の子が来ていたと」

「孤族なんて珍しくないじゃない。ほらそこにも、あそこにもいるわぁ」

「いや、色が違う。白狐の女の子らしい」

!? フィオのことだ。

「それがぁ?」

「是非付き合いたい」

「はあ、あんたも好きねぇ」

「前に一度孤族の女の子と付き合ったんだけど、よかったぜぇ。可愛くて、スタイルがよくて。あの狐耳を撫でると、気持ち良くてさ」

「その娘はどうしたのよぉ?」

「飽きたから捨てた。新しいのがいい」

「ふぅん、まあ、どうでもいいわ。そんなことより、シャーリーのところへ行きましょうよぉ」

「イルハート」

「なぁに?」

ネプォンが凄む声で、大魔導士イルハートに声をかける。

「……裏切るなよ」

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