不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

文字の大きさ
48 / 96
五章

謎の女性テデュッセア

しおりを挟む
ケルヴィン殿下は、カジノのルーレットのテーブルに座り、膝には見知らぬ女性を乗せている。

だ、大丈夫なのか?

俺は、ケルヴィン殿下に声をかけた。

「ケルヴィン殿下」

「お、アーチロビン」

「その女性は?」

「あぁ、彼女はテデュッセア。ここで知り合った。俺の幸運の女神でさ、ずーっと勝ちっぱなしだよ」

テデュッセアと呼ばれた女性は、泣きぼくろのある美人で、セクシーなドレスに身を包んでいる。

目のやり場に困るな。イルハートほど胸が大きい人ではないけど、見えそうで見えないドレスは嫌でも目を引く。

ゾクゾクきてしまう。
いかん、いかん。

軽く咳払いして横を見ると、目を細めるフィオの顔が見えた。

!!

一瞬で背中が凍りつく。
こ、怖い顔。

普段はあんなに可愛いのに、真顔で目を細められると、本当に怖くなる。

「……見惚れちゃって」

「フ、フィオ、あのな」

「はっはっは」

「ケルヴィン殿下?」

俺たちを見ていたケルヴィン殿下が、急に笑いだした。

「おいおい、フィオ。視線がいくのは、仕方ないんだよ。フィオだって、好みのイケメンがいたら、目がいくだろ?」

「ケルヴィン殿下!! そ、そんなこと!」

「まあ、エロい……いや、魅力的でセクシーな女性が目の前にいたら、俺だって見つめてしまう。あまり、アーチロビンを責めるな」

「……好きな女性がいてもですか? 殿下」

「関係ないね。好みの女性には、何人でも目がいく。あわよくば、関係を持ちたい。それが普通」

「そんな!」

フィオの肩が落ち込む。
いや、俺はいいと思っても、そこでやめる。

理性で抑えればすむ話だ。

俺が補足としてそう言おうとした時、ケルヴィン殿下が、フィオの顔を覗き込んだ。

「フィオ。アーチロビンは、モテる。何人と遊ぼうとも、笑って許せる心の広さが必要だ」

「!!」

ええええ!?

俺は驚いて、ケルヴィン殿下を見つめた。

「ケルヴィン殿下。俺、モテませんけど?」

「は……!? まさか、まだ自覚なしか?」

「自覚? 何を?」

「……」

ケルヴィン殿下が、固まっている。なぜ?
モテたことはないぞ、俺は。

「それに俺……フィオ以外の女の子の相手まで……できません。彼女だけで、俺は満足なんです」

「アーチロビン……」

フィオが、嬉しそうに微笑む。

だってそうだろ?
こんなに可愛くて、愛おしいのに。
俺の心は……もう、満席なんだよな。

他の女性の相手をする、スペースなんてない。

「うふふふ」

テデュッセアが、笑いだした。
え、笑うところ?

テデュッセアは、おかしそうに俺を見る。

「まあ、早い話、フィオさん以外に心が動かないんですよ。よかったですね、フィオさん」

「嬉しいです。テデュッセアさん」

「俺は納得できんがなぁ。色んな女性に目移りするのが、普通だし」

「ケルヴィン殿下、殿方も色々です。ましてや彼は、何か喪失を経験したのではないですか?」

「!!」

「そんな目をしています。彼女を一度失ったのでは?」

「た、確かに」

「彼は、彼女との繋がりを完全に失う恐怖と悲しみを知っています。この先も、その想いが他の女性への移り気を防ぎ、彼女だけを愛し抜くでしょう。羨ましいわ」

「テ、テデュッセア、俺だってやれるよ」

「あら、ケルヴィン殿下。できないことを、口になさらないで?」

「できるさ。試してみるかい?」

「それは楽しみですわ。あなたのその目線が、どこに動くかで私にはわかりますから」

な、なにやら、二人の間に火花のようなものが見えるのは気のせいか?

