不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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三章

まさかの本音

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俺たちは、ネプォンたちの気配が消えるまで、声を潜めていた。

そっと聖騎士ギルバートが、テントの入り口から顔を出して、外を確認する。

「うん、大丈夫。危なかったですねぇ。ネプォン王が、すぐそこまで来ていましたし」

それを聞いて、ケルヴィン殿下は、ふぅーとため息をついた。

「……心臓に悪いな。まったく。それに、大聖女代理シャーリーの話も出たな」

シャーリーまで、来てるなんて。
会いたくもない相手が、また増えたな。

シャーリーの名前を聞いたフィオは、戸惑うような表情で片手を口にあてて、

「ケルヴィン殿下。シャーリー様……は、何か危害を加えられてしまうのでしょうか」

と、言った。
相手は大聖女。王といえど、理由もなく危害なんて……あ、でも。

シャーリーに代わる、他の大聖女候補者がいれば、彼女を排除できる。

俺はフィオに声をかけた。

「フィオ、シャーリー以外に大聖女候補はいるのか?」

「……」

俺が聞くと、フィオは複雑そうな顔をする。
……まだ、怒ってるのか?

「フィオ、ワシも聞きたいのじゃ」

答えにくそうなフィオに、魔導士ティトが助け舟を出した。

彼女はハッとして、小さく『ごめんなさい』と言うと、俺を見上げる。

「え、ええ、それはもちろん。シャーリー様が候補者の筆頭ではあるけど、他にも何人かいらっしゃるわ」

「ということは、シャーリーがいなくなっても、困らない……」

やはり、そういう結論になってしまう。
本来の大聖女であるオベリア様は、病床にいるとはいえ、まだ生きているしな。

「フィオも、候補者じゃないか」

と、ケルヴィン殿下が言った。

フィオも? あ、確かに彼女は、魔王ダーデュラの魂の存在を感知した一人だ。
潜在能力はとても高いんだろう。

言われたフィオは、慌てて首をブンブン横に振る。

「いえ! いえ、前にも言いましたけど、私は誰にも期待されていない新米なんです!」

「慌てん坊なところさえ落ち着けば、シャーリーを上回るんじゃないのか?」

ケルヴィン殿下が言うと、魔導士ティトも顎を撫でながらフィオを見る。

「うむ。オメガゴーレムの攻撃を防いだシールドといい、悪霊を散らし続けた霊力といい、素質はいいはずなんじゃ、フィオは」

そうだよな、あの耐久力もすごかった。俺が行くまで、持ち堪えたのだから。

「シャーリー様より、フィオの方が大聖女向きかもね。シャーリー様は、大聖女として威張ってる感じがするし、ヴォルディバ先輩の彼女なんでしよ?」

聖騎士ギルバートも、髪型を整えながらフィオに言う。

そう、シャーリーは暗黒騎士ヴォルディバの恋人だったはずだ。

もし、彼女に何かあれば、ネプォンと暗黒騎士ヴォルディバとの間に、溝ができるだろう。

まあ、二人の関係の深さが、遊びなのか真剣なのかすら、俺にはわからないけど。

「そういえば、ネプォン義兄上はフィオの話もしてたな」

ケルヴィン殿下が、心配そうにフィオを見る。
そうだった……あいつフィオと付き合いたいなんて、言ってたな。

魔導士ティトも、厳しい表情で俺たちを見回す。

「とにかく、当面ワシらは、ゾンビダラボッチのことを考えようぞ。モタモタして、フィオがネプォン王に見つかれば、手籠めにされるかもしれんでな」

!!
……何!?

「手籠め……て?」

フィオは、意味がよくわからないという顔で、魔導士ティトに聞いていた。

彼女は、低い声でフィオに告げる。

「望まぬ相手に、乱暴されるということじゃ。あちらは、王。お前は、泣き寝入りせねばならなくなる」

「!! ……いや!!」

フィオが、両手で自分の体を抱き締めて怖がる。

ネプォンに乱暴されるだと?

俺は頭に血が昇って、気がつくと叫んでいた。

「冗談じゃない!」

あまりの大声に、みんなが驚いて俺に注目する。

「おい、落ち着け、アーチロビン。ティトが言っているのは、最悪の事態が起きた時の話だ」

「そ、そうだよ、アーチロビン。そりゃ向こうは王だから、権力を振りかざされたら敵わないけど、ボクらが見つからなきゃいいんだから」

「そうじゃ、落ち着かんかい。フィオよりも、お前が熱くなってどうする」

三人がそれぞれなだめてくるけれど、ネプォンはフィオを目の前にしたら、絶対に手を出すだろう。

そして、適当に遊んだら見向きもしなくなる。
前に付き合っていた孤族の女の子も、『飽きたから捨てた』と言っていたじゃないか。

「あいつは、フィオを弄んで捨てるに決まってる!!」

俺は三人に向かって、はっきり言った。
そういう奴だ。

頭の中に、フィオが奴に奪われる光景が浮かんで、奥歯を食いしばる。絶対にさせるものか。

熱い想いが込み上げてきて、テントの入り口を睨みつけた。

ケルヴィン殿下は俺の表情を見て、困惑したように声をかけてくる。

「な、なぁ、アーチロビン。少し落ち着け、て。まだ、何かされたわけでもないのに、そんなに怒るなんて、一体どうし───」

「何かされた後じゃ遅いんです! フィオが悲しむじゃないですか! 心が死んでしまう!」

「いや、フィオは……」

「フィオが奪われるなんて、俺は嫌だ!」

よりによってネプォンなんかに! いや、誰であったとしても!!

俺の様子を見ていた魔導士ティトが、ため息をついてニヤリと笑う。

「ふぅ、奪われることが嫌、か」

「ああ」

「フィオを、失いたくないからじゃろうが」

「大事な仲間だから」

「お前の振る舞いは、仲間以上の感情がある者の態度だ。他の男が近づくことを、毛嫌いしておるしな」

「は? 仲間以上? 毛嫌い? わからないことを言うな」

「フィオがネプォン王に夜伽をさせられることを、本人以上に嫌悪しおって」

「当然だろ!?」

「そんなに、フィオが好きかえ?」

「あたりまえだ!!」

……。
……。

ん?

みんなが呆気に取られたように、俺を見ていた。

は? なんだ?

「予想外の……」

「熱いお返事……」

ケルヴィン殿下と、聖騎士ギルバートが、パチパチと拍手している。

「ひゃーはっはっは! よかったのぉ、フィオ。やはり、恋はライバルがいる方が燃えるもの。ワシとアーサーとの恋を思い出すぞ」

魔導士ティトが、フィオを見てニコニコ笑う。
フィオは、時を止めたように固まってしまっていた。

あ……れ?
俺、今なんて言った!?

無意識にポロッと口から溢れた。
なんて言ったんだ? 俺。

た、確か、俺、彼女のことを───!
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