不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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六章

吟遊詩人

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「どうしたら、いいんだろうな」

俺はみんなと一緒に、祭壇の間で顔を突き合わせて考え込んだ。

「石化して砕けば安全じゃ」

魔導士ティトが、提案した。
石化か。
オメガゴーレムと、同じやり方だな。

「レディオークは、石化無効の種族のはずだよ」

聖騎士ギルバートが答えて、魔導士ティトが頭を抱える。

いい案だと思ったのに無効だなんて……何か弱点があればいいんだがな。

冒険者ギルドあたりなら、情報があるかもな。そんな俺たちを見て、テレクサンドラが、少し考え込む。

「そういえば、この街に有名な吟遊詩人が来ています」

「吟遊詩人?」

「ええ。彼は盲目なのですが、あちこちを旅して、英雄譚を弾き語ります。時々、魔物の弱点などを歌詞にして歌う時もあります」

「なるほど」

「今夜酒場で、弾き語りがあるそうです。危険ですから、変装して向かうのはどうでしょう」

テレクサンドラに言われて、俺たちは立ち上がった。けれど聖騎士ギルバートは、彼女のそばに戻る。

「ああ、ボクは残ります。テレクサンドラの身辺を護衛したいので」

「あ、ありがとうございます……」

テレクサンドラが、顔を赤くして俯いてしまった。

俺たちは、いいよと言って、早速変装する。

フィオは忍者、ケルヴィン殿下は商人、俺は眼帯をつけて顔に傷のメイクをした用心棒。魔導士ティトは、占い師。

俺たちは、夜になるのを待って、神殿の隠し通路を通って外に出た。

ここポリュンオスの首都、チュア・サンクの酒場は、街の中心にある。

酒場に入ると、ちょうど吟遊詩人が歌おうとしているところだった。

色白で細面だけど、凜とした男だ……。

「わぁ、なんだか、儚げな人」

「おお、美しい男じゃ」

フィオと魔導士ティトが、熱心に見ている。……なんだろう、面白くない。

「フィオ、座ろう」

「え、ええ」

俺がフィオに声をかけると、彼女は吟遊詩人を見つめたまま、ゆっくりと腰掛けた。

俺は彼女の隣に座ると、吟遊詩人の歌を待つ。

ポロン、ポロロン。

吟遊詩人が、持っていた竪琴を奏でだした。
その音色の美しさに、思わず聞き惚れてしまう。

「現に蔓延る黒い影 静かにそれは忍び寄る……」

歌詞の内容は恐ろしいけれど、心に沁みるような、静かな声だ。

吟遊詩人は歌い続ける。

「世界の異変 倒さるる龍王たち もはや 神も見捨てたか」

龍王たち、か。ちょうど聞きたかった歌詞のようだ。

「龍王たおしし魔物は とても強く無敵を誇る されど 酒に目のない酒豪という……」

「!!」

「この世に二つとない 幻の酒 神龍酒 かの日の本に あるという 魔物も酒を欲すだろう あぁ それほどの美酒ならば 一口だけでも 飲んでみたい」

幻の酒、神龍酒!!
俺たちは顔を見合わせた。

それがあれば、レディオークから、龍王を守れるかもしれない!!

そう思った、その時だ。

「おいおいおい!!」

なんと、暗黒騎士のヴォルディバが来ていた。隣に、見知らぬ女性を連れている。

ナンパしたのか?

隣の女性は、暗黒騎士ヴォルディバの肩にもたれて、奴を見ている。

「おい! そこの歌い手さんよぉ! んな、魔物の歌なんかいらねーよ! 英雄たちを歌ってくれよ!!」

暗黒騎士ヴォルディバは、酒の入ったグラスを振り回して大声で叫ぶ。

周りの客に酒の飛沫が飛んで、迷惑この上ない。

どうせ、自分たちのことを歌わせて、隣の女性に格好つけたいんだろうな。

吟遊詩人の男性は、竪琴を弾く手をピタリと止めて、ゆっくり客席を見渡す。

「英雄……ですか、お客様」

彼にそう言われて、暗黒騎士ヴォルディバは、立ち上がる。

「おうよ! 魔王を倒した、有名な最近の英雄たちがいるだろう!?」

「……最近の英雄」

「はるか昔に遡る必要はねぇぞ。早く歌え」

「私は、私が英雄と思う人を歌詞にのせて歌います」

彼は、暗黒騎士ヴォルディバの方に耳を向けているけど、顔を向けない。

確かに、彼は盲目の吟遊詩人なんだ。

「あぁん? お前が英雄と思う人だと?」

「ええ。ガルズンアース国よりやって来た、その人のことでしたら……」

「おぉ! いいぞ、その国の英雄だな! よし、歌え!!」

「では……」

ポロロロ、ポロロロ……。

さっきと曲調がちがう。
ネプォンたちのことを、歌うんだろうな。

「険しい道をあなたは辿る 数多の魔物を倒し それを誇ることもなく」

……?
ネプォンの……ことか?

「その強さは 孤高の強さ 戦場に一人 身を晒す」

!! まさか……!

「放たれし一矢 敵は己の敵意で 身を滅ぼす 民も巻き込まれることもなく 大切な人を失うこともない そんな戦い 見たことない」
 
ち、ちょっと待て。
これは……!

フィオも、思わず俺を見る。

「これ、アーチロビンのことじゃない?」

「し!」

魔導士ティトが、フィオの方を見て首を横に振った。

なぜ、なぜこの吟遊詩人が知ってるんだ?

吟遊詩人は、歌い続ける。

「あなたの運命なのか 偶然なのか なぜか誰もあなたの名を知らない それでも 守られし日常と 消えゆく魔物の屍が かすかな残滓を 残さんとす 誠の英雄 ここに有り」

シーンとなった酒場の中で、一人、また一人と拍手が起こる。

「……知ってるべ。ゾンビダラボッチを倒した人がいるごど」

「そいつだけじゃあらへん。その前も、恐ろしい魔物を倒した冒険者たちは、必ず同じ弓使いを連れてたって聞いたことがありますわ」

「ガルズンアースでは、近ごろ子供たちの巻き添えなしに、魔物が倒されるようになったって聞いたずらよ」

「うち、うちは最近までガルズンアースに住んでたさ。足の不自由な娘がいるけど、逃げ遅れても安全だったさ」

「うちもそう……お金がないから、魔物との戦いで家が壊されないか心配したけど、大丈夫だったばい」

「俺は、災害で家をなくしたことがあったけど、国の支援の前に、マフィマフィン協会という民間の組織が助けてくれて、早く日常に戻れた……いつもたくさんの寄付を、弓使いがするって……」

「英雄だ……」

「英雄だ!!」

酒場の中は賞賛の嵐になり、口々に褒め称えていく。

その中で一人、苦虫を噛み潰したような表情の暗黒騎士ヴォルディバか、拳を握って再び椅子から立ち上がった。

何をする気だ? ヴォルディバ……。

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