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五章
新たに迫る危機
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「私が倒したの……私が一人で。くふふ……」
シャーリーは、ずっとぶつぶつ言っている。
頭がやられたな。
俺たちは、彼女を監視しながらユバロン司祭に聖櫃を返しに行った。
ゾンビダラボッチが倒れたので、結界も自動的に解除されたしな。
ユバロン司祭は、大喜びで俺たちを出迎えてくれて、何度も感謝される。
「聖櫃は川の水で洗っております。フィオも清めてくれたので、問題ないと思います」
俺が告げると、ユバロン司祭はフィオに感謝していた。
彼女の浄化力の高さには、驚かされる。前より格段に霊力を上げた感じだ。
ユバロン司祭は、俺たちを見回すと、思い出したようにポンと手を叩く。
「そうそう、あなた方に会いたいという人がいらっしゃいました」
「え? ユバロン司祭、それはどなたです?」
俺は、思わず警戒した。
俺たちはお忍びの旅だ。
ここにいることを知っているのは、イルハートくらいなもの。
他に誰が?
「大聖女オベリア様です」
「ええ!?」
「お忍びで、シャーリー大聖女代理を迎えにいらっしゃったそうなのです。状況説明の途中、あなた方の話が出まして。極秘にお会いしたいと」
ユバロン司祭は、にっこり微笑んで応接室へと案内してくれる。
なるほど。
そうだったのか。
応接室の扉が開いて、中に大聖女オベリア様が待っていた。
みんな思わず、深くお辞儀をする。
シャーリーだけは、ニヤニヤしたまま、突っ立っていた。
全員で応接室に入り、ユバロン司祭が扉を閉める。
すると、大聖女オベリア様が真っ先に、シャーリーに声をかけた。
「シャーリー神官」
「オベリア様、私を正式にお認めください。私はゾンビダラボッチをも倒した神官。あなたより優れていてよ、おほほほ!!」
「ゾンビダラボッチに、二度も取り込まれたようですね。より深くゾンビ因子に感染している。もはや私の力でも、浄化できません」
「無能! 無能なオベリア様! くく、ハハハ!!」
「お眠りなさい。せめて、もう誰も傷つけぬよう。女神ルパティ・テラの名の下に、石と化せ、キセカ・トタス」
「何言ってんの? 国に凱旋しなきゃ! 私は大聖女!」
シャーリーの体は、ゆっくり石化していく。オベリア様は、シャーリーを封印する気だ。
祈りの書の力を借りることなく、霊力を使えるのが、大聖女なんだな。
「シャーリー神官。どのみち、あなたは代理止まりです。貞操の掟を破っているでしょう?」
「バレ……なければべつに……」
「魔王討伐の功績があるので、代理として認めましたが、後継者にすると約束はしていません」
「頭の……固い……女」
「過去の過ちから、大聖女は貞操の掟を堅持しなくてはならないと決まっています。何も固くはない」
「大昔の……大聖女の過ち……他人の子を王の子として……」
「眠りなさい」
シャーリーは、立ったまま目を閉じて動かなくなる。そしてそのまま、石化していった。
シャーリー……。
これで、二度と会うこともないだろう。
オベリア様は、フーッと深呼吸して俺たちを見回す。
「仔細は伺いました。まずは皆様、ゾンビダラボッチの討伐、お疲れ様でした」
オベリア様は、静かな声で語りかけてくる。
俺は、実際に会うのはこれが初めてだ。
「ありがとうございます」
俺たちは口を揃えて、応えた。
「オベリア様、ご体調は?」
俺が聞くと、彼女は細い指を胸に当てて、『大丈夫です』と言う。
顔色はあまりよくないけどな。
オベリア様は、次にフィオに視線を移す。
「グライア神官、聞きましたよ。自身の籠目を解き、霊力の高みに登れたこと、嬉しく思います。あなたもこれで、立派な大聖女候補者です」
彼女の言葉に、フィオは耳をぴこぴこさせて、緊張しながら頭を下げる。
「あ、ありがとうございます! オベリア様」
「旅も、慣れてきたようですね。ケルヴィン殿下とも、親しくなれましたか?」
……ん? ケルヴィン殿下の名前が、ここで出るか?