「でも、フィオさん」

テデュッセアは、ケルヴィン殿下の膝の上から立ち上がり、フィオのそばに来る。

「は、はい」

「もう少し、あなたもその硬さを解くべきですね。時には大胆に迫ることも、殿方を惹きつける要素ですよ」

「だ、大胆に?」

「そうだ、良いことを教えましょう」

テデュッセアは、フィオの耳に何かゴニョゴニョと話していた。

「え! そ、そ、そん…!」

話を聞いているフィオの顔が、みるみる赤くなっていく。

両手で頬を押さえ、俺をチラチラ見ていた。
白い耳も尻尾も、ブンブン動いている。

な、なんだよ。何を話してるんだ?
見ている俺まで、ドキドキしてくる。

「ジョシノ、ヒソヒソバナシ、キニナル……ンガ!」

オウムのフェイルノが余計なことを言いかけたので、慌てて嘴を押さえた。

お前はもう、すぐに状況をまぜっ返すからな。

そんな俺の目の前で、テデュッセアがフィオの手を軽く握って、笑いかけている。

「頑張って。あなたは、素敵な人なのだから。自信を持ってください」

「あ、でも……できるでしょうか、私」

「恥ずかしいのは、最初だけ。ね?」

話を終えたテデュッセアが、優しく彼女の背を押し出した。

「は、はい!」

フィオは、頭を下げて俺のところへ戻って来る。

顔が真っ赤だぞ? フィオ。
何を聞いたんだろ。

テデュッセアは、何事もなかったようにケルヴィン殿下の膝の上に座り直す。

ガラララ……その時、ちょうどルーレットのウィールが回り始めた。

玉が投入され、ディーラーがテーブルを囲む客にチップを賭けるよう声をかける。

テデュッセアは、フィオをチラリと見てから、回転するウィールを見つめた。

なんだ? フィオが何か?
テデュッセアは、確信したようにケルヴィン殿下に告げる。

「彼女を見て直感したの。きますわ」

「え!?」

「赤の7。ストレートアップが狙える。全額ベットして」

「全額!?」

「幸運の白い狐の彼女の、ツキに乗りましょう」

周りの客がざわつき、まさかそんなと言う声が聞こえてくる。

そんな声をよそに、テデュッセアと見つめ合ったケルヴィン殿下は、赤の7に全額をかけた。

ガラララララ。

ルーレットのウィールが回り続け、やがて玉が落ちる。

カランカラン、カラン……コトン。

「赤の7」

「おおおお!!」

「すげぇ!!」

「きゃあ! 信じられない」

周りから大歓声があがる。
テデュッセアは、嬉しそうにケルヴィン殿下に抱きついて、熱いキスを交わし始めた。

な、なんだか、すごい女性だな。
彼女は、薄目を開けて俺たちを見ると、片手でさよならと手を振る。

これ以上邪魔してはいけないな。

危険な女性というわけではなさそうだから、この場を去ろう。

俺は、フィオを連れてその場を離れた。
なかなか、落ち着ける場所がないな。

俺たちは屋上へと上る。
途中、温泉エリアがあった。

温泉かあ。いいなぁ、汗を流してさっぱりできるし。

フィオと二人で、入れたらなぁ……。

こ、こら!
馬鹿か、俺は!!

両想いだからと、いい気になっていれば、痛い目に遭うに決まってる。

で、でも、聞くだけならよくないか?
入らないか、て。

それで嫌と言われたら、やめればいいし。
べ、別にいやらしい下心なんて……そりゃ、少しは、その……。

いかん、顔が緩みそう。

「アーチロビン」

不意に声をかけられて、俺は思わず姿勢を正して彼女に頭を下げた。

「す、すみません!」

「え? 何?」

「いや、その……怒ってる?」

「ううん。全然」

「ホゥ……よかった」

「クスクス、変なアーチロビン」

「変なとか、言うなよ」

「ごめんね」

「それより、フィオは何を言いかけたの?」

「あ、あの。あのね」

フィオが、モジモジしながら温泉の方を指差した。

え……。
これは……まさか。

俺の妄想が、現実に?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...