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五章
怪魚ベヒモムートに乗って
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「日の本? 御伽話の国ですよね?」
俺たちは、みんなで、オベリア様に注目した。
絵本でなら、見たことがある。
御伽話の国、日の本。
実在するのか?
オベリア様は、軽く咳払いして、説明してくれた。
「ゴホン、日の本は実在しますが、全く異質の国なのです。向こうから見れば、こちらも御伽話のような存在だといわれています」
「へぇ?!」
「そこに、最近龍王になったばかりの、新人龍がいるとか。龍の秘宝、『宝珠』を二つ持つ、異色の龍王だそうです」
「つまり、それだけ強い……?」
「さぁ、私の力も異世界はここまでしかわかりません」
「どうやって行けるのですか?」
「本来は、六体の龍王を倒した勇者が、それぞれの龍王が持つ宝珠を集め、満月の夜に月の光にあてると、七体目の龍王がいる場所へと道が開くといわれています」
「つまり、次の満月の夜にレディオークは、日の本へいけるわけですね。では、俺たちは?」
「確か……千年に一度の満月の日に、月の力を借りると、道が繋がると聞いたことがあります」
「千年に一度? そ、そんな」
「幸運にも、その千年に一度とは、明後日の夜なのです」
「ええ!?」
「私の友人が教えてくれたのです。友人の名は月の巫女、『テレクサンドラ』」
「テレクサンドラ」
「この国の近隣国の一つ、『ポリュンオス』に月の神殿があります。彼女はそこにいます」
「では、そこへ行けばいいのですね?」
「そうです。あとは彼女によく話を聞くのです。これを……私の紹介状を書いておきました。お急ぎなさい」
「ありがとうございます」
「さぁ、どうか、最後の龍王を討ち取らせてはなりません。女神ルパティ・テラのご加護があらんことを!!」
俺たちはオベリア様に頭を下げると、急いでポリュンオスに向かった。
ポリュンオスへは、空を飛んで向かうという。
空を泳ぐように飛ぶ“ベヒモムート”という、怪魚の背に乗って行くのだとか。
流石にネプォンは、もういないよな……。
俺たちは、ユバロン司祭の手配で、ベヒモムートに乗ることになった。
ベヒモムートは、初めて見る。
まるで羽根の生えた巨大な魚だ。
大きな背中に、客船を背負っている。
案内係に案内されて中に入ると、個室まで完備された豪華客船のような造りになっていた。
「うわぁ……」
俺は慣れないセレブな世界に、驚きしかない。
じっちゃんにも、見せてやりたいな。
なんて言うだろう。
「なかなか、いいじゃないか」
ケルヴィン殿下は、流石に動じない。まぁ、この人はな。
「ボクたちの部屋も、予約されてたよ! ポリュンオスに着くのは明日だってさ」
聖騎士ギルバートは、珍しくはしゃいでいる。
「まぁ、明後日の満月の夜にしか、レディオークも日の本へ行けぬ。今日はゆっくり休んで英気を養うとしよう」
魔導士ティトは、さっそくテーブルに並べられたお酒のグラスを見つけると、接客乗務員にすすめられるまま、飲み干していた。
「飲み過ぎるなよ、ティト」
俺が言うと、ティトはふん!と鼻を鳴らす。
「年寄りの楽しみを、取るんじゃないぞよ」
「そろそろ、じっちゃんのことも話したいんだ」
「む、むぅ……」
ティトは神妙な顔をする。
お酒を先に飲みたくてたまらない、という顔だ。
できれば、素面のうちに話を聞いてもらいたいんだけどな。
ケルヴィン殿下が、その様子を見て俺たちを集めた。
「みんな、とりあえずポリュンオスに着くまでは、自由行動を取ろう。ここには、ネプォンもイルハートもいないようだ。少し羽根を伸ばそう」
「おー!」
「賛成!!」
聖騎士ギルバートも、魔導士ティトも、片手を上げて賛成する。
やれやれ……。
「みんな旅に出てから、ろくに休んでないし、今後に備えて休みましょう?」