そういえぱ彼女は、出国するケルヴィン殿下に同伴するよう、オベリア様に命を受けていたんだったな。
フィオもケルヴィン殿下をチラリと見て、慌てて頷いた。
「え? あ、はい。旅の仲間として、よくしていただいております」
「それはよかったこと。共に過ごせば、距離も縮まります」
「あ、あの! 他の皆様とも、親しくなれました。オベリア様、特に……」
フィオは、俺を見て顔を赤くする。彼女の視線の先に俺がいるとわかると、オベリア様は一瞬表情を曇らせた。
ん? なんだ?
なぜ、そんな顔を?
けれど、オベリア様はすぐにポーカーフェイスになって、表情がわかりにくくなる。
「……仲間たちと、絆を深めることはいいことですね、グライア神官」
「あ、はい……」
フィオも、それ以上言えなくなった。無理矢理話を終わらせたように見えたのは、俺の気のせいか?
オベリア様は、改めて俺たちみんなを見る。
「私は、シャーリー神官を迎えにきたのです。魔王の復活は近い。旅の憂いは少しでも除かねば」
「オベリア様も、お感じに?」
「ええ、もちろん。そして、巨大な力を持つ魔族の一人が、各地の龍王達を襲っているのです。魔族が龍王を狙うことは、ないはずなのに」
「!!」
「その魔族は『レディオーク』。次々と、龍王達が倒されています」
「ええ!?」
「各地に現存する龍王は全部で七体。六体は既に敗れたようです。最後の一体はおそらく倒せないでしょうが、油断はできません」
既に六体がやられた!?
あ、後がない!!
ネプォンでさえ、三体が限界だった。
まぁ、無計画だったからかもしれないが。
オベリア様は深刻な顔で、俺たちを見る。
「なにより、あなた方はネプォン王と違い、神の祝福を受けた勇者たちではありません。神器も持たない冒険者です」
「はい……」
「これまで、魔王に挑んできたのは、主に天が祝福を与えて誕生した英雄たちです。ですが、ネプォン王は務めを果たそうとしないでしょう」
「……」
「天が認めた勇者であれば、困難はあれど、九分九厘勝利は約束されています。でも、あなた方が挑むのであれば……勝利の行方は不明です」
「……」
「天秤を動かせる可能性があるのは、アーチロビン、あなたのようですね」
「!!」
俺は思わず、オベリア様を見た。俺を知って……?
「あなたの中にある、凄まじい力を持つ大帝神龍王の魂。神器の力を借りずとも魔王の魂まで砕けるかは、わかりません。それでも、魔王は龍王達を倒し、少しでも力を削ぎたいのです」
俺は立ち上がって彼女を見た。
黙って、やられるわけにはいかない。
敵のことを少しでも知っておかないと。
「オベリア様、そのレディオークが、魔王の魂の欠片を持つ最後の魔族なのですか?」
「……ええ。そうでなければ、龍王たちを襲うことはないでしょう」
「レディオークを倒せば、英雄の存在と同等の魔王が復活します」
「え!?」
「ここにくる前に、秘術研究の第一人者、タインシュタ・フランに話を聞いたのです」
俺は、かいつまんで説明した。彼女の顔はみるみる青ざめていく。
「な、な、なんてことを! 神々の祝福を受けた英雄たちと、同等!?」
「はい、残念ながら。だから、俺たちが是が非でも魔王を倒します」
「あえて復活させないよう、レディオークを封印するというのは?」
その時、魔導士ティトと聖騎士ギルバートが手を挙げた。
「オベリア様、それはやめた方がいいですじゃ。魔王は別の魔族に魂を移し替えるだけ。しかも下手に小物に宿らせれば、どこぞの冒険者が倒すやもしれませんぞ」
「そうです。それに、この秘術で分けた魂の統合がひどく遅れると、複数の国々を壊滅させるほどの爆発が、どこかで起きるそうです」
「魔道士ティト、聖騎士ギルバート、そうなのですか? ああ、なんということでしょう」
「オベリア様、アーチロビン頼みの作戦しか、我々には残されておりません。であれば、次の標的はそのレディオーク。」
「ケルヴィン殿下……それならば、残された龍王を守らねば。最後の一体をなんとしても」
「ええ、どこにいるのです? 最後の一体は」
「それが……この世界ではないのです」
「異世界……ですか?」
「ええ、最後の一体は異世界に存在します。レディオークも、そうおいそれとはいけない場所」
「どこです?」
「……日の本という、国です……」
シャーリーは、ずっとぶつぶつ言っている。
頭がやられたな。
俺たちは、彼女を監視しながらユバロン司祭に聖櫃を返しに行った。
ゾンビダラボッチが倒れたので、結界も自動的に解除されたしな。
ユバロン司祭は、大喜びで俺たちを出迎えてくれて、何度も感謝される。
「聖櫃は川の水で洗っております。フィオも清めてくれたので、問題ないと思います」
俺が告げると、ユバロン司祭はフィオに感謝していた。
彼女の浄化力の高さには、驚かされる。前より格段に霊力を上げた感じだ。
ユバロン司祭は、俺たちを見回すと、思い出したようにポンと手を叩く。
「そうそう、あなた方に会いたいという人がいらっしゃいました」
「え? ユバロン司祭、それはどなたです?」
俺は、思わず警戒した。
俺たちはお忍びの旅だ。
ここにいることを知っているのは、イルハートくらいなもの。
他に誰が?
