不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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六章

ヴォルディバを撃退

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みんなが拍手する中、暗黒騎士ヴォルディバが、グラスを床に叩きつけた。

「ふざけんな! てめぇらぁ!! 英雄っつったら、魔王を倒した勇者ネプォン一行のことだろぉがぁ!?」

「ネプォンだべか? ガルズンアース国王のごどか?」

「おうよ! どこの馬の骨か知らん無名の弓使いなんぞ、目じゃねぇ。英雄はネプォンと、この俺様、暗黒騎士のヴォルディバ様だ!」

暗黒騎士ヴォルディバは、机の上に片足を乗せて、腰に両手をあてるとそっくり返って笑った。

「ガハハ! 英雄はちまちまと、下っ端の魔物討伐やら、庶民の安全なんか相手にしねーもんよ。倒すのは魔王! 相手にするのは王族どもだ! あとは金だ! 綺麗なねーちゃんだ!!」

周りが白い目で見ているのを、暗黒騎士ヴォルディバは気づかない。

ヴォルディバの肩にもたれていた女性も、いつのまにかいなくなっていた。

「ちぃ! ねーちゃんがいねぇじゃねぇか!! おい、歌い手さんよ。くだらねぇしょぼい英雄より、俺たちのことを歌えよ」

「できません。私はネプォン王を、真の英雄だと思ってはおりませんので」

「あんだと!? こらぁ!」

酔った勢いもあるのか、暗黒騎士ヴォルディバは、ズカズカと舞台に近づいて行った。

止めようとした周りの人を、ヴォルディバは振り払っていく。

流石に酔っていても、一般人には負けない。

イキがるだけの強さがあるから、こいつの態度は改まらない。

だから、こいつはいつまでも変わらない。

みんな床に倒れされて、恨めしそうに暗黒騎士ヴォルディバを睨む。

「け! 庶民どもが! 逃げ隠れしか能がねぇくせに、でしゃばるんじゃねぇ!!」

彼はそんな捨て台詞を吐くと、吟遊詩人のそばまで行って、彼の胸ぐらを掴んだ。

吟遊詩人の竪琴が、床に落ちて酒場に響き渡る。

「うぅ……!」

「ほら、歌え。英雄ネプォン一行の歌を。この世の真の英雄だと」

「い、嫌です」

「ふざけんな。喉を潰すぞ!? 生業を失えば、てめぇみたいなのは、すぐに生活苦に落ちる……くくく」

「うぐぐ……!!」

吟遊詩人が、首を絞められて苦悶の声をあげる。

いい加減にしろよ!? あいつ!!

「ケルヴィン殿下」

「あぁ、行くといい、アーチロビン」

俺はケルヴィン殿下に、一言断りを入れると、素早く舞台にあがった。

おそらく、話すだけでは手を引かないだろうな。

暗黒騎士ヴォルディバの背中に、矢の鏃をピタッとあてる。

「彼を離せ」

「あぁ!?」

「離せと言った」

暗黒騎士ヴォルディバは、チラリと俺を見て、挑発するようにさらに手に力を加える。

変装しているから、俺とはわからないようだ。

「ひひひ、やるならやれよ。下手に俺が気を失えば、こいつの首もポッキリ折れるぜ?」

「飲んだ勢いとはいえ、やり過ぎだ」

「うるせぇんだよ! あんだぁ? お前も弓使いか? 肩に変なオウムまでのっけやがって、あの馬鹿弓使いを思い出すぜ」

「御託はいいから、彼を離せ。俺が相手になる」

「あーん? お前だぁ?」

「怖いのか? あんた。庶民いじめしか能のない、偽の英雄か?」

「野郎、もういっぺん、言ってみろ!?」

暗黒騎士ヴォルディバが、吟遊詩人を離して、俺に向き直る。

上手く引き剥がせたな。
彼は大丈夫だろうか。

「ゴホ! ゴホゴホ!!」

床に倒れた吟遊詩人は、喉を抑えて咳き込んだ。

俺はチラリと目線でフィオを見ると、フィオが微かに頷くのが見える。

彼を頼む、フィオ。

俺は、暗黒騎士ヴォルディバに視線を戻す。
かなり酔っているようだ。

でもこいつも、魔王討伐メンバーの一人。

嫌な奴だが、腕は確か。
おまけに耐久力が、異常に高い。

だが……。

「後悔するからな! 弓野郎! 遠距離攻撃を得意とするお前らは、近接戦闘が苦手だ! 体力も騎士より低い。俺の勝ちだー!」

叫ぶヴォルディバに、俺はわざとらしくため息をついた。

「はぁ」

「あんだ? その舐めきった態度はぁ!?」

「お前に、俺は倒せない」

「な!? この……!」

トス!

俺は後ろ手に、持っていた矢を床に落として刺した。

奴の敵意は十分。力場が、奴を包んでいく。

地面が淡くサッと光って、準備完了だ。

ヴォルディバは、拳を握って俺を殴ろうとする。

「う!?」

ヴォルディバの拳が、構えたまま動かない。奴はすぐに蹴りに変えて、軸足を踏み込んで来た。

左軸足、右足でローキックとハイキックの連続技。これも変わらない。

前は無理矢理組み手させられて、よく喰らったな……。

その自慢のキックも、今は不発。
足がプルプル震えて、ヴォルディバの顔が歪んでいく。

悔しいんだな。

「もうよせ。三度目はおすすめしない」

俺が忠告すると、奴は顔を真っ赤にして剣を抜く。

暗黒剣を使う気か。

相手の体力を吸い取って、自身のモノにする得意技。

この場合どうなるんだろうか。

そう思っていると、奴は暗黒剣術の構えをとった。

「暗黒の禍つ力よ、我が剣に宿り、敵の血を吸い尽くせ! ブンゼ・ゲアイス!!」

体力全吸収技か……。
ヤケクソになってやがる。

奴の剣が黒く光って、奴自身の体力を吸い上げた。

「あぁ!?」

暗黒騎士ヴォルディバは、目を見開いて自分の剣を見つめている。

「な……なぜ、これは……どうし……」

吸い上げられたヴォルディバの体力は、俺の中に入って来た。

奴の体力数値は、おそらく1だろう。

そのまま、暗黒騎士ヴォルディバは、泡を拭きながら倒れる。

しばらく寝てろよ。

「わぁー!」

「ひゅー! 最高だぜ!!」

客席から歓声があがって、スタンディングオベーションが起こる。

ヴォルディバに薙ぎ倒された人々の溜飲が、少しでも下がったならそれでいい。

俺は、吟遊詩人を抱えて、舞台袖に入った。

楽屋の前に、フィオたちが来ている。

「入ろう」

俺たちは中に入り、フィオが回復魔法を唱えて、吟遊詩人はようやく顔色が元に戻る。

「ありがとうございます」

彼は深々と頭を下げた。

よかった、喉も損傷が回復してるみたいで。


「あの、俺たちは……」

と、言いかけると、彼はにっこり笑って顔を上げる。

「知っています。あなたの足音」

「え」

「あなただ。私の英雄」
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