上 下
45 / 96
フィオの恋日記

※フィオの恋日記④ フィオ視点

しおりを挟む
◯月◯日、薄曇り。

孤族の村で幌馬車を借りて、聖櫃を返しにユバロン司祭の元へ向かっている途中。

幸せ……今、とても幸せなの。

大好きな人と両想いになれて、一度は離れたけれど、またこうして一緒にいられる。

好きよ、大好きよ、アーチロビン。
私、もう、どこにも行かないから。

霊力も、前よりずっと大きく成長している。
でも、まだまだ。あなたのためにも、みんなのためにも、私はもっと強くなるからね。

アーチロビン。呼びかけると、『ん?』と返してくれる。その声が、とても優しくて。愛おしくて、尊くて。

“なんでもない、ごめんなさい”そう言って、胸の中ではしゃぐ心を、持て余してしまう。

好きよ、大好き。

御者台に座る彼の隣に寄り添って、温もりを感じながら過ごすこの時間は、何者にも替え難い宝物。

魂抜けを起こしていた時もね、みんなのことは見えていたの。

でも、声は届かず、姿は見えていなくて、フェイルノが気づかなかったら、どうなっていたんだろう。

アーチロビン、あなたの慟哭は私の胸に刺さっていたよ。

私はここにいると、あなたに何度も触れようとしたのに、魂のままの私の手はあなたの体をすり抜けてしまって。

悔しかった……だから、触れることができる今は、とても嬉しい。

霊泉に沈む前に、初めての口づけもしてくれて。あの時は応えられなかったけれど、今は───いつでも……。

何度も彼の横顔をチラチラ見るものだから、アーチロビンが照れると言って、咳払いばかりしてる。

可愛い。

馬車がこのまま、ずっと目的地に辿り着かなければいいのに。

馬車の振動と、彼の温もりと、幸せな時間。とても心地いい。

もう少しだけ……あと少しだけこうしていたい。

アーチロビンが、さっきから日記を書く私が気になって、何を書いているのかと聞いてくる。

だ、だめ! 見ちゃダメなんだから。
き、今日はここまで。
おしまい!!



~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。

※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

聖剣に選ばれしその剣士は、性悪だった

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:46

可愛い彼は嫉妬深い~獣人彼氏と仲直りえっち~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:36

異日本戦国転生記

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:194

聖騎士とは名ばかりの私と、時間制限のある彼女と

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:13

【R18】貴方の想いなど知りません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:958pt お気に入り:4,620

処理中です...