フィオが、俺の片手を握った。そう言われちゃな。それにここで焦っても、行けるわけじゃないしな。
「わかった」
俺はそう言って、フィオと一緒に中を見て回ることになった。
「ワーォ! ブラボー!!」
オウムのフェイルノも、物珍しさに興奮している。
カジノに、プールに、なんでも売っている店に、バーや、広いパーティ会場まであるそうだ。遊戯施設も完備。これが、怪魚の背中に据え付けられた設備なんて、信じられないくらいだ。
その時だ。
「本日、空の旅ベヒモムート号をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。間もなく、離陸致します。念の為近くの手すりにおつかまりくださいますよう、お願い致します」
館内放送が響きわたって、俺たちは近くの手すりにつかまる。
ふわっと浮遊感が感じられて、窓の外を見ると空へと舞い上がっていくのが見えた。
「少し、怖いね。でも、綺麗……」
フィオがそう言って、俺の肩に頭を預けてくる。外はもう夜で、星空がとても綺麗だった。
「あぁ……そうだな」
俺は彼女の頭の重みを、心地よく感じながら応えた。
一度失いかけて、戻ってきたフィオ。もう、あんな思いはしたくない。
今度こそ、彼女のそばを離れないようにしよう。
「お客様」
ふと、俺たちに接客乗務員が声をかけてきた。
「はい?」
「よろしければ、屋上にある星空のブランコをご利用になりませんか? 恋人同士に、人気のスポットでございます」
「星空の……」
「ええ、途中にカジノ等遊戯施設もありますから、館内を一通り巡って、最後はそこで愛を誓われる方々もいらっしゃいます」
「あ、愛……誓っ……!!」
俺は顔が真っ赤になるのを感じた。
いや、その……嫌じゃないが、展開がこうも早いと、心がついていかない。
「どうぞ、素敵な夜の思い出に」
と、接客乗務員に言われた俺は、ガチガチに緊張しながらフィオを見た。
フィオも顔を赤くしながら、接客乗務員に渡された館内案内図の載ったパンフレットを受け取っている。
とりあえず、これを見ながら移動しよう。
聖騎士ギルバートは、館内のスパでエステを利用していた。
爪の先まで綺麗にしてもらって、ご満悦な表情。
「極楽だぁ……」
鍛えられた彼の肉体美に、マッサージを施している女性達がメロメロになって、人だかりができていた。
俺たちが近づこうとすると、彼は必死な顔で来ないで!と口パクで伝えてくる。
『やっと、モテる機会が来たから、邪魔しないで!!』
だそうだ。俺はフィオと顔を見合わせて、笑いながらその場を後にした。
魔導士ティトは、館内のバーで、すっかり酔っ払っている。
そうそう、じっちゃんのこと伝えないと。
俺はフィオと一緒に、魔導士ティトの隣に腰掛けた。
「ティト」
「んー?」
「じっちゃんのことだけど」
「おぅ、アーサーな。アーサーがどしたぁ!?」
「はいはい、あのね。じっちゃんは、誰とも結婚はしてない。じっちゃんは養子をとって、俺が生まれたの」
「はー?」
「だから、俺とじっちゃんは、血の繋がりはないんだ。じっちゃんは、ティトとの約束を破ってないんだよ。独身を通したんだ」
「アーサーがぁ? どくしーん?」
「ティト、本当だってば」
「ワシが知る中で、一番手が早かった奴がのぅー?」
「この旅が終わったら、うちに来て。じっちゃんも会いたがってる」
「む……今更会ってもなぁ……もう、こんなに老いてしまった。こんな姿を見せるのは……な」
「じっちゃんも、年取ってるよ、お互い様」
「お前には、わからんよ……」
魔導士ティトは、そのままグラスの縁を指でなぞるばかりで、一言も喋らなくなった。
そんなに気にするものかな。
時が経てば、容姿は変わって当たり前。
じっちゃんは、気にしないと思うけど。
……でも、ティトは嫌なのかもな。
俺たちは、仕方なくその場から離れる。
ケルヴィン殿下は、館内のカジノにいた。あれ?