「大聖女オベリア様です」
「ええ!?」
「お忍びで、シャーリー大聖女代理を迎えにいらっしゃったそうなのです。状況説明の途中、あなた方の話が出まして。極秘にお会いしたいと」
ユバロン司祭は、にっこり微笑んで応接室へと案内してくれる。
なるほど。
そうだったのか。
応接室の扉が開いて、中に大聖女オベリア様が待っていた。
みんな思わず、深くお辞儀をする。
シャーリーだけは、ニヤニヤしたまま、突っ立っていた。
全員で応接室に入り、ユバロン司祭が扉を閉める。
すると、大聖女オベリア様が真っ先に、シャーリーに声をかけた。
「シャーリー神官」
「オベリア様、私を正式にお認めください。私はゾンビダラボッチをも倒した神官。あなたより優れていてよ、おほほほ!!」
「ゾンビダラボッチに、二度も取り込まれたようですね。より深くゾンビ因子に感染している。もはや私の力でも、浄化できません」
「無能! 無能なオベリア様! くく、ハハハ!!」
「お眠りなさい。せめて、もう誰も傷つけぬよう。女神ルパティ・テラの名の下に、石と化せ、キセカ・トタス」
「何言ってんの? 国に凱旋しなきゃ! 私は大聖女!」
シャーリーの体は、ゆっくり石化していく。オベリア様は、シャーリーを封印する気だ。
祈りの書の力を借りることなく、霊力を使えるのが、大聖女なんだな。
「シャーリー神官。どのみち、あなたは代理止まりです。貞操の掟を破っているでしょう?」
「バレ……なければべつに……」
「魔王討伐の功績があるので、代理として認めましたが、後継者にすると約束はしていません」
「頭の……固い……女」
「過去の過ちから、大聖女は貞操の掟を堅持しなくてはならないと決まっています。何も固くはない」
「大昔の……大聖女の過ち……他人の子を王の子として……」
「眠りなさい」
シャーリーは、立ったまま目を閉じて動かなくなる。そしてそのまま、石化していった。
シャーリー……。
これで、二度と会うこともないだろう。
オベリア様は、フーッと深呼吸して俺たちを見回す。
「仔細は伺いました。まずは皆様、ゾンビダラボッチの討伐、お疲れ様でした」
オベリア様は、静かな声で語りかけてくる。
俺は、実際に会うのはこれが初めてだ。
「ありがとうございます」
俺たちは口を揃えて、応えた。
「オベリア様、ご体調は?」
俺が聞くと、彼女は細い指を胸に当てて、『大丈夫です』と言う。
顔色はあまりよくないけどな。
オベリア様は、次にフィオに視線を移す。
「グライア神官、聞きましたよ。自身の籠目を解き、霊力の高みに登れたこと、嬉しく思います。あなたもこれで、立派な大聖女候補者です」
彼女の言葉に、フィオは耳をぴこぴこさせて、緊張しながら頭を下げる。
「あ、ありがとうございます! オベリア様」
「旅も、慣れてきたようですね。ケルヴィン殿下とも、親しくなれましたか?」
……ん? ケルヴィン殿下の名前が、ここで出るか?