見知らぬ女性を、膝に乗せている。
誰だ……あの人。
俺たちは、みんなで、オベリア様に注目した。
絵本でなら、見たことがある。
御伽話の国、日の本。
実在するのか?
オベリア様は、軽く咳払いして、説明してくれた。
「ゴホン、日の本は実在しますが、全く異質の国なのです。向こうから見れば、こちらも御伽話のような存在だといわれています」
「へぇ?!」
「そこに、最近龍王になったばかりの、新人龍がいるとか。龍の秘宝、『宝珠』を二つ持つ、異色の龍王だそうです」
「つまり、それだけ強い……?」
「さぁ、私の力も異世界はここまでしかわかりません」
「どうやって行けるのですか?」
「本来は、六体の龍王を倒した勇者が、それぞれの龍王が持つ宝珠を集め、満月の夜に月の光にあてると、七体目の龍王がいる場所へと道が開くといわれています」
「つまり、次の満月の夜にレディオークは、日の本へいけるわけですね。では、俺たちは?」
「確か……千年に一度の満月の日に、月の力を借りると、道が繋がると聞いたことがあります」
「千年に一度? そ、そんな」
「幸運にも、その千年に一度とは、明後日の夜なのです」
「ええ!?」
「私の友人が教えてくれたのです。友人の名は月の巫女、『テレクサンドラ』」
「テレクサンドラ」
「この国の近隣国の一つ、『ポリュンオス』に月の神殿があります。彼女はそこにいます」
「では、そこへ行けばいいのですね?」
「そうです。あとは彼女によく話を聞くのです。これを……私の紹介状を書いておきました。お急ぎなさい」
「ありがとうございます」
「さぁ、どうか、最後の龍王を討ち取らせてはなりません。女神ルパティ・テラのご加護があらんことを!!」
俺たちはオベリア様に頭を下げると、急いでポリュンオスに向かった。
ポリュンオスへは、空を飛んで向かうという。
空を泳ぐように飛ぶ“ベヒモムート”という、怪魚の背に乗って行くのだとか。
流石にネプォンは、もういないよな……。
俺たちは、ユバロン司祭の手配で、ベヒモムートに乗ることになった。
ベヒモムートは、初めて見る。
まるで羽根の生えた巨大な魚だ。
大きな背中に、客船を背負っている。
案内係に案内されて中に入ると、個室まで完備された豪華客船のような造りになっていた。
「うわぁ……」
俺は慣れないセレブな世界に、驚きしかない。
じっちゃんにも、見せてやりたいな。
なんて言うだろう。
「なかなか、いいじゃないか」
ケルヴィン殿下は、流石に動じない。まぁ、この人はな。
「ボクたちの部屋も、予約されてたよ! ポリュンオスに着くのは明日だってさ」
聖騎士ギルバートは、珍しくはしゃいでいる。
「まぁ、明後日の満月の夜にしか、レディオークも日の本へ行けぬ。今日はゆっくり休んで英気を養うとしよう」
魔導士ティトは、さっそくテーブルに並べられたお酒のグラスを見つけると、接客乗務員にすすめられるまま、飲み干していた。
「飲み過ぎるなよ、ティト」
俺が言うと、ティトはふん!と鼻を鳴らす。
「年寄りの楽しみを、取るんじゃないぞよ」
「そろそろ、じっちゃんのことも話したいんだ」
「む、むぅ……」
ティトは神妙な顔をする。
お酒を先に飲みたくてたまらない、という顔だ。
できれば、素面のうちに話を聞いてもらいたいんだけどな。
ケルヴィン殿下が、その様子を見て俺たちを集めた。
「みんな、とりあえずポリュンオスに着くまでは、自由行動を取ろう。ここには、ネプォンもイルハートもいないようだ。少し羽根を伸ばそう」
「おー!」
「賛成!!」
聖騎士ギルバートも、魔導士ティトも、片手を上げて賛成する。
やれやれ……。
「みんな旅に出てから、ろくに休んでないし、今後に備えて休みましょう?」
フィオが、俺の片手を握った。そう言われちゃな。それにここで焦っても、行けるわけじゃないしな。
「わかった」
俺はそう言って、フィオと一緒に中を見て回ることになった。
「ワーォ! ブラボー!!」
オウムのフェイルノも、物珍しさに興奮している。
カジノに、プールに、なんでも売っている店に、バーや、広いパーティ会場まであるそうだ。遊戯施設も完備。これが、怪魚の背中に据え付けられた設備なんて、信じられないくらいだ。
その時だ。
「本日、空の旅ベヒモムート号をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。間もなく、離陸致します。念の為近くの手すりにおつかまりくださいますよう、お願い致します」
館内放送が響きわたって、俺たちは近くの手すりにつかまる。
ふわっと浮遊感が感じられて、窓の外を見ると空へと舞い上がっていくのが見えた。
「少し、怖いね。でも、綺麗……」
フィオがそう言って、俺の肩に頭を預けてくる。外はもう夜で、星空がとても綺麗だった。
「あぁ……そうだな」
俺は彼女の頭の重みを、心地よく感じながら応えた。
一度失いかけて、戻ってきたフィオ。もう、あんな思いはしたくない。
今度こそ、彼女のそばを離れないようにしよう。
「お客様」
ふと、俺たちに接客乗務員が声をかけてきた。
「はい?」
「よろしければ、屋上にある星空のブランコをご利用になりませんか? 恋人同士に、人気のスポットでございます」
「星空の……」
「ええ、途中にカジノ等遊戯施設もありますから、館内を一通り巡って、最後はそこで愛を誓われる方々もいらっしゃいます」
「あ、愛……誓っ……!!」
俺は顔が真っ赤になるのを感じた。
いや、その……嫌じゃないが、展開がこうも早いと、心がついていかない。
「どうぞ、素敵な夜の思い出に」
と、接客乗務員に言われた俺は、ガチガチに緊張しながらフィオを見た。
フィオも顔を赤くしながら、接客乗務員に渡された館内案内図の載ったパンフレットを受け取っている。
とりあえず、これを見ながら移動しよう。
聖騎士ギルバートは、館内のスパでエステを利用していた。
爪の先まで綺麗にしてもらって、ご満悦な表情。
「極楽だぁ……」
鍛えられた彼の肉体美に、マッサージを施している女性達がメロメロになって、人だかりができていた。
俺たちが近づこうとすると、彼は必死な顔で来ないで!と口パクで伝えてくる。
『やっと、モテる機会が来たから、邪魔しないで!!』
だそうだ。俺はフィオと顔を見合わせて、笑いながらその場を後にした。
魔導士ティトは、館内のバーで、すっかり酔っ払っている。
そうそう、じっちゃんのこと伝えないと。
俺はフィオと一緒に、魔導士ティトの隣に腰掛けた。
「ティト」
「んー?」
「じっちゃんのことだけど」
「おぅ、アーサーな。アーサーがどしたぁ!?」
「はいはい、あのね。じっちゃんは、誰とも結婚はしてない。じっちゃんは養子をとって、俺が生まれたの」
「はー?」
「だから、俺とじっちゃんは、血の繋がりはないんだ。じっちゃんは、ティトとの約束を破ってないんだよ。独身を通したんだ」
「アーサーがぁ? どくしーん?」
「ティト、本当だってば」
「ワシが知る中で、一番手が早かった奴がのぅー?」
「この旅が終わったら、うちに来て。じっちゃんも会いたがってる」
「む……今更会ってもなぁ……もう、こんなに老いてしまった。こんな姿を見せるのは……な」
「じっちゃんも、年取ってるよ、お互い様」
「お前には、わからんよ……」
魔導士ティトは、そのままグラスの縁を指でなぞるばかりで、一言も喋らなくなった。
そんなに気にするものかな。
時が経てば、容姿は変わって当たり前。
じっちゃんは、気にしないと思うけど。
……でも、ティトは嫌なのかもな。
俺たちは、仕方なくその場から離れる。
ケルヴィン殿下は、館内のカジノにいた。あれ?
見知らぬ女性を、膝に乗せている。
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