そういえぱ彼女は、出国するケルヴィン殿下に同伴するよう、オベリア様に命を受けていたんだったな。
フィオもケルヴィン殿下をチラリと見て、慌てて頷いた。
「え? あ、はい。旅の仲間として、よくしていただいております」
「それはよかったこと。共に過ごせば、距離も縮まります」
「あ、あの! 他の皆様とも、親しくなれました。オベリア様、特に……」
フィオは、俺を見て顔を赤くする。彼女の視線の先に俺がいるとわかると、オベリア様は一瞬表情を曇らせた。
ん? なんだ?
なぜ、そんな顔を?
けれど、オベリア様はすぐにポーカーフェイスになって、表情がわかりにくくなる。
「……仲間たちと、絆を深めることはいいことですね、グライア神官」
「あ、はい……」
フィオも、それ以上言えなくなった。無理矢理話を終わらせたように見えたのは、俺の気のせいか?
オベリア様は、改めて俺たちみんなを見る。
「私は、シャーリー神官を迎えにきたのです。魔王の復活は近い。旅の憂いは少しでも除かねば」
「オベリア様も、お感じに?」
「ええ、もちろん。そして、巨大な力を持つ魔族の一人が、各地の龍王達を襲っているのです。魔族が龍王を狙うことは、ないはずなのに」
「!!」
「その魔族は『レディオーク』。次々と、龍王達が倒されています」
「ええ!?」
「各地に現存する龍王は全部で七体。六体は既に敗れたようです。最後の一体はおそらく倒せないでしょうが、油断はできません」
既に六体がやられた!?
あ、後がない!!
ネプォンでさえ、三体が限界だった。
まぁ、無計画だったからかもしれないが。
オベリア様は深刻な顔で、俺たちを見る。
「なにより、あなた方はネプォン王と違い、神の祝福を受けた勇者たちではありません。神器も持たない冒険者です」
「はい……」
「これまで、魔王に挑んできたのは、主に天が祝福を与えて誕生した英雄たちです。ですが、ネプォン王は務めを果たそうとしないでしょう」
「……」
「天が認めた勇者であれば、困難はあれど、九分九厘勝利は約束されています。でも、あなた方が挑むのであれば……勝利の行方は不明です」
「……」
「天秤を動かせる可能性があるのは、アーチロビン、あなたのようですね」
「!!」
俺は思わず、オベリア様を見た。俺を知って……?
「あなたの中にある、凄まじい力を持つ大帝神龍王の魂。神器の力を借りずとも魔王の魂まで砕けるかは、わかりません。それでも、魔王は龍王達を倒し、少しでも力を削ぎたいのです」
俺は立ち上がって彼女を見た。
黙って、やられるわけにはいかない。
敵のことを少しでも知っておかないと。
「オベリア様、そのレディオークが、魔王の魂の欠片を持つ最後の魔族なのですか?」
「……ええ。そうでなければ、龍王たちを襲うことはないでしょう」
「レディオークを倒せば、英雄の存在と同等の魔王が復活します」
「え!?」
「ここにくる前に、秘術研究の第一人者、タインシュタ・フランに話を聞いたのです」
俺は、かいつまんで説明した。彼女の顔はみるみる青ざめていく。
「な、な、なんてことを! 神々の祝福を受けた英雄たちと、同等!?」
「はい、残念ながら。だから、俺たちが是が非でも魔王を倒します」
「あえて復活させないよう、レディオークを封印するというのは?」
その時、魔導士ティトと聖騎士ギルバートが手を挙げた。
「オベリア様、それはやめた方がいいですじゃ。魔王は別の魔族に魂を移し替えるだけ。しかも下手に小物に宿らせれば、どこぞの冒険者が倒すやもしれませんぞ」
「そうです。それに、この秘術で分けた魂の統合がひどく遅れると、複数の国々を壊滅させるほどの爆発が、どこかで起きるそうです」
「魔道士ティト、聖騎士ギルバート、そうなのですか? ああ、なんということでしょう」
「オベリア様、アーチロビン頼みの作戦しか、我々には残されておりません。であれば、次の標的はそのレディオーク。」
「ケルヴィン殿下……それならば、残された龍王を守らねば。最後の一体をなんとしても」
「ええ、どこにいるのです? 最後の一体は」
「それが……この世界ではないのです」
「異世界……ですか?」
「ええ、最後の一体は異世界に存在します。レディオークも、そうおいそれとはいけない場所」
「どこです?」
「……日の本という、国です……」
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